がんばり屋の森本くん

しお子

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二がんばり目~ドSコンビの同級生~

第4話 問題児登場

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「おはよー空汰」


「おはよ!」


教室で水野と顔をあわせると、いつもより上機嫌に挨拶する森本。


「その顔、まさか先輩入部してくれたのか?」


「うん!」


「マジかよ!俺ぜってー無理だと思ってたのに」


「へへ、がんばりました」


「どんなマジック使ったんだ?」


「え、教えない」


ふと問いかけられた疑問に困惑しつつ、さすがにがんばった内容を教えることは出来ないとそっぽを向く。

水野はそんな様子に納得いかず頬をつねった。


「あー!なんだよそれ教えろよ!」


「いひゃいー!
…もう絶対教えないから」


痛みに耐え兼ねて手を払いのけ、じんじんと熱を持った頬を撫でながら睨む。

それを見て聞くのを諦めた水野は、バスケ部の人数を指折り数え始めた。


「ちぇ、まぁまず一人目。あと三人か…次はどうするつもりなんだ?」


「うーん…考え中」


「………そんなんで集まんのかよ…」


やる気のわりには無計画な思考に少し呆れてしまう水野だった。


ーーー


放課後となり、今日はボランティア活動がないので仮バスケ部活動に励もうと森本は第二体育館にいた。そこに菊地が至極怠そうに入ってくる。


「あー先輩やっと来た!」


「ふぁ…眠いよ森本くん…何してんのー?」


何やら倉庫から取り出しているのをあくびをしながら覗くと、それは埃が被り空気が大分甘くなったバスケットボールだった。


「夕方の4時ですよ。ボール磨いてあげようと思ったんですけど…」


「ボランティア無い日は即帰宅、即寝してたからねぇ。
ふーん、ボールも磨いたりするんだ。でもこれべこべこじゃん、磨くどころじゃ無さそうだけど」


菊地は遊ぶように床で弾いてみたが、全く手に戻ってこず他のボールも確かめるように揉んでみる。


「そうなんですよね…。
そうだ、バレー部ありましたよね?空気入れ借りてきます!先輩は磨けそうなボール磨いておいてくださいね」


一応とはいえ入部してもらったからには働いてもらおうとしっかり指示し、バレー部が活動している第一体育館へ向かった。


「えー」


不満を言う暇もなく取り残されてしまい、仕方なく森本が用意したであろう雑巾でボール磨きをゆっくり開始するのだった。



「すいませーん、空気入れ借りたいんですけど…」


少し長い渡り廊下で繋がっている第一体育館へ着くと、バレー部はそれなりの部員数で練習をしていた。

顧問を見つけると邪魔にならないよう小走りで近づき声をかけた瞬間。


「いい加減にしてくれ!!」


叫ぶような声が響いた。

静まり返る体育館内に注目を浴びる二人の男子。
片方は黒髪でスポーツをする者には相応しい爽やかな短髪で、バレー部のジャージを着ている。
もう一方は少し長目の金髪で、制服を着崩しているいわゆる不良だった。

叫んだのは好青年のようだ。


「俺たちはバレーの練習をしているんだ!
ボールで人を傷付けるなと何度言わせたら気が済む!?
お前一人のせいで大事な部員が怪我をしてバレーが出来なくなったらどうする!
バレーだけじゃない、お前なんかにスポーツをやる資格はない!!」


恐らく今までずっと我慢していたであろう不満を一気に捲し立てていた。
殴りかからないのが不思議なくらい怒りで頭がいっぱいのようだったが、それを心底うんざりとした表情で聞いていた不良は持っていたバレーボールを激しい音を立てて床に叩きつける。


「るっせー…そんな下手くそ、いようがいまいが変わんねーだろ?
潰したからどうだっていうんだよ、戦力外の奴にはそれなりの使い方があんだろ?
逃げ回るまととかさぁ。なぁ佐々木?」


楽しそうだが悪い笑顔でぎりぎりとネットを握り、向こう側で縮こまっている佐々木と呼ばれた部員に脅すように問いかけた。


「こ、虎谷こたにくん…僕、もう嫌だ!助けて瀬川せがわ先輩っ」


勇気を出して言った佐々木だが、虎谷の視線から逃れるように瀬川の元へ走り影に隠れた。
瀬川の方は怒りは少しも無くなっていないようだったが、冷静さを取り戻している。


「佐々木、今まで無理させてすまないな。
そういうことだ、次は俺が相手になってやる」


そのセリフを聞き、挑戦的な笑みを浮かべながらボールを持ち出す虎谷。


「いいんですか?先輩。あんたになら手加減しないぜ」


「やめろ!
何してんだお前らは…虎谷、悪いがもう退部してくれないか。
この学校で唯一屋内スポーツとして結果を残してきたバレー部なんだ、活動停止にでもなったら廃部の可能性だってあり得る。
それにお前のせいで辞めた二人が戻ってきたいと言っている。…お前がいなければな」


さすがに仲裁に入ったのは顧問の教師。
入部してからの短期間で様々な問題を起こしていた虎谷に、あっさりと退部を言い渡した。


「…つまんねーの」


それを聞き興味をなくしたように呟くと、顧問に向かって思い切りボールを投げつけた。
しかし顧問が驚いて尻餅をついたせいで、運悪く近くにいた森本の顔面に当たってしまう。


「っ!?たっー!」


「おい、虎谷!!君、大丈夫か?すまない…とりあえず保健室に」


幸い血は出なかったものの、相当の痛みに座り込んで耐えていると瀬川が駆け寄って声をかけてくれた。
しかし森本は立ち上がり、既に出ていってしまった虎谷を追いかけて行くのだった。



「ねぇ!虎谷、くん?」


歩いている虎谷を見つけるのは簡単だった。
名前を確認するよう呼んでみて、相手の様子を伺う。


「なんだよ?文句でも言いに来たのか?」


一瞬森本が誰か分かっていない様子だったが、顔が赤くなっているのを見て先程ぶつけた奴だと認識したようだ。
そして本気で投げたボールを食らってももろともせず、走って追いかけてきた森本に驚きつつ虎谷は喧嘩腰だ。


「バレー部辞めるなら、バスケ部入らない?」


「は?」


「バレーを好きで入ってた訳じゃないなら、バスケやらない?楽しいよ!」


藁をもすがる思いでいる森本は、どんな小さなチャンスでも逃したくなかった。

しかし先ほどのやりとりを見ていたにも関わらず、そんなことを言い出す森本に対し不信感を抱いていた。


「なんだお前?
こんなちっせー体でスポーツなんか出来んのかよ」


「出来るよ!
でも、虎谷くんだったら俺よりきっとすごい選手になれるんじゃないかなぁ」


森本は警戒心なく虎谷に近づき、菊地より身長はないものの筋肉のありそうな体に羨望の眼差しを向けた。

そんな態度が気に食わなかったのか、虎谷はいきなり胸ぐらを掴み壁に押し付け言う。


「てめーみたいに呑気な奴が一番腹立つんだよ…。
大事な体、壊してやろうか?」


突然のことに頭が追い付いていない森本は、なんの抵抗も出来ず手首を掴まれる。


「虎谷、くん…?」


ギリギリと力を込められ、このままでは本当に暴力沙汰になってしまうと考えていた矢先、遠くから誰かがやってくる。


「おーい!」


声の主は瀬川だった。
それを見た虎谷は舌打ちをしながら去っていった。


「っ!けほっ」


手荒く解放されたため少しむせていると、虎谷の姿はもうなかった。
代わりにそばに駆け寄ってきた瀬川は、森本の様子を見て心配そうに背中を撫でてやる。


「大丈夫か?
まさか、虎谷に何かされたのか?」


「違います!ちょっと走ったらむせただけで」


「そうか…
空気入れ借りにきたんだろ?これ」


不安要素はあるが本人が否定している以上何も言えず、
追いかけてきた用件の物を渡した。


「あ、ありがとうございます!」


本来の目的を忘れて飛び出してしまったのを反省し、とても人のいい瀬川にぺこぺこと頭を下げて感謝する。


「虎谷なんか追いかけてどうするつもりだったんだ?」


「いや、ちょっと…」


さすがに退部直後に勧誘したと言うのは忍びなく、つい濁してしまう森本。


「? あとそれ古い空気入れだから返さなくていいって。」


「ほんとですか!めちゃくちゃありがたいです!」


「あぁ。もし体調不良とかになったら、ちゃんと言うんだぞ」


ボールを顔面に受けてたこともあり、優しく森本の髪をすくとよく言い聞かせた。


「はーい!
じゃあ俺、あっちの体育館に行くので」


「気をつけてな。」

(なんだかほっとけない奴だな)


そんなことを考えながら瀬川は見送っていた。

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