私の愛した王子様

山美ハル

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兄と妹(7)

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青空がきれいだ

あの日の空のまま

振り返る事ができない綺麗な青

マドレーヌは目を覚ました

ふかふかなベッドの上ではなく地面の上で

「目が覚めたかい?」

あの男がマドレーヌに話しかける

「この縄をほどきなさい」

マドレーヌは両手両足を縄で縛られ身体を捩る事しかできない

「お兄様を呼び出して何が目的ですか?」

マドレーヌの問いに男が答える

「試験に参加されると困るんだよ」

男はそう言うと葉巻に火をつけた

「試験?」

「宮廷魔術師試験の事?」

マドレーヌが聞く

「その通り」

「正解だ」

男は葉巻を地面にこすりつける

「あんたのお兄様は優秀過ぎたのよ」

黒いローブの女がどこからか現れマドレーヌに話しかけた

「さっきの女」

「口の悪い貴族令嬢だね」

女はマドレーヌのほっぺを掴む

「あぐぐぐいだい」

マドレーヌのほっぺは赤くはれる

「やれやれ女は怖いね」

男はぼそっと声を出した

「何とでもいいな」

「あたしに傷を負わしたこの女を早く殺したいだけだよ」

女はマドレーヌを睨む

「殺して見なさいよ」

マドレーヌは地面から女を睨む

その様子を見て男は笑う

「このガキ」

女はマドレーヌのお腹を蹴った

「ぐぐぐぅぅうー」

「口の利き方を教えてやるよ」

「よせよクレープ」

「名前で呼ばないでよ」

女はクレープと呼ばれているようだ

「お嬢ちゃんこいつをあんまり怒らせるなよ」

「こう見えて闇の魔法使いの一人だぜ」

「闇の魔法使い?」

マドレーヌは聞いた事のない単語を聞いた

「お嬢ちゃんみたいな貴族のお嬢様には聞いた事がないよな」

男はにやつく

「どんな世界にでも悪い人間なんて星の数程いるんだよ」

男は地面に捨てた葉巻を拾い火をつけた

「その闇の魔法使いと兄が何の関係があるんですか?」

兄のサバランは真面目で優しく周りから慕われている

そんな兄が悪い奴らと何の関係があるんだ

「何で宮廷魔術師を目指すか知ってるか?」

男はマドレーヌに問う

悩むこともせずマドレーヌは答えた

「立派な仕事だからです」

「あははははは」

「ふふふふ」

マドレーヌの答えに二人組は笑う

「何が可笑いのですか」

私の知っている宮廷魔術師は皆良い人ばかりだ

「確かに宮廷魔術師は立派な仕事だがよ」

「その仕事についている人間はどうだろうな?」

「どう言う事ですか?」

男は話す

「もし貴族の息子や娘が宮廷魔術師になりたいといったらどうする?」

「修行や鍛錬をさせます」

「立派な考えだよお嬢さん」

男はマドレーヌに近づく

「もし貴族のガキが落ちたらどうする?」

「慰めます・・・」

フフフ

クレープはにやにやと笑う

「甘いな貴族の世界はそれじゃ駄目なんだよ」

「駄目?」

「考えてみろよ」

「仮に侯爵の息子が落ちてそこらへんの貴族が受かってしまったらよ」

「その侯爵家は恥ずかしいぞ?」

「もしかして」

マドレーヌは気づく

「そうだよ、自分の家より階級が上ならゴマスリに使えるが」

「自分の家より格下の貴族の息子が受かっちゃうと困るよな?」

「そんな事許されません」

「そうだよそんな事あっちゃいけない」

「でも現実はそうなんだよ」

「そんな事誰も許してくれませんよ」

「許すじゃないぞ 皆知ってるんだよ」

この王国でそんな事があるなんて

「誰も諭したりしないのですか?」

「しないな皆恐れてるんだよ」

「まさか口封じ・・・」

「そんな野蛮な事はしない」

「じゃ何を?」

「貴族全体の保険だよ」

「保険?」

「有名な魔法使いの子供は優秀か?」

「その孫はどうだ?」

「・・・」

マドレーヌは答えられなかった自分がそうであるから

「そんな話終わりにしな」

クレープはイライラとしている

「そうだな始めるか」

この者を支配し我の僕とせよマインドマジック

マドレーヌの綺麗な水色の瞳が白く濁っていく

「マドレーヌ」

かすかにマドレーヌと誰かが言った

「来たみたいね」

「楽しみだな」

二人は木の上に上り様子を見ることにした

一歩一歩妹に近づくたびに幕が開いていく

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