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第85話 キリング・フィールド
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私の手から放たれたドラゴン・プレッシャーは空気を切裂き鋭く高速で飛んでいく。
大剣の気配を感じた手前の敵兵たちが振り返る。
それに驚き、ある者は飛び退き、ある者はうしろに倒れるように尻餅をつき、その刃から身を守ろうとする。
エシュリンたちを包囲していた敵兵の陣形がくずれ、彼女らを視認できるようになった。
ドラゴン・プレッシャーはさらに飛び続け、エシュリンたちの頭上を超え、その奥の地面に突き刺さり、勢いよく土や草花を巻き上がらせる。
「ひっ」
「きゃっ」
「なっ」
と、エシュリンたちが身をすくめ、固く目をつむる。
「ふふっ……」
と、私は首にかけていたネックレスを手に取り、くるくると回しながら、ゆっくりとやつらに歩み寄る。
マットブラックの鎧の男たち、不死の軍隊の連中が無言で静かに私の行動を注視する。
「気味の悪い連中だ……」
さらに、ネックレスの回転速度を上げていく。
そして、やつらの数メートル手前で、思いっきりネックレスを上空に放り投げる。
バケツヘルムを被っているから確認出来ないけど、おそらく、無意識でネックレスの動きを目で追ったはず。
私はそのタイミングを見逃さず、姿勢を限界まで沈め、弾けるように地面を蹴り、エシュリンたちに向かって走りだす。
やはり、やつらは無反応、ネックレスに気を取られている。
不死の軍隊の連中の横を地面すれすれ、鼻が草花に触れる低さで駆け抜ける。
「な、ナビー!?」
ここで初めて、エシュリンが私だと気付く。
「伏せろ!」
と、彼女に指示を出すと、すぐさまエシュリンは二人の頭を押さえて、しゃがむ姿勢を取ってくれる。
それを確認して上体を上げ、そのまま飛び上がり、上空を舞いエシュリンたちを飛び越えていく。
「このぉおお!!」
と、その先の地面に突き刺さっているドランゴ・プレッシャーの柄をキャッチ、それを基点にして回転、さらにその先にいた敵兵に思いっきりドロップキックを食らわす。
ゴガンッ、と云う音とともに、蹴られた敵兵が吹き飛ぶ。
そのままさらに回転、身体が手前側に来た瞬間に片手を放し、その手を伸ばす。
すると、その手の指にチェーンがひっかかる。
そう、先程投げたネックレスが落ちてきたのだ。
「よし」
ネックレスを手にしたことにより、ドラゴン・プレッシャーの重量が消え、その瞬間に大剣がいとも簡単に地面から抜ける。
抜けた勢いで手前側、エシュリンたちの隣まで飛び、そこに着地。
着地は三点着地、その勢いのままドラゴン・プレッシャーを振り上げ、そして、膝立ちになり、再度、大剣を振り下ろし斜めに地面に突き立てる。
「ふぅ……」
と、ドラゴン・プレッシャーの柄から手を放す。
「な、ナビー、ぷーん! ナビー、ぷーん!」
エシュリンが抱きついてくる。
「ナビー、ぷーん、ナビー、ぷーん……」
彼女の大粒の涙を流して泣きじゃくる。
「おお、よし、よし……」
と、彼女の亜麻色の髪を撫でてやる。
「おいで」
少し離れたところいるリジェンとシュナンに手を広げてこっちにくるように促す。
「こっち、こっち」
と、エシュリンとは反対側にくるように言う。
「はい、ぷーん……」
二人は言われた通りに四つん這いで私のそばまで来てしがみつく。
「うん、いい子だ」
と、三人を両手に抱え、交互にその顔を見やる。
「あ、あれ、どこかで会ったことあるよね?」
リジェンとシュナンの顔を見る。
年の頃は、妹のほうが小学校低学年くらい、姉のほうは、私と同じ、小学校高学年くらい。
二人とも、黒い髪、黒い瞳、少し彫りの深い目鼻立ちの女の子たちだ。
「あ、はい……、あの、以前に、氷のお菓子をいただきました……」
か細い声で姉のほうが話す。
「ああ!」
思い出した!
そうそう、お金がなくて、妹の分しか洋ナシのお菓子を買えなかったんだよね。
で、そこで私が登場、姉のほうにもプレゼントしてあげたの。
うん、すごく喜んでた。
「そっか、そっか、あの時の子たちかぁ」
と、二人の頭を交互に撫でてやる。
「えへへ……」
妹のほうが気持ちよさそうに目を細める。
「貴様は……、名は……?」
正面の敵、その一団の中央にいる奴からの問いかけだ。
「うん?」
中央の敵を見据える。
マットブラックの鎧にバケツヘルム……、他のやつとまったく同じ装備のやつだ。
「名を、聞いている……」
再度尋ねてきた。
「おまえが先に名乗れ、バーカ」
と、返してやる。
「それは失礼した……」
そう言うと、やつはバケツヘルムに手をかけ、それを取る。
ヘルムを脱ぐとバサっと長い髪が広がる。
色はシルバーというより、グレーって感じの色合い。
「私は帝国軍、東方辺境方面軍、第四特務部隊隊長、不死者マジョーライ」
その顔は美しく、白い肌、瞳は暗く冷たい印象、風になびくグレーの髪もどこか悲しげ。
ああ、こいつが不死者マジョーライか……、確かに死んでるみたいな顔してるね……。
「こちらは名乗った……、そちらの名は……?」
ちょっと考えてから口を開く。
「おまえに名乗る名などないわ!」
と、怒鳴りつけてやる。
「そうか、殺す前に聞いておきたかったが……、残念だ……、やれ!」
マジョーライが手を振り、部下たちに指示を出す。
やつの指示を受け、一人の大柄な兵士がのっそのっそと、こちらに歩み寄り、そして、その手にした戦斧を大きく振り上げる。
「ナビー、ぷーん!」
「きゃっ」
「お姉ちゃん!」
と、三人が身をこわばらせて私にしがみつく。
私は両膝立ちから足を一歩踏み出すようにして片膝立ちに変える。
「一人だけが近寄り、無造作に武器を振り上げる……、子供相手になめている、見下している……、そう思わせたいんだよね……?」
おまえらは最初から私をなめちゃいないよ。
ドラゴン・プレッシャーの柄をつかみ、一気に真上に引き上げる。
その剣先が戦斧を振り上げた敵兵の鼻先をかすめる。
そう、この大剣でも届かない、つまり、間合いの外、一歩手前で戦斧を振り上げた。
私たちを殺す気なんてないんだよ、こいつは……。
本命は……。
振り上げられたドラゴン・プレッシャーは真上、頂点に達する。
しかし、そこでも止まらない、勢いはそのままでうしろに振り下ろされる。
見なくても手ごたえを感じる、おそらく後方から飛び込んできたやつの鎧を肩口から切裂いた。
鎧が切裂かれる音とそいつが地面に叩き付けられる音と、さらに、ドラゴン・プレッシャーが地面に突き刺さる音が同時に響き渡る。
「やっぱりね……」
このタイミングだよね、一流の戦士ならば……。
笑いが込み上げてくる。
「ば、ばけものっ」
と、正面の敵兵が足を一歩踏み出し、振り上げた戦斧を振り下ろす。
けど、そこはもう私の間合いなんだよ。
振り下ろす、その戦斧のさらにその上からドラゴン・プレッシャーを振り下ろす。
振り下ろされた大剣は戦斧ごと敵兵の身体を叩き斬り、そのままの勢いで地面に強烈に叩きつける。
轟音とともに、叩きつけられた敵兵を中心に衝撃波と砂煙が放射状に広がる。
ドラゴン・プレッシャーもまた、地面に斜めに突き刺さる。
私はその柄から手を放す。
常に持ったままだと、ネックレスが熱くなっちゃうからね。
「な、なんだ、今のは……、夢でも見ているのか……」
と、マジョーライは驚愕の表情を浮かべる。
「くっ……、同時に行け、あの大剣だ、小回りはきかんだろ!」
まぁ、いい判断だよね……。
だけど……。
敵の飛び込みと同時に大剣を右手で引き抜き、横に払う。
「ぐえっ」
と、大剣を脇腹に受けた敵兵が吹き飛ぶ。
ドラゴン・プレッシャーが半周し、今度は左手に持ち変えて返す刀で逆回転。
「うごっ」
さっきと同じように脇腹にヒット、鎧がひしゃげ吹き飛ばされていく。
「今の、同時じゃなかったよね?」
そう、マジョーライは同時に行けと言った、でも、実際には時差があって撃退することが出来た。
「人間はさ、隙がないと一瞬躊躇してしまうんだよね、逆に隙だらけだと思わず飛び出してしまう」
さっきの二人がそれ、本人たちは同時に襲いかかったつもりだろうけど、片方は隙がなく躊躇し、もう片方は好機と思って加速した、その結果が今の時差。
「くっ、くそっ……、行け、行け、全員でかかれ!」
と、マジョーライが大声で指示を出す。
「うおおおおおおおおっ!!」
「うごおおおおおおおっ!!」
「ごらぁああああああっ!!」
やつらが雄叫びを上げて襲いくる。
「何回やっても同じこと、これは破れない……」
飛び上がって襲ってくるやつには、下から振り上げ、後ろに通し、半円を描くような軌道で振り回す、そして、返す刀で後ろから前へ振り下ろす。
低い姿勢で間合いを詰めてくるやつには、横から横、右から左に大剣を回す、そして、左から右に返す。
当然に斜めにも回す。
ドラゴン・プレッシャーは常に私を中心に半円を描き続ける。
ちなみに、一振り、一振りごとに大剣を地面に突き立て柄から手を放している、ネックレスが超熱くなっているからね。
そのための片膝足立ちだけど、それ以上に、エシュリンたちが私の腰のあたりにしがみついていてバランスが取りやすかった。
「ぐおおおおおおおおっ!!」
「ごらぁああああああっ!!」
右から左、前から後ろ、と、大剣を振り回し、敵を叩き落としていく。
「どうした!? なぜ、バラバラに飛び込む、同時に行け!!」
マジョーライはそう叫ぶけど、どうしても同時に飛び込めないんだよね。
わずかな目の動き、肩の動き、呼吸、フェイクとフェイントを織り交ぜて飛び込むタイミングを誘導していく。
全方位剣防御、キリング・フィールド。
おまえらには破れない。
おまえらは焚き火に飛び込む蚊も同じ。
大剣の気配を感じた手前の敵兵たちが振り返る。
それに驚き、ある者は飛び退き、ある者はうしろに倒れるように尻餅をつき、その刃から身を守ろうとする。
エシュリンたちを包囲していた敵兵の陣形がくずれ、彼女らを視認できるようになった。
ドラゴン・プレッシャーはさらに飛び続け、エシュリンたちの頭上を超え、その奥の地面に突き刺さり、勢いよく土や草花を巻き上がらせる。
「ひっ」
「きゃっ」
「なっ」
と、エシュリンたちが身をすくめ、固く目をつむる。
「ふふっ……」
と、私は首にかけていたネックレスを手に取り、くるくると回しながら、ゆっくりとやつらに歩み寄る。
マットブラックの鎧の男たち、不死の軍隊の連中が無言で静かに私の行動を注視する。
「気味の悪い連中だ……」
さらに、ネックレスの回転速度を上げていく。
そして、やつらの数メートル手前で、思いっきりネックレスを上空に放り投げる。
バケツヘルムを被っているから確認出来ないけど、おそらく、無意識でネックレスの動きを目で追ったはず。
私はそのタイミングを見逃さず、姿勢を限界まで沈め、弾けるように地面を蹴り、エシュリンたちに向かって走りだす。
やはり、やつらは無反応、ネックレスに気を取られている。
不死の軍隊の連中の横を地面すれすれ、鼻が草花に触れる低さで駆け抜ける。
「な、ナビー!?」
ここで初めて、エシュリンが私だと気付く。
「伏せろ!」
と、彼女に指示を出すと、すぐさまエシュリンは二人の頭を押さえて、しゃがむ姿勢を取ってくれる。
それを確認して上体を上げ、そのまま飛び上がり、上空を舞いエシュリンたちを飛び越えていく。
「このぉおお!!」
と、その先の地面に突き刺さっているドランゴ・プレッシャーの柄をキャッチ、それを基点にして回転、さらにその先にいた敵兵に思いっきりドロップキックを食らわす。
ゴガンッ、と云う音とともに、蹴られた敵兵が吹き飛ぶ。
そのままさらに回転、身体が手前側に来た瞬間に片手を放し、その手を伸ばす。
すると、その手の指にチェーンがひっかかる。
そう、先程投げたネックレスが落ちてきたのだ。
「よし」
ネックレスを手にしたことにより、ドラゴン・プレッシャーの重量が消え、その瞬間に大剣がいとも簡単に地面から抜ける。
抜けた勢いで手前側、エシュリンたちの隣まで飛び、そこに着地。
着地は三点着地、その勢いのままドラゴン・プレッシャーを振り上げ、そして、膝立ちになり、再度、大剣を振り下ろし斜めに地面に突き立てる。
「ふぅ……」
と、ドラゴン・プレッシャーの柄から手を放す。
「な、ナビー、ぷーん! ナビー、ぷーん!」
エシュリンが抱きついてくる。
「ナビー、ぷーん、ナビー、ぷーん……」
彼女の大粒の涙を流して泣きじゃくる。
「おお、よし、よし……」
と、彼女の亜麻色の髪を撫でてやる。
「おいで」
少し離れたところいるリジェンとシュナンに手を広げてこっちにくるように促す。
「こっち、こっち」
と、エシュリンとは反対側にくるように言う。
「はい、ぷーん……」
二人は言われた通りに四つん這いで私のそばまで来てしがみつく。
「うん、いい子だ」
と、三人を両手に抱え、交互にその顔を見やる。
「あ、あれ、どこかで会ったことあるよね?」
リジェンとシュナンの顔を見る。
年の頃は、妹のほうが小学校低学年くらい、姉のほうは、私と同じ、小学校高学年くらい。
二人とも、黒い髪、黒い瞳、少し彫りの深い目鼻立ちの女の子たちだ。
「あ、はい……、あの、以前に、氷のお菓子をいただきました……」
か細い声で姉のほうが話す。
「ああ!」
思い出した!
そうそう、お金がなくて、妹の分しか洋ナシのお菓子を買えなかったんだよね。
で、そこで私が登場、姉のほうにもプレゼントしてあげたの。
うん、すごく喜んでた。
「そっか、そっか、あの時の子たちかぁ」
と、二人の頭を交互に撫でてやる。
「えへへ……」
妹のほうが気持ちよさそうに目を細める。
「貴様は……、名は……?」
正面の敵、その一団の中央にいる奴からの問いかけだ。
「うん?」
中央の敵を見据える。
マットブラックの鎧にバケツヘルム……、他のやつとまったく同じ装備のやつだ。
「名を、聞いている……」
再度尋ねてきた。
「おまえが先に名乗れ、バーカ」
と、返してやる。
「それは失礼した……」
そう言うと、やつはバケツヘルムに手をかけ、それを取る。
ヘルムを脱ぐとバサっと長い髪が広がる。
色はシルバーというより、グレーって感じの色合い。
「私は帝国軍、東方辺境方面軍、第四特務部隊隊長、不死者マジョーライ」
その顔は美しく、白い肌、瞳は暗く冷たい印象、風になびくグレーの髪もどこか悲しげ。
ああ、こいつが不死者マジョーライか……、確かに死んでるみたいな顔してるね……。
「こちらは名乗った……、そちらの名は……?」
ちょっと考えてから口を開く。
「おまえに名乗る名などないわ!」
と、怒鳴りつけてやる。
「そうか、殺す前に聞いておきたかったが……、残念だ……、やれ!」
マジョーライが手を振り、部下たちに指示を出す。
やつの指示を受け、一人の大柄な兵士がのっそのっそと、こちらに歩み寄り、そして、その手にした戦斧を大きく振り上げる。
「ナビー、ぷーん!」
「きゃっ」
「お姉ちゃん!」
と、三人が身をこわばらせて私にしがみつく。
私は両膝立ちから足を一歩踏み出すようにして片膝立ちに変える。
「一人だけが近寄り、無造作に武器を振り上げる……、子供相手になめている、見下している……、そう思わせたいんだよね……?」
おまえらは最初から私をなめちゃいないよ。
ドラゴン・プレッシャーの柄をつかみ、一気に真上に引き上げる。
その剣先が戦斧を振り上げた敵兵の鼻先をかすめる。
