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番外編 鷹司家の人々②
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母親の話が一段落ついたのか、今度は俺と伊月さんの話になった。
どこで出会ったのかから互いの好きな所、果ては大学生活や着ているブランドまで近所のオバちゃんかってくらい奥様方から質問責めにあった。特に伊月さんの執着と欲望の塊である「運命の番専用抑制剤」にはみんな興味津々だった。
それはそうだ、Ωの名家と言われる鷹司家、越乃家、浦霞家はそれなりの家のαと婚約し、繋がりを持つのに全く関係ない所から運命の番が現れ、番われると困るもんな。α側からならまだ賠償金を払って婚約破棄か、そのまま結婚し運命を愛人として囲う選択肢もあるが、Ω側はそうはいかない。名家として汚点が残るし、管理問題に問われる。だから婚約者が決まると学校とΩ同士の交流会以外は外出禁止になるらしい。
そこで先日発表された「運命の番専用抑制剤」は喉から手が出るほど欲する薬であり、それを作った伊月さんは救いの神らしい。
「俺達Ωの夫婦だからさ、喜んだよね~。これでビクビクしながら過ごさなくても良くなったよ。本当にありがとう」
次男の修二さんが、奥さんの華奢な肩を引き寄せ嬉しそうに笑う。
Ω同士だと番えないし、知らないαに寝取られるなんて嫌だからさ~と軽く言われたけど、本当はずっと不安だったんだろうな。
「いえ、お役に立てたなら良かったです」
何でもないように伊月さんは笑顔でこたえているけど、あれからかなりの反響があってΩ同士だけじゃなく、αカップルやβをパートナーに持つαやΩに喜ばれている。
薬も生産ラインが追いつかなくなるくらい注文が来ているらしい。新羅さんが物凄くホクホクしながら話してたよ。
(※新羅はめっちゃ商売人です)
まあ、そんな抑制剤を作れるなら運命に気付くだけの薬を作れって頭の涌いた輩がチラホラいるらしいけど。だったらお前が作れっつーの。
こんだけ騒がれているからそのうち「私は運命だと気付いたけど相手は運命の番専用抑制剤を飲んでいて気付きません」とかやたら長い題名のドラマやマンガが出てきそうだよな。
実はΩの名家御三家に伊月さんが抑制剤の話を持って行って投資をお願いしたらしい。実際は花ノ宮と祐善寺だけで資金は間に合っていたけど、Ωの御三家が率先しての協力が薬の認証を早めるからと。番うのに不利な方の陳情は大きいらしい。
そんな事もあって婚約はスムーズだったらしい。それが無ければジジオジズが「そんな奴に瀬名たんは渡さん!」と口出ししてきただろう、と。
え、全く交流してなかった親戚の口出しとか怖いだけなんですけど?
でもやりそうだなーって思ってしまう辺りがやだなぁ。
そんなこんなで話が盛り上がってしまい、そろそろ目の前に用意されていた寿司桶に入っている寿司が乾いてきたなーという頃、廊下からドタドタと走る音が聞こえ、スパーンと障子が開く。その音、余程勢いよく開けないと鳴らない音だよな?ちょっと大きくてビクッってなったよ。
「遅くなりましたー!瀬名たん、百夢ッペ、鷹司明、従兄弟の明ちゃんだよー」
「やべぇ、また変なの来た」
ハアハア息を切らしながらスーツを着た30前半くらいの男性が、これまた鷹司の血を色濃く受け継いだような自己紹介を繰り出してきた。そりゃ百夢も引くわ。ぺって何だよぺって。
お花畑を背負ったような人物は一番上の従兄弟らしい。従兄弟の中で唯一αで、必然的に鷹司家の後継者。今日は仕事を切り上げて来たようだ。
「浮かれおってからに。明、他の者にも挨拶をしなさい」
「すみません、初めて会う従兄弟にこうふ……浮かれてしまいました。ひいお祖父様、お祖父様仕事で遅くなりました。三波家の皆様、花ノ宮さん鷹司明がご挨拶申し上げます」
背負った花畑を外し、しっかりとした挨拶をする明さん。やればできる子……というか切り替え早っ。
挨拶をし終わった明さんは長男夫婦と次男夫婦の間に座り、姿勢を正す。こう見ると線は細いけどΩである伯父さん達よりがっしりとしていてαだと分かる。
「さて、みんな揃った事だし美夜たんの帰宅と瀬名たんと伊月くんの婚約を祝って乾杯しよう」
「その心は?」
「目出度いのに便乗して飲みたいだけだよー」
「やっぱり!」
テーブルにご馳走が並んでいる時点で予想はしてたけどやっぱりな!婚約式リターンズじゃねぇか!「飲みニケーション!」とか古い事言ってるし!
