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【3-4】親交を深める
たからもの
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結局ショコラはローズの家に到着してから顔を見せた。言われずともそのつもりだったが。竜次が急いで出かける支度を始めている。
竜次はバタバタとしながら身支度を整え、ショコラと出て行ってしまった。
キッドに軽い挨拶をが、座っているだけで見向きもしない。
買って来たものを運び込みながら、ミティアは食卓テーブルの上の平たい木箱が気になっていた。
「これどうしたの? こんな箱、あったっけ?」
ミティアの質問に答えたのはジェフリーだった。
「あぁっ、それはしまい損ねだ」
ジェフリーが苦笑いで木箱を受付カウンターの下にしまい込んだ。
「ほ、ほら、ここ宿やっていたって博士が言っていただろ? 少し片付けをしていたんだ。古い帳簿とか領収書とか、たくさん出て来たし」
「そ、そうなんだ?」
「ミティアは座ってキッドの話し相手になったらどうだ? 疲れただろ?」
「う、うーん、わかった」
ミティアはお菓子の空箱や缶のケースが入った紙袋に、ジュエリーショップの外袋をしまい込んだ。ミティアは可愛らしいパッケージを取っておく癖がある。それは把握しているが、あまりにも露骨ではなかろうか。レースとリボンが描かれた可愛らしい外袋だ。
ジェフリーは黙って目で追っていた。竜次のあのカバンに収めるには、外袋は邪魔だろう。それに、ミティアが袋をほしがっていたらあげてしまうだろうと予想はできた。
視界が戻らないように振る舞っているキッドは少し笑っている様子だ。多分わかっている。
全貌を知るジェフリーは気まずくなり、ミティアに世間話を持ち掛ける。
「そんなに動いて大丈夫なのか?」
「うん。よくはなったよ? ちゃんと街中歩けたもの」
「本当か? 兄貴に振り回されたんだろうな」
「そ、そんなことないよ?」
ジェフリーはミティアの体調を気にかけていた。竜次は街の構造を知っているはずだ。必要以上に振り回されていないかを疑った。
運び込まれた大きな紙袋から大量の生クリームが出て来て苦笑している。しかも液体の生クリームだ。泡立てるのに苦労しそうだ。ジェフリーはこれを見てため息をついた。
買った物を確認しているジェフリーに、ミティアは袋を手渡した。
「あ、これもそうなの」
「んっ?」
見慣れない大きな手提げの紙袋を持つミティア。そして彼女からほんのり香るいい匂い。いつものミティアの香りではない。
ジェフリーはやはり疑いの目を向けた。
「肉でも食べたのか?」
「えっ、ウソ!? 何でわかったの?」
ミティアはビクッと反応し、脇腹を抑えた。まだ急な運動は体に負担が掛かるようだ。さすがに、ケーシスやアイラに会ったことまではわからないだろうが、純粋にびっくりした。
キッドが食卓テーブルから挙手している。そう言えば彼女の方が敏感だ。
「はーい、羊じゃない?」
ミティアは観念する声を上げる。
「ご、ごめんね、先生とおいしいもの食べちゃって。す、すぐ着替えるから!」
ミティアは食卓テーブルの上にまた別の手提げの紙袋を置き、着け襟のホックを外した。ここで着替えるらしいが、一応キッドが止めに入った。
「せめて見えないところで着替えてあげなさいよ。変態が見てるわよ?」
「み、見てないっ!!」
ジェフリーは見ていないとアピールする。派手に顔を背けていた。
ミティアはそんなジェフリーの気持ちを弄ぶような発言をした。
「別に見られてもいいんだけど。でも、傷口が見えちゃうときっと嫌われちゃうかぁ」
「き、嫌いになんてなるはずが!」
ジェフリーは挑発じみた言葉にむきになり、逸らしていた顔をミティアに向けて目が合った。ミティアの白くてきれいな背中を見てしまった。
肩に顎を乗せるようにミティアはジェフリーを見てにこにこと笑っていた。
「ば、馬鹿!! 脱いでいるならそう言え!!」
「やーい、ジェフリーのえっち」
小悪魔の含み笑いだ。どこでこんなものを覚えたのだろうか。これではジェフリーではなく、『邪フリー』になりかねない。顔を赤くして、もの言いたそうにしている。ミティアに敵うはずがない。
意外だったのは、キッドが痴話に茶々を入れないことだ。
「ねぇ、さっきのスムージーはまだある?」
もう慣れたのだろうか。いつもなら、機嫌悪く指摘を入れるのがキッドだと、誰もが思っていた。だが、流し聞いていた。そしてちゃっかり別の話を振っている。
「ん? スムージー?」
ミティアも不思議に思ってキッドの手元を見ると、小さいグラスがある。目を疑うほど黒緑の液体が入っていた筋が見えた。昨日のシロップよりもひどい色をしている。
「まだ飲むのか? 体を壊さないといいんだけど」
ジェフリーは自然と奥の台所へ消えて行った。これでは着替えに手を貸したと思ってしまうが、どうやら正解のようだ。キッドは笑っている。
「早く着替えたら? 選んでもらったんじゃない?」
「う、うん。解れちゃっていたから、ちゃんとしたものを着なさいって言われたよ」
「きっと素敵なの選んでくれたんでしょうねぇ」
「サイズだけ測って、あとは先生が選んでくれたよ。ちゃんと入るかな」
「あたしと一緒じゃん。どんなのか見たいなぁ?」
ミティアは黒っぽいロングのキャミソール姿だ。キッドは『見たい』と強調していた。それに対し、色くらいは判別できるだろうとミティアは思っていた。実際はもっと見えるようになっているのをまだ知らない。
少ししてジェフリーがグラスを持って戻った。足が自然に止まった。
着替え終わったミティアは姿見の前で悩ましげに体を動かしていた。
「うーん? 前、閉めた方がいいかなぁ? でも足動かしにくくなっちゃうからこれでいいかなぁ?」
「竜次さん、生足はけしからんって、頑固なお父さんみたいなことを言ってなかった?」
「言ってたよぉ。でも、動きにくいのはやだな。やっぱり開けちゃおっと」
爽やかな青いコート調の服だ。正装のようにも思えるが、清楚な部分を残したまま着崩している。ジェフリーはキッドの前にグラスを置いて、姿見を覗き込んだ。
「兄貴は服のセンスがあるらしいな。これなら暖かそうだし、動きやすさを失っていない。いいじゃないか!」
「ほ、本当? 似合ってるかな? 先生によーくお礼言わないと!」
「でも、どうして『青』なんだ?」
ジェフリーにとって素朴な疑問だが、その質問に対し、ミティアは不満に思い口を尖らせる。どうしてわかってくれないのかと、ジェフリーが身に付けているジャケットじっと見つめた。ミティアは反応を待っていた。さすがにこれで気が付いたようだ。
「は、はぁっ!? ま、まいったなぁ。そういうことか」
何があっても変えない、勧めてもこれだけは絶対手放さない。どんなに解れても、汚れても変えようとしなかったジャケット。ミティアのこのこだわりを、普通なら面倒臭いと捉えるかもしれないが、ジェフリーは違っていた。これはさすがに照れてしまう。
ミティアは頬を膨らませ、ジェフリーに向かって言う。
「怒った!」
「わ、悪かった!!」
ミティアは手をうしろで組んで拗ねている。
キッドがいなかったら何をしているかわからないくらい、ミティアが可愛い。小悪魔のように挑発して、その気にさせようとするのは本当にずるい手だ。ジェフリーは翻弄されていた。
キッドはあてられていた。手のひらで扇いでいる。
「あっついわね。おかわりくれない?」
「あっ、わたしも飲みたい!!」
ジェフリーは気まずそうにグラスを取った。
キッドが温厚な性格になって色々と円滑になってやりやすい。だが、口喧嘩が少なくなって少し寂しいと思うことはある。兄があれだけのルックスと教養を身に付けているのだから、ジェフリーも知らないうちに卑屈になりがちな正確ではあった。それも認めてくれる人が居て消えつつある。知らないうちに言葉の棘は少なくなっていた。もちろんそれは悪いことではない。文字通りの毒牙から回復したときは、変わろうとしていたジェフリーに自分には無理をして変わらなくてもいいと言っていた。
一番変わったのはキッドかもしれない。
変わろうと意識などしなくても、大切な人ができたことによって自然に変われた。自分にできることの範囲を諦めていたのに、もっと文字が読めるようになりたいと頑張り始め、新しい変化に踏み込んでいた。これがどんなにすごいことだろう。
ジェフリーはぼんやりと考えながら、スムージーをグラスに入れた。
ミティアは『変化』に気が付いた。
「これ、昨日のよりもニオイが少ないね?」
「ん、あぁ、これ、昨日採って来た薬草と、兄貴が買って来た漢方とかを混ぜてみたんだ。牛乳と野菜と果物も加えて飲みやすいようにはなっているはずなんだけど」
改良を試みたのだが彼女たちは気に入っている様子だ。シャリシャリと氷が加わって冷たくておいしいと評判。煮詰めるよりいいかもしれないと思っての改良だ。
青汁なんかがいい例だろう。シロップよりはずっと栄養価が高い。
「兄貴とも話したんだけど、薬はどうしても限界があるからな。手軽に続くけられる事がいいんじゃないかって。女性はこういうのが好きって、ラジオで言ってたから」
台所の脇にローズが聞いていたコンパクトラジオが置いてある。火に掛かった鍋ではジャガイモの煮える匂いがしてこれも食欲をそそる。
「あぁ、ギルドハンターの大先輩がハヤシライス食べたいって言ってただろ? ちょっとキノコが多いけど、これも体にいいってキノコを選別して使ったんだ」
「えっ、ジェフリーすごいね!! じゃあ、これは?」
食べ物ならば隙がない、台所に来たミティアは、見慣れないものに目を光らせていた。
鍋の中も気になるが、アルミホイルに伸ばされたペースト状のものが気になる。
「ジェフリー、これは?」
「シロップをさらに煮詰めて飴にしたものだ。これなら持って歩けるし、これも体にいいってわかったから利用しない手はないだろう?」
「わあぁ、どうしよう、ジェフリーがすごすぎて、ジェフリーじゃないみたい。どうしちゃったの!?」
目に見えてわかる大きな変化。本人には自覚がなさそうだが、ミティアは目を輝かせながらジェフリーを褒め倒している。
「キッドに、早く復帰してもらいたいから、かな?」
「えっ……」
褒められた勢いから照れ臭くなって視線を逸らす。その仕草が言葉と一致しなくて、ミティアは心がチクッとしてしまった。立派なヤキモチだ。まだ顔に出やすくて助かる。
ジェフリーはすぐに詫びた。
「も、もちろんミティアにだってよくなってもらいたい!!」
「うー、わかってる。わかってるけど!!」
ジェフリーのヤキモチは拗らせ気味であったのに対し、ミティアはこの場で吐き出すタイプのようだ。しかも顔にも声にも出てしまう。小悪魔っぽい仕草や言動だけではなく、ヤキモチも立派。まだ、わかりやすいというのが可愛いと思える。
キッドが馬鹿にするように笑って、ミティアを安心させようとしていた。
「心配しなくても、あたし、竜次さん一筋だから。そいつにちょっかい出したりしないわよ。ミティアが泣いちゃうわ」
ジェフリーはキッドの言い方が気になった。気味が悪いと言ったらいつもの反応に戻ってくれるかもしれない。以前のように露骨な毛嫌いをしていない。ちょっかいを出さないと言ったり、ミティアを気遣ったり、行動や態度に謎が多い。その気があったのかと思うと自意識過剰なので、この辺りで詮索は控えようと思った。
ジェフリーは持ち出し用の紙皿と食器を引き出した。言われていた海岸へ持って行くつもりだ。どうせ、何人かは徹夜で過ごそうとしているに違いない。
ジェフリーは鍋の火を止め、蓋を開ける。するとトマトの煮えたいい香りが広がった。これだけでもおいしそうだが、ここにルーを溶かして混ぜる。
「も、もうおいしそう!!」
「兄貴とうまい物、食って来たくせに」
「ちょっとしか食べられなかったよ。でもそのあとにおやつでスコーンを食べたけど」
「よく食うなぁ」
「ち、ちゃんと消費もしてるもん!!」
「それだけ治りが早いと、すぐ本調子に戻れるな?」
普通に歩けているし、街中で買い物をして歩けたのだ。予想以上に治りが早いのはもしかしたら、本当にシロップの効能のせいかもしれない。
ジェフリーは自分がもたらせる変化にやりがいを感じていた。自分がしたことで誰かを笑顔にできて、そして体にいいことができるなんて、これ以上のやりがいはない。
おかしなものだ。やりたいことを見付ける、将来について考える、仲間や大切な人が傷付いて意識が変わって、やりたいことが見付かった。幸いだが、誰も命を落としてはいない。ミティアやキッドの怪我によって得た知識だ。竜次の理解も援助も、コーディや壱子の協力も、仲間がいなかったら成し得ることはできなかった。どんな意味があるのかわかっていた。わかっていて、ある一つの決心がついた。
ぼんやりと靄がかかっていた。それがスッと晴れたような満足そうな表情。ジェフリーは背筋を伸ばして、自信に満ちた笑顔を見せた。
ミティアはジェフリーの顔をじっと見ていた。
「どうしたの? ぼうっとして」
「いや、何となく、こんな俺でも誰かの役に立てると知って、少しだけ自分が存在している意味ができたみたいな気がしたんだ。俺は自分に何の価値があるのかを見出せないまま、こんな年まで生きちまったな」
ジェフリーらしくないと思ったのか、質問の主であるミティアは怪訝な顔をしていた。
「わたしに『この世に生きてちゃいけない命なんてない』って言ったの、誰だっけ?」
流れで言ったミティアの言葉。ジェフリーは初めて違和感を覚えた。確かにそれは自分が言った言葉だ。許嫁を失ってから幾度となく自分に刻み、生きることを諦めている者にも言って励まして来た。ミティアも例外ではない。
ミティアはその言葉に救われ、胸に留めていた。
「いい言葉だよね。ジェフリーにとって、座右の銘なの?」
「…………」
「今度は怖い顔をして、どうしたの?」
「いや……」
頭の中を奥から抉られるような感覚だ。人に言われた言葉だとは思う。無意識に自分で言い聞かせていたはずなのに、由来が思い出せない。走る痛みに耐えきれなくなり、ジェフリーはかぶりを振った。
ミティアは棚からグラスを取り出し、水を注いだ。
「み、水……」
「すまない」
ミティアは水の入ったグラスを差し出した。
ジェフリーはためらいもせずに一気飲みをした。それでもジェフリーは落ち着かない。思い詰めた表情にミティアは心配で仕方がなかった。
「ジェフリー、顔色が悪いよ。大丈夫?」
「ミティアが悪いわけじゃないんだ。俺こそごめん。ただその言葉、自分以外から言われたことがあったはずだ。だが、誰の言葉なのか、思い出せない」
「少し座って?」
ジェフリーは頭を抱えながら食卓に戻り、椅子に腰掛けた。深いため息。まるで自分の体がおかしくなってしまったような錯覚を起こす。
息遣いを耳にしたキッドは気持ちを汲み取った。
「あんたさ、魔導士狩りのとき、その場所にいたんでしょ? 案外、自分でも知らないトラウマでも抱えてるんじゃない?」
「あぁ、そうかもしれないな」
「あんなものを体験して、ちゃんと覚えてる方がおかしいんじゃない? あたしはちゃんと覚えてるけどね。足に大怪我して、母さんに負ぶってもらったもの」
「怪我……か」
ジェフリーは、思い出せなくても仕方がないものだとは思った。サキが記憶を失ったのも、魔導士狩りのせいだと言っていた。そこにあった平和な日常が一瞬にして崩れた日、ジェフリーだってその戦火の中にいた。許嫁が暴漢に襲われ、非力な自分は逃げるしかできなかった忌まわしい過去だ。
途中で見た自分の手は、真っ赤だった。怪我をして、どうなったのかを覚えていない。再生したビデオテープにノイズと砂嵐が混ざるように、ジェフリーの記憶が混乱する。途切れてしまった記憶の向こう、覚えていた頃には、もう剣術学校にいた。非力な自分が悔しくて、強くなりたいと剣を振っていた自分。経緯が欠落している。本当に思い出せない。
『自分はあのとき、死んだのかもしれない』
ミティアは明るい話題もなくフォローしきれないと思った。台所からラジオを持って来て座る。
「ら、ラジオでも聴こうか。えっと、こうだっけ」
アンテナを伸ばし、何となくスイッチを入れていじっていると、ノイズに混じって人の声を拾った。キッドは手を伸ばす。
「貸して? ツマミ、どこだっけ」
キッドがラジオを受け取って、手探りで調節をする。
「なんか音楽でもやってないかなって。でも、あんまり聴けるものがないんだっけ」
明るい話題はキッドも自信がない。ミティアと適当にいちゃついてもらっていた方が、気が晴れるかと思った。だが、どうもそういう空気ではない。
ラジオのノイズが遠ざかり、声が乱れなく入って来た。
これも明るい話題ではなかった。
『えー、連日お届けしている奇跡の光について続報です』
キッドは手を止め、ラジオに耳を傾けた。
「あぁ、この話、ギルドに行ってないからわかんないわね」
ミティアも疑問に思った。興味を抱くのは、光の柱を自分の目で見たせいだ。
「街中で話を聞かないけど、これって結局何なのかな?」
キッドもミティアも聴き入っていた。最終目的地になるかもしれないが、その準備で皆は出払っている。
『昨日派遣されたギルドの偵察部隊の船はいまだに帰って来ておりません。そのため本日の早朝に新たに三隻派遣されましたがこちらも連絡は入って来ておりません。大渦の海域は流れが速く、定期船が引きずり込まれそうになったとのことです』
雲行きの怪しい話をしている。同時に嫌な予感がした。キッドがため息をつく。
「ギルドのハンターか。アイラさんはこの仕事、引き受けてないといいな。なんて、都合がいいことを言っちゃいけないか」
「アイラさんは大丈夫だよっ!!」
キッドの心配の声に、ミティアは思わず自信満々に答えてしまった。これを聞いたジェフリーは顔を上げる。
「おばさんに、会ったのか?」
「あ、あぁぅ……」
自分がやせ我慢をする嘘もそうだが、ミティアは基本的に嘘が下手だ。自分以外についての嘘はもっとわかりやすく、簡単にボロが出やすい。
それを知っていて、ジェフリーはあえて質問を続けた。
