125 / 267
第三章
第百二十四話
しおりを挟む
昨日絡まれていた水樹の事が気になったわけでは決してなく、明人はまた学校へ登校した。
明人の人生は表現するといつも小雨か曇り、そして時々その気分屋の雲が薄くなる時がありそんな日は明人なりに調子が良い。太陽が顔を覗かせる事はなく、それを明人は願ってもいないしこの先もないと思っている。
明人は1時間目が始まる直前に教師よりも遅れて教室の中に入った。ガラガラッ。歴史と文化を感じろと言わんばかりの古いドアはありがちな音を撒き散らし明人を招き入れた。その音のせいで一斉に視線が集まった。そして音の原因が明人だと確認すると各々意識を離した。
少し慣れたとはいえ、明人は昨日までと同じように誰とも目を合わさないままムスッとした態度で席に着き、そして肘をついて窓から外を眺めた。明人が着席した時に、前の席の水樹が少し体をひねり明人を視界に入れた事がわかったけれど、お互いに用事なんて何もない。だから明人はそのままの姿勢を崩さず水樹には応えなかった。
授業は終わり、でも教室移動は無い為、明人は席に留まりまた窓の外を見ていた。そうしていると水樹が立ち上がったので、明人が無意識に水樹の姿を追うと、水樹は黙って黒板を消し始めた。
周りから声がする。
「手伝おっか?」
「大丈夫。」
黒板には上の方まで字が書いてあり、女の子には届かないかもしれない。でも、サッサッサッ、と背の高い水樹は誰の助けを借りるわけでもなく黒板の上の方もスマートに拭き上げた。
このクラスについて少し分かった事がある。掃除やごみ捨て提出物、今は水樹を中心にやっているけれど、押し付けられている感じが全くしなく、誰かが必ず声を掛け、構い始めて仲良くする。
そうやってこのクラスはうまく回っていた。
ただ、明人にとってはそんな事はどうでもいい事だった。
明人の人生は表現するといつも小雨か曇り、そして時々その気分屋の雲が薄くなる時がありそんな日は明人なりに調子が良い。太陽が顔を覗かせる事はなく、それを明人は願ってもいないしこの先もないと思っている。
明人は1時間目が始まる直前に教師よりも遅れて教室の中に入った。ガラガラッ。歴史と文化を感じろと言わんばかりの古いドアはありがちな音を撒き散らし明人を招き入れた。その音のせいで一斉に視線が集まった。そして音の原因が明人だと確認すると各々意識を離した。
少し慣れたとはいえ、明人は昨日までと同じように誰とも目を合わさないままムスッとした態度で席に着き、そして肘をついて窓から外を眺めた。明人が着席した時に、前の席の水樹が少し体をひねり明人を視界に入れた事がわかったけれど、お互いに用事なんて何もない。だから明人はそのままの姿勢を崩さず水樹には応えなかった。
授業は終わり、でも教室移動は無い為、明人は席に留まりまた窓の外を見ていた。そうしていると水樹が立ち上がったので、明人が無意識に水樹の姿を追うと、水樹は黙って黒板を消し始めた。
周りから声がする。
「手伝おっか?」
「大丈夫。」
黒板には上の方まで字が書いてあり、女の子には届かないかもしれない。でも、サッサッサッ、と背の高い水樹は誰の助けを借りるわけでもなく黒板の上の方もスマートに拭き上げた。
このクラスについて少し分かった事がある。掃除やごみ捨て提出物、今は水樹を中心にやっているけれど、押し付けられている感じが全くしなく、誰かが必ず声を掛け、構い始めて仲良くする。
そうやってこのクラスはうまく回っていた。
ただ、明人にとってはそんな事はどうでもいい事だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~
みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。
ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。
※この作品は別サイトにも掲載しています。
※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる