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6話
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しおりを挟む「ねえ、ノワール」
すでにお風呂場に入っていて脱衣所にはいないだろうと考えていたようだが、ノワールは脱衣所で服を着ているところだった。拭くものがないため、髪からは水滴が滴っている。
上半身裸のノワールは、ルージュがタオルを持ってきた意味が分かったのかお礼を言って受け取った。
けれどルージュは今まで男性の裸を見たことがなかった。何も言わずに固まってしまう。そんな彼女を不思議がるノワールは、タオルで髪を拭きながら声をかけようとしたのか口を開いた。
状況を理解したのか、ルージュの顔が徐々に赤くなっていく。そして、突然ルージュの姿が消えてしまった。
しかし、先ほどまでルージュがいた場所に別の存在がいた。
「真っ白な赤い瞳をしたうさぎ……」
小さく呟くノワールの目は、驚きからか僅かに見開かれていた。その言葉から、ルージュは自分がうさぎになってしまったことに気がついたようだ。自分の足を黙って見つめている。
そして次に、先ほどよりも大きく見えるノワールを見上げた。
「お前、ルージュだよな?」
驚きを隠せない様子のノワールは、タオルから手を離してルージュに向けて声をかける。するとうさぎに姿を変えたルージュから、小さな悲鳴のような声が聞こえた。
『うさぎ!?』
冷静に考えてみると、人間がうさぎになるなんておかしい。ルージュは変身魔法を使うことができないのだ。もしも変身魔法を使うことができれば、おかしいことはなかった。しかし、使えないのだからどうしてうさぎになったのかも分からない。
驚きのあまり悲鳴に似た叫び声が出たが、どうやらノワールには伝わらなかったようで僅かに首を傾げているだけだった。
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