王道学園にさせてなるものかっ!

ネコフク

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学園祭編

学園祭1日目③

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 チカが菅原から貰った紙袋を、裕司が大きいジップロックに入れリュックにしまい背負ったのを見て皆んなで歩き出す。

 すれ違う中等部の制服の生徒がキャッキャッとはしゃぎながら見て回っているのを見ると、去年まであの制服着てたなーと目を細める。
 4つある中等部の制服は基本同じなんだけどブレザーの襟の縁が各学校で違う。一宮は紺、二宮は臙脂えんじ、三宮は黃、四宮は緑だ。高等部はうちがブレザーでもう一つの高等部は学ランなんだけどオレは学ランの方が良かった。だってチカや宏太が着たら禁欲的な感じがして色っぽいと思うんだよなぁ。目の保養だ。

 つらつら歩いていると「宏太さん!愛加さん!」と声をかけられ、振り返ると同じ二宮中の現生徒会のメンバーが揃っていた。

「きゃふー!宏太さあぁぁぁん!って裕司テメェ、邪魔すんなやぁぁぁ!!」

 宏太にロックオンして飛びつこうとした二宮中の生徒会長の渡瀬が、裕司に阻まれ凄い形相で睨んでいる。相沢さんがビビってるけど二宮中生徒会の風物詩みたいなものだから気にしないでほしい。

「あっ、帝会長だ!って抱きつこうとする前に攻撃すんなやぁぁぁ!!」

 抱きつくモーションをかける前に裕司に攻撃され渡瀬がキレているが2人共廊下で迷惑だからヤメロ。

「渡瀬ステイ」

「はいっ!!」

 宏太の号令にビシッと直立不動になった渡瀬。相沢さんが「チョー怖ぇ……」と青くなっているが、これが無ければ優秀で良い子なんですよ彼女は。

「お前向こうの高等部に行くのに何こっちの学園祭来てんだよ」

「うっせ!行けないからこそ来てんだよ!宏太さぁん一緒の高校に行けなくて美樹悲しいですぅ」

 怪訝な表情の裕司に噛みついていた態度をコロッと変えてブリブリと猫なで声で縋る。あ、相沢さんがビクッとなってる。いやホントこれが無ければ優秀で良い子なんですよ。

「僕は嬉しいけど」

「そんなぁ~。愛加さんも悲しいですよねぇ?」

「いや、宏太が纏わりつかれなくて清々するけど。それに向こうで婚約者が待ってるだろ」

「ぐっ……宏太さん私と番って……」

「やだ」

「じゃあ帝会長……」

「断る」

「ふぎゅっ」

 へこんでるトコ悪いがチカも宏太もオレの番だし。しかしそんなに婚約者が嫌なのか?奴は優しくていいヤツだぞ。

「渡瀬の婚約者いいヤツじゃん。何が不満なんだよ」

 名家だと幼い頃から婚約者がいたりする事がある。特にΩは庇護とαの出産率の高さから政略結婚に使われたりする。まあ、渡瀬と相手は政略的な婚約なんだけどαにしては優しいし性格も良い。

「決まってるじゃないですか、私より可愛いからですよ!!」

「はあ?」

「はあ?じゃないですよ!何でαなのにΩの私よりアイツの方が可愛いんですか⁉それに私は格好良い人が好きなんです!」

 そ こ か よ !

