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疑惑
疑惑③
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「横山さんって、うちの事務所の?」
柳瀬さんは落ち着いた声で訊いた。
「はい」
店の駐車場を抜けて車は走り出した。
私は知っている全てを話した。2ヶ月前、柳瀬さんと同じ時期に自宅のポストから封筒を受け取った安西さんがその後段々と鬱気味になっていった事、尾行している事をアピールするかのように安西さんがデートで出掛けた場所に関係するものが事務所に置かれていた事。そしてそれがいつも横山さんが早く出勤している日だという事・・・
「柳瀬さん、安西さんに隠してる事ってありますか?」
「隠してる事?」
柳瀬さんは首を傾げた、その仕草は自然に見えた。
「誰か親しい女の人、いませんか?」
柳瀬さんはサイドミラーで斜め後ろを気にしている、同じ車線にいた車が隣車線に移りいくつか車を追い越そうと速度を上げている。
「ごめん、思い浮かばない」
「安西さんが受けとった封筒には、柳瀬さんが女の人と腕を組んで歩いている写真が入ってたって言ってました。それも合成写真かもしれないですけど」
「腕を組んでた?」
「はい。私その写真を直接見てないのでどんな人か知らなくて、若い女の人だったって」
「もしかして」
柳瀬さんの言葉は宙に浮いた、さっきの車が私達の前へ無理矢理に割り込んできた。
「この車、危ない運転してるな」
車はブレーキランプを頻繁に点滅させている。タイミングを見てまた右車線へ移動し、速度を上げて走っていった。それから段々渋滞し始めた。
「さっきのだけど、腕を組んでたっていうのは本当だよ」
「え」
「多分その写真は合成じゃなく実際に撮られたものだと思う」
「どういう事ですか?」
鞄の持ち手を握り締めた。信号が赤に変わって車の列は停止した。
「写ってたっていう女の人は親戚の子なんだよ」
「親戚、ですか」
「ちょっと待ってね」
柳瀬さんは携帯電話を取り出して何かを探している。そしてメールの画面を見せてくれた。
「ここから読んでみて」
登録されている名前は“奈々美”。メールの内容は待ち合わせについてや、観光はどこに連れて行って欲しいといったリクエストだった。読みながら画面をスクロールしていくと画像が出て来た。女の人が柳瀬さんと腕を組んで自撮りしている。カップルみたいに見える。上にあるメッセージを読んだ。
ゆきにい~今日撮った写真あげる
カップルみたいでしょ?
「本当に親戚の子なんですか?」
「うん、嘘じゃないよ。その写真を撮った時、岡山から遊びに来てたんだ。にしても奈々美はまだ大学生で19なんだけどな」
「19ですか!?大人っぽいですね、お洒落だし。でもこれ、完全に安西さんに誤解されてます」
「まさか画像が沙織の手元にあるなんて思わなかったから、だけど、どうしてなんだろう」
そういえば安西さんは写真について柳瀬さんとその子を隠れて誰かが撮ったようなアングルだったと言っていた。この画像じゃなさそうだ。
信号が青に変わった、徐々に前へ進みながら渋滞が解消されたのは20分程経ってからだった。その間私と柳瀬さんは無言でいた。さっきの隆平の顔が浮かんで来た、私はそれを必死に流そうと安西さんの誤解を解く方法を考える事に集中した。直接説明してもきっと信じてもらえない、なら証拠を突きつけて横山さん本人に謝罪させるしかない。
「やっぱり家まで送ってくよ」
「でも遅くなるし、いいです」
「そのスカートじゃ気になるかと思って」
濡れたスカートの事をすっかり忘れていた。
「すみません、甘えさせてもらいます」
マンションの前に着き、私は「信用してはいけない」と印字された紙を持って来てもらえるよう伝えた。パソコンで打った文字だからヒントにはならないよと柳瀬さんは言った。それでも持ってきて欲しいとお願いした。
「横山さんの事、私で調べてみます。分かった事があれば連絡するので一応携帯の番号も教えて頂けますか」
「ああ、そういえば知らないよね」
電話番号を交換して車を見送った。
オートロックを解除してエレベーターに乗り込むと部屋にタケルがいるという現実を思い出した。
