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真相が明らかに‥1
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四人の男性は私の顔を見ると驚きよりも恐怖の表情を浮かべた。
「私がどのような者か、あなた達は分かりますか?」
「そんな‥‥」
「まさか‥‥」
「アルンフォルトの人間であれば、この髪色、瞳の色が意味することは分かると思いますがどうですか?」
「あ‥の‥まさか王家の‥‥」
「ええ、先代国王ヴィルドルフのひとり娘です」
「⁈‥」
頭を抱える者までいる。
やはりこの四人は何かを知っているに違いない。
「あなた達は何か父について知っていることがあるのではないですか?
私はその真実を知りたいと思っているだけです。
あなた達を罰するつもりで呼んだのではありません。
どうか、あなた達が知っていることだけで構いませんから教えていただけませんか?」
一言も話さず黙り込む四人の顔色は、今にも命を奪われるのではないかと怯えているように見える。
「どんな小さなことでもいいわ」
「俺達は何も‥‥なぁ?」
「ああ‥」
「心に闇を抱えたまま生きていくのは辛いことです。
ましてやそれが自分の納得していたことではなく、他人に騙されたことで抱えたものだとしたら、一生耐えられるでしょうか?」
色黒の男性はぐっと強く目を瞑り、自分自身の中で葛藤しているように見える。
何とかもう一押しできれば‥‥
「私の父と母の最後を知っているのではありませんか?」
頭を抱える者、顔を覆う者、それぞれが苦しそうにしている。
「お前達が真実を話すというなら、この国でお前達の命と生活を俺が保障しよう」
「⁈何故この国で‥‥」
「アルンフォルトの先王の娘であるルリアは、この国の王太子妃となるからだ。
我が妃の為に協力してくれるのなら、こちらもそれ相応に生活を守ってやるつもりだ」
「王太子妃!!ダルトタナードの‥‥王太子妃⁈」
困惑しながらも色黒の男性は私に向かって頭を下げた。
「申し訳‥‥ありません」
ソファーから床に下り土下座をした。
「おい!ジオン!」
「やめろ!ジオン!」
「どういうつもりだ!ジオン!」
三人が同時に叫ぶ。
体格の良い男性はジオンという名のようだ。
「三人のことは守って下さい。‥‥俺が本当のことを話します」
「おい!!」
「お前達四人のことは王家が責任をもって守ろう。だからルリアの父と母である両陛下について知っていることを全て話してもらおう」
「‥‥はい」
四人はお互いを見合って頷いた。
他の三人も床に下りるとジオンのように土下座をする。
「ではジオン。あなた達は何処の領地から来たのですか?」
「‥‥バンホワイト公爵家の領地であるバーラス鉱山で働いていました」
やはりライナの実家であるバンホワイト家が関わっているのね。
「そう、そこは父と母が視察に訪れた鉱山ね?」
「たぶん‥‥そのつもりだったのだと」
「たぶんとは?知らないの?」
「俺達、普段は鉱山で働いてるんですが、あの事故の少し前、領主様から鉱山へ向かう為に通る橋の付け替えを頼まれたんです。
しばらくは誰も通らせないからと‥‥。
それで橋を付け替える為に太い縄を何本か切った後で‥‥あんなことが」
「俺ら領民は、山沿いの道を遠回りで使うように言われてたんで誰も通らないもんだと思ってて‥‥」
「本当です!領主様が太い縄だけ先に切っておけと言われて、先に切ってしまったんです」
「もともと鉱山で働く俺達は橋のことなんて知りませんから、言われた通りに作業を進めていたんです」
「王家が鉱山に行くことを知らなかったの?」
「はい‥‥鉱山で働く者は誰も聞いていません。
他の誰に聞いてもわかることです。領民達はあの事故が‥‥その‥‥」
「ただの事故ではないことを知ってるのね?」
「はい‥‥」
「そう‥‥つまり公爵は最初から鉱山を見せるつもりなどなかった。
父と母を殺すつもりでいたということね」
「‥申し訳ありません」
床に頭をつけて謝る四人を恨む気持ちなどなかった。
「あなた達のせいではないわ。どうか頭を上げて。あなた達もさぞ驚いたことでしょう」
「‥‥その日はちょうど領主様が飲み代をくれて‥‥四人で酒を飲みに町へ出ていた時で」
「大騒ぎになってから初めて知ったんです」
「馬に乗った騎士や馬車が橋ごと落ちたと‥‥」
「‥‥」
怒り、悔しさ、憎しみ、何と表現していいかわからない感情だった。
胸が黒く染まるように感じる‥‥。
私の大切な人達は何も知らずに命を奪われてしまった。
「大丈夫か?ルリア?」
ベルラードは私の肩をそっと引き寄せ額に唇を押し当てる。
「大丈夫よ」
「辛いなら後の話は俺が聞いておこう」
「いいえ、最後まで私が聞きます。
疑問に思うことがいくつかあるの。
だから私が聞きたいわ」
「そうか、分かった。やはりルリアは強いな。それでこそ我が妃だ」
妃と言われることを毛嫌いした私が、今はその言葉に力をもらっている。
私は一人ではない。
いつも私を大切に想ってくれるベルラードが側に付いていてくれる。
だからこそ、もう私は逃げない。
向き合ってあの人達を逃さないわ。
泣き寝入りして許してやるほど私は優しい人間じゃないわ‥‥。
「私がどのような者か、あなた達は分かりますか?」
「そんな‥‥」
「まさか‥‥」
「アルンフォルトの人間であれば、この髪色、瞳の色が意味することは分かると思いますがどうですか?」
「あ‥の‥まさか王家の‥‥」
「ええ、先代国王ヴィルドルフのひとり娘です」
「⁈‥」
頭を抱える者までいる。
やはりこの四人は何かを知っているに違いない。
「あなた達は何か父について知っていることがあるのではないですか?
