7 / 39
うっかり渡っちゃった編
玉藻、子狐になる
しおりを挟む
「ところでその神様の名前は何と言うのかな?」
「かみさまはかみさまだよ。とうさまはあるじとかしゅしんっていってた!」
王の問いに名前を知らないという玉藻。知らないのか元々無いのか・・・・・・名を持たない神などいるものなのかと王は首を捻る。
「タマモは神様と一緒に住んでたの?凄いね!」
「ちがうよ。かみさまはきゅうでんにすんでて、ぼくたちはまわりにすんでたの」
「へえ、みんなタマモみたいに耳や尻尾があるの?」
「んー、つのとかはねがあるヒトもいるよ。ともだちはね、はねがあってとべるの!」
ジークフリートに聞かれ話していた玉藻の耳と尻尾が急にぺしょりと垂れ、悲しそうな顔になる。
「どうしたの?」
「あのね、しんいきからまほうじんでわたっちゃったからもどれないの。おにいたまやともだちにあえなくなっちゃった」
ここに来てしまった為に家族や友達に会えなくなった事を思い出してしまい、みるみるとその大きな瞳に涙が溜まっていき慌てる3人。
「わっ、わっ、泣かないで!」
「ハンカチハンカチ!」
「ほら~美味しいお菓子だよー」
ハンカチやお菓子を差し出されても一度悲しみから昂った感情は、玉藻の中で大きく膨らみ限界を超えて弾けてしまう。
「「「えっ⁉」」」
3人が驚いたのも無理は無い。涙を溢す直前、体が光を放ち弾けたと思ったら目の前にいた玉藻がいなくなったのだ。・・・・・・否、服だけ残して。
「タマモ⁉」
慌てて辺りを見渡すが玉藻はおらず、こんもりとした服だけが・・・・・・服が動いた。
モゾモゾと動く服からひょっこり顔を出したのは、玉藻の髪色と瞳の色を持った白銀の子狐だった。
「かっわ・・・・・・ってタマモ⁉」
「みぃー」
「まさか」
「いいえ父上、僕が庭で聞いた鳴き声と一緒です!絶対タマモです!」
熱弁するジークフリートの腿に両前足を乗せ、みぃーみぃー鳴き9本ある尻尾をゆらゆらと揺らす姿に王妃がソファーの背もたれに倒れ込む。
「王妃どうしたのだ!」
「へ・・・・・・陛下、わたくし子狐の可愛さに尊死するやもしれませぬ」
恍惚とした王妃の表情にあ、そういえば可愛いの大好きだったと王はそっとしておく事に。
可愛いのが大好き過ぎて部屋がピンクのフリフリお花畑仕様の住人、王妃27歳。まだまだ心は乙女、きゅるーんとした子狐玉藻にノックアウト。
尊死しかけている王妃を見つめみぃーと鳴き首を傾げる玉藻を、撫でたい衝動に駆られながらも王は頭を回転させ、図書室から持って来た本を思い出す。
それは代々王族のみ閲覧できる本で、建国に至る事柄が記述されている。
「たしかこの章のどこかに・・・・・・」
テーブルに本を広げパラパラと捲り指を止める。そこには女神アマンベールの事が絵と一緒に記されていた。
「ジークこれを見なさい。ここには女神アマンベール降臨が記されているのだ。それによると『女神アマンベールは背に翼を持つ姿で異なる世界からこの地へ降り立ち争いを収める。そして戦で弱った地を青い炎を纏う鳥になり、恵みの雨を降らし豊かな土地へと変える』と」
「タマモと似ていますね」
「そうだ、事実神殿の塔におられる女神アマンベールは別世界の住人だった本人が話しておる」
「では女神にタマモの事を聞いたら何か分かるかもしれませんね!」
「ああ、明日にでも神殿に謁見を申し入れてみよう。・・・・・・ところでタマモはいつ元の姿に戻るのだろうか」
王とジークフリートが話をしている間に眠くなったのか丸くなりぷーぷー寝てしまった玉藻を見て「そのうち戻るよな?」と少し不安になる2人だった。
「かみさまはかみさまだよ。とうさまはあるじとかしゅしんっていってた!」
王の問いに名前を知らないという玉藻。知らないのか元々無いのか・・・・・・名を持たない神などいるものなのかと王は首を捻る。
「タマモは神様と一緒に住んでたの?凄いね!」
「ちがうよ。かみさまはきゅうでんにすんでて、ぼくたちはまわりにすんでたの」
「へえ、みんなタマモみたいに耳や尻尾があるの?」
「んー、つのとかはねがあるヒトもいるよ。ともだちはね、はねがあってとべるの!」
ジークフリートに聞かれ話していた玉藻の耳と尻尾が急にぺしょりと垂れ、悲しそうな顔になる。
「どうしたの?」
「あのね、しんいきからまほうじんでわたっちゃったからもどれないの。おにいたまやともだちにあえなくなっちゃった」
ここに来てしまった為に家族や友達に会えなくなった事を思い出してしまい、みるみるとその大きな瞳に涙が溜まっていき慌てる3人。
「わっ、わっ、泣かないで!」
「ハンカチハンカチ!」
「ほら~美味しいお菓子だよー」
ハンカチやお菓子を差し出されても一度悲しみから昂った感情は、玉藻の中で大きく膨らみ限界を超えて弾けてしまう。
「「「えっ⁉」」」
3人が驚いたのも無理は無い。涙を溢す直前、体が光を放ち弾けたと思ったら目の前にいた玉藻がいなくなったのだ。・・・・・・否、服だけ残して。
