【完結】逃げ出した王女は隣国の王太子妃に熱望される

風子

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ルリアの失踪1

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部屋に戻ると疲れた体をソファーに委ねる。

「はぁ‥‥これからのことを考えなくちゃ」

まさか出掛けた先で両親の死に繋がることになるとは思ってもみなかった。
でも手遅れにならないうちに真相が解って本当に良かったわ。

「ルリア様、せっかく王女様とのお出掛けでしたのに大変でしたね」

エマとフィナとカリンは三人並んで心配してくれている。

「ゆっくり湯浴みなさって、お疲れをとりましょう」

エマは今日はスペシャルコースにしましょうなどと張り切っている。

「その前に温かいお茶を召し上がって下さい。心が落ち着くはずですから」

「ありがとう、カリン」

「気が利くわね!カリン」

「私もメイドですよ、エマさん。今日は色が綺麗なローズティをご用意しました」

「まぁ!色がとても綺麗ね」

「はい。ローズティには癒しの効果がありますから」

「ありがとう。香りも良くて癒されるわ」

赤いローズティが白いカップによく映えて見た目にも美しく美味しい。 

「では、私は今すぐ湯浴みの準備をして参りますから少しお待ち下さい」

「ありがとうエマ、助かるわ」

今日は色々あったから、ゆっくり体を休めたいわ。
私の側に仕えてくれるこの三人は、本当に気が利いて優しくて頼りになるわね。
ずっと私の側に居てくれたら嬉しいわ‥‥
昔からの侍女であったナターシャもここに居てくれたらもっと嬉しいのだけど‥‥。

ナターシャはどうしているかしら。
会いたいわ‥‥
ケリーには二度と会いたくないけど。

「ふぁぁ‥‥」

「ふふっ。ルリア様?眠そうですね」

大あくびをした私を見てフィナが笑う。
人前では、はしたないがここでは大目に見てもらおう。

「ええ、疲れがどっと出たみたい。エマが戻ってくるのになんだかとても眠たいわ」

「色々な事が続いておりますから、疲れが溜まっておられるのでしょう」

カリンの一言にフィナも頷く。

「エマさんが来たら声を掛けますから、少し横になられますか?」

「ええ、そうするわ」

少しだけ‥‥ 
ベッドに横になる。



ガチャ

「あら?ルリア様は‥‥眠ってしまわれたの?」

「ええ、エマさんを待ってる間、とても眠そうでしたので‥‥」

「ルリア様?エマさんが戻られましたよ」

カリンは二、三度そっとルリアの肩に触れる。

「いいわよ、カリン。ねぇ、エマさん?
湯浴みは明日の朝にしてもいいのではないですか?せっかく眠られたのに、起こすのは可哀想です」

「そうね。フィナの言う通り、起こしては可哀想だわ。明日にしましょう」

三人は静かに部屋を出た。





「殿下!殿下!」

ヘイルズが起きたばかりのベルラードの部屋に駆け込む。

「何だ?朝から騒々しいな。大声を出すな」

「ルリア様が消えました!」

「⁈な、ん‥だって?もう一度言ってくれ」

「ルリア様が部屋から消えているんです!!」

ベッドから飛び出るとその姿のまま裸足でルリアの部屋まで駆けていく。
ヘイルズはその後ろを靴を持って付いて行く。

「まさか国に帰られたんじゃ」

「馬鹿な事を言うな!」

二人は開けっ放しになっているルリアの部屋に飛び込んだ。
ベッドはもぬけの殻。
部屋は争った形跡も無い。
ベルラードはベッドの中に手をぐっと差し込んだ。

「‥‥冷たい‥‥」

何の温もりも残っていない。
一体いつ出て行ったというのだ‥‥
振り返ると青い顔をしたエマが立ち尽くしている。

「エマ‥どういうことだ」

両手を胸の前でかたく握り震えるエマは声も出ない程に怯えている。

「殿下!そのように怖い顔ではエマは話すことができませんよ」

「ああ、すまない。責めているのではない。聞きたいのだ。一体何があったのか教えてくれ」


‥殿下はやはりルリア様が来られてから変わられた。
使用人に謝るなど、前はないことだ。
そして靴も履かずに飛び出すほど、他人に入れ込むことも感情をあらわにすることもなかった。
人をこんなにも変える魅了の力‥‥
良くも悪くも狂わせるほどに魅力のある女性。
誰もが惹かれてやまないだろう‥‥


「殿下、ひとまず着替えを済ませましょう。話はそれからにしましょう!」

「ああ、そうだな。それから部屋を用意しろ。門番、護衛騎士も全て集めろ。
誰か見た者がいないか聞きたい。
それからスタンリーを呼べ!
先程からバロンに合図を送っても返事がない。スタンリーに何か連絡が入っているかもしれない」

「かしこまりました」

「あと、信用できる者を側におきたい。
ヨハンも連れて来い!」

「かしこまりました」


















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