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1話

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(まぁ、彼女が言っていることは全て、彼女自身がやったことなんですけどね)

 ある日ルージュが数人の友人と一緒に学園の庭を歩いているとき、突然リラがやって来て目の前で自ら池に飛び込んだ。ゲーム内ではたしかに、悪役令嬢であるルージュがニールに近づくリラを嫉妬から池に突き落した。けれど、今回ルージュは何もしていない。しようともしなかった。
 ゆっくりと池から出たリラは笑みを浮かべてルージュを見ると、何も言うことなく走って行った。きっとそのときにニールの元へと向かい、突き落されたと言ったのだろう。目撃者は多かったので、あまり信じられてはいなかったけれどニールだけは信じていた。リラが言ったことは全て正しいと思っているのだから。

 彼女より長い付き合いのあるルージュのことはよく知っているはずなのに、ルージュを信じずにリラを信じる。

(恋をするとこうなるものなのかしら)

 ニールに気づかれないように小さく溜息を吐いた。
 目の前で勝手に転んだり、ルージュが挨拶をしても睨み返してきたのはリラ。自分がやったことを全てルージュのせいにしていたのだ。

「それを私がやったという証拠はあるのでしょうか?」
「リラが君がやったと言っているんだ。十分だろう」

 嘘をついている人物の言葉が証拠になるはずがない。けれど、ニールはそれが証拠だと言う。たとえ周りの人が違うと言っても、証拠だと言い切るだろう。

(やっぱりこうなるのね)

 呆れながら広間を少しだけ見上げる。広間に二階はないが、階段と通路がある。通路にはニールの父親であるディオース王国の国王が立っていた。卒業パーティーということもあり、邪魔にならないように様子を伺っていたのだろう。
 国王も少し呆れているようだが、何も言わずにニールを見つめているだけだった。どうやらあえて口出しはするつもりはないようだ。
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