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前世の記憶
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「ルリア様はまだ眠っておられるのか?」
「ああ、そのようだな。随分と神経の張り詰めた一日だったから最後にアレでは倒れても無理はない」
「そうだな‥‥しかしマリエット王女の考えは想定外だった」
「はははっ、ヘイルズには思いつかないだろうな」
「馬鹿にしてるのか?スタンリー」
「いいや、俺も正直無理な話だと思っていた。
マリエット王女の裏工作は大したものだ。
きっとマリエット王女のことだ、ラヌー国の子を助けたことや、国同士の交流、貿易を打ち切るようなことを持ち出し脅したのだろう。
ラヌー国にとってダルトタナードは昔からの付き合い、商売相手としても我が国が一番だ。
敵に回すわけにはいかなかっただろう。」
「さすがはマリエット王女だな」
「ああ、とんでもなく恐ろしい。
女でありながら、いくつも国を動かし自分の思い通りに事を運ぶ。
あの歳で成し遂げるとはね」
「うちの王女様はすごいな‥‥」
「ああ‥‥ルリア様を失わずにすんだ。
今度こそ一生側で護ると決めているんだ」
「今度こそ?
‥‥お前‥‥記憶があるのか?‥前世の」
「お前もあるのか?ヘイルズ」
「ああ。
おかしな夢を見るようになって、それにはいつもルリア様にそっくりな女性が出てくるんだ。
私はその女性の護衛をしていたようだ。
だが私は護れなかった。
駆け付けた時にはルリア様に似た女性は殺された後で、私も斬られて亡くなっている。
その時の後悔の念が夢の中なのにあまりに鮮明で‥‥
何度も見るうちにこれはただの夢ではなく、私の前世の記憶なのではないかと思うようになった」
「俺もルリア様に出会ってから、何度も同じ夢を見るようになった。
夢の中の俺はウェルズスで皇帝を支えていた。
皇妃ルリア様は女神のように美しい女性で、夢の中とはいえ彼女に会えることに幸せを感じるほどだった。
二人が亡くなり、俺は死ぬ間際まで後悔し続けているようだった。
その苦しみはとても夢とは思えないもので、手帳に綴った後悔の文字も毎回同じなんだ。
これはきっと前世なんだと思ったよ‥‥。
手帳の最後には、皇妃ルリア様の生まれ変わりを必ず見つけて今度こそ側で護り抜くと書いていた。
だから今度こそ側を離れないと決めている」
「帝国にならずにルリア様がアルンフォルトに残るのならどうするつもりだったんだ?」
「もちろん、ダルトタナードを出てアルンフォルトで暮らすつもりだったさ」
「王太子を見捨てるとは、ウェルズス家の三男が言う事じゃないな」
「はははっ、まぁな。
だが帝国復活だ。皇帝と皇后を護れる」
「そうだな‥‥」
ガサッ
「‥‥盗み聞きとはまた大胆な方ですね」
「あら?仲間なのだからいいじゃない!」
「マリエット王女様!」
「男二人がバルコニーで話してる姿なんて絵にならないわ。
せめて一人でも女性がいないとね」
日が暮れて広大な庭園には明かりが灯り、泉水や大理石の彫刻、青銅の彫刻が美しく照らされた。
バルコニーから見下ろす景色はダルトタナードの比ではない。
三人は美しい庭園に見惚れていた。
「やはり大国は規模が違うわね。
ねーさまはこの国の王女として育ったのに、ダルトタナードに逃げてくるなんて、まったく変わった人だわ」
「まぁ、それも運命でしょう」
「ええ、そうね。
きっと私達の強い思いが届いたのよ」
「私達?」
ヘイルズが横に立つマリエットの顔を見る。
「私もあなた達と同じ様に夢の中では皇妃の側にいた人間のようだわ」
「⁈」
「皇妃ルリア様の侍女。そして彼女の娘マリア様と命懸けで他国に逃げたことを鮮明に夢で見るの。
きっと前世の私ね。
必死に幼い子を育ててるの。
けれど慣れない地で働きながら一人で奮闘するには限界があったみたい。
病に倒れ、幼いマリア様を残して亡くなった。
彼女の強い後悔の念がきっとこのチャンスを生んでくれた。
もう一度、今度こそ自分の役目を全うしたいと引き寄せたんだわ。
だから私、前世の自分を弔う為にも記憶を上書きするつもりなの。
私達三人が自分の為に求めたチャンスなのよ。
皇帝と皇后には幸せになってもらわなきゃいけない。
だからあなた達も協力しなさい!
