23 / 267
第二章
第ニ十二話
しおりを挟む
それでも流石の聖也は顔色を変えずに話を続ける。
「名前は?」
「立花・・・水樹です。」
「んじゃあよろしく水樹。俺は4年の正木聖也ね。ねえ水樹さ、入部しなよ。んで俺達と一緒に燃えようぜ。」
いつもならば、俺達ではなく俺と一緒に、と簡単に言いそうなのに聖也には出来なかった。
「えっと・・・灰になってしまいますね。」
聖也はまた眉間にシワを寄せ視線を横に外した。自分の問いかけにいちいち返事を考えてくれるのが可愛いくて、その下手ながらに乗っかってくれた返事に嬉しさが口から飛び出そうだった。
そして聖也は理解しようとした。自分まで中学生に戻ったみたいで何が何だかわからない。こういう気持ちはなんと言うものであったのか。
「聖也君!練習さぼっちゃ駄目じゃない。部長が戻れって言ってるよ。」
「ああ!?」
「何めっちゃ機嫌悪いじゃん勘弁してよ。」
「うっせーぞ勇利。こんな暑苦しい所に水樹を放ったらかしに出来るわけねーから。」
「はいー?もう呼び捨て?ちょっと聖也君、水樹ちゃんは俺が見つけたんだからね。俺の専属マネージャーなんだから、それ以上近寄らないでよ?」
「は!?お前それ笑えねー冗談だわ。」
「うそうそ!まじになんないでって。俺は水樹ちゃんの保護者みたいなもんかな。ほら早く練習行きなよ。部長が呼んでるのはほんとなんだからね。」
「わかったって。俺いないと練習締まんねーしな。じゃな水樹。しっかり見とけよ。」
そう言うと聖也は練習にやっと参加した。
一見怖そうなのに笑う口元は子供っぽい聖也に対して、水樹は水樹で緊張しっぱなしだった。それに初めて異性に呼び捨てにされ相当動揺もした。けれど、水樹はそちらではなく、勇利の言う、専属マネージャーの方に強く反応した。
「聖也君て熱い人なんだよ。ハンドもすっごくうまいしね。しかもいちいちかっこ良くて笑っちゃわない?かっこつけてる事、俺達にばれてないと思っててさ、うけるよね。」
「そんな事なかったです。気を使って話して下さってとても楽しかったです。それに、宇野さんと正木さんがとても信頼し合っているのが伝わります。」
「調子に乗るから普段は絶対言わないけど、聖也君の事親友だと思ってるんだ。」
「素敵な関係ですね。」
「まあ、そうかな。ね、今からお茶作りに行くんだけど一緒に行く?」
「え!?宇野さんマネージャーなんですか?」
「ははは、違う違う、マネージャーは5年の鈴宮さんって女の人だよ。多分今日は来ない曜日だから、前の1年が交代で作ってんの。」
「あ・・・はい。一緒に行きます。」
水樹は、素直に勇利ともっと話していたかった。
「名前は?」
「立花・・・水樹です。」
「んじゃあよろしく水樹。俺は4年の正木聖也ね。ねえ水樹さ、入部しなよ。んで俺達と一緒に燃えようぜ。」
いつもならば、俺達ではなく俺と一緒に、と簡単に言いそうなのに聖也には出来なかった。
「えっと・・・灰になってしまいますね。」
聖也はまた眉間にシワを寄せ視線を横に外した。自分の問いかけにいちいち返事を考えてくれるのが可愛いくて、その下手ながらに乗っかってくれた返事に嬉しさが口から飛び出そうだった。
そして聖也は理解しようとした。自分まで中学生に戻ったみたいで何が何だかわからない。こういう気持ちはなんと言うものであったのか。
「聖也君!練習さぼっちゃ駄目じゃない。部長が戻れって言ってるよ。」
「ああ!?」
「何めっちゃ機嫌悪いじゃん勘弁してよ。」
「うっせーぞ勇利。こんな暑苦しい所に水樹を放ったらかしに出来るわけねーから。」
「はいー?もう呼び捨て?ちょっと聖也君、水樹ちゃんは俺が見つけたんだからね。俺の専属マネージャーなんだから、それ以上近寄らないでよ?」
「は!?お前それ笑えねー冗談だわ。」
「うそうそ!まじになんないでって。俺は水樹ちゃんの保護者みたいなもんかな。ほら早く練習行きなよ。部長が呼んでるのはほんとなんだからね。」
「わかったって。俺いないと練習締まんねーしな。じゃな水樹。しっかり見とけよ。」
そう言うと聖也は練習にやっと参加した。
一見怖そうなのに笑う口元は子供っぽい聖也に対して、水樹は水樹で緊張しっぱなしだった。それに初めて異性に呼び捨てにされ相当動揺もした。けれど、水樹はそちらではなく、勇利の言う、専属マネージャーの方に強く反応した。
「聖也君て熱い人なんだよ。ハンドもすっごくうまいしね。しかもいちいちかっこ良くて笑っちゃわない?かっこつけてる事、俺達にばれてないと思っててさ、うけるよね。」
「そんな事なかったです。気を使って話して下さってとても楽しかったです。それに、宇野さんと正木さんがとても信頼し合っているのが伝わります。」
「調子に乗るから普段は絶対言わないけど、聖也君の事親友だと思ってるんだ。」
「素敵な関係ですね。」
「まあ、そうかな。ね、今からお茶作りに行くんだけど一緒に行く?」
「え!?宇野さんマネージャーなんですか?」
「ははは、違う違う、マネージャーは5年の鈴宮さんって女の人だよ。多分今日は来ない曜日だから、前の1年が交代で作ってんの。」
「あ・・・はい。一緒に行きます。」
水樹は、素直に勇利ともっと話していたかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる