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2.薬の効能
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村を出てから、1泊目の宿での事だ。
「ううん……」
真夜中に目が覚めた。
寝る努力をしたけれど、眠れない。
我慢できずに起き上がる。
夕方には涼しいと感じていたはずなのに、汗をかいていた。体が重い。
睡魔が強い一方で、妙に昂って眠れない。
「水でも飲んでこよう」
皆を起こさないよう部屋を抜け出し、宿の近くを流れる小さな川に手を浸した。火照った体に冷たい水が染み渡る。
しかし、部屋に戻っても、明るくなるまで眠れなかった。
※ ※ ※
「おい。おーいっ」
「……え? あ、なんだ?」
「薬草1束とってくれー」
「ああ、ごめん」
ボーっとしていた俺は、仲間の声に慌てて荷物を取り出す。
「大丈夫か? クマできてる」
「んー、昨日ぜんぜん眠れなくて」
「お前、あの村では色々あったしな。疲れたんだろ」
「うーん……そうかも」
薬草を手渡すと、彼女は微笑んで肩を叩き、踵を返した。
※ ※ ※
2日目の真夜中。
野宿だったが、先日と同じ時刻に目が覚めた。
「……お前が眠れないなんて珍しいな」
たまたま火の番をしていたのは、魔術師だった。
「う……、なんか変なんだよな。昨日もだったし」
「昨日も?」
思案顔で俺の顔を覗きこむ。
「もしかして、一昨日の感じと似てるか?」
「一昨日?」
「変態薬師の」
「……ああ」
言われて思い出す。
「そういえば、そうかもしれない」
気がつき、ゾッとする。もうすっかり抜けたと思っていたのに。
「あの呪文は、薬ではなく症状に対して作用するからな」
「薬は残ってるのか」
「そこまで効果が持続するなんて……もはや呪いだな」
「うげぇ」
「ともかく、ちょっと来い」
手招きに応じて寄っていくと、また背中を叩かれる。熱が少しずつひいていく。
穏やかに睡魔が増していった。
「そういえば、村で飲んだ薬って、3日は丸々持続したよな」
「そうだな。あれこそ本当に呪いの類じゃないかと思うが」
「なぁ、根本的にどうにかならないか?」
「俺は医者でも呪いの専門家でもないからな。対処療法しかない」
魔術師は無造作に火の中に木切れを加える。火の粉が小さく舞った。
俺は隣でガックリ肩を落とし、溜め息をつく。
その数秒後に大きな欠伸が出た。
「とりあえず、寝る……」
「ああ」
焚き火の世話をする魔術師を尻目に、俺は所定の位置に横になった。そして一瞬で眠りに落ちた。
「ううん……」
真夜中に目が覚めた。
寝る努力をしたけれど、眠れない。
我慢できずに起き上がる。
夕方には涼しいと感じていたはずなのに、汗をかいていた。体が重い。
睡魔が強い一方で、妙に昂って眠れない。
「水でも飲んでこよう」
皆を起こさないよう部屋を抜け出し、宿の近くを流れる小さな川に手を浸した。火照った体に冷たい水が染み渡る。
しかし、部屋に戻っても、明るくなるまで眠れなかった。
※ ※ ※
「おい。おーいっ」
「……え? あ、なんだ?」
「薬草1束とってくれー」
「ああ、ごめん」
ボーっとしていた俺は、仲間の声に慌てて荷物を取り出す。
「大丈夫か? クマできてる」
「んー、昨日ぜんぜん眠れなくて」
「お前、あの村では色々あったしな。疲れたんだろ」
「うーん……そうかも」
薬草を手渡すと、彼女は微笑んで肩を叩き、踵を返した。
※ ※ ※
2日目の真夜中。
野宿だったが、先日と同じ時刻に目が覚めた。
「……お前が眠れないなんて珍しいな」
たまたま火の番をしていたのは、魔術師だった。
「う……、なんか変なんだよな。昨日もだったし」
「昨日も?」
思案顔で俺の顔を覗きこむ。
「もしかして、一昨日の感じと似てるか?」
「一昨日?」
「変態薬師の」
「……ああ」
言われて思い出す。
「そういえば、そうかもしれない」
気がつき、ゾッとする。もうすっかり抜けたと思っていたのに。
「あの呪文は、薬ではなく症状に対して作用するからな」
「薬は残ってるのか」
「そこまで効果が持続するなんて……もはや呪いだな」
「うげぇ」
「ともかく、ちょっと来い」
手招きに応じて寄っていくと、また背中を叩かれる。熱が少しずつひいていく。
穏やかに睡魔が増していった。
「そういえば、村で飲んだ薬って、3日は丸々持続したよな」
「そうだな。あれこそ本当に呪いの類じゃないかと思うが」
「なぁ、根本的にどうにかならないか?」
「俺は医者でも呪いの専門家でもないからな。対処療法しかない」
魔術師は無造作に火の中に木切れを加える。火の粉が小さく舞った。
俺は隣でガックリ肩を落とし、溜め息をつく。
その数秒後に大きな欠伸が出た。
「とりあえず、寝る……」
「ああ」
焚き火の世話をする魔術師を尻目に、俺は所定の位置に横になった。そして一瞬で眠りに落ちた。
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