王道学園にさせてなるものかっ!

ネコフク

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生徒会編

番外編 夏休み最後の仕事は色んな人の決意と奸計

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 今回は長め。愛加視点。

 話に外人さんが出てきているのでセリフの「」内は日本語、『』内は英語で皆話しています。





 バタバタとスタッフが行き交うステージ裏で椅子に座り暇をアピールするように足をぶらぶらさせる。その隣には顔面偏差値バリ高な番、北大路宏太が文庫本を読んでいる。今日も超絶格好いい。

「ひーまひーまひーまだよぉ」

 夜のレセプションに向けて最終リハーサルのはずが機材トラブルでかれこれ1時間待たされているオレは暇を持て余していた。

「よし!探検しに行こう!」

「待って!」

「ぐえっ」

 勢いよく立ち上がろうとしたらガウンの後ろ襟を掴まれおかしな声が出た。苦しさのあまり涙目で後ろを見ると襟を掴んだ宏太が首を横に振っている。
 むうっと口を尖らせるとそこにちゅっと軽くリップ音を出してキスされちょっと照れてしまう。
 膝の上に座らされ小さなクーラーBOXからオレの大好物の杏仁豆腐を出し、スプーンを握らされ自分の扱いを分かっている宏太をきっと睨む。

「それで誤魔化されると思うなよ!」

「はいはい」

 口ではそう言うが杏仁豆腐の前に探検の意欲は霧散し、もにゅもにゅとプルンプルンな杏仁豆腐を食べる。美味しさのあまりついにこにこしてしまうのは我ながら単純である。

 そんなオレ達を外部スタッフがチラチラと見ている。
 そういえばうちのスタッフはオレ達の関係を知っているけど他は知らないな。でも気付いて膝から下りるのも今さらだな、と食べるのに専念する。

「ん~やっぱ杏仁はおいし……ん⁉」

 杏仁豆腐の味を堪能していると微かに透き通った青空のような匂いがして宏太と2人で反応する。

「チカ………?」

 嗅ぎ間違いではなく段々と濃くなっていく大好きな匂いにダッシュでステージ裏を走り抜け廊下へと出る。

「チカ!!…………げっ、キャル!」

 廊下にはチカとチカの母親のまさきさん、あげは姉ぇの婚約者のヨハンとその妹のキャロルがいた。

『キャルお前、チカから離れろ!』

『やーん、愛加こわーい』

 ぎゅうぎゅうとチカの腕に発育が良い胸を押し当てしなだれかかっているキャロルに言っても相変わらずどこ吹く風で聞きやしない。

『ほらほらキャロル、大人しくするって約束忘れたの?』

『えー………ちぇっ』

 渋々チカの腕から離れたキャロルはオレの2コ下のΩの14才、ウェーブがかかった金髪で人形のように整った顔をしている。さすが外人!と言わんばかりのボヨンボヨンしたおっぱいを持っている。というか全体的にボヨンボヨンなんだけどな!
 そんなキャロルの兄であるヨハンは27才、優しげなイケメンで今はまだ公表できないけどあげは姉ぇの婚約者だ。キャロルとは違いスラッとしたいかにも"α"って感じの人だ。

「ふふっ、ヤキモチ焼かれるなんて惟親愛されてるね」

「もちろんです」

 たおやかに笑う柾さんに挨拶をし、チカにぎゅーっと抱きつくとそれ以上の力で抱き返してくれる。

「マナ~会いたかった」

「オレも会いたかった」

「はいはーい、イチャつくのは後にしてー。機材が直ったからリハ始めるわよ!」

 パンパンと手を叩きあげは姉ぇがリハーサルの開始を告げる。

『あげは…』

『ヨハン、リハーサルが遅れて押してるの。話しは後にして』

『oh……』

『ごめんな、あげは姉ぇ仕事になると周りが見えなくなるから』

『……いいよ。僕は仕事に一生懸命なあげはが好きだから』

 明らかに気落ちしているヨハンの肩をぽんぽんと叩きステージ裏に戻り、佳兄ぃからメイク直しをしてもらい衣装に着替える。
 チカ達は客席でリハーサルを見学するようだ。

 リハーサルは最終調整をする為、あげは姉ぇ筆頭にインペリアルのデザイナーが客席からメガホンで細かく指示を出していく。オレと宏太は中盤と最後なので他のモデルよりはゆっくり支度しているが、他は戦場と化している。ホント華やかなのは表だけで裏では皆んな必死の形相でちょっと怖い。

