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夜会のドレス
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離宮での穏やかな日が続き、足の痛みもだいぶ良くなり腫れも引いた
ヴィル様は、まだ冷やそうと必死だが、腫れも無くなったので遠慮しておく
体の痛みや怠さも無くなり、だいぶ楽になった
今日は、夜会だ
午前中から、侍女のサアラは張り切っていた
腕を振るう機会がずっと失われていたせいで、うずうずしていたらしい
今日こそは、思いっきり磨き上げようと意気込んでいる
「アリアンお嬢様、お体は大丈夫ですか?」
「ええ、もうだいぶ良くなったから大丈夫よ」
「それは良かったです!ではまず、湯浴みから念入りにして参りましょう!」
「お手柔らかにね、サアラ」
「腕が鳴ります」
サアラは使い慣れた離宮を動き回っている
夜会どころか茶会すらまともに出た事の無い私は不安になるが、サアラが嬉しそうにしているので、これも恩返しのひとつだと思って言う通りに従うことにする
私はデビュタントすら果たしていない
離宮に籠った生活をしていたせいで、私の存在など誰も知らないだろう
そんな私がヴィル様の隣にいてもいいのだろうかとまた不安になってしまった‥
そんな不安で弱気になっている私に、ヴィル様から素敵なドレスが届いた
今までもずっと、私の為にドレスを用意してくださる優しいヴィル様だが、今日のドレスは目も眩む程に美しかった
ヴィル様の瞳と同じ、エメラルド色のボールガウンの素敵なドレスは、ウエストから横に膨らむ女性らしいドレスだった
幾重にもなるチュールが豪華に膨らみ、ウエストをより細く見せてくれる
チュールの色は、グラデーションになっていて、動く度に見る角度で濃いエメラルド色から明るい色への変化を繰り返している
表面には、ダイヤモンドやエメラルドの宝石が散りばめられていて、光にキラキラと輝いている
肩を露出させたノースリーブは、女性らしさを感じさせるドレスだ
胸元には、細かな刺繍がされており、レースで作られた可憐な白薔薇も付いている
息を呑む程に煌びやかで、動く度に華やかだ
「何て素敵なドレスなんでしょう」
思わずうっとり見惚れてしまう
「ヴィルドルフ様は、相変わらず独占欲がお強いですね」
「そうなのかしら」
「ええ。アリアンお嬢様は、こういう事には疎い方ですから、これからは私がお教えしないといけませんね。きっとヴィルドルフ殿下のお衣装にもアリアンお嬢様の瞳のお色が入っていますよ。お二人で並んでいれば、誰が見ても愛し合うお二人そのものでございましょう」
頬が熱くなる
そう言えば、私はまだヴィル様にお伝えしていなかったわ
急に鼓動が早くなる
私ったら勇気が無いわね‥
いつもこんなに大きな愛をいただいているのに‥
今日はサアラが腕を振るい、夜会らしく化粧もいつもよりしっかりとされた
頬紅で顔色も良く見え、口紅は艶がありとても女性らしい
髪は綺麗にまとめて結い上げられ、そこには小さな真珠が散りばめられている
鏡に映る自分はまるで違う人のように華やかに見える
「サアラのお陰で別の人になった気分よ」
「いいえ、アリアンお嬢様。私は少しお手伝いしただけです。アリアンお嬢様は、もともと世界一美しい女性でございます!」
「サアラったら、お世辞が上手ね」
「本当の事でございます!」
サアラは昔の事を思い出した
侍女の私は、昔からアリアンお嬢様がどれほど美しいのかよく知っている
一目見れば、誰でも虜になってしまう程の美貌の持ち主だ
それにもかかわらず、王妃シェルリーンは、離宮を訪れアリアンお嬢様に、
『醜い魔女の顔を人前に出すな』
『そんな顔で離宮の外に出るな』
『卑しい血の身の程知らず』
『王族の恥晒し』
と、何度も罵っていた
王女ローズもアリアンお嬢様を見ると罵っていた
そして離宮の外に出ることを禁じていたのだ
王の寵愛を受けるマリア様への嫉妬は凄まじいものだった
そして、その美しさを恐れていた
マリア様が王宮や王都に出ることになれば、自分の立場を脅かすかもしれないと‥
この美しい母子を閉じ込めて、表には出したくなかったのだ
アリアンお嬢様は、小さい頃からその環境に置かれ、自分を醜いとさえ感じていた
自分が特別に美しいなどとは気付かないまま育ってしまったのだ
その為、自己評価も低くなってしまった
あんな環境で育ちながらも、アリアンお嬢様は、優しく素直に育ってくれた
このお方こそ、誰よりも幸せになるべき人だと思っている
マリア様の分まで、アリアンお嬢様には、これからの人生を楽しんで生きて貰いたい
行きたい所もやりたい事も、遠慮せずに好きな人生を送って貰いたい
そして、私はずっとその側に付いて居たいと願っている
「アリアンお嬢様。あなたこそ、世界で一番美しくて素敵な人ですよ」
「サアラ‥‥ありがとう」
小さい頃から、私よりも悔しがったり怒ったりしてくれたサアラは、私の心の表現者のような人だ
彼女がずっと側に居てくれたからこそ、きっと私はここまでやってこれたのだと思う
サアラの言葉が一番信用出来る
