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兄と妹(6)
しおりを挟む空を見上げて空は見えない
先程まで静かだったトイレに音が響く
ノックにしては騒がしすぎる
どうする
無視をすれば相手はおとなしく立ち去るか・・
そんな希望的観測を持っても改善はされないだろうな
「誰だ!!!」
トイレの個室に音が反響する
「鍵なら開いてるぞ」
昨日までの生活なら友達や学校の先生がトイレに入りたかった
そのやり取りだけだが今は違う
マドレーヌを誘拐した奴に決まっている
俺がこの場所にいることを知っているのならなぜ責めてこない?
俺を攻撃して試験を受けれないようにすればいいだけの話だ
相手の事が分かってきたぞ
たぶん相手は俺に怪我をさせる気がないみたいだな
この仮説は間違ってはいなかった
サバランはトイレのドアを少し開く
「気配がないな」
サバランは危険と言う事は分かっている
この状況を考えれば迂闊にドアを開くのは危険すぎる
サバランには壁越しに相手をみる魔法を所得していない
左右を確認していき良いよくドアを開けた
「・・・」
誰もいない
トイレから出ようとした時
「マドレーヌ様はよく寝ておりますよ」
女の声が後ろから聞こえた
サバランは後ろを振り向き
提唱するが
「消えた?」
サバランの右手から炎を出す予定だったが途中で止めた為に黒い煙がもくもくと上がっている
「やはり行くしかないか・・・」
試験を受けなければどうなるか分かっている
父さんは怒るかな
怒ってくれたらましだな
マドレーヌはどんな顔するだろうか
自分の所為で兄が試験を受けれないと知ったら悲しむかな?
サバランの瞳からうっすらと涙が出る
「まってろよマドレーヌ」
「サバランどうしたもう試験が始まるぞ?」
トルテはサバランに声をかけた
「そうだな」
「泣いているのか?」
「まさか顔を洗ってただけだ」
サバランは嘘をついた
「先にいくから」
サバランはその場から走った
トルテが何か言ってる気がしたが
耳には入らなかった
試験会場を抜けマドレーヌのいると思われる裏山に向かった
サバランは来た道を戻る
「はぁはぁ」
胸が痛い、急に走ったからじゃない
マドレーヌが心配だ
たった一人の妹を助けるんだ
サバランの胸ポケットから白い紙が見える
サバランは一度その場で立ち止まり紙を見る
宮廷魔術師試験用紙と書かれており
両親のサイン
学校の先生のサイン
推薦状に名前を書いてくれた友達の名前がびっしりと書かれていた
多くの人間がサバランなら宮廷魔術師になれる
そう思ってくれている証
「みんなありがとう」
サバランは紙を破りすてた
宙に舞う紙は空を舞う
そんな事を気にせずサバランは走る
「宮廷魔魔術師になれなくてもいいさ」
言葉と裏腹に涙が出てくる
「たった一人の妹を救うんだ」
声が上手くでない
サバランは心で叫んでいる
宮廷魔術師は誰にでもなれる
マドレーヌの兄は俺だけだ
サバランは走る
悲劇の序曲の第一番が始まろうとしていた
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