がんばり屋の森本くん

二がんばり目～ドSコンビの同級生～

第１７話 作戦決行

翌日


全校集会が始まり少し時間を置いてから、腹痛と言い抜け出した森本。
誰にも見られていないかをよく確認しながら職員室へ向かった。

「あー、ほんとにお腹痛くなりそう…！」

到着したもののドアが開かない。
鍵がかかっているようだ。

「どうしよう…。こんなの聞いてない。」

いきなり想定外の出来事に半泣きになりながら、どこか開いてるいるドアはないかと見回すと足元に小さな引き戸を見つけた。

ここから入るしかない。

「こんなとこ通るなんて、いよいよ泥棒だよ～。」

やっと入った室内には教師用の机が並んでいた。
ロッカーを見つけると森本はなるべく音を立てないよう
"関口"と書かれたプレートを探す。

望月の言う通りロッカーには鍵がかかっておらず、
簡単に鍵を手に入れることが出来た。

関口の机は職員室に来たときに見たことがあったのですぐ分かった。
鍵つきの一番下の大きい引き出しを開けると、生徒から没収したであろう
アクセサリーや漫画等が混在していた。

森本が回収するのは虎谷のピアスと望月のスマホだ。

「………なんでっ。」

中を探ってみるとスマホは一つしかなかった。
しかもそれはなんと森本のスマホだったのだ。

関口が拾ってくれたのか。
例えそうだったとしても、なぜ望月が知っているのか。
それとも望月がわざと関口に没収させたのか。

今回の一件は、望月の意図的なものなのか。

ガチャッ

「っ！？」

そんなことをグルグルと考えているとドアの鍵を開ける音が響く。
森本はとりあえず二つをポケットへねじ込み、反射的に机の下へ隠れた。

ガラッ

コツ、コツ…


(まだ集会が終わる時間じゃなかったはずなのに！)

段々と近づいてくる足音に焦り心臓が高鳴る。
息を殺してとにかく誰かがいなくなるのをひたすら待っていた。

「何してるの？」

「っ！？」

迷わずここに来たように思えた行動に驚き、声が出なかった。
声と共に覗き込んできたのは、数学教師の松城まつしろ 真紘まひろだった。
いつも笑顔を崩さず生徒の相談にも真摯に乗り、人気のある教師だ。

「…おっと」

森本は誤魔化すということが思い浮かばず、とりあえず逃げようと
松城を押しのけたが簡単に捕まえられてしまった。

「っ…。」

「一年生の森本 空汰くん、だよね？」

「はい…。」

「今の時間は集会のはずだけど、君は何してたのかな？」

「えっと………。」

こんな状況でも微笑んだままの松城には恐怖さえ感じ
なんと答えればいいか全く頭が回らなかった。

「大体察しはつくけどね…。
　ここは関口先生の机、引き出しの鍵も開いてるみたいだ。」

「っ…。」

素直に謝ろうとも思ったが、失敗すればどうなるか
虎谷の一言が忘れられず緊張感から何も言葉が出ない。

「何も言ってくれない、か。
　一応僕には君を調べる権利があると思うんだけど、いいかな？」

その様子を見かねた松城は森本の腕を引き寄せ、机に上半身を押し倒した。

「せんせっ！？」

「鍵のかかった職員室に無断で忍び込み、
　教師の机を勝手に触るっていうのは結構悪質だと思うんだ。」

だからこれは正当な行為だと言わんばかりに体をまさぐられる森本。
腕を掴まれたままうつ伏せになっているため身動きが取れない。

「さて、どこに隠してるのかな。」