ならば、サアラの言葉を信じて、これからはもっと自分に自信を持って生きていこう
幸せになっていこう
そう心に誓った
ヴィル様は、まだ冷やそうと必死だが、腫れも無くなったので遠慮しておく
体の痛みや怠さも無くなり、だいぶ楽になった
今日は、夜会だ
午前中から、侍女のサアラは張り切っていた
腕を振るう機会がずっと失われていたせいで、うずうずしていたらしい
今日こそは、思いっきり磨き上げようと意気込んでいる
「アリアンお嬢様、お体は大丈夫ですか?」
「ええ、もうだいぶ良くなったから大丈夫よ」
「それは良かったです!ではまず、湯浴みから念入りにして参りましょう!」
「お手柔らかにね、サアラ」
「腕が鳴ります」
サアラは使い慣れた離宮を動き回っている
夜会どころか茶会すらまともに出た事の無い私は不安になるが、サアラが嬉しそうにしているので、これも恩返しのひとつだと思って言う通りに従うことにする
私はデビュタントすら果たしていない
離宮に籠った生活をしていたせいで、私の存在など誰も知らないだろう
そんな私がヴィル様の隣にいてもいいのだろうかとまた不安になってしまった‥
そんな不安で弱気になっている私に、ヴィル様から素敵なドレスが届いた
今までもずっと、私の為にドレスを用意してくださる優しいヴィル様だが、今日のドレスは目も眩む程に美しかった
ヴィル様の瞳と同じ、エメラルド色のボールガウンの素敵なドレスは、ウエストから横に膨らむ女性らしいドレスだった
幾重にもなるチュールが豪華に膨らみ、ウエストをより細く見せてくれる
チュールの色は、グラデーションになっていて、動く度に見る角度で濃いエメラルド色から明るい色への変化を繰り返している
表面には、ダイヤモンドやエメラルドの宝石が散りばめられていて、光にキラキラと輝いている
肩を露出させたノースリーブは、女性らしさを感じさせるドレスだ
胸元には、細かな刺繍がされており、レースで作られた可憐な白薔薇も付いている
息を呑む程に煌びやかで、動く度に華やかだ
「何て素敵なドレスなんでしょう」
思わずうっとり見惚れてしまう
「ヴィルドルフ様は、相変わらず独占欲がお強いですね」
「そうなのかしら」
「ええ。アリアンお嬢様は、こういう事には疎い方ですから、これからは私がお教えしないといけませんね。きっとヴィルドルフ殿下のお衣装にもアリアンお嬢様の瞳のお色が入っていますよ。お二人で並んでいれば、誰が見ても愛し合うお二人そのものでございましょう」
頬が熱くなる
そう言えば、私はまだヴィル様にお伝えしていなかったわ
急に鼓動が早くなる
私ったら勇気が無いわね‥
いつもこんなに大きな愛をいただいているのに‥
今日はサアラが腕を振るい、夜会らしく化粧もいつもよりしっかりとされた
頬紅で顔色も良く見え、口紅は艶がありとても女性らしい
髪は綺麗にまとめて結い上げられ、そこには小さな真珠が散りばめられている
鏡に映る自分はまるで違う人のように華やかに見える
「サアラのお陰で別の人になった気分よ」
「いいえ、アリアンお嬢様。私は少しお手伝いしただけです。アリアンお嬢様は、もともと世界一美しい女性でございます!」
「サアラったら、お世辞が上手ね」
「本当の事でございます!」
サアラは昔の事を思い出した
侍女の私は、昔からアリアンお嬢様がどれほど美しいのかよく知っている
一目見れば、誰でも虜になってしまう程の美貌の持ち主だ
それにもかかわらず、王妃シェルリーンは、離宮を訪れアリアンお嬢様に、
『醜い魔女の顔を人前に出すな』
『そんな顔で離宮の外に出るな』
『卑しい血の身の程知らず』
『王族の恥晒し』
と、何度も罵っていた
王女ローズもアリアンお嬢様を見ると罵っていた
そして離宮の外に出ることを禁じていたのだ
王の寵愛を受けるマリア様への嫉妬は凄まじいものだった
そして、その美しさを恐れていた
マリア様が王宮や王都に出ることになれば、自分の立場を脅かすかもしれないと‥
この美しい母子を閉じ込めて、表には出したくなかったのだ
アリアンお嬢様は、小さい頃からその環境に置かれ、自分を醜いとさえ感じていた
自分が特別に美しいなどとは気付かないまま育ってしまったのだ
その為、自己評価も低くなってしまった
あんな環境で育ちながらも、アリアンお嬢様は、優しく素直に育ってくれた
このお方こそ、誰よりも幸せになるべき人だと思っている
マリア様の分まで、アリアンお嬢様には、これからの人生を楽しんで生きて貰いたい
行きたい所もやりたい事も、遠慮せずに好きな人生を送って貰いたい
そして、私はずっとその側に付いて居たいと願っている
「アリアンお嬢様。あなたこそ、世界で一番美しくて素敵な人ですよ」
「サアラ‥‥ありがとう」
小さい頃から、私よりも悔しがったり怒ったりしてくれたサアラは、私の心の表現者のような人だ
彼女がずっと側に居てくれたからこそ、きっと私はここまでやってこれたのだと思う
サアラの言葉が一番信用出来る
ならば、サアラの言葉を信じて、これからはもっと自分に自信を持って生きていこう
幸せになっていこう
そう心に誓った
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