婚約破棄?その言葉待ってました!(歓喜)

ネコフク

文字の大きさ
2 / 18

はて?

しおりを挟む
「はい、喜んで!」

「は?」

 あら、聞こえなかったのかしら?ならばもう一度。

「はい、喜んで!」

「・・・・・・」

 あらら?ライノール様がバカみたいに口を開けておりますわ。隣のマリア様も同じ。やっぱり聞こえなかったのかしら?ではもう一度。

「はい、喜んで!」

「なぜだぁぁぁ!!」

「?」

 急に叫ばれたライノール様に分からずこてりと首を傾げる。返事をしただけなのに何故わたくしは叫ばれているのでしょうね?

「え、と。殿下が婚約破棄とおっしゃったので返事をしたのですが?」

「それが何で喜んでなんだ!お前俺の婚約者だろ!」

「いえ婚約者ですわ。たった今殿下が婚約破棄したのではないですか。もうお忘れで?」

「いやいやいや、普通泣いてすがるとかあるだろ!何で喜んでるんだよ!」

「はて?」

 叫んで息が切れたのか肩ではあはあとするライノール様に疑問符が浮かぶ。

「何故泣いて縋らなければいけないのですか?もしかして婚約破棄の礼儀作法としてやらねばならないのでしょうか?」

「いや・・・・・・そういう訳では・・・・・・」

 しどろもどろになるライノール様に痺れを切らしたのかマリア様が叫びます。

「ごめんなさい・・・!ライ様と私が惹かれ会っちゃったからイリスリア様が嫉妬してしまったんですよね。だから嫌がらせをしたんですよね。謝って下さい!謝ってくれたら私許しますから!」

「はて?」

 ぽろぽろと泣きながら訴える姿は庇護欲をそそりますね。そんなマリア様の震える肩をライノール様は抱きしめわたくしを睨みます。

「そ・・・・・・そうだ!俺達に嫉妬してマリアに嫌がらせしたんだろ!謝れ!」

「嫌がらせとは?わたくし身に覚えがありませんの。お教えいただけますか?」

 そもそもマリア様とは教室や取っている教科が違います。それなのに接点がほとんど無いわたくしがどうやって嫌がらせをするのでしょうか。

「廊下を走ってはいけないとか!」

「ええ、危ないので注意しました。案の定その後転んでましたわね」

「笑っていただけなのに怒られたわ!」

「咀嚼中の食べ物を入れたまま大口を開けて笑うんですもの。淑女としてありえませんわ」

 これには周りも顔をしかめたり「うえ~」という嫌そうな声が聞こえてきます。高位貴族だけではなく下位貴族や平民でもその行為はマナー違反なのですから。寧ろ食べかけのものを見せられたわたくしの方が被害者です。

「そっ・・・そうやって俺にも口煩く言うじゃないか!飲み物一つ好きなのを口に出来ないんだ!」

「それは殿下のお腹が弱いのに冷たい飲み物ばかり飲もうとするからですわ。それにいつもお腹を出して寝て朝「ぽんぽん痛い~」とおっしゃっているではありませんか」

「なっ・・・・・・」

 あらま。お腹を出して寝ている事は秘密にしてくれと言われていたのに言ってしまいましたわ。
 クスクスと周りから漏れる声に殿下が真っ赤になって震えています。

「すみません殿下、秘密だったのに話してしまいました」

 これはわたくしが悪いので謝りますが、殿下の震えが余計大きくなってしまいました。

「貴様・・・・・・」

「でもわたくししか言っていませんわ。だから寝る時は腹巻きをして寝るように、と」

「もうそれはいい!お前とは婚約破棄だ!泣いて縋ってももう遅いぞ!」

 誤魔化しましたわね。それはいいですが何度も指を差さないでほしいですわ。はあ・・・・・・面倒くさくなってきましたがもう一度言わせていただきます。

「はい、喜んで!」

「だから何で喜ぶんだ!」



 何でって嬉しいからに決まっているじゃないですか!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「婚約破棄だ」と叫ぶ殿下、国の実務は私ですが大丈夫ですか?〜私は冷徹宰相補佐と幸せになります〜

万里戸千波
恋愛
公爵令嬢リリエンは卒業パーティーの最中、突然婚約者のジェラルド王子から婚約破棄を申し渡された

王太子殿下のおっしゃる意味がよくわかりません~知能指数が離れすぎていると、会話が成立しない件

碧井 汐桜香
恋愛
天才マリアーシャは、お馬鹿な王子の婚約者となった。マリアーシャが王妃となることを条件に王子は王太子となることができた。 王子の代わりに勉学に励み、国を発展させるために尽力する。 ある日、王太子はマリアーシャに婚約破棄を突きつける。 知能レベルの違う二人の会話は成り立つのか?

その婚約破棄喜んで

空月 若葉
恋愛
 婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。  そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。 注意…主人公がちょっと怖いかも(笑) 4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。 完結後、番外編を付け足しました。 カクヨムにも掲載しています。

悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)

三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。

【完】婚約破棄ですか? これが普通ですよね

えとう蜜夏
恋愛
王国の夜会で第一王子のフィリップからアマーリエ公爵令嬢に婚約破棄を言い渡された。よくある婚約破棄の一場面です。ゆるっとふわっと仕様です。 Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

婚約破棄されたけど、どうして王子が泣きながら戻ってくるんですか?

ほーみ
恋愛
「――よって、リリアーヌ・アルフェン嬢との婚約は、ここに破棄とする!」  華やかな夜会の真っ最中。  王子の口から堂々と告げられたその言葉に、場は静まり返った。 「……あ、そうなんですね」  私はにこやかにワイングラスを口元に運ぶ。周囲の貴族たちがどよめく中、口をぽかんと開けたままの王子に、私は笑顔でさらに一言添えた。 「で? 次のご予定は?」 「……は?」

破棄ですか?私は構いませんよ?

satomi
恋愛
なんだかよくわからない理由で王太子に婚約破棄をされたミシェル=オーグ公爵令嬢。王太子のヴレイヴ=クロム様はこの婚約破棄を国王・王妃には言ってないらしく、サプライズで敢行するらしい。サプライズ過ぎです。 その後のミシェルは…というかオーグ家は…

公爵令嬢は婚約破棄に感謝した。

見丘ユタ
恋愛
卒業パーティーのさなか、公爵令嬢マリアは公爵令息フィリップに婚約破棄を言い渡された。

処理中です...