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9話

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 ノワールはルージュとは違い、帰る場所がある。ずっとここにいるわけではないことは分かっている。それでも怖かったのだ。
 誰もついて来ていないことをノワールが確認しながら戻って来たのだが、魔法の効果が封じ込められた魔法道具を使って姿を消してついて来ていた可能性もある。その場合は、使用者の姿を確認することができないのでついて来ていることにも気がつくはずができない。
 もしもついて来ていたら場所がバレただけではなく、ルージュがうさぎになっていたことも知られてしまっただろう。
 けれど、彼女にはノワールを引き留めることができない。ときどきここを使っていただけのノワールには、帰る場所がある。きっと家族もいる。もしかすると今頃、姿が見えないノワールを家族は心配しているかもしれない。

「そうよね。家族も心配しているわよね」
「よくあることだから家族は心配もしなくなったな」

 苦笑して言うほど家を抜け出しているのだろう。家族は何度も心配をかけて無事に戻ってくるノワールを見て、必ず戻ってくると分かっているのかもしれない。
 長く帰らなければ流石に心配をかけるからと今は戻るのだろう。もしかすると他にも理由があるのかもしれないが、ルージュは何も尋ねることはしなかった。

「いいか、俺が出たら必ず鍵をかけること。誰が来ても出るなよ」
「分かったわ」

 少し強めに言うノワールに、ルージュは大きく頷いた。こんなところに人が来たとしても、警戒して扉を開けようとは思わないだろう。無理矢理侵入されない限りは、ログハウス内は安全だ。
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