おもいでにかわるまで

名波美奈

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第二章

第七十四話

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「そんで勇利って天然でさ、合宿の時に、コンタクトが片方無いって騒いでさ。」

「あははっ。」

水樹は目をキラキラさせて笑っている。

「結局見つかったんだけどさ、どこにあったと思う?」

「わからないです。」

「あいつさ、片目にコンタクト2枚入れてやがったんだよね!」

水樹は大きく笑った。

「嘘だっ。宇野さん面白過ぎますね。ほんとかわいいです。」

「かわいくねーよ、ただの馬鹿だからっ。」

「駄目ですよ馬鹿って言っては。でも正木さんの馬鹿は、好きって意味ですもんね。」

「なっ・・・。」

ばーか。何またかわいい事言ってんだよ。

本当に水樹は勇利の話で喜んだ。

「馬鹿だからあいつ今は彼女の事しか頭にないからね。」

「お、お似合いですもんねお二人・・・。羨ましいですね。」

「どした?俺達も美男美女で絵になってると思うぜ?」

「わっ。正木さんはそうですけど、私なんかただの保育園児ですよ。」

「こーら。自分の事そんな風に言わないの。入部したての時よりもっと綺麗になってるよ。」

「えっ。」

こうやって聖也の責めでたじたじになっている姿がただひたすらにかわいかった。

「あのさ、学生証あんじゃん?あれに入学の頃の写真載ってるでしょ?あの頃のかわいい水樹ちゃんを、俺見たいんだよねえ。」

「嫌ですよ。見せられるものなど何もありません。」

聖也は水樹をじっと見つめた。何故なら水樹がまたこれでたじたじになる事がわかっているからだ。そして二人の沈黙合戦が開催された。けれど水樹は今日はなかなかしぶとく、聖也はもう一押しした。

「見せないとさ、今から水樹の好きな所100個言い続けるよ。まずは俺の好きなかわいい顔でしょ、それからよく笑う所でしょ、それから・・・。」

「わわわ、もう止めて下さいっ。泣きそうです。わかりました写真見せますからっ。」

ぷっ。水樹が作戦に簡単にはまるので聖也は吹き出した。それから水樹はガサゴソと鞄を探り学生証を手にした。

「あ・・・。」

前に聖也も見た、勇利のメッセージが書いてある入部届が学生証に挟まっていた。そしてそこには違和感があった。この前見た時とは違う、いらいらする感情が聖也にはあったのだ。

わざわざ学生証に入れる程のものか?たかが勇利のメモ書きがそんな大事?うーんわかんねえ。まあいっか。ととりあえず月曜日の練習で勇利を締める事は確定した。
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