 オレと宏太の番になり、ランウェイを並んで歩いていく。オレはあげは姉ぇがデザインしたチョーカーが映えるように上半身裸で腰履きの七分のレギンス、チョーカーから緩やかに垂れるように伸びた金のボールチェーンは腰のベルトへと繋がっている。宏太はやはり上半身裸でクロップトパンツだ。

 立ち止まり宏太の左半身にオレの右半身を合わせる。そうすると2人にボディペイントされた蔦が絡むように見える仕掛けになっている。そしてくるりと回り込み反対側でも密着し、最後の足上げポーズ。

「はい、愛加そこで足先までしっかり伸ばす!宏太もう少し愛加の頭を下げて!」

 履き慣れていないピンヒールでこんなポーズさせるなんて姉と書いて鬼と読むに違いない。支えてる足がぷるぷるしそうだ。

「よーし、OK!次っ!」

 裏にはけると途端に足がぷるぷるしてくる。毎回こんな感じになるので少し筋力を付けた方がいいのかもしれない。





 その後無事にリハーサルが終わり、宏太と2人控え室に戻るとチカとヨハン、キャロルが当たり前のようにお茶を飲んで寛いでいた。柾さんは自由人なオレの母親のうたとカフェに行ってキャッキャウフフしているらしい。

「マナ良かったよ~」

 両腕を広げ出迎えてくれたチカにぼふんと抱きつきそのままソファーに座るとその隣に宏太が座る。テーブルを挟みソファーへ目を向けると、キャロルが両手を握りしめ膝の上に置き顔を赤くし俯いていてそれを苦笑いのヨハンが見ている。

『ふふっ、キャロルはねいつもの愛加とパンフレットの愛加しか見た事なくてね。さっきのショーが衝撃だったみたいで。凄くキラキラした目で見ていたんだよ』

『ヨハン兄様!!』

『Ωは容姿が愛らしい子が多いじゃない?だけど太ってるってだけで嫌煙される。それでもアメリカこっちだと少しふくよかでも需要があるんだけど……キャロルは太り過ぎ。原因は弟2人なんだけど。可愛い可愛いって甘やかし過ぎてね、僕が注意しようにも13離れてるとそうそう合う機会もなくて今に至るんだけど。さっきの愛加を見て思う所があったみたい』

『兄様喋りすぎ!!そうよ!愛加ってば自分の容姿なんて普段微塵も気にしてないじゃない!頭ボサボサだったり変な格好してたり周りが騒いでても丸無視じゃないの!だからどんな体型だろうが可愛いって言われてるんだから大丈夫って思ってたのにあんなに……あんなに綺麗なんてギャップがエグすぎるのよっ!!』

『えっ、オレ褒められてるの?けなされてるの?』

 困惑するオレを涙目で睨むキャロルは一気に話しすぎたのか肩で息を切らせている。ボサボサ頭ってやしきの敷地内でしかしたことない(ハズ)だし、変な格好って日本語で「親に言われたから家から出ません」って書いてたやつか?それとも「もう猫の尻尾は掴みません」ってやつ?それともあれか「イチヂク一日三個まで」か?あれ罰として着せられてただけなんだけど……そういえばそんなTシャツ着てた時ばっか家に遊びに来られてたかも。あれ、オレ今までセンス無いヤツだと思われてた?周りが騒いでる?シラネ。

『だから兄様決めたわ!私痩せる!あんな愛加だってキラキラできるんだもの、私が痩せたらもっとキラキラできるでしょ!』

『あぁキャロル、兄様は嬉しいよ!もちろんあげはの次に綺麗になるさ!』

 あ、そこは一番じゃないんだ。ヨハンって微妙に現実的だよな。

『やっと話しがまとまったみたいね』

『あげは!!』「あげは姉ぇ」

 感極まりぎゅーっとキャロルを抱きしめていたヨハンがあっさりキャロルをポイして入口で書類片手にもたれかかっていたゴージャス美人な姉あげはに駆け寄り抱きつく。ヨハンの切り替えに可哀想にとキャロルを見ればあげはバカなヨハンを知ってるからか苦笑いしている。

 そんなヨハンを力強く引きずりキャロルの隣に座るとキャロルを見やり頭を撫でる。

『キャロル、あなただったら出来るわ頑張りなさい』

『はい、あげは姉様!』

 頬を紅潮させ頷くキャロルは可愛い。あげは姉ぇも微笑ましげに見つめて良い絵なのだがあげは姉ぇにくっつきスリスリしているヨハンが台無しにしている。今日は甘えん坊モードか?

