白銀の狐は異世界にうっかり渡り幸せになる

ネコフク

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うっかり渡っちゃった編

アマメちゃん

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「チンーーーーー!!」

 アマンベールの叫びに我に返ったジークフリートが肩に掛けていたマントを外し、玉藻を包むように掛けてやる。

「あっ!玉ちゃん変に動かないで!チンがペチってる!ペチってるから!」

 マントを掛けたら玉藻が驚いて藻掻いたらしく、中で何かが繰り広げられているらしい。

 今更取るわけにもいかずオロオロとしていると、やっと顔から剥がしたのか髪がボサボサになったアマンベールと、にこにことした玉藻がマントから出てきた。

「2000年ぶりに顔ペチ貰ったわ・・・・・・」

「ごめんねーアマメちゃん」

 こてりと首を傾げる玉藻は悪いと思っていない模様。アマンベールの言い方から何度もやられているらしい。

「まあいいわ。3人同時じゃないし。あれは地獄よぉ・・・・・・」

 どうやら神域にいる時にトリプルアタックを食らったことがあるらしいアマンベール。一部の人から羨ましいと声が上がってるぞ!・・・・・・多分。

「タマモ!」

「あっ、ジーク!」

 ぱたぱたと手を振る玉藻。幼児特有のぽよぽよお手々が戻ってまいりました。

「アマンベールよ、一体どうやってタマモを戻したのですか?」

 自分達でも戻せるならと王がアマンベールに方法を聞くが、それは出来ないとあしらわれる。

「あ、誤解しないでね。教えたくないんじゃなくて教えても出来ないの」

 そもそも玉藻は神域で産まれた生粋の神狐。持っている力は神力で魔力とは全く異なる力だ。その力を操作して体をヒト形や神獣の姿になる為、この世界にある魔力しか持っていない人間には出来ないのだ。

「神力は言わば神の力、それを持たない人間には戻せないのよ。使い方もそう、私しか玉ちゃんに教えられないわね」

 そうなると急に神獣になると困るわねー。と話すアマンベールに王が反応する。

「い・・・・・・今、神獣とおっしゃいましたか?」

「ん?言ったけど?」

「やはりタマモは神の使いなのですか⁉」

 玉藻よ、おうさますっごいふるえてるーとは言ってはいけない、マジ震えだから。

「さっきも言ったでしょ?こっちの世界に来て体が作り変えられたからただの狐ちゃんよぉ」

「だ・・・だったらいいのですが・・・・・・ええ、そうしましょう」

 王は無理矢理納得することにしたようだ。

「しかし、もしまた子狐になった場合どうしたらいいのでしょうか」

「あー、そうねぇ・・・・・・それはすぐ教えておいた方がいいわね。よし、玉ちゃんを3日私に預けて。それまでに教えておくから」

「分かりました。3日後迎えに来ます」

 そう言い、王、特にジークフリートは後ろ髪を引かれる思いで王宮に帰って行く。

「アマメちゃんアマメちゃん」

「あっ、玉ちゃんその名前は呼ばないで」

「なんで?」

「「雨女あまめ」なんてダサいじゃない。しかも漢字が雨女って名付けた奴おかしいでしょ!今はアマンベールって呼ばれてるから玉ちゃんもアマンベールって呼んで」

「アマメちゃんってかわいいなまえなのに」

「そう言ってくれるのは玉ちゃんだけよ」

 アマンベールは相当根に持っている。確かに彼女の力は恵みの雨を降らせる能力だ。だからと言って安直すぎるだろと名付けた族長の炎舞を恨んでいる。会う機会があれば、炎舞の頭上だけ雨を降らせる嫌がらせをしようとするくらいに。
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