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入学編
学園の皇帝・帝惟親
しおりを挟む入学式が終わり、午後からある部活見学までに昼食を済ませようとオレ達は食堂へ行く。食堂はかなり広いが他にもカフェテリアが数か所あり、女子はそちらの方へいっているのか男子の数が多かった。
入口でメニューを決め、各自食堂のおばちゃんから受け取り空いているテーブルに座る。
少し早い時間だからかまだ1年生しかおらず楽に席取りができた。オレの両脇に宏太と井上が座り、向かいには貴島と白畑が座る。今日オレが選んだメニューはオムライスだ。卵がトロトロふわふわでパクリと口にすると卵とバターが広がり絶品である。
「美味しー」
「チキン南蛮も美味しいよ。あーん」
「あーん」
うん、美味い。中等部の食堂も美味しかったけど高等部も美味しい。
「えっ?あれいつも?」
「そうだね」
「αとΩカップルあるあるじゃない?」
「……いや、三宮ではあーんカップルいなかったし」
あんぐりして見ている井上に貴島と白畑が何を驚いてるのかとキョトンとしている。どうやら二宮の当たり前が三宮ではなかったらしい。やっぱ中等部で違うみたいだ。
「んー、じゃあ止める?」
「止めない」
拒否早っ。まあ宏太がやりたいならいいけど。
そうしているうちに授業が終わったのか急に食堂が混んできた。やっぱり男子が多い。その中にちらほらとαとΩのカップルが見受けられる。
混んできたので早く食べ終わろうとオムライスをせっせと口に運ぶ。オレ食べるの遅いんだよなー。宏太達は食べ終わってお茶を飲みながら待っていてくれている。
「急がなくていいよ。ゆっくり食べて」
「でもさあ混んできてるし」
ざわっ………
揺れた。
ホントざわめきと共に空気が揺れた。どうやら食堂よ入口から揺れがきたらしい。チラッと見ると眼鏡をかけたすらりとした上級生を筆頭に数人食堂に来たようだ。オレはそこまで興味が無いので食べるのに集中するけどね。
その集団が歩いているのかそれに合わせてざわめきが移動していく。井上達はそれに釘付けになっているようだけど宏太は俺を愛しそうな目でオレを見ている。いや見すぎだろ。
「姫川」
ふわりと透き通った青空のような匂いと共に発せられたよく通る声の方へ上半身ごと顔を向ける。そこには帝惟親が生徒会のメンバーを後ろに置きオレを見下ろしていた。食堂で生徒会役員が一般生徒に話しかけるのは珍しいらしく、話しかけられているのは誰だとコソコソ話しているのが聞こえてくる。テーブルに一緒いる井上達はピシリと固まり、宏太は柔らかい表情でオレと会長を見ている。
「……帝さん何か用ですか」
「姫川、放課後生徒会室に来るように」
その一言でまた聞き耳を立てていた周りの生徒が騒ぎだすが会長が一瞥すると静かになる。
「北大路、お前もだ」
名前を呼ばれた宏太が一瞬キョトンとするが頷く。言いたい事も言ったしすぐ立ち去るのかと思えばじっとオレの顔を見ると徐ろに親指で口端を拭われた。
「……ついてる」
それを当たり前のように親指をペロリと舐め口角を上げる。
「美味いな」
瞬間、破れんばかりの悲鳴が轟き「会長様が1年の口に付いてるのを取って舐めた!」「私もやってほしい!」「あの1年生意気な!」「帝様エロい」などの声が聞こえ刺すような視線を向けられる。
それが酷くなり身の危険を感じる雰囲気になってきた途端、さっと食堂全体が音が無くなったように誰も言葉を発しなくなる。周りを見渡すと殆どの生徒が青い顔をしている。オレは新緑の香りがする宏太に抱きしめられ大丈夫だったが、どうやら会長が威圧フェロモンを出して黙らせたようだ。と思ったら宏太も威圧してた。
静かになった食堂を見渡し生徒会の面々と優雅に中二階、専用ブースに行ってしまう。
それを見届けホッと息を吐く。
「大丈夫?」
「うん、ありがと。でもやり過ぎ。会長が威圧フェロモン出してたから宏太は出さなくてよかっただろ」
「いや、あれは正解」
納得はいかなかったけどとりあえずオムライスを頬張る。騒ぎで冷めてしまっていてちょっとガッカリ。
少し経つとざわめきが戻ってたけどここにいるのは良くないだろうと1/3を泣く泣く残し教室に戻る。
ああ~オレのオムライスが~(泣)
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