「親世代はどうなってるんだろうねぇ」
ホントその通りですよ。うちも親戚が集まると同じ感じだよって伊月さんのトコもか!
「子供達は親に付き合わなくていいからそっちのテーブルに移動しなさい」
長男の奥さんが別に用意してくれていたテーブルにありがたく移動する。母親と積もる話もあるだろうし、お互い気を遣うだろうしな。
「じゃあ俺も……」
「明、あなたはここに居なさい」
「えー、瀬名たんと百夢ッペと話したいー」
移動しようとする明さんの首をかっしり掴む奥さんは多分αだろう。掴まれたのと睨まれたのでシュンとしている。
従兄弟同士でかたまり座ると乾杯の音頭を当主であるじいちゃんがとり、宴会のようにわいわいとしだす。久しぶりと言っていた母親やこの中では影が薄い父親も普通に話しているので、どこかしらで繋がって連絡は取っていたのが見て取れる。
俺達のテーブルはというと、俺を挟んで伊月さんと百夢が座り、向かいには中学生くらいの子を挟んで高校生くらいの男女が座っている。3人共ネックガードを着けているからΩなんだろう。
「あー、初めまして?」
「うん、初めまして。俺は三波瀬名、こっちは弟の百夢と婚約者の花ノ宮伊月さんです」
再度の挨拶になるけど3人は親の後ろに座ってたからな。
「へえー、みんな格好良いねー。俺は鷹司美也、こいつは翼、そっちの女が美優だ」
「こんな美人をつかまえて女って何よ!」
「あーあーそんなに怒ってシワが増えるZE☆」
怒る美優にからかう美也。そして冷めた目で見ている翼。三種三様、分かり易い。
「さてはお前、三男の息子だな」
「何故分かった⁉」
そりゃ分かるよ、語尾が一緒だからな。
「従兄弟もこれかよ」
こら百夢、もっと小さな声で言いなさい!
ーーーーーーーーーー
この作品は第11回BL小説大賞にエントリーしていますので良かったら投票宜しくお願いします。
どこで出会ったのかから互いの好きな所、果ては大学生活や着ているブランドまで近所のオバちゃんかってくらい奥様方から質問責めにあった。特に伊月さんの執着と欲望の塊である「運命の番専用抑制剤」にはみんな興味津々だった。
それはそうだ、Ωの名家と言われる鷹司家、越乃家、浦霞家はそれなりの家のαと婚約し、繋がりを持つのに全く関係ない所から運命の番が現れ、番われると困るもんな。α側からならまだ賠償金を払って婚約破棄か、そのまま結婚し運命を愛人として囲う選択肢もあるが、Ω側はそうはいかない。名家として汚点が残るし、管理問題に問われる。だから婚約者が決まると学校とΩ同士の交流会以外は外出禁止になるらしい。
そこで先日発表された「運命の番専用抑制剤」は喉から手が出るほど欲する薬であり、それを作った伊月さんは救いの神らしい。
「俺達Ωの夫婦だからさ、喜んだよね~。これでビクビクしながら過ごさなくても良くなったよ。本当にありがとう」
次男の修二さんが、奥さんの華奢な肩を引き寄せ嬉しそうに笑う。
Ω同士だと番えないし、知らないαに寝取られるなんて嫌だからさ~と軽く言われたけど、本当はずっと不安だったんだろうな。
「いえ、お役に立てたなら良かったです」
何でもないように伊月さんは笑顔でこたえているけど、あれからかなりの反響があってΩ同士だけじゃなく、αカップルやβをパートナーに持つαやΩに喜ばれている。
薬も生産ラインが追いつかなくなるくらい注文が来ているらしい。新羅さんが物凄くホクホクしながら話してたよ。
(※新羅はめっちゃ商売人です)
まあ、そんな抑制剤を作れるなら運命に気付くだけの薬を作れって頭の涌いた輩がチラホラいるらしいけど。だったらお前が作れっつーの。
こんだけ騒がれているからそのうち「私は運命だと気付いたけど相手は運命の番専用抑制剤を飲んでいて気付きません」とかやたら長い題名のドラマやマンガが出てきそうだよな。
実はΩの名家御三家に伊月さんが抑制剤の話を持って行って投資をお願いしたらしい。実際は花ノ宮と祐善寺だけで資金は間に合っていたけど、Ωの御三家が率先しての協力が薬の認証を早めるからと。番うのに不利な方の陳情は大きいらしい。
そんな事もあって婚約はスムーズだったらしい。それが無ければジジオジズが「そんな奴に瀬名たんは渡さん!」と口出ししてきただろう、と。
え、全く交流してなかった親戚の口出しとか怖いだけなんですけど?
