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ルリアの失踪2
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「エマ、昨日部屋に戻ったルリアに変わった様子はなかったのか?」
「だいぶお疲れのようでした。私は湯浴みでお疲れを取ってさしあげたいと思い準備に部屋を出ました。
戻った時にはもうルリア様はベッドで寝てしまっていて、フィナとカリンと湯浴みは明日でもいいのではないかという話になり、三人で部屋を出ました。
今朝、その湯浴みの為声をお掛けしようと部屋へ来ると扉は開いたままで‥‥ルリア様の姿はありませんでした」
夜会用の広いホールには、呼んだ使用人だけでなく、ほとんどの者が集まっていた。
ルリアが消えたことを心配する王太子宮の皆が話を聞こうと集まり、何か力になれることがないかとやって来ていた。
「それでフィナとカリンは?」
「‥‥それが‥‥フィナはルリア様がいない事にショックを受け過呼吸になり今部屋で休んでおります。
カリンは‥‥姿が見えません」
「何?いない?」
「はい‥‥」
「おい!誰かカリンの姿を見た者はいないか?
それと昨日の夜、この王太子宮に出入した者はいなかったか?
見た者がいるなら声を上げよ!」
「あの、殿下‥」
「何だ!見たのか?」
「いえ‥‥その‥‥昨日の門番の姿がありません」
「⁈何?誰だ?」
「レオンです」
「レオン?まさか‥‥そんな」
「殿下、護衛騎士のジェイクもいません」
「本当か⁈‥‥」
レオンもジェイクも信頼できる男だ。
どういうことだ‥‥
「他には?」
「‥‥」
お互い顔を見合わせ不安な表情をしている。
今まで協力しあってきた者達が敵か味方かと疑心暗鬼になってしまった。
「殿下‥‥」
ヘイルズは横に立つベルラードのやりきれない表情を目の当たりにして何と声を掛けるべきが分からなかった。
「皆すまない、もしルリアがここに居る事に反対の者がいるなら申し出てほしい。
もう二度と信頼している者を疑い失いたくないのだ」
頭を下げたベルラードに皆がどよめくと同時に扉が開いた。
バンッ
「お兄様!!何をなさっているの!!
王太子であるお兄様が何をなさっているのですか!!
あなた達!!ここは王太子宮なのよ、この宮殿に仕える者が主君を裏切るなど絶対に許されることではないわ!!
後でわかったら首を刎ねるわよ!
反論がある裏切り者は今すぐこの宮殿から出て行きなさい!
それから、ねーさまはこの国の王妃となられる方よ。わかってるの?
兄とねーさまを一番に考えられない者は、王宮に仕える資格などないわ!
意見がある者は今申し出なさい。
後からの話など一切聞かないわよ!」
場はしんと静まり返る。
「もし裏切り者がこの中から出た場合。
その命もらうわよ!
さぁ、もう出て行きなさい」
強い口調で言い終えたマリエットに従い全員が部屋を出ると、入れ替わるようにスタンリーとヨハンが入って来た。
「殿下、どういうことです?」
「ルリアちゃんが消えたとは何事ですか?」
「朝早くからすまない。ルリアがメイドのカリン、門番のレオン、護衛のジェイクと共に消えているんだ」
「つまり、外からではなく中から連れ出されたという事か?」
「スタンリー、バロンが合図に反応しない。もしかしたらルリアに付いてるかもしれない。連絡はないか?」
「今調べさせている。連絡がくるはずだ」
部屋にいるのはベルラード、ヘイルズ、スタンリー、ヨハン、そしてマリエットの五人だ。
そわそわと落ち着かない男達を見て、マリエットが声を上げる。
「ねぇ、カリンとレオンとジェイクの共通点は何か考えるべきよ!
親戚関係がないか、例えばアロンのバージェス家との繋がりはない?」
ヘイルズが少し考え込むように顎に手を当てる。
「確か‥ジェイクはアロンと同時期にここへ来たはずです」
「ならばフォルター家か?三人もフォルター家に入れられた回し者か?」
ヘイルズは驚いて首を軽く振る‥
「公爵もメアリー嬢も王家の牢に入れられているはず‥‥指示を出すなど」
「スタンリー、バロンに調べさせろ!