そう、この大剣でも届かない、つまり、間合いの外、一歩手前で戦斧を振り上げた。
私たちを殺す気なんてないんだよ、こいつは……。
本命は……。
振り上げられたドラゴン・プレッシャーは真上、頂点に達する。
しかし、そこでも止まらない、勢いはそのままでうしろに振り下ろされる。
見なくても手ごたえを感じる、おそらく後方から飛び込んできたやつの鎧を肩口から切裂いた。
鎧が切裂かれる音とそいつが地面に叩き付けられる音と、さらに、ドラゴン・プレッシャーが地面に突き刺さる音が同時に響き渡る。
「やっぱりね……」
このタイミングだよね、一流の戦士ならば……。
笑いが込み上げてくる。
「ば、ばけものっ」
と、正面の敵兵が足を一歩踏み出し、振り上げた戦斧を振り下ろす。
けど、そこはもう私の間合いなんだよ。
振り下ろす、その戦斧のさらにその上からドラゴン・プレッシャーを振り下ろす。
振り下ろされた大剣は戦斧ごと敵兵の身体を叩き斬り、そのままの勢いで地面に強烈に叩きつける。
轟音とともに、叩きつけられた敵兵を中心に衝撃波と砂煙が放射状に広がる。
ドラゴン・プレッシャーもまた、地面に斜めに突き刺さる。
私はその柄から手を放す。
常に持ったままだと、ネックレスが熱くなっちゃうからね。
「な、なんだ、今のは……、夢でも見ているのか……」
と、マジョーライは驚愕の表情を浮かべる。
「くっ……、同時に行け、あの大剣だ、小回りはきかんだろ!」
まぁ、いい判断だよね……。
だけど……。
敵の飛び込みと同時に大剣を右手で引き抜き、横に払う。
「ぐえっ」
と、大剣を脇腹に受けた敵兵が吹き飛ぶ。
ドラゴン・プレッシャーが半周し、今度は左手に持ち変えて返す刀で逆回転。
「うごっ」
さっきと同じように脇腹にヒット、鎧がひしゃげ吹き飛ばされていく。
「今の、同時じゃなかったよね?」
そう、マジョーライは同時に行けと言った、でも、実際には時差があって撃退することが出来た。
「人間はさ、隙がないと一瞬躊躇してしまうんだよね、逆に隙だらけだと思わず飛び出してしまう」
さっきの二人がそれ、本人たちは同時に襲いかかったつもりだろうけど、片方は隙がなく躊躇し、もう片方は好機と思って加速した、その結果が今の時差。
「くっ、くそっ……、行け、行け、全員でかかれ!」
と、マジョーライが大声で指示を出す。
「うおおおおおおおおっ!!」
「うごおおおおおおおっ!!」
「ごらぁああああああっ!!」
やつらが雄叫びを上げて襲いくる。
「何回やっても同じこと、これは破れない……」
飛び上がって襲ってくるやつには、下から振り上げ、後ろに通し、半円を描くような軌道で振り回す、そして、返す刀で後ろから前へ振り下ろす。
低い姿勢で間合いを詰めてくるやつには、横から横、右から左に大剣を回す、そして、左から右に返す。
当然に斜めにも回す。
ドラゴン・プレッシャーは常に私を中心に半円を描き続ける。
ちなみに、一振り、一振りごとに大剣を地面に突き立て柄から手を放している、ネックレスが超熱くなっているからね。
そのための片膝足立ちだけど、それ以上に、エシュリンたちが私の腰のあたりにしがみついていてバランスが取りやすかった。
「ぐおおおおおおおおっ!!」
「ごらぁああああああっ!!」
右から左、前から後ろ、と、大剣を振り回し、敵を叩き落としていく。
「どうした!? なぜ、バラバラに飛び込む、同時に行け!!」
マジョーライはそう叫ぶけど、どうしても同時に飛び込めないんだよね。
わずかな目の動き、肩の動き、呼吸、フェイクとフェイントを織り交ぜて飛び込むタイミングを誘導していく。
全方位剣防御、キリング・フィールド。
おまえらには破れない。
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