『こーらヨハン、甘えるのは2人だけの時になさい』

『無理だよあげは。この前日本に行った時のダメージがまだ残ってるんだ』

 ヨハンの甘えモードは先月行った出張にあったようだ。

『出張先の仕事相手が本当に気持ち悪くてさ、Ω臭全開で誘ってくるんだよ。仕事だから逃げられないし我慢したけど、その後2日寝込んだんだ。もうやだああいうΩやから、思い出しただけで吐きそう』

 最後泣きが入ったヨハンをあげは姉ぇがよしよしと慰めている。
 ヨハンは幼い頃からαだと分かる容姿をしていたらしく、その頃からΩ性の男女に言い寄られSPがいくらガードしようがかいくぐり何度もフェロモンレイプをされそうになり、今では多量のΩフェロモンを嗅いだだけで吐いてしまうらしい。
 今は宏太の家で出している抑制剤を飲んでいるから良くなったらしいけど、危機回避が出来ないからと少しだけΩの匂いを感じる程度の薬にしているらしい。
 そんなΩが苦手なヨハンが大学で出会ったのが姉・あげはだ。
 言い寄るΩを蹴散らし救ってくれたあげは姉ぇに一目惚れしてアタック・交際に到ったらしい。まあ、バース性の被害に会いまくるヨハンがているあげは姉ぇに惚れるのは必然かもな。

『偉い偉い、ヨハンは頑張ったんだね。もうすぐその頑張りが実を結ぶからそれまでの辛抱よ。あんたがCEOしてくれてるから計画は滞りなく進んでるわ。待ってなさい、あのクソ野郎に目に物見せてやるんだから』

 わお、あげは姉ぇの目に怒りの炎と$が見える。前もそうだったけど¥ではない、$だ。これはアメリカで経営を学んだからだと思われる。姉よ、デザイナーより経営者の方が向いているんでない?

「惟親、これ持って行きなさい。学園祭のタイムラインを出したからその通りに進める事。あなた達生徒会にかかってるんだからしっかりやりなさい」

 あげは姉ぇが書類の一部をポンとテーブルに置く。どうやらあげは姉ぇの視界には一応オレ達も入っていたようだ。つーか、イチャつくなら自分の控え室でしてくれ。






 結局スタンバイぎりぎりまで居座られ、オレはチカや宏太とイチャつく事もできず悶々としたまま夜のショーとレセプションを終わらせ、その足で別邸へ向かうサロンバスに乗り込むと何故か帝家が勢揃い(帝両親、帝三兄妹)していて驚く。どうやら3ヶ月かけた仕事が全て終わったのに合わせて遊びに来たらしい。北大路家にも声をかけたけど両親共に忙しく、医師として仕事に同行していた美紗姉ぇと宏太だけ一緒に行くらしい。

 そして着いたのが姫川家別邸。ありますよプライベートビーチ&プール。やっと仕事から開放されて遊ぶぞー!!となっていたのにオレと兄佳加がたて続けに発情期ヒートになり敷地内にある別棟べつむねにお籠りする事になりそれで夏休みが終わるという悲しき事態になったのは絶対良い思い出にならないからな!

 因みに親達は悪い顔して話していたり夫婦(夫)でイチャコラしていたと姉あげはから報告があった。

 そんな情報いらねぇ。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

(前回の復習)

 高野豆腐に苺ソースをかけて置いたのが姉あげはにバレ逃げる愛加・・・



 シュタタタタタ・・・・・・

 愛加「うひー、あげは姉ぇしつこい!」

 タタタタタ・・・

 佳加「まなちゃーん、こっちこっち(ちょいちょい)」
 愛加「ラッキー」

 パタン(佳加に促され部屋に入る)ガチャリ

 愛加「佳兄ぃありがと~」
 佳加「いいんだよ。どうしたの?」
 愛加「いやー、高野豆腐に苺ソースかけたのがバレてさー」
 佳加「あれまなちゃんがやったの?」
 愛加「テヘ☆」
 佳加「そうなんだ。アレ一番最初に食べたの僕なんだよね」
 愛加「えっ?」
 佳加「そっか、まなちゃんかー」
 愛加「佳・・・兄ぃ・・・怒ってる?」
 佳加「・・・」
 愛加「(ヒュッ)」



 ぎゃーーーーーーーっ!!

 あげは「あーあ、私に捕まっておけば良かったものを」

 その日愛加は恐怖に震えて使い物にならなかったとさ☆
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