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「はぁ……」
俺は今、失望している。なぜなら、長年一緒に頑張ってきた冒険者パーティー「稲妻の旅人」を追放されてしまったからだ。
その事実を告げられた瞬間、頭の中が深い闇におおわれたような感覚に陥って、もうなにも考えられなかった。
涙をこらえながら、大好物の肉をギルドで食べる。が、味が感じられない。
そんなとき、柔らかい声が聞こえた。
「大丈夫ですか?」
色が薄い金髪に、ルビーのような赤い瞳の男性(?)が話しかけてきた。中性的な雰囲気を纏っている。
「あ、えっと、その……」
もうなんか動揺しまくってろくにしゃべれなかった。仕方ないか、もうこの先希望はないんだし。
「話ぐらいなら、聞けますよ。」
「あっと……」
少し迷う。こんな見ず知らずの人に、そうやすやすと話していいのだろうか。初対面でこんなこと話したら、嫌われたりしないだろうか。でも、つらいから、つい誰かに話したくなってしまった。
「お願いします。」
「はい。」
「じ、じつは、冒険者パーティーを追放されてしまって……長年一緒に頑張ってきたので、つらくて……それで、もう、俺にはいく当てもなくて、仲間とわかれたのもつらいけど、えと、現実的に考えて、もうお先真っ暗だなって…」
話しているうちに、ポロポロと涙が溢れてきた。ついに限界が来たようだ。俺はなんて女々しいんだろう………。
「そんなことがあったんですね。お先真っ暗、ですか……。それは大変ですね。」
鼻水をすすりながら、頷く。
「ですが、安心してください!」
俺の頭にはてなマークが浮かんだ。もういく当てもないんだぞ?なにに安心すればいいんだ?
「私と、パーティーを組みましょう!」
「え、でも、貴方が元々組んでいたパーティーは大丈夫なんですか?」
「ええ!何せ私は、貴方と一緒で、パーティーを今日追放されたのですから!!奇遇ですね!えっと……」
ちょっと考えて、名前を聞かれてることに気づいた。
「あ、ヴィクターと申します。」
「ヴィクターさん!これからもよろしくお願いしますね!あ、ちなみに私はレオンです~。よろしくです!」
「あ、はい、よろしくお願いします。」
そのとき、女の子の泣き声が聞こえた。慌てて声の方をみると、紫の髪の女の子がギルドの入り口にたっていた。
少し回復した俺は、彼女を助けようと思った。元々、困っている人をほっとけない性分なのだ。
「あ、ちょっと行ってきます。」
「?どうぞ。」
俺は、女の子に近づいて、声をかけた。
「あの、どうかしたんですか?」
「えっと……」
困ったように顔を上げる女の子。もしかして、迷惑だっただろうか……。女の子は、覚悟を決めたような感じの表情をして、
「話、聞いてもらってもいいですか?」 
と言った。
「もちろんです。あっちの席に行きましょう。」 
俺は、さっき座ってた席に戻った。
「おや、貴女も泣いているではないですか。今日は泣き虫さんが多い日ですねぇ。」
「っ!泣いてなんかないんだから!あ、初対面なのにすいません…。えっと…あの、その、ちょっとパーティーを追放されちゃった感じで……」
彼女はトパーズのような美しいオレンジの瞳から大粒の涙を流していた。そのとき、2人の声が揃った。
「「えーー!貴方(君)もー!?」」
呆気にとられたような顔をした彼女は、呟いた。
「え、てことは、2人も……?」
「はい、実はそうなんですよ。今日は追放記念日なんですかねぇ。」
「ふふふ、そうかもしれないわね。」
「僕もいるぞーー!」
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