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異世界転生失敗したので、再起目指してがんばります
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八日目になりました。
この日、身体のリハビリ開始です。
今日初めて立つのですが、これがまたキツイ。
頭の中が偏ってる感じがするし、何より暑い。
汗が一気に噴き出してました。
どうやら、脳の中で刺激を感知したらしく、それが上手く働かないとのことでそう言う状態になるそうで、とにかく不快でしたが車椅子に乗ったままストレッチ開始。
右足の力も右腕の力も大分戻って来ていて、両方上げても右手だけ下がると言う現象は無くなりました。
海を見ながらのストレッチで気分展開出来ました。
その後は静脈の検査です。
今日から車いすで移動です。
車いすで風を切りながら、一般患者の間を抜けて行きます。
ベッドの時より心持ちがちがいます。
超音波を当てながら、結構ながいこと検査やってました。
ついでに足首にもなんかつけられたんですが、考える事を放棄していた為なんだったか忘れました。
言葉のリハビリも順調です。
九日目。
この日は、長いことブッ刺さっていたカテーテルが抜かれました。
と、言う事でパンツ解禁です!
やったー!
オムツを外してもらった後、速攻でパンツ取って下さいとかもうどれだけパンツが恋しかったか……!
とりあえず、トイレに行くときは誰か看護師さん呼んでねと言う事でしたが、身体のリハビリをして歩いたところ、問題なく自分で歩けるとのことで、見守りで大丈夫ですと言われました。
晴れて一人でおトイレできるもん!
この日の午後はMRIです。
しかし、緊急の患者さんがいたので大分待たされることに!
でもいいの、待合室でテレビ見れるから。
ケチってテレビカード買わなかったんですよね。
40分ほどテレビを見て、MRI撮影に挑みます。
相変わらずうるさかったです。
十日目。
歩くリハビリも順調です。
もう見守りも必要ないですねと、おトイレの見守りもなくなりました。
私は自由の身です!(病棟内だけ)
このころから右半身の違和感もなくなりました。
順調!
処置が早かったから、本当に順調すぎてこわいです。
十一日目。
病棟移動です。
一般病棟への移動が許可されました。
「ゆっくりでいいから荷物纏めてね!」
あ、はい。
そうか、自分の荷物自分でまとめるのか。
いそいそと支度を始め、看護師さんの持ってきてくれたワゴンに乗せます。
パンパン!
2段あったんですが、いずれもパンパンです。
家族が持ってきてくれた着替え、地味に不要なものが多くて、更にお茶類がたっぷりとあってパンパンです。
移動まで三十分ほどあってどうしようかと思ったんですが、看護師さんにテレビ見れる広場で待ってていいわよと言われてそこへ行きました。
まあ、別に見たいテレビ無かったんですが。
結局三十分、そこでずっとぼんやり海を眺めていました。
一般病棟へ行く際、「シキバさん、元気だからちょっと荷物自分で押してみて! リハビリと思って!」と、ワゴンを押していく事に。
いや、うん、もう元気なんじゃないかな自分。
一般病棟に移り、担当の看護師さんとご挨拶です。
始めにいた病棟よりもおっとりしています。
一般病棟ともなると、常に見ていなくてはならな患者さんもいないからなのか、意外と雰囲気は緩いです。
だって、その前の病棟はホントうるさかったんですもの!
「看護師さん、看護師さん助けてー。誰か助けてー」
「おーい! おーい! 1……2……3……、誰かいないの。おーい! おーい!」
とか、夜な夜な患者が叫んだりとかないんだもん!
平穏そのものでした。
十二日目。
シャワー解禁です。
いそいそと予約し、ウキウキしながらまっていたところで、眼科の検査があるとのこと。
しかもシャワー予約していた時間に……。
悲しみに暮れながら、眼科でひっそりと検査をうけました。
倒れた時目が痛いと訴えていたので検査だそうで。(記憶にない)
瞳孔開く薬を点眼し、おめめが眩しくてどうしようもありません。
眩しくてしょぼしょぼした目では何も出来ない為、リハビリもお休み。
ちなみにシャワーは、空気を呼んでくれた看護師さんが午後に予約をとってくれてました。
ありがとう看護師さん!
