王道学園にさせてなるものかっ!

ネコフク

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新・宮中学園

新理事長②

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 あげは姉ぇを見て倒れた生徒(主に演劇部員)が保健室に回収され、落ち着いた雰囲気になった体育館にヨハンの柔らかな声がマイク越しに響く。

「皆さん初めまして。理事長のヨハン=イーストです」

 にっこりと微笑むヨハンに頬を染める女生徒とΩの生徒。惚れるなよーヨハンはあそこに立ってる女王様の婚約者ものやでー。

「急に経営財団が変わったと聞いて不安になっていると思いますが、運営自体は全く変わらないので生徒の皆さんは今まで通りの学校生活を約束します。もちろん金銭的な面でもです。保護者の方々には既に連絡済みになっています。
 もし不安な所が生徒は生徒指導室に来てもらえれば詳しく説明しますから遠慮なく来て下さいね」

 裏がなさそうな笑顔に生徒達は見惚れている。αなのに穏やかな見た目だし(実際穏やか)、生徒の心を鷲掴みだな。

「そして彼女は姫川あげは、理事として僕のサポートをしてくれる女性だよ」

「理事長から紹介に預かった姫川あげはよ。ここ宮中学園の卒業生でその時生徒会の書記をしていたわ。別の仕事もしているからあまり学園には顔は出せないけど、影ながら理事長を支えていくので宜しくね」

「きゃーあげはお姉様ー♡」

「あげは様素敵ですー」

「演劇部にも顔を出して下さーい!」

 おいおい、理事長のヨハンより歓声が多いんだけど。あげは姉ぇも投げキッスするな!またパタパタ倒れてってるぞ。収拾がつかなくなるからヤメロ。
 だからヨハンはうっとりあげは姉ぇを見るなって!

 もうまたカオス!


 ◇◇◇◇◇

「いやー色々と凄い集会だったな。あそこまで保健室に運ばれる生徒見たことねぇ」

 教室に戻ると井上があっはっはと笑っているが、身内の事だから笑えない。

「うちの姉たちが申し訳ない」

「姉?……ああ!そう言えば姫川って言ってたな。姉ちゃんか!姫と似てないのな」

 まあうちはオレ以外華やかな顔してるからな。華やかさゲージでいったら姉>父>兄>母>>>>>>>オレって感じだ。

「あげはさんの美しさは愛加と真反対のベクトルだからね」

「たしかにー。しかもαだろ?モテそー」

「モテるよ。女性に」

「分かるわ、女子ばっか倒れてたもんな」

 あげは姉ぇは同性にモテる典型的な人間。仕事には厳しいけど優しいし頼りがいがある人なのだ。ただ家事能力は全く無いので、ほっとくと汚部屋の住人になるから要注意だ。うちにお手伝いさんがいるから辛うじてなってないが、ホテル暮らしになるとヤベェことになるので、スタッフが定期的に片付けているらしい。



 臨時集会も終わり教室には戻って来たけど授業は無くなったので、皆部活へ行ったり寮に戻ったり。オレも寮に足を進めたいが、まだ生徒会の仕事が残っているので生徒会室へ行く。今日はご飯食べたらすぐ寝る、絶対寝る!

「遅い」

 生徒会室に入ると、部屋に似つかわしくないゴージャス空間が出来上がっていた。
 もちろん元凶はただ1人、あげは姉ぇだ。

 あげは姉ぇがいるだけでその場が華やかになるのに、どこから持って来たのか応接セットのテーブルにはアフタヌーンセットが置かれていて、貴族のお茶会のような様になっている。
 しかも執事っぽい人がお茶を淹れてるし!

「愛加と宏太も座りなさい」

 指し示されたトコにある椅子に素直に座る。向かい合わせで座る三人掛けソファーの片方にあげは姉ぇとヨハンが座っているので、双子もソファーに座れず椅子に座っている。

「単刀直入に言うわね、ここに載ってる生徒は昨日付けで退学及び転校になったから」

 皆んなに紅茶やコーヒーが行き渡ったところであげは姉ぇが書類を見せて話し出すが、それって理事長のヨハンが言う事じゃないか?思っても言わないけど。

「退学及び転校ですか。結構いますね」

 書類を受け取り、確認したチカが人数を見て驚いている。

「そうね、理事のコネで試験を受けないで入学したり、お金を積んで入学した生徒は退学にしたわ。だって入学基準の学力を下回っているのもいいとこなんだもの。もちろんその理事は解雇クビ
 ただ、3年の生徒に関しては受験が近いという事で転校という措置を取ったわ。さすがにこちらも鬼じゃないのよ。
 その代わり社交界に話は回るだろうから、その家はこれから大きな顔は出来ないでしょうね」

 確かに一宮~四宮の生徒だからってそのまま宮中や宮近に入学出来る訳じゃない。きちんと内部テストを受けて、受からないと別の高校を探さないといけないんだよ。ズル、ダメ、絶対。

「あと菅原祐希は転校としているわ。親の急な海外転勤について行く事になったってね。退学だと探る人が出てくるよのねぇ」

 困るわよねぇ、という憂い顔をしているけど、そりゃラボまで行き着かれるのはこっちが困るもんな。同意書など正規の書類があるらしいけど、変に探られるのは面倒って事だ。

「立花樹は退学か」

「だから見かけなかったのかー」

 どうやら立花は退学らしい。チカと宏太(と他の番持ち)の鼻が守られた。これで静かに学校生活を送れるな。

「あのおバカちゃんはβばかりの高校にブチ込んだんだけどねぇ。何処からか情報を入手して野田くんと柚木くんもそこに転校しちゃったのよねぇ」

「「「「はあ!?」」」」

「あはは野田っちオワター」

「柚木っちもオワター」

 双子が爆笑しているが、何やってんだあの2人。

「いいんじゃないか。どうせあの2人は次男だしな。途中から期待されてないだろ」

 手厳しいがあっさり宮中から転校出来たって事はそういう事なんだろう。それか何か条件を付けられたか。
 どちらにしても先は明るくはない。

「でも転校するほど好きだったのか?」

「あの抑制剤のフェロモンにまだ酔っているか、麻痺したか……覚めた時が大変そうだな」

「その時はフォローしてあげるわ」

「あげはさん素敵……」

「そうだろう、あげははとても素敵なんだ」

 いやいやあげは姉ぇの話はいいから。

 え、もう話たい事は終わった?ならいいけど。
 あー、ここでサンドイッチやお菓子食べたら夕飯いらないな。帰ったらソッコー寝よ。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ☆余談☆

 ヨハンが「不安がある生徒は生徒指導室へ」という話を聞いた一部の生徒がその後生徒指導室に行ったが、そこから出て来た生徒は皆落ち込んでいたらしい。

「だって理事長や理事がいて説明してくれるのかと思って行ったら、スーツのおじさんだったんだもん」
 とのこと。

 そりゃ理事長自ら個別に説明しないよねって話。
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