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入学編
ピンチのピンチ
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「姫川様おはようございます」
「おはようございます」
入学から2週間、今日も1階のエレベーターホールで親衛隊のお出迎えをされ登校する。
宏太にΩの女生徒がぐいぐい来た次の日から、部屋の前まで親衛隊が迎えに来たのはかなりビビったけど守る為と言われれば、はいそうですかとしか言えない。もちろんΩ寮なので出迎えの親衛隊はΩである。
今は生徒会の補助をするからと役員権限で、寮の最上階にある生徒会と各委員長専用のフロアにある部屋に移動している。そこは専用のエレベーターにカードキーをかざさないとそのフロアに行けないというセキュリティばっちりな場所だ。親衛隊といえども最上階には上がれないので1階のホールで出待ちしているのだ。
親衛隊と一緒に寮を出ると寮門のところでキョンちゃん先輩と数人の親衛隊が待っている。ここからαやβの親衛隊も混じり教室まで行く事になる。
一度仰々しくないか聞いたけど親衛隊持ちの登校はこれがあたり前らしい。守られている身なので大名行列みたいで恥ずかしいとは言えない。
言っても笑顔でかわされるのが目に見えてるしな!
まあ、それは良くないが良しとして。
「なんで毎日宏太と会長までいるの?」
そう、何故かキョンちゃん先輩達に混じり宏太と会長が毎日寮門で待っているのだ。しかも宏太は次晴さんと親衛隊を連れていてこちらとしてはいたたまれないのである。なお会長は親衛隊は連れていない。親衛隊が殆どΩだしうざったいから最初から断っているらしい。
「件の女生徒の事もありますし、2人がペアだと皆んなに認知された方がいいんですよ」
「そういう事だ」
「で、会長は?」
「そこに愛加がいるからだ」
いやいや、そこに山があるからみたいにドヤ顔で言われても。キョンちゃん先輩と次晴さんが苦笑いしてますが?
まあここでグダグダしていても仕方ないので校舎へ向かい歩き出す。歩き順はオレの両脇に宏太と会長がいて前にはキョンちゃん先輩と次晴さん、後ろに親衛隊の皆様が歩いてらっしゃる。時間も教室に着くのがHRが始まる直前と女生徒、秋田鈴音を宏太に寄らせない作戦である。
今までも宏太に寄って来る生徒はいたけど今回はしつこく、キョンちゃん先輩達も色々動いてくれているらしい。
それにしても『運命』を口説き文句に使ったりするなんて運命という言葉が軽くなった気がしてイヤだな。そもそも口に出さなくても大半のαやΩは見た瞬間分かるものなのに。最近流行っている『運命の番』に関するドラマや映画の弊害なのか?あれって美化というか妄想の域に達してるんじゃってくらい微妙なんだけど。
内心ため息をつき辺りを見渡せばモーゼの海割りの如く生徒達が道を開け、黄色い声とキラキラした目で見てくる。特に目立つ美形の2人が揃っているのでその騒がしさは倍である。
で、真ん中にいるオレは皆んなに見えていないんではないだろうか。なんかいたたまれない。
「あっ、北大路くぅん!」
止める親衛隊を振り切りイノシシの如く突っ走って来る女生徒、秋田鈴音が真正面から現れた。
甘ったるい声とはかけ離れた形相で周囲の視線を釘付けに近づいて来る様はちょっとしたホラーだ。周りも引いている。
宏太と会長がオレを庇うように立つが違うぞ、狙われているのは宏太だ。宏太が庇われろ。
次晴さんとキョンちゃん先輩が宏太を隠すように立ちはだかったが、脇からタックルをかますように風紀の腕章を付けた女生徒数人で取り押さえ、秋田の口を布でおさえつつ神輿を担ぐように校舎へ消えていった。
いやー、鮮やかすぎだろ。手慣れてるしもしかして初めてじゃない?