しかし、体力がおちている。
頭洗うのも一苦労でした。
ゼーハーゼーハー息が上がっていて、しんどいったらありゃしません。
十三日目。
先生の回診で、「脳梗塞の原因調べてますが、原因がまだわかりません」とのこと。
患者さんの中にもそういう方が稀にいらっしゃるのでと聞いて、そうなんだーくらいにしか思いませんでした。
後で調べて見ると、原因不明の脳梗塞は25%だそうです。
原因なんとかわかりませんかね。
「原因を探って、色々やってみますね」と言い残し、颯爽と去って行く先生。
原因不明で脳梗塞を起こし、原因はなんだったんだと延々考えましたが、夜はグッスリ眠れました。
翌朝そんなことも忘れて、爽やかに目覚めました。
THE・鋼メンタル。
十四日目。
そう言えば書き忘れてたんですが、通常食始まってました。
七日目からはおかゆとペースト状にされたおかずが出てたんですが、これがまずい。
赤ちゃんの離乳食ってこんな感じか、と思いつつ残す日々。
当然、食欲も落ちます。
通常の食事に戻っても八割残すと言う始末。
「シキバさん、具合でも悪いの?」
心配そうに毎回訪ねて来る看護師さんに申し訳なかったんですが、大丈夫です。
胃が縮んだだけですから!
別にこのままちょっとダイエットしようかなー、とか思ってないんだからね!
ちなみに退院時、5㎏の減量に成功しました。
十五日目。
最早、私は何の病気で入院してたのか忘れるくらいに元気になりました。(脳梗塞です)
しかし先生の回診時、「髄液検査予定してるから」と一言。
え? 髄液検査?
何それ怖い!
脊髄腔に針を刺して液を取るらしいんですが、痛いらしいです。
そう言えば昔、半身麻酔したことあるんですけど、腰のあたりに針刺されてめっちゃ痛かった記憶が。
刺した後もしばらく痛かった。
あんな痛みなんだろうか……。
「髄液検査痛いらしいねー。私やったことないけど。あははは」
看護師さん、他人事だと思って!
十六日目。
髄液検査の日です。
朝速攻で呼ばれて、車いすで運ばれます。
この頃になると余裕で歩けるようになったので、車椅子で移動するの恥ずかしかったんですが問答無用です。
と、ナースステーションの前で呼び止められました。
「シキバさん、中止! 髄液検査中止だって! 代わりにMRIだからそっちに行って!」
なんだかよくわかりませが、髄液検査は中止になりました。
しかしまたMRIとな。
今回はちょっと長くて、MRIに四十分強かかりました。
そう言えばシャワー予約してたんだ!
時間を見ると予約時間から十五分も経過しているじゃないですか!
残り十五分!
これまでにないスピードでシャワーを済ませました。
五分も残してシャワー終了です。
どうですか、この回復力!
もう健康そのもの!(脳梗塞です)
今すぐ退院してもいいんじゃないの?(ダメです)
そんなことを考えながら、リハビリに励みます。
階段も余裕で上がって降りてができます。
今すぐ退院してもいいんじゃないの?(二回目)
十七日目。
先生の回診です。
「シキバさん、やっぱり原因不明ですー」
なんだってぇ!
あんなに色々検査やったのに!?
「血液検査も膠原病やシェーグレンなどなどないか調べましたがなし。肝機能も腎臓も極めて健康。静脈検査も心臓の検査も異常なし。一週間心電図とって見たけど不整脈もなくて、血管も全身の調べて見たけど動脈硬化もなし。健康そのものなんですよねー」
健康そのものなのに脳梗塞なんですけど!
「後考えられるのは、一時的にどこかから血栓が飛んできたのが詰まったとしか考えられなくて」
そうですかー。
「で、来週の月曜日退院です」
退院許可でました!
やっと娑婆の空気が吸えるんだ!!
