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戴冠の間7
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「失礼ながら女王陛下に私の持論をひとつ。
何事も根元が一番大切でございますから、根っこが腐っているようでは花も木も大きくはなりませんわ」
「⁈」
マリーはまた意味ありげな笑みを浮かべた。
根?
何のこと?
この賢い妹は何を言いたいのだろう‥‥
マリーが意味のないことを言うはずがない。
つまり?
‥‥まだ根っこが残ってる?ってことかしら。
悪の根があるのなら、国の繁栄はない‥‥
バンホワイトが悪の根源ではない?
待って‥‥私の足りない頭では今のマリーの言いたいことがまだ理解できない。
父を亡き者にし、叔父様をも毒で亡き者にしようとしたのは間違いなくライナを含めたバンホワイト一族。
理由はライナの子を王位に就かせる為。
王家に昔から仕える者を排除したのは、反対する者を退ける為。
ライナとエリックの子だと皆に知られる前にマルクスを国王にしたかったからでしょう?‥‥そうでしょう?
何か違うというの?
言葉を失ってぽかんとした私を見て、ニヤニヤと笑うマリー‥‥
見た目は可愛らしいのに恐ろしいのよ、この妹は‥‥
絶対敵に回したらダメな人!
「こちらの王宮では、とても優秀な者達が仕えているようですね?女王陛下?」
「え?えぇ‥‥」
何?嫌味?
昔から王家を支えてくれていた者は、ライナによって王宮を追い出されている。
今いる者達はバンホワイトの息のかかった者ばかり。
優秀な者なんて‥‥
ん?待って‥‥そういうこと?
はっとした私の様子にマリーは遅い!と言わんばかりに呆れ顔をした。
スタンリーを見ればコクンと頷きにっこりと笑う。
あなた達には頭が下がる思いだわ‥‥
今一度、助けを借りるわね
「この王宮には大勢の者が働き、支えてくれています。
身分は問いません。
私に話したいことがある者は申し出なさい。
その際、話の腰を折るような邪魔をした者は処罰します。
茶々を入れた者には爵位の返上を言いつけます。
いいですね?
皆発言には気を付けるように。
では、申し出る者は?」
私の呼びかけに、会場の隅から中央へ何人か歩いてくる。
女性が三人、男性が三人。
メイドはマリーの影。
赤い騎士服の男性はおそらくスタンリーの下の者だ。
つまりダルトタナードを影から支えるバロン。
私の為にこの国での生活を余儀なくされた者達。
本当に申し訳ない話だ‥‥
「この命をかけて嘘偽りなく女王陛下に申し上げることをお誓い致します」
「遠慮なく申しなさい」
前に出た六人は一度頭を下げ、まず一人目の男性が話をはじめた。
「私は新人騎士ですが、何度もライナ王妃様とエリック騎士団長が二人で会われているところを目にしております。
昼の場合も夜の場合もございました。
随分と親しい間柄だとお見受けしました」
「おい!貴様!」
「話の腰を折るなと言ったはずです。
二度目はないですよ!!」
「なっ‥」
叔父の威厳にはまだまだ足りないが、精一杯声を張る。
会場は一瞬で空気が変わる。
「さぁ、続けて」
「はい。王妃様は侍女も付けずに二人きりで会われているので、常識的には考えられないことだと思っておりました」
「そう。王妃が陛下以外の男性と二人きりで会うこと自体許されないことでしょう。
しかも夜だとしたら、これは疑われても仕方のない裏切り行為といえるでしょうね」
「くっ‥‥」
ライナは唇を噛み締める。
「しかし、二人きりというのは見間違えという可能性はないですか?
何か証拠になるものはないですか?」
一応、公平を期す為、見間違えという言葉を使ってみる。
すると二人目の男性も、
「実は私も見たことがありまして、先日騎士団長の部屋を訪れた際に、このような物を見つけました」
一枚の紙を私に渡そうと段の下に立つ。
「こちらへ」
男性は数段上がり手渡してくれた。
中身を見て納得した‥‥
やはりバロンとはすごいものね‥‥
「では、他には?」
「私はメイドとして仕えておりますが、ライナ王妃様がある男性と会われていました。
その方に、毒の効き目が弱かったと話していらっしゃいました。
リベール陛下が一命を取り留めたことを責めていらっしゃって、これからどうするのかと相談しておられました」
皆が息を呑む‥‥
あまりの衝撃に私も思わず絶句した。
毒を用意し、バンホワイト一族さえ操っていた本当の黒幕‥‥
そんな人が本当にいるの?