「だから肉なんて食べたのか? なるほど。元気にしていたのならいい。でも、久しぶりに会って話したい気もするな」
ジェフリーはこういうところで察しがいい。ミティアがアイラに会ったなら、明日も会えると思っていいのだなと、少し複雑だが目でサインを送る。言及はしないが、キッドも本当は察しが付いている。買い物が遅くなったのはこのせいだろう。
ミティアはそわそわしていた。ケーシスについては竜次と明日まで話さないと約束していたのを口にしてしまいそうになっていた。今のところ、アイラだけだと思われていているようだ。本当にミティアは隠しごとが苦手だ。ここを絶えなくてはならない。
キッドも同じことを思っていた。アイラと話せる機会もそうだが、無事でいてくれたのなら、よかった。とりあえずはこの場の雰囲気が少しだが和らいだと感じ、ラジオを切ろうとした。
『たっ、たった今、速報が入ってまいりました!! フィラノス北部に発生した大渦の調査に出た部隊ですが、何と全滅したとのことです!! 繰り返します……』
ジェフリーはガタッと音を立てて席を立った。そのままミティアと目が合ったが、考えていることは同じだ。そして静かにラジオのスイッチを切ったキッドは言う。
「あたしたち、まずいことをしようとしてるんじゃないわよね? 多分だけど、その光の柱って言うのは、あたしたちを指定しているんじゃない?」
キッドの一言が妙に痛む。だが、その可能性は濃厚だ。
ジェフリーは嫌な予感を加速させる。
「そうかもしれない。これは、話した方がいいだろうな」
「でも、おかしいよね。ジェフリーや先生に宛てた手紙があって、ケーシスさんも目的地はその光の指す方なんでしょう?」
「キッドが言うように、俺たち以外は招かれざる客って言いたいのか?」
「そうじゃなかったら、天空都市には何が待っているの?」
ミティアの声が震えている。怖いのだ。当然だろう。
ジェフリーは窓を見て、まだ明るいのを確認した。腰に剣を下げて、身支度を整えていた。そしてミテイアに告げる。
「ちょっとギルドの様子を見に行って来る」
「えっ、一人になっちゃいけないって……」
「すぐ戻る!」
いても立ってもいられず、ジェフリーはミティアの制止を払って情報収集に出て行ってしまった。
キッドが取り乱すかと思ったがおとなしい。
「ど、どうしよう、追い駆けた方がいいかな?」
慌てているのはミティアだけ、キッドは完全に視界が戻っているわけではないので静かにしている。いつもだったら罵声くらい浴びせるのかもしれないが、温厚なものだ。
「放っておきなさい。男って、何かに夢中になってないといけないときってあるわよ」
「でも、ジェフリーの様子がおかしいよ?」
「あいつ、いつもおかしいじゃない。今に始まったことじゃないわ」
「そ、そうじゃなくてぇ」
手をぶんぶんと振って取り乱すミティア。その様子にキッドはくすっと笑った。
「ふふっ……」
座ったまま日常を楽しむ自然な笑い方だ。ミティアはあることに気が付いた。
「もしかして、わたしが見えているの?」
キッドは目を開いてミティアの方を見るも、苦笑いに変わった。
「まだぼんやり、なのよね。目は開くようになったけど、もう少し時間が掛かりそう」
「痛くない?」
「背中とかはまだ痛いわよ? 頭だって抜糸はもう少し先。痛み止めも抗生剤もまだ飲んでるし、不自由はいっぱい。それでも、失明しなくて済んだのはあいつと竜次さんのおかげなのよね。どれだけ感謝したらいいのかわからないわ」
動きを目で追ってはくれるが、微妙に焦点は合っていない。この状況で長時間目を開けているのはつらそうだ。
キッドは目を瞑って息をついた。
「無理だったな。やっぱり潮時かもね」
「キッド……」
ミティアがスムージーの残りを持って来て、隣に座った。氷は溶けて既にただのジュースだ。それでも何もないよりは気まずくないと持って来たのだ。
「あたしの誕生日、色々考えてくれているんでしょう? でも、あたしは全部を見ることができない」
「そ、それもバレてるんだ。ま、まだ諦めちゃダメだよ。今日ゆっくり寝たらよくなっているかもしれないじゃない!?」
キッドは目頭を押さえ、悲痛な表情を浮かべる。
ミティアにはどうすることもできない。ましてや安っぽい言葉なんて掛けられないからだ。
「わたしがキッドにしてもらっていたこと……」
ミティアは思い出しながらキッドに触れようとする。だが、キッドは頭を打っている。背中も痛いと言っていた。せいぜい手を握ることしかできない。何もできない、励ますこともできない。ミティアは心と痛めた。
「キッド、ごめんね」
「あたしのせいなのに、ミティアが泣くなんておかしいじゃない」
「わたしはいつもみんなに助けてもらっているのに、何もできない」
キッドはつられて泣いているミティアに抱き着こうとするが、隣の席だと言うのに縺れて椅子から転げ落ちた。そのぶつかり所が悪かった。椅子の足に頭を打ってしまったのだ。テーブルの上のグラスや花瓶が跳ねる音もした。
「キッド! し、しっかりして!!」
ミティアが手を貸そうとするが、キッドはその手を反射的に払ってしまった。手を弾かれたことに対し、ミティアはわけがわからなくなり動揺する。
「どうし、たの?」
「ミティアはいいよね。みんなに助けてもらって、居場所があって、みんなに好かれて。寂しくないもんね」
「キッド?」
キッドは座り込んで床に手を着いたまま肩を揺らして泣いた。
「ミティアはあたしと違って、可愛くて、女の子っぽいし、いいところがいっぱいある。だから、みんなに好かれてているし必要とされている」
ミティアは目を見開き、呆然とした。
「一緒に食事をしたんでしょう? 本当にそれだけなの? あたしから竜次さんを取らないで。ミティアは、あたしのほしいもの、大切なものを、全部、持って行っちゃう! ずるい、ずるいよ……」
ミティアは同様のあまり、ガタッと大きな音を立て、椅子を倒した。泣き崩れる親友が放つ、心の闇を初めて知った。親友であることが当然であるがゆえに聞けなかったこと、聞かなかったこと、何となく当然のように過ごしていた。それが、こんなにも親友を傷付けていたなんて。
皆には気を遣っていたのに、キッドには気を遣えなかった。
「ち、ち、がう。わ、わた、し、先生と何も……」
言われたショック、知らなかったでは済まされない日々、自分が意識しないまま親友をこんなに傷付けていたと知ったミティアは無意識に涙があふれていた。誤解を解きたいのに、何も言葉が出てこない。自分がこんなに憎まれていたのを知った。そのショックの方が大きかった。
キッドは言葉にしてしまったことを激しく後悔していた。謝りたいと顔を上げたときはすでにミティアの姿はなかった。虚しく、ドアベルだけが響く。
「えっ……?」
ドアベルが鳴った。つまり、ミティアはこの家を飛び出して行ったのだ。そして、キッドはもう一つ、変化に気が付いた。
「見え、てる? どうして?」
霞んでいた視界がハッキリと見えている。ぶつけた頭、背中もまだ痛む。微かに霞むのは、涙のせいだ。目を擦りながら家の中を見渡す。首に痛さを感じながら天井を仰いだが、これも問題なく見えた。
「あたし……」
今までずっと堪えて来たのに、我慢して来たのに。不自由を強いられ、回復しない体に苛立って、何もできないと嘆く親友につらく当たってしまった。
立ち上がってテーブルの上を見ても違和感なく見える。花瓶に活けてある花達、二つ並んだグラス。止まっているラジオ。虚しい空間、自分が言った言葉で親友との信頼を崩してしまった。ことの重大さに気が付いた。
「馬鹿! あたしの、馬鹿!!」
大粒の涙が手の甲に落ちた。
カランカランと鳴ったドアベルでキッドは顔を上げた。ジェフリーが帰って来たのだ。
「悪い。今帰っ……」
何枚かの紙を握りしめたジェフリーだ。キッドの顔を見て言葉を詰まらせている。ジェフリーが何かを言う前に、キッドが胸倉につかみかかる。
「ミティアがどこかに行っちゃったのっ!! お願い、探して!!」
「お、俺がいない間に何が起きたんだ!? まさか、誰かに!?」
「ち、違うのっ!! あたしが、あたしがいけないの!!」
キッドは激しく首を振って否定する。ジェフリーはキッドの目を見て気が付いた。
「お前、目、戻ったのか?」
キッドの目は何となく焦点が合わないままだった。眼鏡を掛けて誤魔化しながら過ごした時間もあったが、それもつらそうだった。だが、今はしっかりと目を見て訴え掛けて来る。
「そんなことはいいの。あたし、ミティアにひどいことを言っちゃった。八つ当たりをした。それで、泣いてどっかに行っちゃったの!!」
「は、はぁっ!? もうじき日が暮れるぞ!」
外は暗くなり始めている。ミティアは新しい服に着替えたせいで、剣もポーチも置きっぱなしだ。もし街中で何かあったらと思うとぞっとする。
この家にキッド一人にしておくわけにもいかない。ジェフリーはキッドを連れ出そうと試みる。
「キッドは走れるか?」
「頑張って追い付いて行く。一緒に探してくれる!?」
「サキがいないんだ。自分の足で探すしかない。すぐに出よう!」
