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第1章

人狼裁判 

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「そうだよセダム。マリンはこう言うやつじゃない。余計に言いがかりつける、君が怪しく見えるかな。」
「なっ…!ティナちゃんまで。」
3人が争っているのをよそに、カエデは美しい金髪を風に揺らしながら考え続けていた。
「怪しい……誰が?村長が。なぜ…?しゃべっていないから。もっと積極的に関わるはず。」
と、呟くと3人は争いをやめ、すぐさまカエデに近づく。
「えっ!どういうことかい?」
「ほとんどしゃべっていない。そんな村長を信じられるのか。」
カエデはセダムのことを無視して、独り言を続ける。
「…っ!」
「何故に村長はそこまでしゃべらないのか。」

「村のためにしゃべるべきではないのか。」

それまで下を向いて、ぽつりぽつりと言葉をこぼしていたカエデがいきなり前を向いた。狐の面が睨み付ける。翠の瞳が輝く。
「なぜみんな投票しないのか。」

場の空気が凍りつく。

「そ、それは、やっぱ失礼じゃない?」

そんな会話がなされていたことを知らない村長が現れた。
「投票の時間じゃ。」

みんながもくもくと投票しはじめる。
「投票の結果は、カエデだ。さらばじゃ。」
村長はゆっくりと去っていく。
カエデの顔がひきつる。残った3人は申し訳なさそうに俯く。

「しばし待て。最期の舞を演じさせてくれ。」
そう言い残し、カエデは席をはずす。
「そう言えば、カエデちゃんは躍りを披露するために旅をしていたんだっけ。」
「左様。」
踊るような足取りでみんなの家の方にいく。
そして、かなり時間がたち、戻ってきた。
「さらばだ。煮るなり焼くなり好きにするがいい。」

カエデの顔は言葉に反し、やりきったような爽やかな表情だった。なにか、たくらんでいるのだろうか。




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