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8話
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しおりを挟む心底理解できないと言うように呟くおばさんは、リラを睨みつけるように一度見ただけですぐに目を逸らした。もしかすると、視界にすら入れたくないのかもしれない。
リラは、周囲からの評判がよくないということが分からないのだろうか。王子の婚約者となったのなら、態度を気にするはずなのにリラには気にしている様子もない。
ルージュは婚約者として周囲から認識されたとき、どのように見えているのかと不安になっていた。しかし、リラにはそのような様子はない。まるで気にする必要がないかのようだ。
「いろいろと凄い子だね」
そう言って目を細めたノワールは、近くを通りすぎるリラと目が合わないように体をおばさんへと向けた。体の向きを変える瞬間、ルージュはリラと目が合ったような気がした。
まるで睨みつけるような鋭い目で彼女を見ていた。それは気のせいだったのかもしれないが、ルージュの体が震えだして止めることができなくなっていた。
「大丈夫だ」
優しく頭を撫でながら、小さく声をかけるノワールをルージュは見上げた。すると、とても優しい顔をしていた。彼女にだけ聞こえる声で「心配するな。俺が守るから」と言いながら、リラが通りすぎて震えが収まるまで撫でていた。
その言葉を聞いたのは二度目だったが、ノワールは本気でその言葉を口にしているのだろう。そうでなければ、同じ言葉を口にはしないだろう。
リラが通りすぎる。そして再度戻ってくる。覗く店の商品を馬鹿にしながら笑う様子は、どこからどう見ても王子の婚約者には見えない。
ただの我儘娘のようだった。
中にはリラを相手にしていない人もいるが、それについて気にせず商品を馬鹿にしていく。たとえ馬鹿にされているとしても、リラとは関わりたくないのだろう。
そして突然、リラはノワールの隣に並んだ。
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