鍵はローズから預かっていたので軽く戸締りだけして家を出た。日が沈もうとしている。街には人も少ない。これからもっと街が静かになって行く。人が少なくなってきたら探しやすいのかもしれないが、ミティアが身に纏っている服が違う。見慣れない格好だ。
そしてこの二人はこの街に詳しくない。繁華街に出ることくらいしか、思いつかなかった。キッドは訛った足で走ったせいで、肩で息をしている。
ジェフリーは足を止め、キッドを気遣った。
「動かなかった人間が急に走るのは無理がある。少し休もう」
「馬鹿言わないでっ!!」
「そうやっていつも意地張って……」
「あんたに言われたくないっ!!」
ムッとしていがみ合う。両者意地っ張りなことは今にわかったことではない。
キッドは呼吸を整えながら、考えごとをしていた。ミティアはこれまで外の世界で気を引いた物に近寄ったりすることがあった。それは脇道がほとんどだ。他に行きそうな場所の見当がつかない。キッドはこの街に詳しくない。このまま見つからなかったどうしようかと悪い方へ考えてしまう。
ジェフリーはキッドにことの詳細を訪ねた。
「ミティアと何の喧嘩をしたんだ?」
「あたしも人のこと、言えないわ。嫉妬よ」
さすがのジェフリーも舌打をして呆れている。自分もサキに嫉妬をして亀裂を修復した経緯があるからだ。どれほど仲間に迷惑を掛けるのか、知っていて、今度は自分が力になろうと決めた。
「ここは繁華街だ。ちょっとだけここで休んでてくれ。地図をもらって来る」
ジェフリーは気を利かせて近くの大きな店に入って行った。大きな店なら、だいたいパンフレットくらいはあるはず。目ぼしいものを見付けて摘まみ戻った。
キッドは猫を探すように裏路地を覗き込んでいた。猫でもいれば、ミティアは追うかもしれないが、整った街でそのような様子がない。
この街にはスラム街や廃墟もなさそうだし、よくも悪くも整い過ぎている。
キッドは裏通りの向こうに見える明かりをぼんやりと見ていた。そこへジェフリーが駆けつけ、キッドを気遣った。
「ここがフィラノスだったら、こういうところにいるかもしれないな」
「路地裏に縁がありそうよね」
思い出が駆け巡る。キッドは長い間、本当は親友を演じていただけなのかもしれないと自身を問い詰めた。ミティアの好みや誕生日などのパーソナルデータはわかっている。だが、どんな過去があったのか、どんなトラウマを抱えていたのかを知らなかった。知ろうともしなかった。聞いてしまったら『親友』ではいられない気がした。それとは別に、キッドは過去を振り返らない主義だとその主張を貫いていた。自分もミティアに過去を打ち明けていない。魔導士狩りに遭ったとしか、話していない。
ジェフリーは黙り込んでいるキッドを励まそうと試みる。今立ち止まっては、ミティアを探し出せる希望が薄れるからだ。
「傷は浅いうちにって誰かの言葉があってだな?」
「ん、竜次さんの言葉でしょ?」
「俺は兄貴みたいに心に響くような説教はできないから。その、すまないな?」
キッドはクスクスと笑いながらジェフリーを小馬鹿にする。
「ほんと、あんたって不器用。竜次さんとそっくりね」
「顔は天と地の差だ。安心しろ」
「馬鹿みたい。あんたも、あたしも」
下手な励まし方、だが、その中でさり気ない気遣いをするのがジェフリー。何とかしようとドツボにはまるのが竜次である。一緒にいるぶんには楽かもしれないが、キッドがジェフリーの相手をするのはやはり堅苦しい。
ジェフリーはキッドの姿を確認し、歩きながら話す。
「ミティアが、何でも持ってると思ってたのか? 綺麗で可愛くて、明るいし、みんなに愛されて羨ましいとか、親しまれているのがずるいだとか」
「…………」
ジェフリーはキッドと顔を合わせないまま、パタパタと捲って地図を見付けては方向を確かめている。その割には言っていることが的を射ている。
キッドにはそれが憎たらしく思えた。
「あんたさぁ、言ってて恥ずかしくないの?」
「お、俺はミティアのことが好きだ。だから、あいつが持っているものは俺だって把握している。でも、何よりも脆くて崩れやすい。それでも誰かのために必死で、力になりたいっていつも願って、そして無茶をする!」
「はぁ、ほんと、羨ましい」
裏路地を巡って、さらに繁華街を一周したが、ミティアは見付からない。そもそもまったくの見当違いと言うことも考えられた。
「城に行くはずがないし、みんなの所でしょげているような奴でもない。学校、ギルド、食事処、歓楽街なんてこれからまずい場所なんだから行くはずがないし……」
街に明かりが灯る。人がさらに少なくなり、不安が増す。キッドの表情も暗くなって来た。咄嗟に出て来てしまったジェフリーとしては、ここはキッドの気持ちを汲み取ってやりたい。
「みんなに迷惑かけたくない。そうだよな?」
キッドは思い詰めた表情のまま、深く頷いた。
「あたしがやったことだもの。本当ならあんたの力なんて借りないで、自分で責任を取りたい。あんたに対しても、悪いと思うもの」
「俺はいいとして、ミティアに何かあったらさすがに責任も何もない。サキの手を借りずにミティアを探せるいい手はないのか? 俺にはあぁいった便利な魔法は使えないし」
裏路地で思考を巡らせるもいい案は思い付かない。ジェフリーが困ったときに手を貸してくれるサキも、アドバイスをくれる幻獣たちもいない。
外を歩き慣れないキッドに疲労の色が見えた。訛った体で街中を歩くのがどれほど負担か掛かるのか、ジェフリーは知っている。
汗だくになったジェフリーは、前髪をかき上げながら焦りの色を顔に出していた。キッドは膝に手を付き少し屈んで深呼吸を繰り返している。
今度は表通りを探そうと明るい道を目指すが、反対方向、つまり背後に黒い影が落ちた。ほとんど音はないが、鈴の音が耳に障った。
ジェフリーは咄嗟にキッドの手を引き、腕で庇うように後退させる。ほとんど誰なのかわかっていても、反射的になってしまった。
声をかけて来たのは、鈴の音の主、クディフだ。
「悪くない反応だが、以前より鈍いな」
対話したのはジェフリーだ。殺意がない。襲って来る様子はないようだが心臓に悪い。
「どうしてこの街に? って、そうか、博士と先生の家があるからか」
差し込む街の明かりにクディフの銀の髪が光る。裏路地という場所、黒いマントのせいで、完全に悪者にしか見えない。ジェフリーは早々に警戒を解いたが、キッドは泥棒でも見付けた番犬のように睨み付けて警戒を解かない。
クディフは二人に言う。
「困っているなら手を貸してやってもいい」
薄暗いが表情くらいは読み取れる。クディフは嫌らしくも余裕の笑みだ。いつもこの顔が気に食わないのはキッドだ。
あまりにも虫がよすぎるので、ジェフリーも怪訝な表情を浮かべる。
「そ、その前に、フィラノスで手を貸してくれた礼が言いたい。その説は助かった」
「礼を忘れないのはよい心得だが、彼女を追うのは急ぎではないのか?」
「知ってるのか!? ミティアの居場所! どうして!?」
ジェフリーの問いに、クディフは人差し指で空を指した。
「街は変化する。人の動きも店も城も、見渡せるのは屋根の上だ。文豪のイーグルサントも知っている」
クディフの言葉に、ジェフリーはある疑いを持った。
「お前、まさか白狼じゃなくて、猫か?」
「…………」
クディフの眉間に深いシワが刻まれた。機嫌を悪くした。うしろを向いて、今にも去ろうとしている。ジェフリーは慌てて呼び止めた。
「なっ、ちょ、ちょっと待ってくれ!! 悪かった! 知っていて、どうしてわざわざ俺に言いに来たのかを聞きたい!」
数歩歩いたところで銀の髪が揺れて振り返る。このキザっぽくて人を弄ぶような笑みが憎たらしいはずなのに、信じられないほど手を貸してくれている。
キッドはようやく警戒を解いた。クディフが手を貸す理由に耳を傾ける。
「泣いている淑女を慰めるのは俺の役目ではないと判断した」
「えっ、もしかして、あんたって、意外といい奴?」
「街道へ向かえ。悪い虫が付く前に」
もう少し歩み寄ることができるかもしれないというところで、いつもクディフは姿をくらませる。手の内だけではなく、心の内側もわからない。
街道と言われ、二人は頷いて方向を確かめる。ところが地理に明るくない二人は正面からぶつかり、もつれた。とんだポンコツコンビだ。
「ねぇ、どっちなの!?」
キッドの激怒が始まった。
「道まで聞いた方がよかったんじゃない!? 何考えてるかわからないだけじゃなくて、本当に使えない男ね、あんた!!」
「ぷっ……」
ジェフリーは思わず笑う。
不意に笑った顔が、竜次が子どもっぽさを見せた笑い方に似ているので、キッドは見惚れてしまった。だが、キッドはすぐに我に返り、怒る。
「な、何よ!? 気色悪いわね!!」
「いや、おとなしくなったキッドに違和感しかなかったから、この接し方が懐かしい」
「えっ、ちょっと、ホントに無理! やっぱり変態なんじゃない!?」
蔑む言葉、ゴキブリかゴミでも見るような刺す目線。いつものキッドだ。ジェフリーが知っている、もっとも『らしい』キッドが見られて安心した。
それはキッドも同じだった。油断すると腑抜けた顔をするこの目付きの悪いジェフリーを見て安心した。
錯覚だ。
お互いが一瞬だけでも、一緒にいて心を許してしまうなんて。幻想だ。そんな道があったとしても、きっと今からでは茨の道。何かを犠牲にする道だ。
今が一番大切なものであることに気付かされた。
竜次はバタバタとしながら身支度を整え、ショコラと出て行ってしまった。
キッドに軽い挨拶をが、座っているだけで見向きもしない。
買って来たものを運び込みながら、ミティアは食卓テーブルの上の平たい木箱が気になっていた。
「これどうしたの? こんな箱、あったっけ?」
ミティアの質問に答えたのはジェフリーだった。
「あぁっ、それはしまい損ねだ」
ジェフリーが苦笑いで木箱を受付カウンターの下にしまい込んだ。
「ほ、ほら、ここ宿やっていたって博士が言っていただろ? 少し片付けをしていたんだ。古い帳簿とか領収書とか、たくさん出て来たし」
「そ、そうなんだ?」
「ミティアは座ってキッドの話し相手になったらどうだ? 疲れただろ?」
「う、うーん、わかった」
ミティアはお菓子の空箱や缶のケースが入った紙袋に、ジュエリーショップの外袋をしまい込んだ。ミティアは可愛らしいパッケージを取っておく癖がある。それは把握しているが、あまりにも露骨ではなかろうか。レースとリボンが描かれた可愛らしい外袋だ。
ジェフリーは黙って目で追っていた。竜次のあのカバンに収めるには、外袋は邪魔だろう。それに、ミティアが袋をほしがっていたらあげてしまうだろうと予想はできた。
視界が戻らないように振る舞っているキッドは少し笑っている様子だ。多分わかっている。
全貌を知るジェフリーは気まずくなり、ミティアに世間話を持ち掛ける。
「そんなに動いて大丈夫なのか?」
「うん。よくはなったよ? ちゃんと街中歩けたもの」
「本当か? 兄貴に振り回されたんだろうな」
「そ、そんなことないよ?」
ジェフリーはミティアの体調を気にかけていた。竜次は街の構造を知っているはずだ。必要以上に振り回されていないかを疑った。
運び込まれた大きな紙袋から大量の生クリームが出て来て苦笑している。しかも液体の生クリームだ。泡立てるのに苦労しそうだ。ジェフリーはこれを見てため息をついた。
買った物を確認しているジェフリーに、ミティアは袋を手渡した。
「あ、これもそうなの」
「んっ?」
見慣れない大きな手提げの紙袋を持つミティア。そして彼女からほんのり香るいい匂い。いつものミティアの香りではない。
ジェフリーはやはり疑いの目を向けた。
「肉でも食べたのか?」
「えっ、ウソ!? 何でわかったの?」
ミティアはビクッと反応し、脇腹を抑えた。まだ急な運動は体に負担が掛かるようだ。さすがに、ケーシスやアイラに会ったことまではわからないだろうが、純粋にびっくりした。
キッドが食卓テーブルから挙手している。そう言えば彼女の方が敏感だ。
「はーい、羊じゃない?」
ミティアは観念する声を上げる。
「ご、ごめんね、先生とおいしいもの食べちゃって。す、すぐ着替えるから!」
ミティアは食卓テーブルの上にまた別の手提げの紙袋を置き、着け襟のホックを外した。ここで着替えるらしいが、一応キッドが止めに入った。
「せめて見えないところで着替えてあげなさいよ。変態が見てるわよ?」
「み、見てないっ!!」
ジェフリーは見ていないとアピールする。派手に顔を背けていた。
ミティアはそんなジェフリーの気持ちを弄ぶような発言をした。
「別に見られてもいいんだけど。でも、傷口が見えちゃうときっと嫌われちゃうかぁ」
「き、嫌いになんてなるはずが!」
ジェフリーは挑発じみた言葉にむきになり、逸らしていた顔をミティアに向けて目が合った。ミティアの白くてきれいな背中を見てしまった。
肩に顎を乗せるようにミティアはジェフリーを見てにこにこと笑っていた。
「ば、馬鹿!! 脱いでいるならそう言え!!」
「やーい、ジェフリーのえっち」
小悪魔の含み笑いだ。どこでこんなものを覚えたのだろうか。これではジェフリーではなく、『邪フリー』になりかねない。顔を赤くして、もの言いたそうにしている。ミティアに敵うはずがない。
意外だったのは、キッドが痴話に茶々を入れないことだ。
「ねぇ、さっきのスムージーはまだある?」
もう慣れたのだろうか。いつもなら、機嫌悪く指摘を入れるのがキッドだと、誰もが思っていた。だが、流し聞いていた。そしてちゃっかり別の話を振っている。
「ん? スムージー?」
ミティアも不思議に思ってキッドの手元を見ると、小さいグラスがある。目を疑うほど黒緑の液体が入っていた筋が見えた。昨日のシロップよりもひどい色をしている。
「まだ飲むのか? 体を壊さないといいんだけど」
ジェフリーは自然と奥の台所へ消えて行った。これでは着替えに手を貸したと思ってしまうが、どうやら正解のようだ。キッドは笑っている。
「早く着替えたら? 選んでもらったんじゃない?」
「う、うん。解れちゃっていたから、ちゃんとしたものを着なさいって言われたよ」
「きっと素敵なの選んでくれたんでしょうねぇ」
「サイズだけ測って、あとは先生が選んでくれたよ。ちゃんと入るかな」
「あたしと一緒じゃん。どんなのか見たいなぁ?」
ミティアは黒っぽいロングのキャミソール姿だ。キッドは『見たい』と強調していた。それに対し、色くらいは判別できるだろうとミティアは思っていた。実際はもっと見えるようになっているのをまだ知らない。
少ししてジェフリーがグラスを持って戻った。足が自然に止まった。
着替え終わったミティアは姿見の前で悩ましげに体を動かしていた。
「うーん? 前、閉めた方がいいかなぁ? でも足動かしにくくなっちゃうからこれでいいかなぁ?」
「竜次さん、生足はけしからんって、頑固なお父さんみたいなことを言ってなかった?」
「言ってたよぉ。でも、動きにくいのはやだな。やっぱり開けちゃおっと」
爽やかな青いコート調の服だ。正装のようにも思えるが、清楚な部分を残したまま着崩している。ジェフリーはキッドの前にグラスを置いて、姿見を覗き込んだ。
「兄貴は服のセンスがあるらしいな。これなら暖かそうだし、動きやすさを失っていない。いいじゃないか!」
「ほ、本当? 似合ってるかな? 先生によーくお礼言わないと!」
「でも、どうして『青』なんだ?」
ジェフリーにとって素朴な疑問だが、その質問に対し、ミティアは不満に思い口を尖らせる。どうしてわかってくれないのかと、ジェフリーが身に付けているジャケットじっと見つめた。ミティアは反応を待っていた。さすがにこれで気が付いたようだ。
「は、はぁっ!? ま、まいったなぁ。そういうことか」
何があっても変えない、勧めてもこれだけは絶対手放さない。どんなに解れても、汚れても変えようとしなかったジャケット。ミティアのこのこだわりを、普通なら面倒臭いと捉えるかもしれないが、ジェフリーは違っていた。これはさすがに照れてしまう。
ミティアは頬を膨らませ、ジェフリーに向かって言う。
「怒った!」
「わ、悪かった!!」
ミティアは手をうしろで組んで拗ねている。
キッドがいなかったら何をしているかわからないくらい、ミティアが可愛い。小悪魔のように挑発して、その気にさせようとするのは本当にずるい手だ。ジェフリーは翻弄されていた。
キッドはあてられていた。手のひらで扇いでいる。
「あっついわね。おかわりくれない?」
「あっ、わたしも飲みたい!!」
ジェフリーは気まずそうにグラスを取った。
キッドが温厚な性格になって色々と円滑になってやりやすい。だが、口喧嘩が少なくなって少し寂しいと思うことはある。兄があれだけのルックスと教養を身に付けているのだから、ジェフリーも知らないうちに卑屈になりがちな正確ではあった。それも認めてくれる人が居て消えつつある。知らないうちに言葉の棘は少なくなっていた。もちろんそれは悪いことではない。文字通りの毒牙から回復したときは、変わろうとしていたジェフリーに自分には無理をして変わらなくてもいいと言っていた。
一番変わったのはキッドかもしれない。
変わろうと意識などしなくても、大切な人ができたことによって自然に変われた。自分にできることの範囲を諦めていたのに、もっと文字が読めるようになりたいと頑張り始め、新しい変化に踏み込んでいた。これがどんなにすごいことだろう。
ジェフリーはぼんやりと考えながら、スムージーをグラスに入れた。
ミティアは『変化』に気が付いた。
「これ、昨日のよりもニオイが少ないね?」
「ん、あぁ、これ、昨日採って来た薬草と、兄貴が買って来た漢方とかを混ぜてみたんだ。牛乳と野菜と果物も加えて飲みやすいようにはなっているはずなんだけど」
改良を試みたのだが彼女たちは気に入っている様子だ。シャリシャリと氷が加わって冷たくておいしいと評判。煮詰めるよりいいかもしれないと思っての改良だ。
青汁なんかがいい例だろう。シロップよりはずっと栄養価が高い。
「兄貴とも話したんだけど、薬はどうしても限界があるからな。手軽に続くけられる事がいいんじゃないかって。女性はこういうのが好きって、ラジオで言ってたから」
台所の脇にローズが聞いていたコンパクトラジオが置いてある。火に掛かった鍋ではジャガイモの煮える匂いがしてこれも食欲をそそる。
「あぁ、ギルドハンターの大先輩がハヤシライス食べたいって言ってただろ? ちょっとキノコが多いけど、これも体にいいってキノコを選別して使ったんだ」
「えっ、ジェフリーすごいね!! じゃあ、これは?」
食べ物ならば隙がない、台所に来たミティアは、見慣れないものに目を光らせていた。
鍋の中も気になるが、アルミホイルに伸ばされたペースト状のものが気になる。
「ジェフリー、これは?」
「シロップをさらに煮詰めて飴にしたものだ。これなら持って歩けるし、これも体にいいってわかったから利用しない手はないだろう?」
「わあぁ、どうしよう、ジェフリーがすごすぎて、ジェフリーじゃないみたい。どうしちゃったの!?」
目に見えてわかる大きな変化。本人には自覚がなさそうだが、ミティアは目を輝かせながらジェフリーを褒め倒している。
「キッドに、早く復帰してもらいたいから、かな?」
「えっ……」
褒められた勢いから照れ臭くなって視線を逸らす。その仕草が言葉と一致しなくて、ミティアは心がチクッとしてしまった。立派なヤキモチだ。まだ顔に出やすくて助かる。
ジェフリーはすぐに詫びた。
「も、もちろんミティアにだってよくなってもらいたい!!」
「うー、わかってる。わかってるけど!!」
ジェフリーのヤキモチは拗らせ気味であったのに対し、ミティアはこの場で吐き出すタイプのようだ。しかも顔にも声にも出てしまう。小悪魔っぽい仕草や言動だけではなく、ヤキモチも立派。まだ、わかりやすいというのが可愛いと思える。
キッドが馬鹿にするように笑って、ミティアを安心させようとしていた。
「心配しなくても、あたし、竜次さん一筋だから。そいつにちょっかい出したりしないわよ。ミティアが泣いちゃうわ」
ジェフリーはキッドの言い方が気になった。気味が悪いと言ったらいつもの反応に戻ってくれるかもしれない。以前のように露骨な毛嫌いをしていない。ちょっかいを出さないと言ったり、ミティアを気遣ったり、行動や態度に謎が多い。その気があったのかと思うと自意識過剰なので、この辺りで詮索は控えようと思った。
ジェフリーは持ち出し用の紙皿と食器を引き出した。言われていた海岸へ持って行くつもりだ。どうせ、何人かは徹夜で過ごそうとしているに違いない。
ジェフリーは鍋の火を止め、蓋を開ける。するとトマトの煮えたいい香りが広がった。これだけでもおいしそうだが、ここにルーを溶かして混ぜる。
「も、もうおいしそう!!」
「兄貴とうまい物、食って来たくせに」
「ちょっとしか食べられなかったよ。でもそのあとにおやつでスコーンを食べたけど」
「よく食うなぁ」
「ち、ちゃんと消費もしてるもん!!」
「それだけ治りが早いと、すぐ本調子に戻れるな?」
普通に歩けているし、街中で買い物をして歩けたのだ。予想以上に治りが早いのはもしかしたら、本当にシロップの効能のせいかもしれない。
ジェフリーは自分がもたらせる変化にやりがいを感じていた。自分がしたことで誰かを笑顔にできて、そして体にいいことができるなんて、これ以上のやりがいはない。
おかしなものだ。やりたいことを見付ける、将来について考える、仲間や大切な人が傷付いて意識が変わって、やりたいことが見付かった。幸いだが、誰も命を落としてはいない。ミティアやキッドの怪我によって得た知識だ。竜次の理解も援助も、コーディや壱子の協力も、仲間がいなかったら成し得ることはできなかった。どんな意味があるのかわかっていた。わかっていて、ある一つの決心がついた。
ぼんやりと靄がかかっていた。それがスッと晴れたような満足そうな表情。ジェフリーは背筋を伸ばして、自信に満ちた笑顔を見せた。
ミティアはジェフリーの顔をじっと見ていた。
「どうしたの? ぼうっとして」
「いや、何となく、こんな俺でも誰かの役に立てると知って、少しだけ自分が存在している意味ができたみたいな気がしたんだ。俺は自分に何の価値があるのかを見出せないまま、こんな年まで生きちまったな」
ジェフリーらしくないと思ったのか、質問の主であるミティアは怪訝な顔をしていた。
「わたしに『この世に生きてちゃいけない命なんてない』って言ったの、誰だっけ?」
流れで言ったミティアの言葉。ジェフリーは初めて違和感を覚えた。確かにそれは自分が言った言葉だ。許嫁を失ってから幾度となく自分に刻み、生きることを諦めている者にも言って励まして来た。ミティアも例外ではない。
ミティアはその言葉に救われ、胸に留めていた。
「いい言葉だよね。ジェフリーにとって、座右の銘なの?」
「…………」
「今度は怖い顔をして、どうしたの?」
「いや……」
頭の中を奥から抉られるような感覚だ。人に言われた言葉だとは思う。無意識に自分で言い聞かせていたはずなのに、由来が思い出せない。走る痛みに耐えきれなくなり、ジェフリーはかぶりを振った。
ミティアは棚からグラスを取り出し、水を注いだ。
「み、水……」
「すまない」
ミティアは水の入ったグラスを差し出した。
ジェフリーはためらいもせずに一気飲みをした。それでもジェフリーは落ち着かない。思い詰めた表情にミティアは心配で仕方がなかった。
「ジェフリー、顔色が悪いよ。大丈夫?」
「ミティアが悪いわけじゃないんだ。俺こそごめん。ただその言葉、自分以外から言われたことがあったはずだ。だが、誰の言葉なのか、思い出せない」
「少し座って?」
ジェフリーは頭を抱えながら食卓に戻り、椅子に腰掛けた。深いため息。まるで自分の体がおかしくなってしまったような錯覚を起こす。
息遣いを耳にしたキッドは気持ちを汲み取った。
「あんたさ、魔導士狩りのとき、その場所にいたんでしょ? 案外、自分でも知らないトラウマでも抱えてるんじゃない?」
「あぁ、そうかもしれないな」
「あんなものを体験して、ちゃんと覚えてる方がおかしいんじゃない? あたしはちゃんと覚えてるけどね。足に大怪我して、母さんに負ぶってもらったもの」
「怪我……か」
ジェフリーは、思い出せなくても仕方がないものだとは思った。サキが記憶を失ったのも、魔導士狩りのせいだと言っていた。そこにあった平和な日常が一瞬にして崩れた日、ジェフリーだってその戦火の中にいた。許嫁が暴漢に襲われ、非力な自分は逃げるしかできなかった忌まわしい過去だ。
途中で見た自分の手は、真っ赤だった。怪我をして、どうなったのかを覚えていない。再生したビデオテープにノイズと砂嵐が混ざるように、ジェフリーの記憶が混乱する。途切れてしまった記憶の向こう、覚えていた頃には、もう剣術学校にいた。非力な自分が悔しくて、強くなりたいと剣を振っていた自分。経緯が欠落している。本当に思い出せない。
『自分はあのとき、死んだのかもしれない』
ミティアは明るい話題もなくフォローしきれないと思った。台所からラジオを持って来て座る。
「ら、ラジオでも聴こうか。えっと、こうだっけ」
アンテナを伸ばし、何となくスイッチを入れていじっていると、ノイズに混じって人の声を拾った。キッドは手を伸ばす。
「貸して? ツマミ、どこだっけ」
キッドがラジオを受け取って、手探りで調節をする。
「なんか音楽でもやってないかなって。でも、あんまり聴けるものがないんだっけ」
明るい話題はキッドも自信がない。ミティアと適当にいちゃついてもらっていた方が、気が晴れるかと思った。だが、どうもそういう空気ではない。
ラジオのノイズが遠ざかり、声が乱れなく入って来た。
これも明るい話題ではなかった。
『えー、連日お届けしている奇跡の光について続報です』
キッドは手を止め、ラジオに耳を傾けた。
「あぁ、この話、ギルドに行ってないからわかんないわね」
ミティアも疑問に思った。興味を抱くのは、光の柱を自分の目で見たせいだ。
「街中で話を聞かないけど、これって結局何なのかな?」
キッドもミティアも聴き入っていた。最終目的地になるかもしれないが、その準備で皆は出払っている。
『昨日派遣されたギルドの偵察部隊の船はいまだに帰って来ておりません。そのため本日の早朝に新たに三隻派遣されましたがこちらも連絡は入って来ておりません。大渦の海域は流れが速く、定期船が引きずり込まれそうになったとのことです』
雲行きの怪しい話をしている。同時に嫌な予感がした。キッドがため息をつく。
「ギルドのハンターか。アイラさんはこの仕事、引き受けてないといいな。なんて、都合がいいことを言っちゃいけないか」
「アイラさんは大丈夫だよっ!!」
キッドの心配の声に、ミティアは思わず自信満々に答えてしまった。これを聞いたジェフリーは顔を上げる。
「おばさんに、会ったのか?」
「あ、あぁぅ……」
自分がやせ我慢をする嘘もそうだが、ミティアは基本的に嘘が下手だ。自分以外についての嘘はもっとわかりやすく、簡単にボロが出やすい。
それを知っていて、ジェフリーはあえて質問を続けた。
「だから肉なんて食べたのか? なるほど。元気にしていたのならいい。でも、久しぶりに会って話したい気もするな」
ジェフリーはこういうところで察しがいい。ミティアがアイラに会ったなら、明日も会えると思っていいのだなと、少し複雑だが目でサインを送る。言及はしないが、キッドも本当は察しが付いている。買い物が遅くなったのはこのせいだろう。
ミティアはそわそわしていた。ケーシスについては竜次と明日まで話さないと約束していたのを口にしてしまいそうになっていた。今のところ、アイラだけだと思われていているようだ。本当にミティアは隠しごとが苦手だ。ここを絶えなくてはならない。
キッドも同じことを思っていた。アイラと話せる機会もそうだが、無事でいてくれたのなら、よかった。とりあえずはこの場の雰囲気が少しだが和らいだと感じ、ラジオを切ろうとした。
『たっ、たった今、速報が入ってまいりました!! フィラノス北部に発生した大渦の調査に出た部隊ですが、何と全滅したとのことです!! 繰り返します……』
ジェフリーはガタッと音を立てて席を立った。そのままミティアと目が合ったが、考えていることは同じだ。そして静かにラジオのスイッチを切ったキッドは言う。
「あたしたち、まずいことをしようとしてるんじゃないわよね? 多分だけど、その光の柱って言うのは、あたしたちを指定しているんじゃない?」
キッドの一言が妙に痛む。だが、その可能性は濃厚だ。
ジェフリーは嫌な予感を加速させる。
「そうかもしれない。これは、話した方がいいだろうな」
「でも、おかしいよね。ジェフリーや先生に宛てた手紙があって、ケーシスさんも目的地はその光の指す方なんでしょう?」
「キッドが言うように、俺たち以外は招かれざる客って言いたいのか?」
「そうじゃなかったら、天空都市には何が待っているの?」
ミティアの声が震えている。怖いのだ。当然だろう。
ジェフリーは窓を見て、まだ明るいのを確認した。腰に剣を下げて、身支度を整えていた。そしてミテイアに告げる。
「ちょっとギルドの様子を見に行って来る」
「えっ、一人になっちゃいけないって……」
「すぐ戻る!」
いても立ってもいられず、ジェフリーはミティアの制止を払って情報収集に出て行ってしまった。
キッドが取り乱すかと思ったがおとなしい。
「ど、どうしよう、追い駆けた方がいいかな?」
慌てているのはミティアだけ、キッドは完全に視界が戻っているわけではないので静かにしている。いつもだったら罵声くらい浴びせるのかもしれないが、温厚なものだ。
「放っておきなさい。男って、何かに夢中になってないといけないときってあるわよ」
「でも、ジェフリーの様子がおかしいよ?」
「あいつ、いつもおかしいじゃない。今に始まったことじゃないわ」
「そ、そうじゃなくてぇ」
手をぶんぶんと振って取り乱すミティア。その様子にキッドはくすっと笑った。
「ふふっ……」
座ったまま日常を楽しむ自然な笑い方だ。ミティアはあることに気が付いた。
「もしかして、わたしが見えているの?」
キッドは目を開いてミティアの方を見るも、苦笑いに変わった。
「まだぼんやり、なのよね。目は開くようになったけど、もう少し時間が掛かりそう」
「痛くない?」
「背中とかはまだ痛いわよ? 頭だって抜糸はもう少し先。痛み止めも抗生剤もまだ飲んでるし、不自由はいっぱい。それでも、失明しなくて済んだのはあいつと竜次さんのおかげなのよね。どれだけ感謝したらいいのかわからないわ」
動きを目で追ってはくれるが、微妙に焦点は合っていない。この状況で長時間目を開けているのはつらそうだ。
キッドは目を瞑って息をついた。
「無理だったな。やっぱり潮時かもね」
「キッド……」
ミティアがスムージーの残りを持って来て、隣に座った。氷は溶けて既にただのジュースだ。それでも何もないよりは気まずくないと持って来たのだ。
「あたしの誕生日、色々考えてくれているんでしょう? でも、あたしは全部を見ることができない」
「そ、それもバレてるんだ。ま、まだ諦めちゃダメだよ。今日ゆっくり寝たらよくなっているかもしれないじゃない!?」
キッドは目頭を押さえ、悲痛な表情を浮かべる。
ミティアにはどうすることもできない。ましてや安っぽい言葉なんて掛けられないからだ。
「わたしがキッドにしてもらっていたこと……」
ミティアは思い出しながらキッドに触れようとする。だが、キッドは頭を打っている。背中も痛いと言っていた。せいぜい手を握ることしかできない。何もできない、励ますこともできない。ミティアは心と痛めた。
「キッド、ごめんね」
「あたしのせいなのに、ミティアが泣くなんておかしいじゃない」
「わたしはいつもみんなに助けてもらっているのに、何もできない」
キッドはつられて泣いているミティアに抱き着こうとするが、隣の席だと言うのに縺れて椅子から転げ落ちた。そのぶつかり所が悪かった。椅子の足に頭を打ってしまったのだ。テーブルの上のグラスや花瓶が跳ねる音もした。
「キッド! し、しっかりして!!」
ミティアが手を貸そうとするが、キッドはその手を反射的に払ってしまった。手を弾かれたことに対し、ミティアはわけがわからなくなり動揺する。
「どうし、たの?」
「ミティアはいいよね。みんなに助けてもらって、居場所があって、みんなに好かれて。寂しくないもんね」
「キッド?」
キッドは座り込んで床に手を着いたまま肩を揺らして泣いた。
「ミティアはあたしと違って、可愛くて、女の子っぽいし、いいところがいっぱいある。だから、みんなに好かれてているし必要とされている」
ミティアは目を見開き、呆然とした。
「一緒に食事をしたんでしょう? 本当にそれだけなの? あたしから竜次さんを取らないで。ミティアは、あたしのほしいもの、大切なものを、全部、持って行っちゃう! ずるい、ずるいよ……」
ミティアは同様のあまり、ガタッと大きな音を立て、椅子を倒した。泣き崩れる親友が放つ、心の闇を初めて知った。親友であることが当然であるがゆえに聞けなかったこと、聞かなかったこと、何となく当然のように過ごしていた。それが、こんなにも親友を傷付けていたなんて。
皆には気を遣っていたのに、キッドには気を遣えなかった。
「ち、ち、がう。わ、わた、し、先生と何も……」
言われたショック、知らなかったでは済まされない日々、自分が意識しないまま親友をこんなに傷付けていたと知ったミティアは無意識に涙があふれていた。誤解を解きたいのに、何も言葉が出てこない。自分がこんなに憎まれていたのを知った。そのショックの方が大きかった。
キッドは言葉にしてしまったことを激しく後悔していた。謝りたいと顔を上げたときはすでにミティアの姿はなかった。虚しく、ドアベルだけが響く。
「えっ……?」
ドアベルが鳴った。つまり、ミティアはこの家を飛び出して行ったのだ。そして、キッドはもう一つ、変化に気が付いた。
「見え、てる? どうして?」
霞んでいた視界がハッキリと見えている。ぶつけた頭、背中もまだ痛む。微かに霞むのは、涙のせいだ。目を擦りながら家の中を見渡す。首に痛さを感じながら天井を仰いだが、これも問題なく見えた。
「あたし……」
今までずっと堪えて来たのに、我慢して来たのに。不自由を強いられ、回復しない体に苛立って、何もできないと嘆く親友につらく当たってしまった。
立ち上がってテーブルの上を見ても違和感なく見える。花瓶に活けてある花達、二つ並んだグラス。止まっているラジオ。虚しい空間、自分が言った言葉で親友との信頼を崩してしまった。ことの重大さに気が付いた。
「馬鹿! あたしの、馬鹿!!」
大粒の涙が手の甲に落ちた。
カランカランと鳴ったドアベルでキッドは顔を上げた。ジェフリーが帰って来たのだ。
「悪い。今帰っ……」
何枚かの紙を握りしめたジェフリーだ。キッドの顔を見て言葉を詰まらせている。ジェフリーが何かを言う前に、キッドが胸倉につかみかかる。
「ミティアがどこかに行っちゃったのっ!! お願い、探して!!」
「お、俺がいない間に何が起きたんだ!? まさか、誰かに!?」
「ち、違うのっ!! あたしが、あたしがいけないの!!」
キッドは激しく首を振って否定する。ジェフリーはキッドの目を見て気が付いた。
「お前、目、戻ったのか?」
キッドの目は何となく焦点が合わないままだった。眼鏡を掛けて誤魔化しながら過ごした時間もあったが、それもつらそうだった。だが、今はしっかりと目を見て訴え掛けて来る。
「そんなことはいいの。あたし、ミティアにひどいことを言っちゃった。八つ当たりをした。それで、泣いてどっかに行っちゃったの!!」
「は、はぁっ!? もうじき日が暮れるぞ!」
外は暗くなり始めている。ミティアは新しい服に着替えたせいで、剣もポーチも置きっぱなしだ。もし街中で何かあったらと思うとぞっとする。
この家にキッド一人にしておくわけにもいかない。ジェフリーはキッドを連れ出そうと試みる。
「キッドは走れるか?」
「頑張って追い付いて行く。一緒に探してくれる!?」
「サキがいないんだ。自分の足で探すしかない。すぐに出よう!」
鍵はローズから預かっていたので軽く戸締りだけして家を出た。日が沈もうとしている。街には人も少ない。これからもっと街が静かになって行く。人が少なくなってきたら探しやすいのかもしれないが、ミティアが身に纏っている服が違う。見慣れない格好だ。