 どうでもよくて今まで理由聞いてなかったけどそこかよ。

「バカかお前は。自分の顔を鏡で見てみろ、お前は綺麗系だ!可愛いと比べるな!」

「だってぇ……」

「お前……まだ発情期ヒートを一緒に過ごしてないな」

「うえっ、まだ発情期ヒート来てなしぃ」

「ふっ……ヒートが来たら一緒に過ごしてみろ。雄の顔は格好良くて色っぽいぞ。ギャップ萌えだ」

「ギャップ萌え……」

 こっそり耳打ちしてやれば真っ赤になってブツブツ言っている。見た目が可愛くてもα、外ヅラだけだ。それにいつまでも宏太やチカに執着されても困るしな。

「ほら、お前達も殆どあっちの高等部に行くんだろ?せっかく来たんだから雰囲気を楽しめよ。あ、渡瀬がαに突撃しないように見張っとけ」

 心得たと言わんばかりに他のメンバーが渡瀬を引きずって行く。慣れるから大丈夫だろう。

「ちょっ……二宮中強烈なんだけど……」

「俺達を入れるなよ」

 そうだそうだ、1つ下が強烈なだけでチカやオレ達の代は普通だったんだぞ。

「そういえば今の3年野心家が多かったね」

「あー、確かに。一時期ヒートテロ多発したっけ」

「やっぱ怖ぇ二宮中!!」

 相沢さんって一宮出身だっけ?あそこは三宮と一緒で比較的βが多くて穏やかだって言ってたな。あ、あくまでも一宮~四宮の間の話であって他の公立の学校とは比べものにならないくらいバース性のトラブルは多いけどね。

 送られる食べ物には発情促進剤当たり前、フェロモンをワザと撒き散らす、強引に関係を持とうとしたり高等部より荒れてたと思う。まあそんな事するのは小さい頃からバース性が分かっていた生徒ではなく中学に上がる時にバース性が確定した生徒なんだけど。

 小さい頃からバース性が分かっている生徒の殆どが、名家や大企業の子息子女なので対策を叩き込まれているから、それに引っ掛かる人は少なかったし、良い抑制剤でフェロモンを回避してたから不本意な番は少なかったと思う。たまに馬鹿やって人生決まったヤツもいるけど自業自得かな。

 そういうのもあって中2まではαとΩはクラスが分かれていたし、バース性の危険やそれを回避するのをめっちゃ叩き込まれた。だから高等部に入ってからは比較的トラブルが少ないんだけど、やっぱり公立中から高等部に入って来た生徒は危機感が少なかったり秋田鈴音のようにヒートテロ起こそうとしたりするので要注意だ。

 それに比べ渡瀬は気持ちをぶつけて突っ走ってくるだけなので可愛いもんだ。だからオレ達も無下にはしなかったんだよね。

「大丈夫、ヤバそうなのは来年向こうの高等部に行くから」

「だといいけど。あれ見ちゃうと俺βで良かったと思うよー」

渡瀬アレは特別製ですから」

 毎回裕司の攻撃をものともしないんだからフィジカル強すぎだろ渡瀬。

 廊下で騒いでいたこともあり、人集りが出来てしまったので騷ぎを詫び、足早に生徒会室へ行く。学園祭だというのに生徒会室がある廊下の入口に交代で親衛隊が立っている。後で差し入れでもしよう。

「お疲れ~」

 生徒会室には一ノ蔵さんが留守番をしていたようで双子はいない。どうやら番の女の子が来ていて案内をしているらしい。

「先ほど実行委員が飲み物とお弁当を持って来ましたよ」

 応接テーブルの上にある飲み物とお弁当を指し別な方からお茶のペットボトルを各机に置いていく。

「裕司チェックして」

「はい」

 くんかくんかとお弁当を嗅いでいる裕司を不思議そうに一ノ蔵さんが見ている。前もって裕司の話はしてたけどこれは言ってなかったな。

「お弁当は特に何もないようですが、割り箸に唾液が付いてますね」

「「「ひぃぃぃ~!!」」」

 オレと相沢さん、一ノ蔵さんが同時に悲鳴を上げる。やべー、めっちゃ鳥肌立った!!2人も肩を竦め腕を擦っているから鳥肌が立ったんだろう。

「フェロモンもべったり付いてますね」

「あ、俺食欲が無くなったよ」

 胃の辺りを押さえながら相沢さんが力なく言う。オレもだ。弁当に何かしら入っている予測はしてたけど箸の方かよ。

「うん、これ紙袋の人のフェロモンだ」

「うぇ……」

「わーチカー!!」

 顔を顰めるチカも格好良いな……じゃなくて皆んなに精神的ダメージを与えるとは菅原め!!「お弁当も一応検査に回しておきますね」って冷静だな裕司。つーか、さっきより大きいジップロックどこで売ってんだよ。
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