私はその真実を知りたいと思っているだけです。
あなた達を罰するつもりで呼んだのではありません。
どうか、あなた達が知っていることだけで構いませんから教えていただけませんか?」
一言も話さず黙り込む四人の顔色は、今にも命を奪われるのではないかと怯えているように見える。
「どんな小さなことでもいいわ」
「俺達は何も‥‥なぁ?」
「ああ‥」
「心に闇を抱えたまま生きていくのは辛いことです。
ましてやそれが自分の納得していたことではなく、他人に騙されたことで抱えたものだとしたら、一生耐えられるでしょうか?」
色黒の男性はぐっと強く目を瞑り、自分自身の中で葛藤しているように見える。
何とかもう一押しできれば‥‥
「私の父と母の最後を知っているのではありませんか?」
頭を抱える者、顔を覆う者、それぞれが苦しそうにしている。
「お前達が真実を話すというなら、この国でお前達の命と生活を俺が保障しよう」
「⁈何故この国で‥‥」
「アルンフォルトの先王の娘であるルリアは、この国の王太子妃となるからだ。
我が妃の為に協力してくれるのなら、こちらもそれ相応に生活を守ってやるつもりだ」
「王太子妃!!ダルトタナードの‥‥王太子妃⁈」
困惑しながらも色黒の男性は私に向かって頭を下げた。
「申し訳‥‥ありません」
ソファーから床に下り土下座をした。
「おい!ジオン!」
「やめろ!ジオン!」
「どういうつもりだ!ジオン!」
三人が同時に叫ぶ。
体格の良い男性はジオンという名のようだ。
「三人のことは守って下さい。‥‥俺が本当のことを話します」
「おい!!」
「お前達四人のことは王家が責任をもって守ろう。だからルリアの父と母である両陛下について知っていることを全て話してもらおう」
「‥‥はい」
四人はお互いを見合って頷いた。
他の三人も床に下りるとジオンのように土下座をする。
「ではジオン。あなた達は何処の領地から来たのですか?」
「‥‥バンホワイト公爵家の領地であるバーラス鉱山で働いていました」
やはりライナの実家であるバンホワイト家が関わっているのね。
「そう、そこは父と母が視察に訪れた鉱山ね?」
「たぶん‥‥そのつもりだったのだと」
「たぶんとは?知らないの?」
「俺達、普段は鉱山で働いてるんですが、あの事故の少し前、領主様から鉱山へ向かう為に通る橋の付け替えを頼まれたんです。
しばらくは誰も通らせないからと‥‥。
それで橋を付け替える為に太い縄を何本か切った後で‥‥あんなことが」
「俺ら領民は、山沿いの道を遠回りで使うように言われてたんで誰も通らないもんだと思ってて‥‥」
「本当です!領主様が太い縄だけ先に切っておけと言われて、先に切ってしまったんです」
「もともと鉱山で働く俺達は橋のことなんて知りませんから、言われた通りに作業を進めていたんです」
「王家が鉱山に行くことを知らなかったの?」
「はい‥‥鉱山で働く者は誰も聞いていません。
他の誰に聞いてもわかることです。領民達はあの事故が‥‥その‥‥」
「ただの事故ではないことを知ってるのね?」
「はい‥‥」
「そう‥‥つまり公爵は最初から鉱山を見せるつもりなどなかった。
父と母を殺すつもりでいたということね」
「‥申し訳ありません」
床に頭をつけて謝る四人を恨む気持ちなどなかった。
「あなた達のせいではないわ。どうか頭を上げて。あなた達もさぞ驚いたことでしょう」
「‥‥その日はちょうど領主様が飲み代をくれて‥‥四人で酒を飲みに町へ出ていた時で」
「大騒ぎになってから初めて知ったんです」
「馬に乗った騎士や馬車が橋ごと落ちたと‥‥」
「‥‥」
怒り、悔しさ、憎しみ、何と表現していいかわからない感情だった。
胸が黒く染まるように感じる‥‥。
私の大切な人達は何も知らずに命を奪われてしまった。
「大丈夫か?ルリア?」
ベルラードは私の肩をそっと引き寄せ額に唇を押し当てる。
「大丈夫よ」
「辛いなら後の話は俺が聞いておこう」
「いいえ、最後まで私が聞きます。
疑問に思うことがいくつかあるの。
だから私が聞きたいわ」
「そうか、分かった。やはりルリアは強いな。それでこそ我が妃だ」
妃と言われることを毛嫌いした私が、今はその言葉に力をもらっている。
私は一人ではない。
いつも私を大切に想ってくれるベルラードが側に付いていてくれる。
だからこそ、もう私は逃げない。
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