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二がんばり目~ドSコンビの同級生~
第9話 鬼ごっこ
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特別授業のため、今日はいつもより早い下校時間だった。
森本はバスケの練習が出来ると意気揚々と帰り支度をしていたが、
虎谷からのメールに気づき肩を落とした。
『ここに来い』
とても淡白な内容と共に位置情報が添付されていた。
一緒に教室を出ようと声をかけに来た水野は、明らかにテンションが低くなった森本を見て顔を覗き込んだ。
「そーらた。どうしたんだよ」
「…虎谷くんからメール来た」
一瞬心配かけてしまう、と隠そうとしたが察しのいい水野のことなので見透かされると思い事実を言った。
「なるほど。…言われるって分かってると思うけど、無理すんなよ!」
この件に関して散々説教してきた水野。
ため息をつきながら森本の髪をぐしゃぐしゃにかき乱しながら言ってやった。
「~~っ、うん…」
自分の性格を理解した上で精一杯の優しさを見せてくれる水野に少し照れながら小さく頷いた。
ーーー
送られてきた位置情報は一昨年ほどに廃校となった学校だった。
そこへ向かうとすでに虎谷たちは到着していて、校庭のベンチでたむろしていた。
「おー、きたきたー!」
早川がいち早く気づきこちらに手招きしてくる。
4人の元へ行くと虎谷がおもむろに口を開いた。
「今から鬼ごっこをする」
「へ?」
突然の宣言につい首をかしげる森本。
「俺たち4人が鬼だ。鬼ごっこっつっても隠れ鬼の要領で、隠れてもいい。捕まったらそいつからペナルティーがある」
虎谷は淡々と説明していく。
つい色々突っ込みたくなるが虎谷に至ってはそんなことしたら手痛い罰が待っていることを、森本はペットを続けていくなかで学んでいた。
「ちなみに、制限時間は…?」
あくまでも受け入れる態度を見せながら質問した。
「一時間だ」
「一時間!?」
おそらく休憩なしの鬼ごっこ、しかも4人を相手にとなると相当キツイ。
見つかったらひたすら体力勝負になるかもしれない。
「俺たちは1分後に校舎に入る。どこに隠れても自由だが校内から出たら、ペット失格な」
さらに厳しい条件を追加しながら不敵な笑みを浮かべている虎谷。
挑発的な態度に反論しながら森本は校舎へ入っていった。
「絶対そんなことしない!」
なるべく遠くの教室を目指してとりあえず2階まで走り、隠れ場所を探すが一分はとても短い。
悠長に考えている暇などなく足音が聞こえてきた。
急いで近くの教室へ入り、ベタだが教卓の下へ身を潜める。
「おーい?…あれ?この教室だと思うんだけどなぁ」
足音の主は早川だった。
楽しそうな声で教室へ入ってくると、一番怪しい教卓を覗いた。
「見っけー!」
叫んだ瞬間、早川は教卓ごと押し退けられ体勢を崩す。
走って逃げるのを追いかけたが、スポーツをやっていて身軽な体の森本には追い付かない。
「うわ、はえー……森本見っけたー!」
早川の大声を聞いた虎谷は、声の方向から次に来そうな教室へ向かった。
黙って扉を開けて中に入り、机や椅子を容赦なく足蹴にして倒して探す。
「……いねぇな…」
森本はその言葉に安心して聞こえぬようほっと息をついた。
「なーんて間抜けなことしねぇよ」
窓からベランダへ出てきた虎谷に見つかってしまった。
ここで捕まったらよりによって虎谷から罰を受ける、と焦る森本。
周囲を見回し、1階の渡り廊下を見つけた。
教室へ逃げるとフェイントをかけ、渡り廊下の屋根へと飛び降りる。
瞬時に反応した虎谷は森本の肩を掴むも、上着を脱がれ逃げられてしまった。
予想外に動けることに驚きつつ、面白いものを見たように笑っていた。
「はは、すばしっこい奴」
「森本…!」
追い付かれるかもしれない恐怖心からひたすら走っていた森本の前に榎本が現れた。
榎本は捕まえる気はなかったかもしれないが、
逃げることに集中していたため、誰であろうと関係なく置いていった。
「はぁ、はぁっ…はぁぁ…」
外の非常階段へ抜けるととりあえず鍵を閉め、ここなら少しは安全だと思い気を緩めて息を整える。
