文芸部の小野塚眞緒は無口

風枝ちよ

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回復魔法のマオは無力

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はぁ、とマオは溜め息をついた。
今日こなしたクエストは町の公園の清掃、ギルド極東支部の壁の塗り直し、ソメラプッペの採取。はぁ、とまた溜め息。
マオは冒険者だ。一応。
なのに何故、冒険者らしからぬクエストばかりしているかというと、それは。

「勇者様だ!」「勇者様が帰ってきたぞ!」

門兵が叫ぶ。
マオの思考は、勇者様の帰還に遮られる。

「勇者様、お怪我は……」
「いい」

走り出たウサギ獣人を、勇者様が止める。

「でも、血が」
「返り血だ」

カッコいい、とごく自然に思う。

「あとは自分で治した」

そう。勇者様くらいの冒険者にもなると、大抵の怪我は自分で治してしまうのだ。

「寝る。道を開けろ」
「「「はっ!」」」

勇者様は馬に乗ったまま、極東支部の建物の中に入っていく。一人で。
勇者様はチームを作らない。いつも一人で行動して、モンスターを完全に討伐して帰ってくる。怪我も自分で治す。
なんでチーム作らないんだろう。

「おいマオ!」
「はいっ!」

極東支部部長補佐に呼ばれる。

「勇者様の世話でもしておけ」
「はい」
「どうせ何もできないんだからさ」

マオは勇者様の部屋に向かう。勇者様の部屋に行くのは初めてだ。



迷った。
マオはそもそも建物の中に入ったことなどない。宿舎に住んでるし依頼は来ないし入ったら怒られるし。案内図はないしそのくせ複雑だし。

「こんなところで何をしている」

言われて振り向くと、切れ長の目がマオを見下ろしていた。

「道に、迷ってて…」
「何処に行くのだ?」
「勇者様の部屋です」
「私が勇者と呼ばれているが」
「すみません!」
「謝ることはない」
「すみません…」
「だから謝らなくても良いと……。まあいい」

勇者様は何かを諦める。

「それで、私に何の用だ?」

用とかないんだけど。行けって言われただけだし。

「君は虐められているのか?」

え。いや、あの。

「用がないのなら帰れ」

勇者様こわい。

「と言いたいところだが、帰れば怒られるのだろう?」

よくわかってらっしゃる。

「とりあえず部屋に来い」



勇者様の部屋は異常に豪華だった。
扉に鍵がかかってるのがすごい。宿舎にそんな設備はない。

「座れ」

これ座っていいんですか。何このふわふわ。
座る。
…………。
……?!
ふおおおおおお!!
何これ何これすごい!
まるでお風呂に浸かっているかのように疲れが取れていく。
このまま寝てしまいそう……。

「おい」
「はいっ!」
「どうして私の部屋にいるんだ」

あなたが呼んだんじゃないですか。

「冗談だ」

冗談を真顔で言わないでください。

「君は、虐められているのか?」

その、あの。

「魔力が弱い、とかか?」
「それもあるんですけど、」
「回復系しか使えないのか」

なんでわかるんですか。

「見ればわかる」

そうですか。ついていけないので思考放棄。

「それで、強い冒険者は回復魔法が自分で使えるから必要とされてない、ということだな」

あの、勇者様。マオの心に抜けない棘が刺さっていくんですけど。
勇者様ってもう少し優しいイメージだったんですけど。

「そろそろ帰れ」

え。

「用は済んだだろう」

そうですが。でも。

「何か、此処にいなければならない理由でもあるのか?」

ありません。

「送ってやろうか?」

丁重にお断りした。



迷った。
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