がんばり屋の森本くん

しお子

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二がんばり目~ドSコンビの同級生~

第13話 暴走する愛情

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『もしー?そろそろ時間だけど、
 まさか空汰そらた逃げ切った?』

「あー、一緒にいるよ。
 俺たちが逃がすわけないっしょ」

電話の相手は早川だった。
森本はやっと自分が意識から外れたことに少し安堵あんどした。
腕がまだ縛られているため乱れた服を直すことは出来ない。

「早川か」

「そ。じゃあ帰ろっか、空汰くんも。」

のんきに話しかけながら、森本の服を整えてやる望月。
それすらもはじになることを分かっての行動だった。

「これ、ほどいてくれたら自分で出来るよ!」

もう帰れるという安心感からか森本は強気だった。
しかし先程さきほどから自分の思い通りにならないばかりか、
虎谷こたにに美味しいところを取られ、あまつさえ悪態を
つかれた望月は笑顔を消していた。

「…生意気」

「っ!」

両手を縛る上着を乱暴に引っ張り、無理な方向に腕を上げられたため
関節に痛みが走り声が出なくなる森本。

「あんまり可愛くないと犯すよ?」

望月は吐き捨てるように言うとパッと手を離した。
しかし今までのことを考えれば、そんなことで
媚びを売る気にはなれなかった。

「…じゃあやればいいじゃん、こんなの犯されてるのと一緒だ」

「ふーん。じゃあ今からしてあげるよ」

挑発的な発言を流すほど、まだ冷静ではない望月。
やってやると言わんばかりに自らが直した服に手をかけた。

バンッ!!

「っ…榎本」

「………二人して弱い者いじめか」

大きな音で扉が開き、榎本が割って入ってきた。
突然のことに呆然としている二人を無視して、
森本の腕を解放してやると横抱きで抱えあげた。
そしてそのまま連れ去ってしまう。

二人は思わぬ来訪者に毒気を抜かれ、追いかける気が起きなかった。





「…大丈夫か?」

「うん。ありがと。」

廃校舎から逃げ出し、公園で少し休むことにした二人。
榎本は自販機で買った飲み物を渡しながらベンチへ座った。

「森本、無理してないか?
 あんなことまでするなんて…」

「っ!見てた、の?」

「いや!その、お前を探してたらたまたま…。
 すまん。少しだけ見た。」

「榎本くんのせいじゃないよ!
 恥ずかしいけど…。」

強引にされたとはいえ、思い返すと恥ずかしさに顔を上げられない。
だが茶化ちゃかす様子もない榎本に優しさを感じた。

「………正直、お前がこんなに根性あるやつだとは思ってなかった。
 どうせいつもみたいにすぐギブして、関係ない人間になると思ってた。」

「あはは、俺しつこいからね。」

「それに、あいつらも今まであんなことしたことなかったんだ。
 遊びでやっていいことじゃないだろ…?」

「榎本くんはさ、どうして虎谷くんたちと一緒にいるの?」

あのグループで遊ぶには真面目すぎる、と単純な疑問があった。

「あいつらといると面白いし楽しいのは本当だ。
 ターゲットになる奴らは根暗でなんの抵抗もせず
 ただ泣くだけで、根性ないな程度にしか思ってなかった。」

「それはそれで酷いかも。」

「そうかもな。」

楽しいという感情だけあれば友達といる理由には充分で、
森本は軽く笑って突っ込みながら話を聞いていた。

「だけどお前は違う。
 愛想笑いもしない、根性もある、弱音も吐かない。
 そんな奴があんな目に合うのは間違ってる…。」

「そう思ってくれてたんだね。
 ありがとう。でも、これは俺が望んで始めたことでもあるんだ。」

「分かってる!だけどやり過ぎだ…。」

強い感情をぶつけるように込められた力が、
飲み干した缶をひしゃげさせていた。

それを見た森本は榎本の手に手を重ねて笑った。

「大丈夫だよ。俺、結構打たれ強いから。」

その笑顔は酷くいじらしく、
榎本の中の糸が切れてしまった。

「………他のやつに壊されるくらいなら」

「え、榎本くん…?」

森本は先程と様子が変わった榎本の顔を覗き込んだ。
すると強い力で抱き寄せられ、缶を落としてしまう。

「俺の手で壊してやる。」

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