でもやりそうだなーって思ってしまう辺りがやだなぁ。
そんなこんなで話が盛り上がってしまい、そろそろ目の前に用意されていた寿司桶に入っている寿司が乾いてきたなーという頃、廊下からドタドタと走る音が聞こえ、スパーンと障子が開く。その音、余程勢いよく開けないと鳴らない音だよな?ちょっと大きくてビクッってなったよ。
「遅くなりましたー!瀬名たん、百夢ッペ、鷹司明、従兄弟の明ちゃんだよー」
「やべぇ、また変なの来た」
ハアハア息を切らしながらスーツを着た30前半くらいの男性が、これまた鷹司の血を色濃く受け継いだような自己紹介を繰り出してきた。そりゃ百夢も引くわ。ぺって何だよぺって。
お花畑を背負ったような人物は一番上の従兄弟らしい。従兄弟の中で唯一αで、必然的に鷹司家の後継者。今日は仕事を切り上げて来たようだ。
「浮かれおってからに。明、他の者にも挨拶をしなさい」
「すみません、初めて会う従兄弟にこうふ……浮かれてしまいました。ひいお祖父様、お祖父様仕事で遅くなりました。三波家の皆様、花ノ宮さん鷹司明がご挨拶申し上げます」
背負った花畑を外し、しっかりとした挨拶をする明さん。やればできる子……というか切り替え早っ。
挨拶をし終わった明さんは長男夫婦と次男夫婦の間に座り、姿勢を正す。こう見ると線は細いけどΩである伯父さん達よりがっしりとしていてαだと分かる。
「さて、みんな揃った事だし美夜たんの帰宅と瀬名たんと伊月くんの婚約を祝って乾杯しよう」
「その心は?」
「目出度いのに便乗して飲みたいだけだよー」
「やっぱり!」
テーブルにご馳走が並んでいる時点で予想はしてたけどやっぱりな!婚約式リターンズじゃねぇか!「飲みニケーション!」とか古い事言ってるし!
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ホントその通りですよ。うちも親戚が集まると同じ感じだよって伊月さんのトコもか!
「子供達は親に付き合わなくていいからそっちのテーブルに移動しなさい」
長男の奥さんが別に用意してくれていたテーブルにありがたく移動する。母親と積もる話もあるだろうし、お互い気を遣うだろうしな。
「じゃあ俺も……」
「明、あなたはここに居なさい」
「えー、瀬名たんと百夢ッペと話したいー」
移動しようとする明さんの首をかっしり掴む奥さんは多分αだろう。掴まれたのと睨まれたのでシュンとしている。
従兄弟同士でかたまり座ると乾杯の音頭を当主であるじいちゃんがとり、宴会のようにわいわいとしだす。久しぶりと言っていた母親やこの中では影が薄い父親も普通に話しているので、どこかしらで繋がって連絡は取っていたのが見て取れる。
俺達のテーブルはというと、俺を挟んで伊月さんと百夢が座り、向かいには中学生くらいの子を挟んで高校生くらいの男女が座っている。3人共ネックガードを着けているからΩなんだろう。
「あー、初めまして?」
「うん、初めまして。俺は三波瀬名、こっちは弟の百夢と婚約者の花ノ宮伊月さんです」
再度の挨拶になるけど3人は親の後ろに座ってたからな。
「へえー、みんな格好良いねー。俺は鷹司美也、こいつは翼、そっちの女が美優だ」
「こんな美人をつかまえて女って何よ!」
「あーあーそんなに怒ってシワが増えるZE☆」
怒る美優にからかう美也。そして冷めた目で見ている翼。三種三様、分かり易い。
「さてはお前、三男の息子だな」
「何故分かった⁉」
そりゃ分かるよ、語尾が一緒だからな。
「従兄弟もこれかよ」
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