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黒幕に明日はないようです

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 マジ……マジ何なの⁉父親が上善から母親を略奪したって事か⁉それめっちゃ根に持たれるヤツじゃん!

「おっと、パパひどーいとか思ってるでしょ?違うよー、元々2人はソリが合わなかったの。Ωはαに従うべきという上善とαに並ぶくらい優秀な美夜きゅんじゃあ衝突するよね。そんな思想だったのを婚約してから分かったって感じ?鷹司家も溺愛している美夜きゅんが「上善クソより良い人見つけた!」って言うから意をくんで婚約破棄申し入れたんだよ。あ、良い人って僕ね。上善方は鷹司のブランドと美夜きゅんの顔を気に入ってて婚約破棄を渋ってたけど、金積んだらあっさり引いたし。奪ったって言い方が悪かったけど、略奪とかネトラレじゃないからね~」

 それだったらいいけど。まさか身近なトコで略奪婚とか嫌すぎる。俺は普通に恋愛して結婚したい。……ってそうなると俺が嫁、嫁かぁ。Ωだから俺が嫁だよな。男なのに嫁、フクザツな響きだ……

 つい「嫁……」と呟いてしまうと伊月さんがキラキラした目で見られてしまった。しかも「花ノ宮瀬名……しっくりくるね♡」とかぶつぶつ言っている。妄想の中で俺結婚してる⁉早えよ!

 でもそうなると鷹司家や三波家を根に持ってるのは分かるが、花ノ宮家は関係ないよな。何で伊月さんと飯坂弟のごたごたに首を突っ込むんだ?

「それは分かったけど、だからって全く関係無い伊月さん達の事に首を突っ込む必要ないよな?」

「それはね、瀬名だよ」

「へ?俺?」

 その一言にみんなが俺を見る。いやいやいや、何でそこに俺が出てくんの?

「予想だけど上善は娘と瀬名を結婚させたいんじゃない?」

「え、ヤダ」

 おおぅ、つい脊髄反射で答えてしまった。娘?ダレソレ?親が婚約破棄した相手の娘と結婚なんて何の罰ゲームだ?

「上善は婚約破棄後、鷹司に何度もΩを寄越せって言ってたけどその度に断られてたからね。だから鷹司家から出て嫁に行った美夜きゅんの息子である瀬名に目を付けたんじゃない?婚約破棄を渋った上善の顔を立てて絶縁のていをしていたのが今回仇になったかぁバリバリ……」

 言いながら煎餅を食べるのはヤメロ。「いや~これ美味しいですね」とか秘書に言ってんじゃねーよ。

「だからって伊月さん関係ないじゃん」

「いや、宇佐先生の予想通りなら関係あるよ。多分僕が瀬名を手に入れようと動いたのが原因だろうね。上善氏が狙っていたのに横槍を入れられたような感じになってヤキモキしている時に、僕の運命の番が現れこれ幸いと飯坂家を焚き付けたんじゃないかな」

 確かにそれだと点と点が線になる。でもそこまでして俺を欲する必要は無いと思うんだが。

「上善氏が鷹司家に固執したのは色んな利益があるからだと思います。子供は優秀なαやΩの可能性が高い。特に鷹司の血を引いているΩというだけで伴侶にと金を積む家が多い。まあ現金だけじゃなく、会社の業務提携や社交界での地位向上も見込めるのでここ10年、業績が芳しくない上善家としては子供をすぐ作らせ赤ん坊のうちから婚約させる気なのでしょう」

 まあ、ある程度以上の家だとよくある話ですよと筒井さんが言うが、人を道具としてしか見てない感じは嫌だなぁ。

「昔からある話だよね。名家になるほど優秀な子供を欲しがるから。だから優秀なΩを排出する鷹司、浦霞うらがすみ、越乃の御三家に目を付け申し入れをする。もし婚約が成立した場合、結納金の名目でかなりの金額が包まれるんだよ。あ、これはΩの名家だけで一般家庭は常識の範囲内の金額ですから期待しない方がいいですよ」

 飯坂両親が結納金の話で期待に満ちた顔をしていたが、あからさまにがっかりしとる。契約の際にかなりの金額を渡したと聞いていたが、あまりの金額に欲がでたんだろうな。

「それだったら鷹司家に断られたんだったら他の御三家に打診すれば良かったのに」

「その頃に鷹司家以外は釣り合う年齢の子がいなかったんだよ。今の時点でも上は結婚・婚約済、下は10才近く離れているからね。遠縁ならいるかもしれないけど分家にもなれない家は期待できないからね。花ノ宮うちみたいに血縁を気にしない名家は少ないんだよ」

「花ノ宮家は違うんだ?」

「そうだよ。その代わりうちはコネや家柄が関係無い超実力主義でね、能力が無い人間はずっとヒラのままだし、花ノ宮の名前も名乗れないんだ。当主も候補の中から実力で選ばれる。今の当主は僕の母だよ」

 へえ、能力が正当評価しますって謳っている会社でもコネや家柄、贔屓忖度が何かしら作用してたりする。もしそれが本当なら凄い事だ。だからこそ大企業の花ノ宮グループが今でも成長し続けている要因なのかもしれないな。

「上善氏としては外孫である瀬名氏ならば鷹司家を通さず手に入れ易いと思ったのでしょうが、相手が悪かったとしか言いようがありませんね。会見前に渡した資料を元に伊月様から指示を受けて動いておりますので、上善氏の方は明日には決着が着いています」

 その話からすると上善の方に何かしら制裁的なものがあるのだろう。聞いたらうへぇとなりそうなので聞かないけども。

「そう?がっつりやっちゃって」

「はい、またその気を起こさないくらい徹底的に」

 父親に返事をする伊月さんはそれはもう綺麗な笑顔で頷いていた。





 怖っ。
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