前世ではあなた達より立場が下だったけれど、今世は命令できる立場で良かったわ!」
ふふふっと茶目っ気たっぷりに笑ったその姿は、スタンリーとヘイルズの夢の中に出てきた侍女マリーの姿と重なった。
「マリーか‥‥」
二人は同時に口にしていた。
「ああ、そのようだな。随分と神経の張り詰めた一日だったから最後にアレでは倒れても無理はない」
「そうだな‥‥しかしマリエット王女の考えは想定外だった」
「はははっ、ヘイルズには思いつかないだろうな」
「馬鹿にしてるのか?スタンリー」
「いいや、俺も正直無理な話だと思っていた。
マリエット王女の裏工作は大したものだ。
きっとマリエット王女のことだ、ラヌー国の子を助けたことや、国同士の交流、貿易を打ち切るようなことを持ち出し脅したのだろう。
ラヌー国にとってダルトタナードは昔からの付き合い、商売相手としても我が国が一番だ。
敵に回すわけにはいかなかっただろう。」
「さすがはマリエット王女だな」
「ああ、とんでもなく恐ろしい。
女でありながら、いくつも国を動かし自分の思い通りに事を運ぶ。
あの歳で成し遂げるとはね」
「うちの王女様はすごいな‥‥」
「ああ‥‥ルリア様を失わずにすんだ。
今度こそ一生側で護ると決めているんだ」
「今度こそ?
‥‥お前‥‥記憶があるのか?‥前世の」
「お前もあるのか?ヘイルズ」
「ああ。
おかしな夢を見るようになって、それにはいつもルリア様にそっくりな女性が出てくるんだ。
私はその女性の護衛をしていたようだ。
だが私は護れなかった。
駆け付けた時にはルリア様に似た女性は殺された後で、私も斬られて亡くなっている。
その時の後悔の念が夢の中なのにあまりに鮮明で‥‥
何度も見るうちにこれはただの夢ではなく、私の前世の記憶なのではないかと思うようになった」
「俺もルリア様に出会ってから、何度も同じ夢を見るようになった。
夢の中の俺はウェルズスで皇帝を支えていた。
皇妃ルリア様は女神のように美しい女性で、夢の中とはいえ彼女に会えることに幸せを感じるほどだった。
二人が亡くなり、俺は死ぬ間際まで後悔し続けているようだった。
その苦しみはとても夢とは思えないもので、手帳に綴った後悔の文字も毎回同じなんだ。
これはきっと前世なんだと思ったよ‥‥。
手帳の最後には、皇妃ルリア様の生まれ変わりを必ず見つけて今度こそ側で護り抜くと書いていた。
だから今度こそ側を離れないと決めている」
「帝国にならずにルリア様がアルンフォルトに残るのならどうするつもりだったんだ?」
「もちろん、ダルトタナードを出てアルンフォルトで暮らすつもりだったさ」
「王太子を見捨てるとは、ウェルズス家の三男が言う事じゃないな」
「はははっ、まぁな。
だが帝国復活だ。皇帝と皇后を護れる」
「そうだな‥‥」
ガサッ
「‥‥盗み聞きとはまた大胆な方ですね」
「あら?仲間なのだからいいじゃない!」
「マリエット王女様!」
「男二人がバルコニーで話してる姿なんて絵にならないわ。
せめて一人でも女性がいないとね」
日が暮れて広大な庭園には明かりが灯り、泉水や大理石の彫刻、青銅の彫刻が美しく照らされた。
バルコニーから見下ろす景色はダルトタナードの比ではない。
三人は美しい庭園に見惚れていた。
「やはり大国は規模が違うわね。
ねーさまはこの国の王女として育ったのに、ダルトタナードに逃げてくるなんて、まったく変わった人だわ」
「まぁ、それも運命でしょう」
「ええ、そうね。
きっと私達の強い思いが届いたのよ」
「私達?」
ヘイルズが横に立つマリエットの顔を見る。
「私もあなた達と同じ様に夢の中では皇妃の側にいた人間のようだわ」
「⁈」
「皇妃ルリア様の侍女。そして彼女の娘マリア様と命懸けで他国に逃げたことを鮮明に夢で見るの。
きっと前世の私ね。
必死に幼い子を育ててるの。
けれど慣れない地で働きながら一人で奮闘するには限界があったみたい。
病に倒れ、幼いマリア様を残して亡くなった。
彼女の強い後悔の念がきっとこのチャンスを生んでくれた。
もう一度、今度こそ自分の役目を全うしたいと引き寄せたんだわ。
だから私、前世の自分を弔う為にも記憶を上書きするつもりなの。
私達三人が自分の為に求めたチャンスなのよ。
皇帝と皇后には幸せになってもらわなきゃいけない。
だからあなた達も協力しなさい!
前世ではあなた達より立場が下だったけれど、今世は命令できる立場で良かったわ!」
ふふふっと茶目っ気たっぷりに笑ったその姿は、スタンリーとヘイルズの夢の中に出てきた侍女マリーの姿と重なった。
「マリーか‥‥」
二人は同時に口にしていた。
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