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第4話
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土曜日。
デート。
隣同士の席で駒田と映画を観ている。
正直に言おう。
隣が気になって映画どころではない。
だって人生初だぞ?
彼女いない歴イコールで年齢だった俺に、彼女ができたんだぞ?
それも超絶可愛い後輩だぞ?
これが緊張せずにいられるかってんだ。
「この戦闘シーンは見所じゃのう」
駒田とは反対側に座っているおじいさんがボソッと言った。
グレーのコートを着ている。
夏寸前なのに暑くないですか?
ちなみに駒田は、文化祭で俺を見て好きになったらしい。
確か、ステージでライブやったんだっけな…
見てくれた人いたんだ。
「映画どうでした?」
俺たちは、映画の後昼飯を食べながら話している。
どうでした?って聞かれても、内容知らねーよ。
「え、あ、うん…面白かったよ」
「ですよね!特にクライマックスで主人公が言った台詞覚えてます?」
覚えているわけがない。
「『一生、俺は君のものだ』ですよ?かっこよくないですか?」
俺たちそんな恋愛映画見てたんだ。
「1回くらいは言われたいですね…」
一生、俺は君のものだ。
駒田は呟く。
「山下先輩はどこがよかったですか?」
うわどうしよう。
全然見てないだなんて言えない。
「戦闘シーンの迫力がパナかったな」
おじいさんが、こんなこと言ってた気がする。
でも恋愛映画に戦闘シーンって…
「私もそれ思いましたよ!あれでスタントなしって凄すぎますよね」
あるんかい!
どういう映画だよ。
駒田の「ちょっと散歩しませんか?」という提案で俺たちはぶらぶらしている。
さっきから、何か胸の奥がモヤモヤしている。
すずのことが、渡辺のことが引っかかっている。
この気持ちはなんだろう。
どうしました?とか大丈夫ですか?とか駒田が声をかけてくる。
なんでもない、大丈夫、と答える。
でも大丈夫ではない。
頭から離れない。
すずとのメール。
バカバカしい会話。
冷たい反応。
メールはこれで終わりという言葉。
渡辺の行動。
無理に明るくしようとした、震えた声。
涙。
なんなんだ、これ。
「…先輩?山下先輩?」
駒田が心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
「ん、ああ」
「足が止まってましたよ?具合が悪いんですか?」
「いや、考え事してたんだ」
「考え事、ですか?」
「うん…」
「もう、そういうのって非常識ですよ…」
「すまん!」
そういえばすずにもこうやって謝ったっけ。
「早く、私のこと好きになってくださいよ?」
好き。
その言葉で、俺は全てを理解する。
点と点が、線で繋がる。
ピースが1ミリのズレもなくぴったりとハマる。
今まで一つひとつの単語だったものが、物語として紡ぎ出される。
すずのメールの意味。
渡辺の涙の意味。
そして、俺のこの感情は。
恋だ。
デート。
隣同士の席で駒田と映画を観ている。
正直に言おう。
隣が気になって映画どころではない。
だって人生初だぞ?
彼女いない歴イコールで年齢だった俺に、彼女ができたんだぞ?
それも超絶可愛い後輩だぞ?
これが緊張せずにいられるかってんだ。
「この戦闘シーンは見所じゃのう」
駒田とは反対側に座っているおじいさんがボソッと言った。
グレーのコートを着ている。
夏寸前なのに暑くないですか?
ちなみに駒田は、文化祭で俺を見て好きになったらしい。
確か、ステージでライブやったんだっけな…
見てくれた人いたんだ。
「映画どうでした?」
俺たちは、映画の後昼飯を食べながら話している。
どうでした?って聞かれても、内容知らねーよ。
「え、あ、うん…面白かったよ」
「ですよね!特にクライマックスで主人公が言った台詞覚えてます?」
覚えているわけがない。
「『一生、俺は君のものだ』ですよ?かっこよくないですか?」
俺たちそんな恋愛映画見てたんだ。
「1回くらいは言われたいですね…」
一生、俺は君のものだ。
駒田は呟く。
「山下先輩はどこがよかったですか?」
うわどうしよう。
全然見てないだなんて言えない。
「戦闘シーンの迫力がパナかったな」
おじいさんが、こんなこと言ってた気がする。
でも恋愛映画に戦闘シーンって…
「私もそれ思いましたよ!あれでスタントなしって凄すぎますよね」
あるんかい!
どういう映画だよ。
駒田の「ちょっと散歩しませんか?」という提案で俺たちはぶらぶらしている。
さっきから、何か胸の奥がモヤモヤしている。
すずのことが、渡辺のことが引っかかっている。
この気持ちはなんだろう。
どうしました?とか大丈夫ですか?とか駒田が声をかけてくる。
なんでもない、大丈夫、と答える。
でも大丈夫ではない。
頭から離れない。
すずとのメール。
バカバカしい会話。
冷たい反応。
メールはこれで終わりという言葉。
渡辺の行動。
無理に明るくしようとした、震えた声。
涙。
なんなんだ、これ。
「…先輩?山下先輩?」
駒田が心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
「ん、ああ」
「足が止まってましたよ?具合が悪いんですか?」
「いや、考え事してたんだ」
「考え事、ですか?」
「うん…」
「もう、そういうのって非常識ですよ…」
「すまん!」
そういえばすずにもこうやって謝ったっけ。
「早く、私のこと好きになってくださいよ?」
好き。
その言葉で、俺は全てを理解する。
点と点が、線で繋がる。
ピースが1ミリのズレもなくぴったりとハマる。
今まで一つひとつの単語だったものが、物語として紡ぎ出される。
すずのメールの意味。
渡辺の涙の意味。
そして、俺のこの感情は。
恋だ。
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