「タマモ⁉」
慌てて辺りを見渡すが玉藻はおらず、こんもりとした服だけが・・・・・・服が動いた。
モゾモゾと動く服からひょっこり顔を出したのは、玉藻の髪色と瞳の色を持った白銀の子狐だった。
「かっわ・・・・・・ってタマモ⁉」
「みぃー」
「まさか」
「いいえ父上、僕が庭で聞いた鳴き声と一緒です!絶対タマモです!」
熱弁するジークフリートの腿に両前足を乗せ、みぃーみぃー鳴き9本ある尻尾をゆらゆらと揺らす姿に王妃がソファーの背もたれに倒れ込む。
「王妃どうしたのだ!」
「へ・・・・・・陛下、わたくし子狐の可愛さに尊死するやもしれませぬ」
恍惚とした王妃の表情にあ、そういえば可愛いの大好きだったと王はそっとしておく事に。
可愛いのが大好き過ぎて部屋がピンクのフリフリお花畑仕様の住人、王妃27歳。まだまだ心は乙女、きゅるーんとした子狐玉藻にノックアウト。
尊死しかけている王妃を見つめみぃーと鳴き首を傾げる玉藻を、撫でたい衝動に駆られながらも王は頭を回転させ、図書室から持って来た本を思い出す。
それは代々王族のみ閲覧できる本で、建国に至る事柄が記述されている。
「たしかこの章のどこかに・・・・・・」
テーブルに本を広げパラパラと捲り指を止める。そこには女神アマンベールの事が絵と一緒に記されていた。
「ジークこれを見なさい。ここには女神アマンベール降臨が記されているのだ。それによると『女神アマンベールは背に翼を持つ姿で異なる世界からこの地へ降り立ち争いを収める。そして戦で弱った地を青い炎を纏う鳥になり、恵みの雨を降らし豊かな土地へと変える』と」
「タマモと似ていますね」
「そうだ、事実神殿の塔におられる女神アマンベールは別世界の住人だった本人が話しておる」
「では女神にタマモの事を聞いたら何か分かるかもしれませんね!」
「ああ、明日にでも神殿に謁見を申し入れてみよう。・・・・・・ところでタマモはいつ元の姿に戻るのだろうか」
王とジークフリートが話をしている間に眠くなったのか丸くなりぷーぷー寝てしまった玉藻を見て「そのうち戻るよな?」と少し不安になる2人だった。
52
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
オメガ転生。
桜
BL
残業三昧でヘトヘトになりながらの帰宅途中。乗り合わせたバスがまさかのトンネル内の火災事故に遭ってしまう。
そして…………
気がつけば、男児の姿に…
双子の妹は、まさかの悪役令嬢?それって一家破滅フラグだよね!
破滅回避の奮闘劇の幕開けだ!!
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
平凡な俺は魔法学校で、冷徹第二王子と秘密の恋をする
ゆなな
BL
旧題:平凡な俺が魔法学校で冷たい王子様と秘密の恋を始めました
5月13日に書籍化されます。応援してくださり、ありがとうございました!
貧しい村から魔法学校に奨学生として入学した平民出身の魔法使いであるユノは成績優秀であったので生徒会に入ることになった。しかし、生徒会のメンバーは貴族や王族の者ばかりでみなユノに冷たかった。
とりわけ生徒会長も務める美しい王族のエリートであるキリヤ・シュトレインに冷たくされたことにひどく傷付いたユノ。
だが冷たくされたその夜、学園の仮面舞踏会で危険な目にあったユノを助けてくれて甘いひと時を過ごした身分が高そうな男はどことなくキリヤ・シュトレインに似ていた。
あの冷たい男がユノにこんなに甘く優しく口づけるなんてありえない。
そしてその翌日学園で顔を合わせたキリヤは昨夜の優しい男とはやはり似ても似つかないほど冷たかった。
仮面舞踏会で出会った優しくも謎に包まれた男は冷たい王子であるキリヤだったのか、それとも別の男なのか。
全寮制の魔法学園で平民出身の平凡に見えるが努力家で健気なユノが、貧しい故郷のために努力しながらも身分違いの恋に身を焦がすお話。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました
芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」
魔王討伐の祝宴の夜。
英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。
酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。
その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。
一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。
これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる