57 / 95
疑惑
疑惑⑲
しおりを挟む
あゆみさんをマンションまで送り届けた。別れ際に、帰ったら必ず封筒を開けるよう言われた。
家に帰って封筒をソファに置き風呂の給湯スイッチを押した。封筒は風呂に入ってから開けることにした。
風呂を上がって先週録画しておいた番組を観ながらコンビニの総菜とビールを堪能し、時々封筒を横目で見た。ハトメまでしてある割には厚みがない事を変に思った。段々とテレビに集中出来なくなり、俺は封筒を開ける事にした。ハトメの紐を解くと中には書面が入っていた。
【依頼内容】妻の密会証拠写真撮影
書面には、“妻”が密会するであろう日程や予想される場所、更には顔が分かるように画像までもが印刷されている。そしてこの書面を用意したのは恐らく例の“ヨウスケ”という人だ。俺の手は微かに震えだした、その感情は怒りに違いなかった。
すぐさま携帯電話を手に取りあゆみさんに電話を掛けた。コールが数回聞こえるとあゆみさんは電話に出た。
『はい』
「封筒の中、見たよ」
『そう、それじゃあ指定の通りにお願い』
あゆみさんは淡々と言う。
「これって盗撮だろ?」
『あなたにしか頼めないの、私が悲しむ顔見たくないんでしょ?だったら協力して』
悲しむ顔を見たくない、それは不倫を続けるあゆみさんを止めようと過去に俺が言った台詞だった。
「まずさ、どういう経緯でこうなるのか説明してよ」
あゆみさんは一呼吸置いてから話した。
『証拠写真が撮れたら奥さんとは別れるって言ったの』
「証拠写真って、この密会ってやつ?」
『私見たの。洋介の奥さんが若い男と2人で食事してるところ、それも1回じゃない。でも洋介は信じてくれない』
「奥さんの浮気を証明出来れば離婚するって?」
『そう』
俺は心底呆れた。
「嘘に決まってる」
『どうして嘘って思うのよ』
「あゆみさんを引き留めておきたいからそういう事を言うんだよ」
『私がヨウスケに遊ばれてるって言いたいの?』
「あゆみさんを大切にしたいなら、もっと早くから行動してるはずじゃないか」
これまで胸に抑え込んでいたものが口を突いて出た。それはあゆみさんにとって最も目を伏せたくなる事だった。
『そんな事どうでもいいから撮ってきてよ!』
「考えとく」
数秒沈黙が流れた後あゆみさんから電話を切った。すっかり酔いの気分は醒めてしまった。
俺は再び、あの夜の事を思い出した。
ファミレスであゆみさんが眠っている間、どこからか俺の物ではない携帯電話が床に落ちてそれを店員が拾ってくれた。携帯電話は着信中で震えている。店員に礼を言って受け取ると画面には“洋介”と表示されていた。さっき注文の時に呟いていた名前と一致している、酔いつぶれているのはこの人が原因のような気がした。俺は通話ボタンをスライドし、端末を耳に当てた。
『おい、あゆみか?』
洋介という人物は、閥が悪そうに名を呼んだ。俺は黙って次の言葉が出てくるのを待った。
『機嫌直せよ。お前の為に今隠れて電話してるんだから』
ここへ迎えに来てくれるよう頼もうかと口を開くと男がまた喋り始めた。
『なあ、俺がそう簡単に離婚できない事はお前だってわかってるだろ?あいつの父親の会社で世話になってるだけに肩身が狭いんだよ。こっちの都合で離婚するなんて言ったらどんな仕打ちされるか。これから先、お前と暮らしていくとき苦労掛ける事になるんだ』
内容からして不倫関係なのだと分かった。迎えに来るよう言うのを諦めて俺は電話を切った。テーブルに携帯電話を置いてコーヒーを飲みながら様子を見た、それから端末が震える事はなかった。
家に帰って封筒をソファに置き風呂の給湯スイッチを押した。封筒は風呂に入ってから開けることにした。
風呂を上がって先週録画しておいた番組を観ながらコンビニの総菜とビールを堪能し、時々封筒を横目で見た。ハトメまでしてある割には厚みがない事を変に思った。段々とテレビに集中出来なくなり、俺は封筒を開ける事にした。ハトメの紐を解くと中には書面が入っていた。
【依頼内容】妻の密会証拠写真撮影
書面には、“妻”が密会するであろう日程や予想される場所、更には顔が分かるように画像までもが印刷されている。そしてこの書面を用意したのは恐らく例の“ヨウスケ”という人だ。俺の手は微かに震えだした、その感情は怒りに違いなかった。
すぐさま携帯電話を手に取りあゆみさんに電話を掛けた。コールが数回聞こえるとあゆみさんは電話に出た。
『はい』
「封筒の中、見たよ」
『そう、それじゃあ指定の通りにお願い』
あゆみさんは淡々と言う。
「これって盗撮だろ?」
『あなたにしか頼めないの、私が悲しむ顔見たくないんでしょ?だったら協力して』
悲しむ顔を見たくない、それは不倫を続けるあゆみさんを止めようと過去に俺が言った台詞だった。
「まずさ、どういう経緯でこうなるのか説明してよ」
あゆみさんは一呼吸置いてから話した。
『証拠写真が撮れたら奥さんとは別れるって言ったの』
「証拠写真って、この密会ってやつ?」
『私見たの。洋介の奥さんが若い男と2人で食事してるところ、それも1回じゃない。でも洋介は信じてくれない』
「奥さんの浮気を証明出来れば離婚するって?」
『そう』
俺は心底呆れた。
「嘘に決まってる」
『どうして嘘って思うのよ』
「あゆみさんを引き留めておきたいからそういう事を言うんだよ」
『私がヨウスケに遊ばれてるって言いたいの?』
「あゆみさんを大切にしたいなら、もっと早くから行動してるはずじゃないか」
これまで胸に抑え込んでいたものが口を突いて出た。それはあゆみさんにとって最も目を伏せたくなる事だった。
『そんな事どうでもいいから撮ってきてよ!』
「考えとく」
数秒沈黙が流れた後あゆみさんから電話を切った。すっかり酔いの気分は醒めてしまった。
俺は再び、あの夜の事を思い出した。
ファミレスであゆみさんが眠っている間、どこからか俺の物ではない携帯電話が床に落ちてそれを店員が拾ってくれた。携帯電話は着信中で震えている。店員に礼を言って受け取ると画面には“洋介”と表示されていた。さっき注文の時に呟いていた名前と一致している、酔いつぶれているのはこの人が原因のような気がした。俺は通話ボタンをスライドし、端末を耳に当てた。
『おい、あゆみか?』
洋介という人物は、閥が悪そうに名を呼んだ。俺は黙って次の言葉が出てくるのを待った。
『機嫌直せよ。お前の為に今隠れて電話してるんだから』
ここへ迎えに来てくれるよう頼もうかと口を開くと男がまた喋り始めた。
『なあ、俺がそう簡単に離婚できない事はお前だってわかってるだろ?あいつの父親の会社で世話になってるだけに肩身が狭いんだよ。こっちの都合で離婚するなんて言ったらどんな仕打ちされるか。これから先、お前と暮らしていくとき苦労掛ける事になるんだ』
内容からして不倫関係なのだと分かった。迎えに来るよう言うのを諦めて俺は電話を切った。テーブルに携帯電話を置いてコーヒーを飲みながら様子を見た、それから端末が震える事はなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
繰り返す夜と嘘 〜【実録】既婚の僕と後輩の彼女、あの夜のキスから始まった13年の秘密〜
まさき
恋愛
結婚して半年の僕と、同じ職場の彼女。
出会った頃は、ただの先輩と新入社員だった。
互いに意識しながらも、
数年間、距離を保ち続けた。
ただ見つめるだけの関係。
けれど――
ある夏の夜。
納涼会の帰り道。
僕が彼女の手を握った瞬間、
すべてが変わった。
これは恋でも、友情でもない。
けれど理性では止められない、
名前のない関係。
13年続いた秘密。
誓約書。
そして、5年の沈黙。
これは――
実際にあった「夜」の記録。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
籠の鳥〜見えない鎖に囚われて✿❦二人の愛から…逃れられない。
クラゲ散歩
恋愛
私。ユリアナ=オリーブ(17)は、自然豊かなオータム国にあるグローパー学院に在籍している。
3年生になって一ヶ月が経ったある日。学院長に呼ばれた。技術と魔術の発展しているフォール国にある。姉妹校のカイト学院に。同じクラスで3年生の男子3名と女子3名(私を含め)。計6名で、半年の交換留学をする事になった。
ユリアナは、気楽な気持ちで留学をしたのだが…まさか学院で…あの二人に会うなんて。これは…仕組まれていたの?幼い頃の記憶。
「早く。早く。逃げなきゃ。誰か〜私を…ここから…。」
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる