顔バレしたくなくて陰キャを装ったら速攻バレました

ネコフク

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番外編

桜宮真尋

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「真尋さんお疲れ様です!」

「お疲れ様」

 マネージャーやスタッフを後ろに従えながら悠然と歩く桜宮真尋は女優である。

 どかりとパイプ椅子に座っていても損なわない風格と華やかなオーラは他者を寄せ付けないほど圧倒的だ。
 眼差しだけで相手を凍らせ、昂らせ、平伏させる。

 うねる艷やかな黒髪に40を越えているのに30代前半にも見える美貌、子供を3人も産んだとは思えないプロポーション。海外からもオファーが来るほどの演技力。

 まさに女王・桜宮真尋である。


 ◇◇◇◇◇


「ちょっと志摩ちゃん、脱ぎ散らかさないでよぉ!」

 すっぴんで長い髪を後ろで一つにまとめ、風呂場へ向かいながら靴下、ズボンと抜け殻を落としていった息子にぷんすこと頬を膨らませながら怒る母親。

 こちらがの桜宮真尋である。

 真尋は女優とプライベートが全く違うタイプで普段はそこら辺の可愛い奥様だ。

「真尋さんどうしたんだい?」

 上階から降りてきて後ろから真尋を抱き締めるスーツの男性は桜宮鷹介おうすけ、真尋の旦那様であり桜宮三姉弟の父である。

「ちょっと聞いてよぉ、志摩ちゃんってば脱ぎ散らかして行くのよぉ!」

「それはいけないね」

 そう言いながら頬にせっせとキスをする鷹介は怒っても怖くない真尋に朝からデレデレだ。

「はいはい片づけは私がやりますからお2人はお食事をなさって下さい」

 家政婦の斗和子に促され食事をしていると華と水樹が部屋から降りてきて席に着く。2人共寝起きの為目が半分ほと開いていない。華に至ってはこっくりと舟を漕いでいる。

「あれー?みんな揃ってるー」

 短時間でシャワーを浴びた志摩が、タオルを肩にかけ家族がダイニングテーブルに座っているのに驚きながら自分の席に座る。今朝の朝食はハムエッグサンドとサラダにコーンスープだ。

「志摩が久しぶりに帰って来たから一緒に食べようと思って頑張って起きたんだよ」

 寝ぼけながらもコーンスープをかき回し水樹が話すと「そっか」と志摩が少し照れるのを温かい目で見つめる。志摩が高校から家を出てから家族で食事をすることが少なくなり、帰って来た時は余程の事がない限りはみんな一緒に食べるようにしている。そして必ず志摩の好物を並べる。みんな末っ子には甘いのだ。

「志摩夕飯は食べるんでしょ?」

「うん。日中は兄さんと服見てくる」

「私は会社だ。夕飯には間に合うように帰る」

「私はママと一緒に事務所に顔を出すわぁ」

 もぐもぐとゆっくり食べながらみんなで1日の予定を確認していく。これは桜宮家のルーティンで揃わない時は家族LINEで話している。

 食事が終わりみんなを送り出すと真尋は華と一緒に事務所に行く。都心にある個人事務所はスタッフを入れて20人ほど。在席しているのも真尋以外はハナミズキと志摩、青藍と緋色のみなので人数は足りているが、打ち合わせの部屋や衣装部屋などがある為、ビルのワンフロア全てが事務所となっている。その一室、座り心地の良い俗に言う社長椅子にゆったりと座り、書類を眺める。

「結城、直近3ヶ月の宝飾関係と被服関係と芸能関係のパーティーで私とセイとヒイロが一緒に出られるもののリストを出しておいて。それと黒主家と如月家が参加するものもね」

「分かりました。30分ほどお時間を下さい」

 秘書の結城が出て行くとソファーに座って携帯をいじっていた華が顔を上げる。

「顔売り?」

「そうよ。そろそろ会社を立ち上げるようだから顔を繋げてあげようかと思って。私が顔が利くものは私が連れて行くし、他は鷹介さんが連れて行くわ。それに桜宮家が黒主家と如月家と仲が良いところを見せれば信頼も付いて来る。人脈ばかりはあの子達ではどうしようもないからお膳立てはしてあげるわ。後は2人の努力次第ね」

「志摩の為だもんねぇ。成功して志摩の幸せにしてもらわないといけないしぃ。あっ、SNS関係はどうするぅ?モデルやってるからずっと誘われてるんだよねぇ」

「ダメよ。ある事無い事書かれても困るし、彼女ヅラしたりハニートラップを仕掛けられる可能性があるから。きちんと立ち上げるまでスキャンダルになるようなものは避けないと」

「だよねぇ。連絡してくる女ってめっちゃ狙ってる臭がするもん。こっちで止めとくねぇ」

 辛い事があったから余計に幸せになって欲しいと過剰なまでに裏工作する家族はやっぱり志摩に甘いのだ。


 ◇◇◇◇◇


 じゅうじゅうパチパチ鶏肉を揚げる音とカチャカチャとカトラリーが並べられる音がもうすぐ夕飯だと知らせてくる。

 今日は隣に住む智也一家も一緒に食べるとあってテーブルには大量のおかずが並んでいる。ポークピカタに海藻サラダ、トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ、筑前煮、牛肉のさび焼き、今揚げているチキン南蛮……どれも志摩と智也の好物だ。

 いつもは家政婦の斗和子が食事を用意するが、志摩や智也が帰って来た時は真尋と智也の母である妹の千尋で料理する。

 その間旦那様と子供達は交代でイカがインクを出しまくるゲームをしている。あまりの白熱ぶりを見るとどうやら貰い物の某遊園地のペアチケットが商品らしい。

「イカーーーー!!」

「いやお前もイカだろ」

「それはイカんぞぉ!!」

「鷹介がイカった!!(爆笑)」

「ちょっと華それはイカがなもんかな」

「水樹イカらないでぇ」

「くっだらねえー(笑)」

「みんなーご飯よぉ」

 わいわい楽しそうにしているみんなに声をかけるとゲームを止めわらわらと席に着く。

「わー美味そう」

「やった、チキン南蛮がある!」

 嬉しそうに好物を頬張る息子に真尋と千尋は顔を見合わせ微笑む。
 大学に入って月一しか帰って来ない志摩と智也に料理を振る舞うのを2人は密かに楽しみにしている。智也は一人っ子なので余計にだ。

 未成年以外はワインやビールを飲みながら食事を楽しみ、その後某有名キャラクターのカートゲームで飲酒運転を繰り広げ撃沈し、今回も志摩と智也が商品を勝ち取りお開きになった。


 ◇◇◇◇◇


 某スタジオにて


「想い耽ってるな真尋さん」

「ああ、演技の事でも考えてんだろ」

「さすが演技派女優!」

(今度志摩ちゃんが帰って来た時何作ろうかしら。2人の彼氏も連れて来るって言ってたしご馳走作らなくっちゃ♪)

 椅子に肘をつき一点を見つめる真尋が息子が帰って来た時の夕飯の事を考えているとはつゆ知らず尊敬の眼差しで見つめる。

(ハッ!志摩ちゃんに2人の好きな食べ物聞かなくっちゃ!)

「真尋さん何か悟った⁉」

「さすが世界をまたにかける女優だ!」

 真尋の思考を深読みするスタッフの勘違いは続く。





∞∞∞∞∞

次からはifの世界2話を投稿します。

智也×志摩

水樹×志摩

ですが文字数は少なくなる予定です。
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