「さすが吉永の飼い犬共、相変わらず仕事が早い」
あ、よくある風景なのね。高等部ってなかなかハードだなぁ。
風紀って男子ばかりのイメージだったけど委員長が女性だからなのかな?え?女生徒に対応するためにいる?なるほどー。
毎日朝から強烈なお出迎えから始まり、1日に数回秋田鈴音の襲撃に宏太もげっそりだ。親衛隊もピリピリしているしオレも気分は良くない。会長は何か考えているようだけどまだ時期ではないと教えてくれない。
「しっかしあの女毎日ご苦労さんだな」
教室の入口で様子を見ていた井上が呆れている。オレもそう思う。
「本当いい加減にしてほしいよ」
うんざりした顔ですらイケてるのだ。並外れた美形はトラブルに慣れているとはいえ嫌なものは嫌らしい。
「親衛隊いて良かったな」
「「それな!」」
◇◇◇◇◇
しかしこれからも突撃してくると思っていた秋田鈴音は次の日からピタリと姿を現す事がなかった。
発情期でも来たのかと思ったらそうではなく、授業には普通に出ているらしい。
風紀やキョンちゃん先輩達が何かしたのかと思っていたら違うらしく、皆んな首を傾げている。それでも煩わしいのが無くなり宏太もホッとしていた。
まあ、その油断が今の状況を作り出してしまったんだけど。
いやー困った。
顔には出していない(多分)。いないけどもピンチっぽい。
制服は着ているけど明らかにここの生徒じゃない見た目の方々が目の前に5人ほどいる。そしてここは歴史の資料室。用事が無ければ絶対来ない場所である。
そこにオレ1人。宏太や親衛隊もいない。
いや、ここに来る前まではいたんだよ?歴史の先生に頼まれて宏太は先生と一緒に視聴覚室に行ってしまい、親衛隊の2人は他の人の親衛隊に呼び止められてた。まあ別に資料取るだけだしと渋る2人を置いて資料室に1人で来たのはオレだ。
ここん所何もなかったから油断してたし、まさか校内に無関係の人間を引き込むと思っていなかった。
「うひょーこんな美人輪姦せるなんてラッキー」
下卑た笑いに怖気が走る。入口に1人、携帯を手にして動画を撮る気満々のヤツが1人、あとの3人でお楽しみってか。キモい。
「ハッ、オレに手を出そうなんて身の程知らずだな」
「強がっちゃってカワイイねー。でも残念、身の程知らずはお前だよ。ここは滅多に人が来ない場所らしいな。助けも呼べず絶望しながら俺達にヤラれちまいな」
歪んた笑みを見せながら携帯を向けているのがリーダーか?指示を出してるしアイツだけαの気配がする。
ニヤニヤと獲物を追い詰めるようにゆっくりと近づいて来る3人にオレは先手必勝とばかりにダッシュして近づき屈み左側にいるヤツの溝落にひじ鉄をお見舞いし、そのまま体を捻り右側のヤツの脇腹へしなるように蹴り真ん中のヤツの顎へ下から掌底を食らわす。ついでに股間も蹴り上げといた。
「ぐほっ!」
「がっ!」
「ぐひゅっ!」
こっちはだてに何回も誘拐されかかっていないんだよ。あんだけ攫われかけたらそりゃ自衛のために格闘技の1つでも習うわ!誘拐慣れ舐めんなよ。
「さあどうする?」
汚れを払うようにパンパンと手を叩くと唖然としていた(推定)αが蹲る3人を横目に威圧フェロモンを出してきた。
「おいおいΩが強いなんて聞いてないぞ」
あー、やっぱαか。宏太や会長ほどではないけどこれはキツい。体が強張り喉がへばりつく感じに冷や汗が止まらない。怒らせたのは失敗だったかも。
パンッ!!
乾いた音が部屋に響く。左頬がジンジンする。
ヤバい、引っ叩かれた。オレの体に傷が……家族に怒られる…!