「私もその男性がよく王宮を訪れ、マルクス王子とも会われているところを目にしております」
⁈マルクスとも?‥‥
「‥‥その、男性とは誰ですか?」
何事も根元が一番大切でございますから、根っこが腐っているようでは花も木も大きくはなりませんわ」
「⁈」
マリーはまた意味ありげな笑みを浮かべた。
根?
何のこと?
この賢い妹は何を言いたいのだろう‥‥
マリーが意味のないことを言うはずがない。
つまり?
‥‥まだ根っこが残ってる?ってことかしら。
悪の根があるのなら、国の繁栄はない‥‥
バンホワイトが悪の根源ではない?
待って‥‥私の足りない頭では今のマリーの言いたいことがまだ理解できない。
父を亡き者にし、叔父様をも毒で亡き者にしようとしたのは間違いなくライナを含めたバンホワイト一族。
理由はライナの子を王位に就かせる為。
王家に昔から仕える者を排除したのは、反対する者を退ける為。
ライナとエリックの子だと皆に知られる前にマルクスを国王にしたかったからでしょう?‥‥そうでしょう?
何か違うというの?
言葉を失ってぽかんとした私を見て、ニヤニヤと笑うマリー‥‥
見た目は可愛らしいのに恐ろしいのよ、この妹は‥‥
絶対敵に回したらダメな人!
「こちらの王宮では、とても優秀な者達が仕えているようですね?女王陛下?」
「え?えぇ‥‥」
何?嫌味?
昔から王家を支えてくれていた者は、ライナによって王宮を追い出されている。
今いる者達はバンホワイトの息のかかった者ばかり。
優秀な者なんて‥‥
ん?待って‥‥そういうこと?
はっとした私の様子にマリーは遅い!と言わんばかりに呆れ顔をした。
スタンリーを見ればコクンと頷きにっこりと笑う。
あなた達には頭が下がる思いだわ‥‥
今一度、助けを借りるわね
「この王宮には大勢の者が働き、支えてくれています。
身分は問いません。
私に話したいことがある者は申し出なさい。
その際、話の腰を折るような邪魔をした者は処罰します。
茶々を入れた者には爵位の返上を言いつけます。
いいですね?
皆発言には気を付けるように。
では、申し出る者は?」
私の呼びかけに、会場の隅から中央へ何人か歩いてくる。
女性が三人、男性が三人。
メイドはマリーの影。
赤い騎士服の男性はおそらくスタンリーの下の者だ。
つまりダルトタナードを影から支えるバロン。
私の為にこの国での生活を余儀なくされた者達。
本当に申し訳ない話だ‥‥
「この命をかけて嘘偽りなく女王陛下に申し上げることをお誓い致します」
「遠慮なく申しなさい」
前に出た六人は一度頭を下げ、まず一人目の男性が話をはじめた。
「私は新人騎士ですが、何度もライナ王妃様とエリック騎士団長が二人で会われているところを目にしております。
昼の場合も夜の場合もございました。
随分と親しい間柄だとお見受けしました」
「おい!貴様!」
「話の腰を折るなと言ったはずです。
二度目はないですよ!!」
「なっ‥」
叔父の威厳にはまだまだ足りないが、精一杯声を張る。
会場は一瞬で空気が変わる。
「さぁ、続けて」
「はい。王妃様は侍女も付けずに二人きりで会われているので、常識的には考えられないことだと思っておりました」
「そう。王妃が陛下以外の男性と二人きりで会うこと自体許されないことでしょう。
しかも夜だとしたら、これは疑われても仕方のない裏切り行為といえるでしょうね」
「くっ‥‥」
ライナは唇を噛み締める。
「しかし、二人きりというのは見間違えという可能性はないですか?
何か証拠になるものはないですか?」
一応、公平を期す為、見間違えという言葉を使ってみる。
すると二人目の男性も、
「実は私も見たことがありまして、先日騎士団長の部屋を訪れた際に、このような物を見つけました」
一枚の紙を私に渡そうと段の下に立つ。
「こちらへ」
男性は数段上がり手渡してくれた。
中身を見て納得した‥‥
やはりバロンとはすごいものね‥‥
「では、他には?」
「私はメイドとして仕えておりますが、ライナ王妃様がある男性と会われていました。
その方に、毒の効き目が弱かったと話していらっしゃいました。
リベール陛下が一命を取り留めたことを責めていらっしゃって、これからどうするのかと相談しておられました」
皆が息を呑む‥‥
あまりの衝撃に私も思わず絶句した。
毒を用意し、バンホワイト一族さえ操っていた本当の黒幕‥‥
そんな人が本当にいるの?
「私もその男性がよく王宮を訪れ、マルクス王子とも会われているところを目にしております」
⁈マルクスとも?‥‥
「‥‥その、男性とは誰ですか?」
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