【完結】逃げ出した王女は隣国の王太子妃に熱望される

風子

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本物の婚約者

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その夜、ベルラードが部屋を訪ねてきた。

「今日作った物だが、よく眠れるという香りだ。これを温めて香りを拡散させれば、ルリアも不安が和らぎよく眠れるだろう」

「私の為に?」

「ああ、もし良ければ使ってくれ。その為に作ったんだ」

ベルラードから小瓶を受け取ると、何だか涙がこぼれそうになった‥

「ではお礼に、マリンさんのハーブティーを一緒にいかがですか?」

彼は驚いて、何度もいいのか?と聞いたが、エマにマリンさんの所で買ったハーブティーを淹れてもらうと、二人でその香りも一緒に楽しむことにした。

「良い香りですね。私の好きな香りです」

「そうか!良かった!」

しばらくしてソファーに腰掛けている私の足元に跪くと、ベルラードは私の指をそっと掴んだ。

「無理強いするつもりはない。
けれどこのまま、ここに居てほしい。
できることなら俺の婚約者のまま‥ここに居てもらいたいと思っている。
‥‥ルリアの自由だ。嫌なら夜会を終えたらすぐに出ても構わない。
でも俺の本心は‥‥ここで共に暮らしていきたいと思ってるんだ‥‥」

見上げる黒い瞳が潤んでいるのがわかる。

彼はもう私を無理に引き留めることはしないだろう。
私が出て行きたいと言えば、きっと許してくれる。

でも私は出て行きたいのだろうか‥‥
共に過ごす時間が長くなり、彼を知り穏やかな日々が心地良いと感じてる今の私は‥‥
それを口に出す事が許されるのだろうか‥

私は自然に涙がポロポロと零れていた。

「ルリア⁈」

「あなたをたくさん振り回して傷つけた私が、このまま側にいるなんて、あまりにも身勝手すぎます」

ベルラードの指が涙を拭う。

「ルリアが側を離れたら俺は抜け殻になってしまうかもしれない。
きっと何もできなくなる。
ルリアのことばかり考えてしまうから‥‥」

マリンさんの言ってた事が思い出された。
障害の事ばかり考えないで、全ての障害が無かったら自分はどうしたいのか‥‥

ここを出ることばかり考えていたのに、今は彼の優しさに心惹かれている。
素直で不器用な人。

ベルラードの些細な表情や細かな仕草に目がいくたびに、彼のことばかり考えるようになっていた。

それは気付かないふりをしていたが、きっと彼のことを好きになっていた証拠かもしれない。

いずれここを去ると決めた私は感情に蓋をしてきた。
でも正直になれば、ここでこの人の側に居ることの幸せに気付き始めていた。
逃げ出した王女が隣国の王太子の側に居ることは色々な問題が山積みだろう。
障害だらけだ。

でもそんなことを全て抜きにしたら、ただ明日も明後日も明々後日も‥ベルラードの美しい瞳を見ていたい。

「私は‥ベルラードの側に居たいと思っています」

「ルリア!!」

ベルラードは驚いた表情のまま涙を流した。
部屋の隅に立つエマもヘイルズもアロンも、私達二人の姿を見ている。
どう思っているか分からないが、きっと驚いているだろう。

ベルラードは立ち上がり、私も立ち上がらせるとギュッと強く抱きしめた。

「側に居てくれるか?このままずっと暮らしてくれるか?
俺の婚約者としてだぞ!」

「‥わかっています。でも私は国を逃げてきた人間で‥」

「そんなことは問題ではない。ルリアの気持ちを聞かせてくれ。俺の妃になってもいいのか?」

「はい。訳ありのこんな私でいいのなら。ベルラードと‥一緒にいたい」

「俺にはルリアしかいない。問題は俺が何とかする。
一緒にいてくれ!」

ベルラードは私の肩で泣いていた。
私よりずっと大きな体を震わせている。
私も涙が溢れて頬をつたう。

「はい。一緒にいます」

私達は自分の意思で本物の婚約者となった。

部屋中がラベンダーとゼラニウムの心地良い香りに包まれていた。


















































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