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七つの厄災【不安編】:不安は心配からくるらしいですよ
妖怪転生
しおりを挟むこの世界では珍しく木でできた店だった。だけど、壁にはあちこち穴があいているし、テラスになっている床からはなんと竹が生えている。飾ってある板には、井戸からでてくる恐ろしい顔の女が描かれていたり、首の長い女の人形に、舌を長く伸ばし裂けた穴から目が覗いている提灯まである。元の世界でよく知っている塗り壁、子泣き爺、砂かけ婆、猫の地縛霊や狛犬とか妖怪もいる。――これ、見た目は完全お化け屋敷だよな。
「なぁ、本当に武器屋なんだよな? この店」
「そうよ! 本当にいろんなアイデアが詰まった機能性の高い武器、防具を扱ってるの!」
メディの目がキラキラしている。
「クリス、いるー? お客さん連れてきたよ!」
俺達は妖怪を避けてドアが開いたままの店内にはいり、メディが店主を呼ぶ。店内はところどころにろうそくが灯っているがかなり薄暗い。
ズズッ――ズズズッ――、何か引きずるような音がする。音は奥のカウンターあたりか!? あ、手だ。カウンターの隅、すぐ下の床に手が落ちている。その手が少しずつ床を引っ掻いてズズッと動いていた。
手は、カウンターの影からでてきた、白い服、長い髪の人に繋がって、四つん這い姿の一角を支えている。ザッザッザッザッ――、ザッザッザッザッ――、ザッザッザッザッ――!! すごい速さで迫ってくる白い人影は、俺達までもう少しのところで立ち上がり手をのばしてきた!
「いらっしゃいませ~」
「やっほ~! クリス!」
――パァン! クリスと呼ばれた白服の人とメディがハイタッチする。
「あんたも相変わらずねー。クリスティナ」
エウリュアが呆れたように言う。知り合いかよ。
「うーん、反応いまいちだったねー。」とメディ。
「ありゃ、サ○コはこっちじゃ大ウケだったのに――」とクリスティナ。
「俺はこっちに来たばっかりだからな。ちなみにむこうの世界じゃ、サ○コはもう古い」と俺。
「え? こっち? むこう? ええーーー?」
クリスティナが目をひんむいて驚いていた。
やっぱり、こいつ――日本人だ。
よくよく話を聞くと、クリス――本名クリスティナは落人ではなくこの世界で生まれた人間だった。ただし記憶には、前世として向こうの世界で過ごした一生分が残っているそうだ。
「いやぁ、久々に日本人にあったわー。」
クリスティナはおもむろに白い服を脱いで、青いデニム生地の作業着のようなの格好になる。ウイッグだった黒髪をとると深緑色の髪を短めに切った、メディより少し上くらいの女の子が現れた。
「はじめまして、この店の店主兼製作者のクリスティナや」
関西弁――に変換されてるのか、この世界の言葉としては訛っているのだろう。とはいえ正しい関西弁とも違うような。魔道具の変な翻訳機能のせいだな。
「ノゾム=トキサカ。えーと、時逆 希望のほうがわかりやすいか」
「どっちでも大丈夫。よろしくなノゾム君。それで今日はどんな用事なん?」
一瞬、君呼びにびっくりしたが、よくよく考えると今の年齢、プラス、前世の年齢――「いま、何考えとる?」ニコニコ笑いながらクリスティナが言う。あ、目が笑ってねぇ。そんな若い姿になっても年齢はタブーですか。
「いえ、特に何にも――」
絶対、考え読まれたよな。
「もー、お兄ちゃん用の旅の武器と防具を揃えにきたんでしょ? ちゃんと考えてよ」
クリスティナの年齢のことをごまかしていたら、メディに突っ込まれた。あー、店主のいろいろですっかり目的忘れてたよ。
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