白銀の狐は異世界にうっかり渡り幸せになる

５年経ったよ編

アマンベール５年を振り返る

　週１で玉ちゃんが神力の使い方を習いに私の所へ通って５年。
　今日も幼児特有のぽよぽよがなくなるも、まだまだ幼可愛い玉ちゃんがお気に入りのお菓子を持って神殿の塔私んちに来ている。

（向い側で持って来たマカロンを美味しそうに頬張る姿にほんわかするけど、ヤッバい子なんだよね～）





　(５年前)

「わあ、やっと返事が来たぁ。神域との連絡の取り方どうにかならないのかしら？もしかして３ヶ月かかるの主神がサボってるせい？」

　※実際は時間の流れが無い神域と時間の流れがある世界との連絡はどうしても時間のズレが生じてしまうのだが、神の信用の無さが垣間見える発言である。

　まああの主神だしね～と来たやたらと分厚い書類を見て口に含んでいた紅茶を吹き出したのは仕方ないと思う。
　一緒にいたユリウスに行儀が悪いとグチグチ言われたけど、それどころじゃない。



　渡りの魔法陣に書き記されていたもの

　・世界の時の流れと同じ肉体の成長と死
　・Ωとしての体の変化
　・アマンベール王国第一王子との運命の番
　・アマンベール王国王宮への転移
　・死後魂の消滅


　うん、ここまではいい。人になって渡るのだから歳をとって死ぬのは当たり前。死後魂の消滅という措置も神格が低い私達にとってはままある事。生き神としている私はこの世界が消滅したら神域に戻れるけど、それは稀な幸運なのだ。

　でもそこじゃない。魔法陣に書き記されていないものが問題なんだよね。
　そう、その下に書かれていたものこそが紅茶を吹き出した原因。

『なお、今回渡る者の神格が低かったから、神力の枷や制限はつけていないよ。だから渡ってしまった玉藻の神力は下手すると世界を一瞬で消滅させてしまうから注意してね☆とりま神孤族の神力取扱説明書入門編～上級編まで送るからヨロ♡ー安寿ー』

　※とりま＝とりあえず、まぁの意味

　安寿ーーーーー！！

　軽っ。ヤバっ。

　確かに私も神格が低かったからこっちに渡る時神力の枷や制限は無かったけども！人として成すならそこは制限かけるトコじゃないの!?しなくていいくらい低かったって事？・・・・・・夕凪？ああ、あの子だったら制限いらないか。

　まーじーでー？これ私の育て方に世界の命運がかかってるって事では!?ひえ～～～





「ベールちゃん？」

「ん？」

「ぼーっとしてどうしたの？このマカロン新作のミント味なんだよ」

「ありがとう玉ちゃん」

　おっといけない、書類を受け取って５年。ジークフリート王子が今度立太子するという話を聞いて物思いにふけってしまったわ。

　鳳凰族と神孤族の神力の使い方が違うから取説は物凄く役に立った。が、入門編を５年かけて終わった所。
　やっぱり神力が多いと扱いが難しいみたい。あと８年、間に合うのかしら？

「そういえばベールちゃんも式典来るんでしょ？」

「そうねぇ、鳳凰になって虹を出しに行くわ」

「わーい」

　無邪気なのを見てると世界を一瞬で消滅出来るなんて誰も分からないわよねぇ。

　というか魔族襲来スタンピード玉ちゃん１人で滅せるんじゃ・・・・・・いやいや、それじゃあ世界の成長にならないからダメだわ。

　神力を完璧にコントロール出来るようにしてスタンピードを１人でこなさないようにさせて世界を滅ぼさないように導いて・・・・・・この苦労絶対主神のせいよね？

　※正解

　あと書類の下に書いてた『事を成したら玉藻をそのまま神域に回収するから』は楽しそうに過ごしてる玉ちゃんには言えないなぁ。