がんばり屋の森本くん

しお子

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五がんばり目~ヤンデレ君にご注意~

第47話 新たな災難

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「あ、そういえば星場先輩の話聞けなかったな…」

森本は松城に教室に戻され授業を受けながらふと思い出した。

下校時間になり、2年の教室へ来てみたが星場はいなかった。

「そーらた!」

「わ!」

背後からガバッと抱き着かれ、少しよろけながら後ろを見ると折戸の顔があった。

「何してんのー?」

「ほ、星場先輩に用事があって…」

折戸に星場の話をするのは気が引けたが、ひょっとしたら居場所を知っているかもしれないと素直に答える森本。

「…なんの用事?」

案の定、折戸はすごく不機嫌そうな表情な表情を浮かべていた。

「昼間に星場先輩が俺に言いたいことあったみたいなんだけど、聞きそびれちゃって」

「そーなんだ」

森本の腹部に回した手に力がこもる。

「そんなに機嫌悪くしないでよ」

「…ちょっと待ってて」

折戸は子供をあやす様に自分の手をぽんぽんされ、年下にこんなことしてもらってる自分が情けなくなり、森本を離すと星場の教室へ向かった。

「…?」

中の様子を伺うようにドアから顔を覗かせると、何やら女子に話しかけている姿が見えた。

おそらく星場の取り巻きに聞いてくれているのだろう。

「星場、センセーに呼び出されたんだって」

折戸はすぐ戻ってきて教えてくれた。

「そうだったんだ、じゃあ今日は帰った方がいいかな」

小野寺の家に寄りたいので遅くなるわけにはいかず、今日星場と会うことは諦めることにする森本。

「ありがとね。わざわざ聞いてくれて」

最初は不機嫌だったが自分のために行動してくれる優しさが嬉しかった。

「…そんな可愛い顔されたら、キスしたくなる…」

「っ!」

そのセリフに顔が熱くなるのを感じた森本は、とっさに自分の口元を手の甲で隠す。

「あ!しないしない!
 さすがにこんなところでは、ね」

(こんなところじゃなかったらしようとしてたのかな…)

「そだ、一緒に帰ってもいい?」

「う、うん…」

まだ少しドキドキしているのを抑えるように目をそらしながら頷いた。





他愛もない話をしながら駅に向かっていると折戸は道沿いの自販機を見つけ財布を取り出した。

「ちょっと喉乾いちゃった。
 空汰も飲む?」

「うん!俺サイダーにしようかなぁ」

ピッ

ガシャッ

「はい」

差し出されたジュースを前にきょとんとしていたが、意味が分かると受け取れないと森本は首を振った。

「え!?俺自分で買うつもりで言ったのに!」

「いいの、俺が買ってあげたかったの」

「でも…」

「いいから」

絶対引っ込めないという意思が伝わってきて、ありがたく受け取ることにした。

グイッ

「んっ!」

腕を強く引っ張られ森本の唇と折戸の唇が重なる。

「お礼はこれで」

「おりとく、んっ」

「っ…空汰…」

折戸は切なげな表情でもう一度キスを求めた。

触れるようなキスだったのに、だんだんと唇が重なる時間が増えていく。

「んぁっ、っ…誰かに見られちゃう、よ」

「…大丈夫だよ。この道、駅まで遠回りだしあんまり人通らないから」

確かに自分たちがここを通ったとき人の姿は見えなかったが、長居すればするほどリスクは増す。
そんな不安から森本は顔をそむけた。

「でも…」

「そんなに嫌…?」

「………ここでは、ダメ…」

そんな悲しそうな顔で見られたら嫌だなんて言えず、精一杯の拒否を試みた。

「…っ!空汰!好き…!」

「んん!」

嫌がっていない、嫌われていないという嬉しさから折戸は愛おしそうに抱き締めて、もう一度キスをした。

「ちょ、…だめ!」

「あはは、ごめん調子乗った」

森本が犬を躾けるように言い聞かせると、折戸はへらへら笑いながら腕をほどいた。

「…もう、先行くからね!」

そう言って折戸に背を向けた瞬間ー。

「う゛!!」

うめき声が聞こえ、すぐに何かが倒れるような音がした。

「折戸くん…?」

バチッ!!

「っっ゛!?」

首筋に激しい痛みが走る。
熱くて鋭い痛み。

同時に体が動かなくなり、薄れゆく意識の中で男を見た。
フードを被っていて、顔は見えなかったが至極高身長な男の姿を。



男は倒れ込む森本を受け止めて車へ運んだ。
車内には運転席に1人の連れがいる。

大事そうに森本の体を後部座席に置くと、上半身を自分の膝の上に乗せて息を確かめた。

呼吸が聞こえてくると安堵したように微笑み、運転席へ声をかける。

「出して」

「…あっちはどうすんの?」

「適当にやっといてよ」

そして車は走り去っていった。




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