牢へ連れて行ったのは誰か」
「わかった!全て調べさせる」
頷いたスタンリーに、
「では王家の牢へ行こう。
公爵とメアリー嬢がいるか確かめるべきだな。ヘイルズ、騎士を集め準備をしておけ!」
「かしこまりました」
「マリーとヨハンは、レオン、ジェイク、カリン三人の身元を調べてほしい。
ここで仕えるようになったのは、いつからか、どうやってこの王宮で働くことになったのか、提出されている書類も探し出してくれ」
「解ってるから、とにかくお兄様達は早く!!」
この騒動の中、一番冷静かつ的確であり毅然とした態度であったのは、王女マリエットであった‥‥
「だいぶお疲れのようでした。私は湯浴みでお疲れを取ってさしあげたいと思い準備に部屋を出ました。
戻った時にはもうルリア様はベッドで寝てしまっていて、フィナとカリンと湯浴みは明日でもいいのではないかという話になり、三人で部屋を出ました。
今朝、その湯浴みの為声をお掛けしようと部屋へ来ると扉は開いたままで‥‥ルリア様の姿はありませんでした」
夜会用の広いホールには、呼んだ使用人だけでなく、ほとんどの者が集まっていた。
ルリアが消えたことを心配する王太子宮の皆が話を聞こうと集まり、何か力になれることがないかとやって来ていた。
「それでフィナとカリンは?」
「‥‥それが‥‥フィナはルリア様がいない事にショックを受け過呼吸になり今部屋で休んでおります。
カリンは‥‥姿が見えません」
「何?いない?」
「はい‥‥」
「おい!誰かカリンの姿を見た者はいないか?
それと昨日の夜、この王太子宮に出入した者はいなかったか?
見た者がいるなら声を上げよ!」
「あの、殿下‥」
「何だ!見たのか?」
「いえ‥‥その‥‥昨日の門番の姿がありません」
「⁈何?誰だ?」
「レオンです」
「レオン?まさか‥‥そんな」
「殿下、護衛騎士のジェイクもいません」
「本当か⁈‥‥」
レオンもジェイクも信頼できる男だ。
どういうことだ‥‥
「他には?」
「‥‥」
お互い顔を見合わせ不安な表情をしている。
今まで協力しあってきた者達が敵か味方かと疑心暗鬼になってしまった。
「殿下‥‥」
ヘイルズは横に立つベルラードのやりきれない表情を目の当たりにして何と声を掛けるべきが分からなかった。
「皆すまない、もしルリアがここに居る事に反対の者がいるなら申し出てほしい。
もう二度と信頼している者を疑い失いたくないのだ」
頭を下げたベルラードに皆がどよめくと同時に扉が開いた。
バンッ
「お兄様!!何をなさっているの!!
王太子であるお兄様が何をなさっているのですか!!
あなた達!!ここは王太子宮なのよ、この宮殿に仕える者が主君を裏切るなど絶対に許されることではないわ!!
後でわかったら首を刎ねるわよ!
反論がある裏切り者は今すぐこの宮殿から出て行きなさい!
それから、ねーさまはこの国の王妃となられる方よ。わかってるの?
兄とねーさまを一番に考えられない者は、王宮に仕える資格などないわ!
意見がある者は今申し出なさい。
後からの話など一切聞かないわよ!」
場はしんと静まり返る。
「もし裏切り者がこの中から出た場合。
その命もらうわよ!
さぁ、もう出て行きなさい」
強い口調で言い終えたマリエットに従い全員が部屋を出ると、入れ替わるようにスタンリーとヨハンが入って来た。
「殿下、どういうことです?」
「ルリアちゃんが消えたとは何事ですか?」
「朝早くからすまない。ルリアがメイドのカリン、門番のレオン、護衛のジェイクと共に消えているんだ」
「つまり、外からではなく中から連れ出されたという事か?」
「スタンリー、バロンが合図に反応しない。もしかしたらルリアに付いてるかもしれない。連絡はないか?」
「今調べさせている。連絡がくるはずだ」
部屋にいるのはベルラード、ヘイルズ、スタンリー、ヨハン、そしてマリエットの五人だ。
そわそわと落ち着かない男達を見て、マリエットが声を上げる。
「ねぇ、カリンとレオンとジェイクの共通点は何か考えるべきよ!
親戚関係がないか、例えばアロンのバージェス家との繋がりはない?」
ヘイルズが少し考え込むように顎に手を当てる。
「確か‥ジェイクはアロンと同時期にここへ来たはずです」
「ならばフォルター家か?三人もフォルター家に入れられた回し者か?」
ヘイルズは驚いて首を軽く振る‥
「公爵もメアリー嬢も王家の牢に入れられているはず‥‥指示を出すなど」
「スタンリー、バロンに調べさせろ!
牢へ連れて行ったのは誰か」
「わかった!全て調べさせる」
頷いたスタンリーに、
「では王家の牢へ行こう。
公爵とメアリー嬢がいるか確かめるべきだな。ヘイルズ、騎士を集め準備をしておけ!」
「かしこまりました」
「マリーとヨハンは、レオン、ジェイク、カリン三人の身元を調べてほしい。
ここで仕えるようになったのは、いつからか、どうやってこの王宮で働くことになったのか、提出されている書類も探し出してくれ」
「解ってるから、とにかくお兄様達は早く!!」
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