今年は色々あるな・・そう思いながら隆平の日焼けした顔と下がった眉尻を思い出しながらもうほとんど乾いた状態のスカートを見下ろした。
柳瀬さんは落ち着いた声で訊いた。
「はい」
店の駐車場を抜けて車は走り出した。
私は知っている全てを話した。2ヶ月前、柳瀬さんと同じ時期に自宅のポストから封筒を受け取った安西さんがその後段々と鬱気味になっていった事、尾行している事をアピールするかのように安西さんがデートで出掛けた場所に関係するものが事務所に置かれていた事。そしてそれがいつも横山さんが早く出勤している日だという事・・・
「柳瀬さん、安西さんに隠してる事ってありますか?」
「隠してる事?」
柳瀬さんは首を傾げた、その仕草は自然に見えた。
「誰か親しい女の人、いませんか?」
柳瀬さんはサイドミラーで斜め後ろを気にしている、同じ車線にいた車が隣車線に移りいくつか車を追い越そうと速度を上げている。
「ごめん、思い浮かばない」
「安西さんが受けとった封筒には、柳瀬さんが女の人と腕を組んで歩いている写真が入ってたって言ってました。それも合成写真かもしれないですけど」
「腕を組んでた?」
「はい。私その写真を直接見てないのでどんな人か知らなくて、若い女の人だったって」
「もしかして」
柳瀬さんの言葉は宙に浮いた、さっきの車が私達の前へ無理矢理に割り込んできた。
「この車、危ない運転してるな」
車はブレーキランプを頻繁に点滅させている。タイミングを見てまた右車線へ移動し、速度を上げて走っていった。それから段々渋滞し始めた。
「さっきのだけど、腕を組んでたっていうのは本当だよ」
「え」
「多分その写真は合成じゃなく実際に撮られたものだと思う」
「どういう事ですか?」
鞄の持ち手を握り締めた。信号が赤に変わって車の列は停止した。
「写ってたっていう女の人は親戚の子なんだよ」
「親戚、ですか」
「ちょっと待ってね」
柳瀬さんは携帯電話を取り出して何かを探している。そしてメールの画面を見せてくれた。
「ここから読んでみて」
登録されている名前は“奈々美”。メールの内容は待ち合わせについてや、観光はどこに連れて行って欲しいといったリクエストだった。読みながら画面をスクロールしていくと画像が出て来た。女の人が柳瀬さんと腕を組んで自撮りしている。カップルみたいに見える。上にあるメッセージを読んだ。
ゆきにい~今日撮った写真あげる
カップルみたいでしょ?
「本当に親戚の子なんですか?」
「うん、嘘じゃないよ。その写真を撮った時、岡山から遊びに来てたんだ。にしても奈々美はまだ大学生で19なんだけどな」
「19ですか!?大人っぽいですね、お洒落だし。でもこれ、完全に安西さんに誤解されてます」
「まさか画像が沙織の手元にあるなんて思わなかったから、だけど、どうしてなんだろう」
そういえば安西さんは写真について柳瀬さんとその子を隠れて誰かが撮ったようなアングルだったと言っていた。この画像じゃなさそうだ。
信号が青に変わった、徐々に前へ進みながら渋滞が解消されたのは20分程経ってからだった。その間私と柳瀬さんは無言でいた。さっきの隆平の顔が浮かんで来た、私はそれを必死に流そうと安西さんの誤解を解く方法を考える事に集中した。直接説明してもきっと信じてもらえない、なら証拠を突きつけて横山さん本人に謝罪させるしかない。
「やっぱり家まで送ってくよ」
「でも遅くなるし、いいです」
「そのスカートじゃ気になるかと思って」
濡れたスカートの事をすっかり忘れていた。
「すみません、甘えさせてもらいます」
マンションの前に着き、私は「信用してはいけない」と印字された紙を持って来てもらえるよう伝えた。パソコンで打った文字だからヒントにはならないよと柳瀬さんは言った。それでも持ってきて欲しいとお願いした。
「横山さんの事、私で調べてみます。分かった事があれば連絡するので一応携帯の番号も教えて頂けますか」
「ああ、そういえば知らないよね」
電話番号を交換して車を見送った。
オートロックを解除してエレベーターに乗り込むと部屋にタケルがいるという現実を思い出した。
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