「それまで暇だと思いますけど、作品づくり頑張ってください」
この時、暇すぎた私はリハビリの一環として折り紙で花のくす玉作ってたんですね。
中々上手に出来てたんですが、苦行でした。
颯爽と去って行く先生を見送って、折り紙を取り出します。
その後、作品作りが捗る事はありませんでした。
十八日目、十九日目
特筆すべきことなし。
強いてあるとすれば、隣のベットの担当の先生が、回診の時に間違ってこちらのベッドのカーテンを盛大に開けたことくらいでしょうか。
非情に気まずいですよ。
「失礼しまーす」
シャーーーッ(カーテンオープン)
「………」
シャーーーッ(カーテンクローズ)
「失礼しました」
??????
二十日目。
退院当日です。
午後退院との事で、朝からソワソワ。
荷物もあらかた片付けて、退院の時間を待ちます。
お昼の病院食(最後の晩餐)も食べて、家族のお迎えを待ちます。
家族が到着すると、ナースステーションに呼び出されました。
どうやら担当の女医さんが、ナースステーション内の一画で病状説明をしてくれるそうです。
ソファに座ってソーシャルディスタンス。
暫く待っていると、女医さんの登場です。
研修医のお兄ちゃんたちはいませんでした。
独り立ちしたんでしょうか?
ナースステーションの一画にある椅子にすわって、PCの画面を見ます。
運ばれた日にとったCT、その後にとったMRIを順番に見て行きます。
「左脳幹のすぐ横の血管が詰まって出血も確認できました。脳が一部黒くなっているところは、残念ながら細胞が死んでいる所です。もうここは再生不能です」
なるほど。
貴重な脳の一部死亡です。
あまり頭は良くないとは言え、残念です。
「で、その後にとったMRIで、出血が広がってました。更に細胞が死んでます」
ええ、マジですか!
貴重な脳細胞……。
でも脳っていつも100%使ってるわけじゃないし、他の脳がカバーしてくれるでしょうと、根拠のない希望を見出しました。
「そして、原因なんですが、特定不能です。前にも話ましたが、血液検査、膠原病等問題なし、心臓、静脈、心電図、動脈硬化も問題なしでした。よって、何等かの血栓ができてしまって、それが飛んで今回の脳梗塞につながったと考えられます。若いので脳の写真も綺麗ですよね。血管も詰まってるところも無しです」
女医さん、脳の写真を見せながらキレイな脳の写真ですと褒めてくれました。
照れますね。
「脳梗塞の再発率は低くないので、食生活とストレスをためないように、規則正しい生活しましょう」
はい、心を入れ替えて頑張ります。
それから、リハビリテーションの退院後の生活についての用紙ももらいました。
ざっと以下のような内容が書かれていました。
・杖なしでの歩行ができます。
・無理しないように筋トレしましょう。
・日常生活はほぼ問題なくできますが、まずは少しずつやってきましょう。
・重たい物は、家族の人に持ってもらいましょう。
・言葉の出が遅い時があります。
え、言葉の出が遅い?
自分では普通だと思ってたんですが、そうなのかなー?
家族に聞いてみると、ぼんやりしてることはあるよと。
うーん、自分じゃ気づかなかった、気をつけよう。
とりあえず、二週間分の薬を処方してもらい、病院を紹介してもらいました。
入院していた総合病院にいた先生がやっていると言う、別の病院です。
近いのでこの病院で診てもらえないのかと聞いたんですが、年間千人近くの患者を見ている為無理だそうです。
年間千人って、すごくないですか?
わりと田舎なんですけど、そんなにいるんですね。
とにもかくにも、紹介状とMRIなどのデータを受け取り、退院です。
しかしここで試練が!
外に出た瞬間、うるさい!
外部から常に耳に入って来る情報、視覚からの情報、全てが物凄い勢いで襲ってきます。
処理しきれない!
家族の腕にしがみつきながら歩きます。
生まれたての子馬のように!