青褪めたオレに気をよくしたαが顎を掴み顔を上げる。あ、口の中が切れたようだ血の味がする。
「大人しくヤラれてろよ。そうすれば痛い思いしなくてすむんだ。今頃向こうもイイ思いしてるだろうしな」
「向こう…?」
「お前といつも一緒にいる美形のα……そいつが今頃他の女の項を噛んでる頃だろうよ」
「うそ…だ……」
「ハハッ、αはΩのヒートに抗えない」
「ヒート……」
「そうだよ。しかもモノにしたいαに確実に噛んでもらうために発情期を強くする薬を飲むって言ってたなぁ」
「それって違法薬物じゃないか!」
「あん?ちょっと激しいセックスを楽しむための薬だ。強制発情期の薬と一緒にお前も飲むか?天国にイケるぞ」
「んなの飲むかよ!」
「強がんなよ、オイ薬寄越せ」
手をひらひらさせ入口にいた男に促し薬を受け取ると口元を歪ませながらオレの口内へ放り込む。
「さあ、輪姦の時間だ」
「おはようございます」
入学から2週間、今日も1階のエレベーターホールで親衛隊のお出迎えをされ登校する。
宏太にΩの女生徒がぐいぐい来た次の日から、部屋の前まで親衛隊が迎えに来たのはかなりビビったけど守る為と言われれば、はいそうですかとしか言えない。もちろんΩ寮なので出迎えの親衛隊はΩである。
今は生徒会の補助をするからと役員権限で、寮の最上階にある生徒会と各委員長専用のフロアにある部屋に移動している。そこは専用のエレベーターにカードキーをかざさないとそのフロアに行けないというセキュリティばっちりな場所だ。親衛隊といえども最上階には上がれないので1階のホールで出待ちしているのだ。
親衛隊と一緒に寮を出ると寮門のところでキョンちゃん先輩と数人の親衛隊が待っている。ここからαやβの親衛隊も混じり教室まで行く事になる。
一度仰々しくないか聞いたけど親衛隊持ちの登校はこれがあたり前らしい。守られている身なので大名行列みたいで恥ずかしいとは言えない。
言っても笑顔でかわされるのが目に見えてるしな!
まあ、それは良くないが良しとして。
「なんで毎日宏太と会長までいるの?」
そう、何故かキョンちゃん先輩達に混じり宏太と会長が毎日寮門で待っているのだ。しかも宏太は次晴さんと親衛隊を連れていてこちらとしてはいたたまれないのである。なお会長は親衛隊は連れていない。親衛隊が殆どΩだしうざったいから最初から断っているらしい。
「件の女生徒の事もありますし、2人がペアだと皆んなに認知された方がいいんですよ」
「そういう事だ」
「で、会長は?」
「そこに愛加がいるからだ」
いやいや、そこに山があるからみたいにドヤ顔で言われても。キョンちゃん先輩と次晴さんが苦笑いしてますが?
まあここでグダグダしていても仕方ないので校舎へ向かい歩き出す。歩き順はオレの両脇に宏太と会長がいて前にはキョンちゃん先輩と次晴さん、後ろに親衛隊の皆様が歩いてらっしゃる。時間も教室に着くのがHRが始まる直前と女生徒、秋田鈴音を宏太に寄らせない作戦である。
今までも宏太に寄って来る生徒はいたけど今回はしつこく、キョンちゃん先輩達も色々動いてくれているらしい。
それにしても『運命』を口説き文句に使ったりするなんて運命という言葉が軽くなった気がしてイヤだな。そもそも口に出さなくても大半のαやΩは見た瞬間分かるものなのに。最近流行っている『運命の番』に関するドラマや映画の弊害なのか?あれって美化というか妄想の域に達してるんじゃってくらい微妙なんだけど。
内心ため息をつき辺りを見渡せばモーゼの海割りの如く生徒達が道を開け、黄色い声とキラキラした目で見てくる。特に目立つ美形の2人が揃っているのでその騒がしさは倍である。
で、真ん中にいるオレは皆んなに見えていないんではないだろうか。なんかいたたまれない。
「あっ、北大路くぅん!」
止める親衛隊を振り切りイノシシの如く突っ走って来る女生徒、秋田鈴音が真正面から現れた。
甘ったるい声とはかけ離れた形相で周囲の視線を釘付けに近づいて来る様はちょっとしたホラーだ。周りも引いている。
宏太と会長がオレを庇うように立つが違うぞ、狙われているのは宏太だ。宏太が庇われろ。
次晴さんとキョンちゃん先輩が宏太を隠すように立ちはだかったが、脇からタックルをかますように風紀の腕章を付けた女生徒数人で取り押さえ、秋田の口を布でおさえつつ神輿を担ぐように校舎へ消えていった。
いやー、鮮やかすぎだろ。手慣れてるしもしかして初めてじゃない?
「さすが吉永の飼い犬共、相変わらず仕事が早い」
あ、よくある風景なのね。高等部ってなかなかハードだなぁ。
風紀って男子ばかりのイメージだったけど委員長が女性だからなのかな?え?女生徒に対応するためにいる?なるほどー。
毎日朝から強烈なお出迎えから始まり、1日に数回秋田鈴音の襲撃に宏太もげっそりだ。親衛隊もピリピリしているしオレも気分は良くない。会長は何か考えているようだけどまだ時期ではないと教えてくれない。
「しっかしあの女毎日ご苦労さんだな」
教室の入口で様子を見ていた井上が呆れている。オレもそう思う。
「本当いい加減にしてほしいよ」
うんざりした顔ですらイケてるのだ。並外れた美形はトラブルに慣れているとはいえ嫌なものは嫌らしい。
「親衛隊いて良かったな」
「「それな!」」
◇◇◇◇◇
しかしこれからも突撃してくると思っていた秋田鈴音は次の日からピタリと姿を現す事がなかった。
発情期でも来たのかと思ったらそうではなく、授業には普通に出ているらしい。
風紀やキョンちゃん先輩達が何かしたのかと思っていたら違うらしく、皆んな首を傾げている。それでも煩わしいのが無くなり宏太もホッとしていた。
まあ、その油断が今の状況を作り出してしまったんだけど。
いやー困った。
顔には出していない(多分)。いないけどもピンチっぽい。
制服は着ているけど明らかにここの生徒じゃない見た目の方々が目の前に5人ほどいる。そしてここは歴史の資料室。用事が無ければ絶対来ない場所である。
そこにオレ1人。宏太や親衛隊もいない。
いや、ここに来る前まではいたんだよ?歴史の先生に頼まれて宏太は先生と一緒に視聴覚室に行ってしまい、親衛隊の2人は他の人の親衛隊に呼び止められてた。まあ別に資料取るだけだしと渋る2人を置いて資料室に1人で来たのはオレだ。
ここん所何もなかったから油断してたし、まさか校内に無関係の人間を引き込むと思っていなかった。
「うひょーこんな美人輪姦せるなんてラッキー」
下卑た笑いに怖気が走る。入口に1人、携帯を手にして動画を撮る気満々のヤツが1人、あとの3人でお楽しみってか。キモい。
「ハッ、オレに手を出そうなんて身の程知らずだな」
「強がっちゃってカワイイねー。でも残念、身の程知らずはお前だよ。ここは滅多に人が来ない場所らしいな。助けも呼べず絶望しながら俺達にヤラれちまいな」
歪んた笑みを見せながら携帯を向けているのがリーダーか?指示を出してるしアイツだけαの気配がする。
ニヤニヤと獲物を追い詰めるようにゆっくりと近づいて来る3人にオレは先手必勝とばかりにダッシュして近づき屈み左側にいるヤツの溝落にひじ鉄をお見舞いし、そのまま体を捻り右側のヤツの脇腹へしなるように蹴り真ん中のヤツの顎へ下から掌底を食らわす。ついでに股間も蹴り上げといた。
「ぐほっ!」
「がっ!」
「ぐひゅっ!」
こっちはだてに何回も誘拐されかかっていないんだよ。あんだけ攫われかけたらそりゃ自衛のために格闘技の1つでも習うわ!誘拐慣れ舐めんなよ。
「さあどうする?」
汚れを払うようにパンパンと手を叩くと唖然としていた(推定)αが蹲る3人を横目に威圧フェロモンを出してきた。
「おいおいΩが強いなんて聞いてないぞ」
あー、やっぱαか。宏太や会長ほどではないけどこれはキツい。体が強張り喉がへばりつく感じに冷や汗が止まらない。怒らせたのは失敗だったかも。
パンッ!!
乾いた音が部屋に響く。左頬がジンジンする。
ヤバい、引っ叩かれた。オレの体に傷が……家族に怒られる…!
青褪めたオレに気をよくしたαが顎を掴み顔を上げる。あ、口の中が切れたようだ血の味がする。
「大人しくヤラれてろよ。そうすれば痛い思いしなくてすむんだ。今頃向こうもイイ思いしてるだろうしな」
「向こう…?」
「お前といつも一緒にいる美形のα……そいつが今頃他の女の項を噛んでる頃だろうよ」
「うそ…だ……」
「ハハッ、αはΩのヒートに抗えない」
「ヒート……」
「そうだよ。しかもモノにしたいαに確実に噛んでもらうために発情期を強くする薬を飲むって言ってたなぁ」
「それって違法薬物じゃないか!」
「あん?ちょっと激しいセックスを楽しむための薬だ。強制発情期の薬と一緒にお前も飲むか?天国にイケるぞ」
「んなの飲むかよ!」
「強がんなよ、オイ薬寄越せ」
手をひらひらさせ入口にいた男に促し薬を受け取ると口元を歪ませながらオレの口内へ放り込む。
「さあ、輪姦の時間だ」
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