さすがに疲れた体を休ませようと下の踊り場へ足音をなるべく消して向かうとそこに、望月がいた。
「空汰くん、みーつけた」
「っ!!」
森本はバスケの練習が出来ると意気揚々と帰り支度をしていたが、
虎谷からのメールに気づき肩を落とした。
『ここに来い』
とても淡白な内容と共に位置情報が添付されていた。
一緒に教室を出ようと声をかけに来た水野は、明らかにテンションが低くなった森本を見て顔を覗き込んだ。
「そーらた。どうしたんだよ」
「…虎谷くんからメール来た」
一瞬心配かけてしまう、と隠そうとしたが察しのいい水野のことなので見透かされると思い事実を言った。
「なるほど。…言われるって分かってると思うけど、無理すんなよ!」
この件に関して散々説教してきた水野。
ため息をつきながら森本の髪をぐしゃぐしゃにかき乱しながら言ってやった。
「~~っ、うん…」
自分の性格を理解した上で精一杯の優しさを見せてくれる水野に少し照れながら小さく頷いた。
ーーー
送られてきた位置情報は一昨年ほどに廃校となった学校だった。
そこへ向かうとすでに虎谷たちは到着していて、校庭のベンチでたむろしていた。
「おー、きたきたー!」
早川がいち早く気づきこちらに手招きしてくる。
4人の元へ行くと虎谷がおもむろに口を開いた。
「今から鬼ごっこをする」
「へ?」
突然の宣言につい首をかしげる森本。
「俺たち4人が鬼だ。鬼ごっこっつっても隠れ鬼の要領で、隠れてもいい。捕まったらそいつからペナルティーがある」
虎谷は淡々と説明していく。
つい色々突っ込みたくなるが虎谷に至ってはそんなことしたら手痛い罰が待っていることを、森本はペットを続けていくなかで学んでいた。
「ちなみに、制限時間は…?」
あくまでも受け入れる態度を見せながら質問した。
「一時間だ」
「一時間!?」
おそらく休憩なしの鬼ごっこ、しかも4人を相手にとなると相当キツイ。
見つかったらひたすら体力勝負になるかもしれない。
「俺たちは1分後に校舎に入る。どこに隠れても自由だが校内から出たら、ペット失格な」
さらに厳しい条件を追加しながら不敵な笑みを浮かべている虎谷。
挑発的な態度に反論しながら森本は校舎へ入っていった。
「絶対そんなことしない!」
なるべく遠くの教室を目指してとりあえず2階まで走り、隠れ場所を探すが一分はとても短い。
悠長に考えている暇などなく足音が聞こえてきた。
急いで近くの教室へ入り、ベタだが教卓の下へ身を潜める。
「おーい?…あれ?この教室だと思うんだけどなぁ」
足音の主は早川だった。
楽しそうな声で教室へ入ってくると、一番怪しい教卓を覗いた。
「見っけー!」
叫んだ瞬間、早川は教卓ごと押し退けられ体勢を崩す。
走って逃げるのを追いかけたが、スポーツをやっていて身軽な体の森本には追い付かない。
「うわ、はえー……森本見っけたー!」
早川の大声を聞いた虎谷は、声の方向から次に来そうな教室へ向かった。
黙って扉を開けて中に入り、机や椅子を容赦なく足蹴にして倒して探す。
「……いねぇな…」
森本はその言葉に安心して聞こえぬようほっと息をついた。
「なーんて間抜けなことしねぇよ」
窓からベランダへ出てきた虎谷に見つかってしまった。
ここで捕まったらよりによって虎谷から罰を受ける、と焦る森本。
周囲を見回し、1階の渡り廊下を見つけた。
教室へ逃げるとフェイントをかけ、渡り廊下の屋根へと飛び降りる。
瞬時に反応した虎谷は森本の肩を掴むも、上着を脱がれ逃げられてしまった。
予想外に動けることに驚きつつ、面白いものを見たように笑っていた。
「はは、すばしっこい奴」
「森本…!」
追い付かれるかもしれない恐怖心からひたすら走っていた森本の前に榎本が現れた。
榎本は捕まえる気はなかったかもしれないが、
逃げることに集中していたため、誰であろうと関係なく置いていった。
「はぁ、はぁっ…はぁぁ…」
外の非常階段へ抜けるととりあえず鍵を閉め、ここなら少しは安全だと思い気を緩めて息を整える。
さすがに疲れた体を休ませようと下の踊り場へ足音をなるべく消して向かうとそこに、望月がいた。
「空汰くん、みーつけた」
「っ!!」
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