家に帰ってもテレビが気になって他の作業が出来なかったりと、色々弊害が出ました。
病院って、ストレスがかからないように出来てるんだなと実感した出来事でした。
続く
この日、身体のリハビリ開始です。
今日初めて立つのですが、これがまたキツイ。
頭の中が偏ってる感じがするし、何より暑い。
汗が一気に噴き出してました。
どうやら、脳の中で刺激を感知したらしく、それが上手く働かないとのことでそう言う状態になるそうで、とにかく不快でしたが車椅子に乗ったままストレッチ開始。
右足の力も右腕の力も大分戻って来ていて、両方上げても右手だけ下がると言う現象は無くなりました。
海を見ながらのストレッチで気分展開出来ました。
その後は静脈の検査です。
今日から車いすで移動です。
車いすで風を切りながら、一般患者の間を抜けて行きます。
ベッドの時より心持ちがちがいます。
超音波を当てながら、結構ながいこと検査やってました。
ついでに足首にもなんかつけられたんですが、考える事を放棄していた為なんだったか忘れました。
言葉のリハビリも順調です。
九日目。
この日は、長いことブッ刺さっていたカテーテルが抜かれました。
と、言う事でパンツ解禁です!
やったー!
オムツを外してもらった後、速攻でパンツ取って下さいとかもうどれだけパンツが恋しかったか……!
とりあえず、トイレに行くときは誰か看護師さん呼んでねと言う事でしたが、身体のリハビリをして歩いたところ、問題なく自分で歩けるとのことで、見守りで大丈夫ですと言われました。
晴れて一人でおトイレできるもん!
この日の午後はMRIです。
しかし、緊急の患者さんがいたので大分待たされることに!
でもいいの、待合室でテレビ見れるから。
ケチってテレビカード買わなかったんですよね。
40分ほどテレビを見て、MRI撮影に挑みます。
相変わらずうるさかったです。
十日目。
歩くリハビリも順調です。
もう見守りも必要ないですねと、おトイレの見守りもなくなりました。
私は自由の身です!(病棟内だけ)
このころから右半身の違和感もなくなりました。
順調!
処置が早かったから、本当に順調すぎてこわいです。
十一日目。
病棟移動です。
一般病棟への移動が許可されました。
「ゆっくりでいいから荷物纏めてね!」
あ、はい。
そうか、自分の荷物自分でまとめるのか。
いそいそと支度を始め、看護師さんの持ってきてくれたワゴンに乗せます。
パンパン!
2段あったんですが、いずれもパンパンです。
家族が持ってきてくれた着替え、地味に不要なものが多くて、更にお茶類がたっぷりとあってパンパンです。
移動まで三十分ほどあってどうしようかと思ったんですが、看護師さんにテレビ見れる広場で待ってていいわよと言われてそこへ行きました。
まあ、別に見たいテレビ無かったんですが。
結局三十分、そこでずっとぼんやり海を眺めていました。
一般病棟へ行く際、「シキバさん、元気だからちょっと荷物自分で押してみて! リハビリと思って!」と、ワゴンを押していく事に。
いや、うん、もう元気なんじゃないかな自分。
一般病棟に移り、担当の看護師さんとご挨拶です。
始めにいた病棟よりもおっとりしています。
一般病棟ともなると、常に見ていなくてはならな患者さんもいないからなのか、意外と雰囲気は緩いです。
だって、その前の病棟はホントうるさかったんですもの!
「看護師さん、看護師さん助けてー。誰か助けてー」
「おーい! おーい! 1……2……3……、誰かいないの。おーい! おーい!」
とか、夜な夜な患者が叫んだりとかないんだもん!
平穏そのものでした。
十二日目。
シャワー解禁です。
いそいそと予約し、ウキウキしながらまっていたところで、眼科の検査があるとのこと。
しかもシャワー予約していた時間に……。
悲しみに暮れながら、眼科でひっそりと検査をうけました。
倒れた時目が痛いと訴えていたので検査だそうで。(記憶にない)
瞳孔開く薬を点眼し、おめめが眩しくてどうしようもありません。
眩しくてしょぼしょぼした目では何も出来ない為、リハビリもお休み。
ちなみにシャワーは、空気を呼んでくれた看護師さんが午後に予約をとってくれてました。
ありがとう看護師さん!
