おもいでにかわるまで

名波美奈

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第二章

第百十三話

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弁当を食べながら勇利は堀田と話をしていた。

「なあ堀田、明人また休みだよ。出席日数超やばくない?」

「この前聞いた時はちゃんと数えてるって言ってたぜ。」

「4年に進級する時だってさ、出席日数も成績もギリギリだったじゃん。」

「あいつ常にやる気オフだからさ、俺が何言っても聞こえてねんだよな・・・。テスト始まったら来るんじゃね。」

この学校は不良などなく、入学する時にそれなりの偏差値を要する世間的には理系の学校だ。ただし、大学へ編入する、大企業へ就職する、など何かはっきりとした目的がないと、この長い長い学生生活の中のこの独特な緩い雰囲気に飲み込まれて堕落していく。

雰囲気も校則も緩いけれど落とす時は非情に落とされ、全て自己責任という厳しさだ。なんとなく勇利はクラス内を見回した。

「レポート書いてる奴回して。」

「誰かテストの過去問貸して。」

「体育の持久走超だるいんだけど。」

そして勇利のクラスは特段とテンションが低いのが特徴で、真面目に熱く頑張る事を格好悪いと思っている雰囲気だ。

だからクラス一丸となって何かを成し遂げましょう、のような青春とも縁がない。そしてそのクラスの一員として元々無気力が売りの長谷川明人がいる。

いつも脱力していて冷めていて引いていて掴み所がなくて構われるのも嫌で、仲間が心配して説得したとしてもどうせ聞こえていない。

「皆で卒業旅行行きたいしさ、明人のフォロー頼むな、堀田。」

卒業まで後1年となり、勇利も聖也と同じく大学を受験する為に秋頃から準備を始めていた。そして自分は自分のすべき事を頑張らなければ、と身を引き締め直したその時クラスメートに呼ばれた。

「勇利ー。おしるこちゃんがまた来てるぜー。」

‘おしるこちゃん’とは、堀田が言い始めて広まってしまった勇利のクラス内での水樹の呼び名だった。
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