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二がんばり目~ドSコンビの同級生~
第23話 虎谷
しおりを挟む「ん、…あれ?」
森本が目を覚ますとすっかり日が暮れていた。
どちらかがシャワーに入れてくれたのか体は綺麗になっていて
恐らく虎谷のものであろう部屋着を着せられていた。
「虎谷くん?望月くん?」
部屋には誰も居ないのか、返事は返ってこなかった。
様子を見に立ち上がると鈍い痛みが下半身を襲う。
「っ…」
ドアを開けて一階のリビングへの階段を降りていると声が聞こえてきた。
「まったく…。あいつはいつまでああなんだ。
大した高校にも入れず、 挙げ句に不良の真似事か。
呆れてものも言えない。」
「しょうがないよ。渚は一番になれない人間なんだから。」
「そんなに言うものじゃないわ。
うちには湊、あなたがいるだけで充分よ。」
「そうだな。
双子なのにこうも出来が違う人間が生まれるとは…。」
話しているのは虎谷の家族だろうか。
他人が聞いてはいけない話を立ち聞きしてしまい複雑な気持ちになる森本。
せめてここに本人が居なくて良かったと振り向いたらなんと虎谷の姿があった。
「っ!」
「…望月は帰った。
お前ももう帰れ。」
つい身構えたものの、虎谷は静かに呟き部屋へと行ってしまう。
その背中がなんだか寂しげに見えて、追いかけずにはいられなかった。
「待って…!
あの人たち…。」
「俺の家族だ。
同情したか?」
「っ! そんなんじゃ…。」
虎谷はドアを閉めると同時に森本を引き入れ勢いよく押し付けた。
「なら体で慰めてもらおうか?
さっきのだけじゃ物足んねえしな。」
「やめっ…俺こんなつもりじゃ、!
ただ、虎谷くんのこと知りたいと思って…。」
「はっ、何を知りたいって?
聞いた通りだ。スポーツも勉強も湊に劣り何一つ一番にはなれねえ俺を
あいつらは嘲笑うどころか呆れて見放してる!
それだけだ、これで満足かよ。」
「そんな、家族なのに…。」
ダンッ!
「てめえはいちいちムカつくんだよ!!」
森本の一言に虎谷は胸ぐらを掴み上げて激怒した。
「どんな理不尽にも平気な顔して、バスケの話になるとどんなときでも笑う。
世の中には自分の思い通りにならないことがあるんだよ!!
誰もがお前みたいに恵まれてると思うな!!」
「…そんなこと分かってる!!
でも、そのための努力ってそんなにいけないこと!?」
「そういうのを無駄な努力って言うんだよ。
無意味だ。」
「そんなのやってみなきゃ分からないじゃん!
無意味だからって何もしないで弱いものいじめする方がよっぽど無意味だよ!!」
「てめえっ…!」
「…何やっても意味ないなら、何やったっていいってことじゃん!
虎谷くんは家族のせいにして不貞腐れてるんだ、
今の自分があるのはやりたいことをやらない選択をした自分の責任だよ。
自分に負けんな!」
「負ける…?」
「一緒にやろうよ、バスケ。」
「っ………またお前はバスケかよ。」
「バスケじゃなくたっていいよ。
虎谷くんが何かやるなら、俺は応援する。
ただそれがバスケだったらすごく嬉しいし、絶対楽しいって思っただけ。」
「…ほんと、腹立つ。」
森本の真っ直ぐ過ぎる瞳が虎谷には眩しかった。
好きなものに対するひた向きさ。
自分自身のために努力する姿勢。
そんな同級生達を見ていると、認められないと嘆いて
大した努力もせず投げ出していた自分がとても下らなく思えて嫌だったのだ。
気付かないようにしていた本心に虎谷は呆然とベッドへ座り込んだ。
「俺は、虎谷くんが羨ましいと思ってたんだよ。
身長あるし、力もあるし、リーダーシップ取れそうだし。
それなのに毎日つまらなそうな顔してるの見てて、俺だってムカついてたんだ。」
森本は人数合わせのためでなく、チームに虎谷のようなタイプがいたら
面白いと確かに惹かれている部分があったのだ。
「ずいぶん生意気なこと言うじゃねえか。」
「もうペットじゃないもんね。」
けろっと笑いながら時計を指すと日付はペット最終日を過ぎていた。
虎谷は底抜けに明るい森本につられて半笑いした。
こいつとならもう少しだけ面白いことが出来るかもしれない。
「………バスケ、絶対楽しませろよ。」
「…! もちろん!!」
大きく頷きながら、森本は嬉しさのあまり虎谷にダイブした。
反動でベッドへ倒れ込んだが虎谷は珍しく怒らず、少し戸惑っているようだった。
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