しかし、体力がおちている。
頭洗うのも一苦労でした。
ゼーハーゼーハー息が上がっていて、しんどいったらありゃしません。
十三日目。
先生の回診で、「脳梗塞の原因調べてますが、原因がまだわかりません」とのこと。
患者さんの中にもそういう方が稀にいらっしゃるのでと聞いて、そうなんだーくらいにしか思いませんでした。
後で調べて見ると、原因不明の脳梗塞は25%だそうです。
原因なんとかわかりませんかね。
「原因を探って、色々やってみますね」と言い残し、颯爽と去って行く先生。
原因不明で脳梗塞を起こし、原因はなんだったんだと延々考えましたが、夜はグッスリ眠れました。
翌朝そんなことも忘れて、爽やかに目覚めました。
THE・鋼メンタル。
十四日目。
そう言えば書き忘れてたんですが、通常食始まってました。
七日目からはおかゆとペースト状にされたおかずが出てたんですが、これがまずい。
赤ちゃんの離乳食ってこんな感じか、と思いつつ残す日々。
当然、食欲も落ちます。
通常の食事に戻っても八割残すと言う始末。
「シキバさん、具合でも悪いの?」
心配そうに毎回訪ねて来る看護師さんに申し訳なかったんですが、大丈夫です。
胃が縮んだだけですから!
別にこのままちょっとダイエットしようかなー、とか思ってないんだからね!
ちなみに退院時、5㎏の減量に成功しました。
十五日目。
最早、私は何の病気で入院してたのか忘れるくらいに元気になりました。(脳梗塞です)
しかし先生の回診時、「髄液検査予定してるから」と一言。
え? 髄液検査?
何それ怖い!
脊髄腔に針を刺して液を取るらしいんですが、痛いらしいです。
そう言えば昔、半身麻酔したことあるんですけど、腰のあたりに針刺されてめっちゃ痛かった記憶が。
刺した後もしばらく痛かった。
あんな痛みなんだろうか……。
「髄液検査痛いらしいねー。私やったことないけど。あははは」
看護師さん、他人事だと思って!
十六日目。
髄液検査の日です。
朝速攻で呼ばれて、車いすで運ばれます。
この頃になると余裕で歩けるようになったので、車椅子で移動するの恥ずかしかったんですが問答無用です。
と、ナースステーションの前で呼び止められました。
「シキバさん、中止! 髄液検査中止だって! 代わりにMRIだからそっちに行って!」
なんだかよくわかりませが、髄液検査は中止になりました。
しかしまたMRIとな。
今回はちょっと長くて、MRIに四十分強かかりました。
そう言えばシャワー予約してたんだ!
時間を見ると予約時間から十五分も経過しているじゃないですか!
残り十五分!
これまでにないスピードでシャワーを済ませました。
五分も残してシャワー終了です。
どうですか、この回復力!
もう健康そのもの!(脳梗塞です)
今すぐ退院してもいいんじゃないの?(ダメです)
そんなことを考えながら、リハビリに励みます。
階段も余裕で上がって降りてができます。
今すぐ退院してもいいんじゃないの?(二回目)
十七日目。
先生の回診です。
「シキバさん、やっぱり原因不明ですー」
なんだってぇ!
あんなに色々検査やったのに!?
「血液検査も膠原病やシェーグレンなどなどないか調べましたがなし。肝機能も腎臓も極めて健康。静脈検査も心臓の検査も異常なし。一週間心電図とって見たけど不整脈もなくて、血管も全身の調べて見たけど動脈硬化もなし。健康そのものなんですよねー」
健康そのものなのに脳梗塞なんですけど!
「後考えられるのは、一時的にどこかから血栓が飛んできたのが詰まったとしか考えられなくて」
そうですかー。
「で、来週の月曜日退院です」
退院許可でました!
やっと娑婆の空気が吸えるんだ!!
「それまで暇だと思いますけど、作品づくり頑張ってください」
この時、暇すぎた私はリハビリの一環として折り紙で花のくす玉作ってたんですね。
中々上手に出来てたんですが、苦行でした。
颯爽と去って行く先生を見送って、折り紙を取り出します。
その後、作品作りが捗る事はありませんでした。
十八日目、十九日目
特筆すべきことなし。
強いてあるとすれば、隣のベットの担当の先生が、回診の時に間違ってこちらのベッドのカーテンを盛大に開けたことくらいでしょうか。
非情に気まずいですよ。
「失礼しまーす」
シャーーーッ(カーテンオープン)
「………」
シャーーーッ(カーテンクローズ)
「失礼しました」
??????
二十日目。
退院当日です。
午後退院との事で、朝からソワソワ。
荷物もあらかた片付けて、退院の時間を待ちます。
お昼の病院食(最後の晩餐)も食べて、家族のお迎えを待ちます。
家族が到着すると、ナースステーションに呼び出されました。
どうやら担当の女医さんが、ナースステーション内の一画で病状説明をしてくれるそうです。
ソファに座ってソーシャルディスタンス。
暫く待っていると、女医さんの登場です。
研修医のお兄ちゃんたちはいませんでした。
独り立ちしたんでしょうか?
ナースステーションの一画にある椅子にすわって、PCの画面を見ます。
運ばれた日にとったCT、その後にとったMRIを順番に見て行きます。
「左脳幹のすぐ横の血管が詰まって出血も確認できました。脳が一部黒くなっているところは、残念ながら細胞が死んでいる所です。もうここは再生不能です」
なるほど。
貴重な脳の一部死亡です。
あまり頭は良くないとは言え、残念です。
「で、その後にとったMRIで、出血が広がってました。更に細胞が死んでます」
ええ、マジですか!
貴重な脳細胞……。
でも脳っていつも100%使ってるわけじゃないし、他の脳がカバーしてくれるでしょうと、根拠のない希望を見出しました。
「そして、原因なんですが、特定不能です。前にも話ましたが、血液検査、膠原病等問題なし、心臓、静脈、心電図、動脈硬化も問題なしでした。よって、何等かの血栓ができてしまって、それが飛んで今回の脳梗塞につながったと考えられます。若いので脳の写真も綺麗ですよね。血管も詰まってるところも無しです」
女医さん、脳の写真を見せながらキレイな脳の写真ですと褒めてくれました。
照れますね。
「脳梗塞の再発率は低くないので、食生活とストレスをためないように、規則正しい生活しましょう」
はい、心を入れ替えて頑張ります。
それから、リハビリテーションの退院後の生活についての用紙ももらいました。
ざっと以下のような内容が書かれていました。
・杖なしでの歩行ができます。
・無理しないように筋トレしましょう。
・日常生活はほぼ問題なくできますが、まずは少しずつやってきましょう。
・重たい物は、家族の人に持ってもらいましょう。
・言葉の出が遅い時があります。
え、言葉の出が遅い?
自分では普通だと思ってたんですが、そうなのかなー?
家族に聞いてみると、ぼんやりしてることはあるよと。
うーん、自分じゃ気づかなかった、気をつけよう。
とりあえず、二週間分の薬を処方してもらい、病院を紹介してもらいました。
入院していた総合病院にいた先生がやっていると言う、別の病院です。
近いのでこの病院で診てもらえないのかと聞いたんですが、年間千人近くの患者を見ている為無理だそうです。
年間千人って、すごくないですか?
わりと田舎なんですけど、そんなにいるんですね。
とにもかくにも、紹介状とMRIなどのデータを受け取り、退院です。
しかしここで試練が!
外に出た瞬間、うるさい!
外部から常に耳に入って来る情報、視覚からの情報、全てが物凄い勢いで襲ってきます。
処理しきれない!
家族の腕にしがみつきながら歩きます。
生まれたての子馬のように!
家に帰ってもテレビが気になって他の作業が出来なかったりと、色々弊害が出ました。
病院って、ストレスがかからないように出来てるんだなと実感した出来事でした。
続く
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