そしてこの二人はこの街に詳しくない。繁華街に出ることくらいしか、思いつかなかった。キッドは訛った足で走ったせいで、肩で息をしている。
ジェフリーは足を止め、キッドを気遣った。
「動かなかった人間が急に走るのは無理がある。少し休もう」
「馬鹿言わないでっ!!」
「そうやっていつも意地張って……」
「あんたに言われたくないっ!!」
ムッとしていがみ合う。両者意地っ張りなことは今にわかったことではない。
キッドは呼吸を整えながら、考えごとをしていた。ミティアはこれまで外の世界で気を引いた物に近寄ったりすることがあった。それは脇道がほとんどだ。他に行きそうな場所の見当がつかない。キッドはこの街に詳しくない。このまま見つからなかったどうしようかと悪い方へ考えてしまう。
ジェフリーはキッドにことの詳細を訪ねた。
「ミティアと何の喧嘩をしたんだ?」
「あたしも人のこと、言えないわ。嫉妬よ」
さすがのジェフリーも舌打をして呆れている。自分もサキに嫉妬をして亀裂を修復した経緯があるからだ。どれほど仲間に迷惑を掛けるのか、知っていて、今度は自分が力になろうと決めた。
「ここは繁華街だ。ちょっとだけここで休んでてくれ。地図をもらって来る」
ジェフリーは気を利かせて近くの大きな店に入って行った。大きな店なら、だいたいパンフレットくらいはあるはず。目ぼしいものを見付けて摘まみ戻った。
キッドは猫を探すように裏路地を覗き込んでいた。猫でもいれば、ミティアは追うかもしれないが、整った街でそのような様子がない。
この街にはスラム街や廃墟もなさそうだし、よくも悪くも整い過ぎている。
キッドは裏通りの向こうに見える明かりをぼんやりと見ていた。そこへジェフリーが駆けつけ、キッドを気遣った。
「ここがフィラノスだったら、こういうところにいるかもしれないな」
「路地裏に縁がありそうよね」
思い出が駆け巡る。キッドは長い間、本当は親友を演じていただけなのかもしれないと自身を問い詰めた。ミティアの好みや誕生日などのパーソナルデータはわかっている。だが、どんな過去があったのか、どんなトラウマを抱えていたのかを知らなかった。知ろうともしなかった。聞いてしまったら『親友』ではいられない気がした。それとは別に、キッドは過去を振り返らない主義だとその主張を貫いていた。自分もミティアに過去を打ち明けていない。魔導士狩りに遭ったとしか、話していない。
ジェフリーは黙り込んでいるキッドを励まそうと試みる。今立ち止まっては、ミティアを探し出せる希望が薄れるからだ。
「傷は浅いうちにって誰かの言葉があってだな?」
「ん、竜次さんの言葉でしょ?」
「俺は兄貴みたいに心に響くような説教はできないから。その、すまないな?」
キッドはクスクスと笑いながらジェフリーを小馬鹿にする。
「ほんと、あんたって不器用。竜次さんとそっくりね」
「顔は天と地の差だ。安心しろ」
「馬鹿みたい。あんたも、あたしも」
下手な励まし方、だが、その中でさり気ない気遣いをするのがジェフリー。何とかしようとドツボにはまるのが竜次である。一緒にいるぶんには楽かもしれないが、キッドがジェフリーの相手をするのはやはり堅苦しい。
ジェフリーはキッドの姿を確認し、歩きながら話す。
「ミティアが、何でも持ってると思ってたのか? 綺麗で可愛くて、明るいし、みんなに愛されて羨ましいとか、親しまれているのがずるいだとか」
「…………」
ジェフリーはキッドと顔を合わせないまま、パタパタと捲って地図を見付けては方向を確かめている。その割には言っていることが的を射ている。
キッドにはそれが憎たらしく思えた。
「あんたさぁ、言ってて恥ずかしくないの?」
「お、俺はミティアのことが好きだ。だから、あいつが持っているものは俺だって把握している。でも、何よりも脆くて崩れやすい。それでも誰かのために必死で、力になりたいっていつも願って、そして無茶をする!」
「はぁ、ほんと、羨ましい」
裏路地を巡って、さらに繁華街を一周したが、ミティアは見付からない。そもそもまったくの見当違いと言うことも考えられた。
「城に行くはずがないし、みんなの所でしょげているような奴でもない。学校、ギルド、食事処、歓楽街なんてこれからまずい場所なんだから行くはずがないし……」
街に明かりが灯る。人がさらに少なくなり、不安が増す。キッドの表情も暗くなって来た。咄嗟に出て来てしまったジェフリーとしては、ここはキッドの気持ちを汲み取ってやりたい。
「みんなに迷惑かけたくない。そうだよな?」
キッドは思い詰めた表情のまま、深く頷いた。
「あたしがやったことだもの。本当ならあんたの力なんて借りないで、自分で責任を取りたい。あんたに対しても、悪いと思うもの」
「俺はいいとして、ミティアに何かあったらさすがに責任も何もない。サキの手を借りずにミティアを探せるいい手はないのか? 俺にはあぁいった便利な魔法は使えないし」
裏路地で思考を巡らせるもいい案は思い付かない。ジェフリーが困ったときに手を貸してくれるサキも、アドバイスをくれる幻獣たちもいない。
外を歩き慣れないキッドに疲労の色が見えた。訛った体で街中を歩くのがどれほど負担か掛かるのか、ジェフリーは知っている。
汗だくになったジェフリーは、前髪をかき上げながら焦りの色を顔に出していた。キッドは膝に手を付き少し屈んで深呼吸を繰り返している。
今度は表通りを探そうと明るい道を目指すが、反対方向、つまり背後に黒い影が落ちた。ほとんど音はないが、鈴の音が耳に障った。
ジェフリーは咄嗟にキッドの手を引き、腕で庇うように後退させる。ほとんど誰なのかわかっていても、反射的になってしまった。
声をかけて来たのは、鈴の音の主、クディフだ。
「悪くない反応だが、以前より鈍いな」
対話したのはジェフリーだ。殺意がない。襲って来る様子はないようだが心臓に悪い。
「どうしてこの街に? って、そうか、博士と先生の家があるからか」
差し込む街の明かりにクディフの銀の髪が光る。裏路地という場所、黒いマントのせいで、完全に悪者にしか見えない。ジェフリーは早々に警戒を解いたが、キッドは泥棒でも見付けた番犬のように睨み付けて警戒を解かない。
クディフは二人に言う。
「困っているなら手を貸してやってもいい」
薄暗いが表情くらいは読み取れる。クディフは嫌らしくも余裕の笑みだ。いつもこの顔が気に食わないのはキッドだ。
あまりにも虫がよすぎるので、ジェフリーも怪訝な表情を浮かべる。
「そ、その前に、フィラノスで手を貸してくれた礼が言いたい。その説は助かった」
「礼を忘れないのはよい心得だが、彼女を追うのは急ぎではないのか?」
「知ってるのか!? ミティアの居場所! どうして!?」
ジェフリーの問いに、クディフは人差し指で空を指した。
「街は変化する。人の動きも店も城も、見渡せるのは屋根の上だ。文豪のイーグルサントも知っている」
クディフの言葉に、ジェフリーはある疑いを持った。
「お前、まさか白狼じゃなくて、猫か?」
「…………」
クディフの眉間に深いシワが刻まれた。機嫌を悪くした。うしろを向いて、今にも去ろうとしている。ジェフリーは慌てて呼び止めた。
「なっ、ちょ、ちょっと待ってくれ!! 悪かった! 知っていて、どうしてわざわざ俺に言いに来たのかを聞きたい!」
数歩歩いたところで銀の髪が揺れて振り返る。このキザっぽくて人を弄ぶような笑みが憎たらしいはずなのに、信じられないほど手を貸してくれている。
キッドはようやく警戒を解いた。クディフが手を貸す理由に耳を傾ける。
「泣いている淑女を慰めるのは俺の役目ではないと判断した」
「えっ、もしかして、あんたって、意外といい奴?」
「街道へ向かえ。悪い虫が付く前に」
もう少し歩み寄ることができるかもしれないというところで、いつもクディフは姿をくらませる。手の内だけではなく、心の内側もわからない。
街道と言われ、二人は頷いて方向を確かめる。ところが地理に明るくない二人は正面からぶつかり、もつれた。とんだポンコツコンビだ。
「ねぇ、どっちなの!?」
キッドの激怒が始まった。
「道まで聞いた方がよかったんじゃない!? 何考えてるかわからないだけじゃなくて、本当に使えない男ね、あんた!!」
「ぷっ……」
ジェフリーは思わず笑う。
不意に笑った顔が、竜次が子どもっぽさを見せた笑い方に似ているので、キッドは見惚れてしまった。だが、キッドはすぐに我に返り、怒る。
「な、何よ!? 気色悪いわね!!」
「いや、おとなしくなったキッドに違和感しかなかったから、この接し方が懐かしい」
「えっ、ちょっと、ホントに無理! やっぱり変態なんじゃない!?」
蔑む言葉、ゴキブリかゴミでも見るような刺す目線。いつものキッドだ。ジェフリーが知っている、もっとも『らしい』キッドが見られて安心した。
それはキッドも同じだった。油断すると腑抜けた顔をするこの目付きの悪いジェフリーを見て安心した。
錯覚だ。
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