【完結】愛する人には裏の顔がありました

風子

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ライドの本性

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「具合が悪いと言っておられたのに、今度は暫く出掛けることになったと?」

「え‥‥ええ。ライド様。申し訳ありません」

「エルグスト子爵、それはあまりにも無礼ですね。
私がミリーに会いたがっているのをあなたも知っておられたはず。
私は公爵家の人間です。
言いたくはないが、子爵家が公爵家の私の意を汲むのは当然のことのはず」

「申し訳ありません」

「ライド‥‥中で少し話そう」

「ヘンリー‥‥お前が」



応接間の空気は張り詰め、ライドの表情は強い怒りを隠そうともしない。
美しく整った顔は、冷たく厳しく鋭く二人を睨む。

「ミリディの前でのお前とは全くの別人だな」

「ミリーには笑顔しか見せないと決めている。
私からミリーを離そうとする人間は誰であろうと許さない。
それはヘンリー、お前も知っているだろう」

「ライド様、ご無礼をお許しください。
ですが娘は三度の破談があり、ライド様のお側にいてはライド様のご迷惑になるでしょう。
今や世間はミリディに対して悪い噂ばかり。
破談になったことも今ではミリディが悪かったような根も葉もない噂が広まっております。
父親として娘がとても不憫でなりません。
そして国中の女性が皆ライド様のお戻りを喜んでおられるのに、うちの娘との時間を作ってくださったことで、世の令嬢達からのやっかみが‥‥その‥‥あるものですから。
娘の精神状態が心配で」

「それでもう私に会わせたくないと?」

「‥‥失礼を承知で申し上げますと、ライド様と娘の両方の為にということです」

「何て勝手な言い分だ。
私の為になど全くならない。
ミリーのことは私が側で守ってやれる。
私から離そうと考えるのであれば、子爵家に対して私もそれなりの実力行使に出ねばならない」

「ライド!!お前は次期当主だ。公爵家は自分の意思だけで相手を決めることはできないはずだ。
ロベールトン家は貴族トップである以上、国内外の者達が認める相手でなければならないのはお前が一番解っているはずだろう。
妹は認められるような人間ではない。
妹を想うのなら余計にだ、これ以上妹が世間から批判されるようなことは看過できない。
妹に会うことは控えてくれ」

「ヘンリー!ライド様に対してその様な言い方はやめなさい!」

「友人ですから構いませんよ。
昔からの親友だ、そうだろう?ヘンリー」

「‥‥」

「今までエルグスト家とは良い関係を築いてきたのですから、これからももっと親しい間柄でいきましょう」

「それは‥‥」

「ええ、正直に申し上げて、私はミリーを妻にしたいと思っています」

「まさか!!そんな、身分が違います。
我が家は子爵家、ロベールトン公爵家に相応しいのはもっと高位の女性でしょう。
娘を妹のように可愛がってくださっているのはわかりますが、妻などとはご冗談にも程があります」

「妹?はっ、まったくの見当違いですね。
私は昔からミリーを妻にしたいと思い、この家との親交を深めてきた。
言い換えればミリーがいなければ子爵家と付き合うことなどなかった。
そういうことです」

「まさか‥そんな‥信じられない‥‥。
その、ライド様はヘンリーと友人であるが故に妹のミリディも可愛がってくださっているのかとばかり‥‥」

「父さん、逆だよ。
ミリディに近付きたい為に私と友人関係を続けていたんだ」

「‥‥そんな」

「とにかく、問題は全てこちらで解決しますよ。
それだけの力はあるつもりです。
ですから二度とミリーと私を会わせないなどと下手な小細工はしないでもらいたい。
これは忠告ですよ。
では失礼」

幾度となく訪れている貴公子が、笑顔ひとつなく最初から最後まで威圧的な態度と表情を崩さずに去って行く。

今までその誰をも魅了する美しい笑顔を絶やさずにエルグスト家を訪れてきた男がまるで別人だった。

公爵家の馬車が見えなくなると、二人は顔を見合わせた。

「ヘンリー、お前は知っていたのか?」

「昔からライドはミリディにだけ対応が違っていました。
きっとミリディは自分にだけだとは思っていないでしょうけど、私から見ればミリディ以外の令嬢に対する態度は完全なる社交辞令。
表情は作り笑顔で言葉には何の感情を込もっていない。
口調は優しく丁寧だが決して距離を縮めないような冷たさを感じていました」

「私はてっきり幼い頃からお前と仲が良かったからミリディにも親切にしてくれているのだとばかり思っていた。
本当の妹のように可愛がり、心配してくれているのだろうとばかり」

「初めは友人の妹だったと思いますが、いつからか妹ではなくなった‥‥」

「そうだったのか‥ミリディが婚約破棄をするたびに気に掛けてくれて、ミリディを元気付けてくれたのは、兄のような気持ちからではなかったのか」

「父さん、その破談自体ライドが仕組んだことだと思いますよ」

「⁈何?どういうことだ!」

「三度の婚約破棄。それも同じような夜会でのことが原因です。
おかしいと思いませんか?
ライドのあの様子を見て分かるでしょう。
ミリディを結婚させたくなかったんですよ」

「まさかそんな‥‥毎回ミリディを慰めに来てくださっていたライド様が‥‥」

「ミリディに異常に執着しているあの男ならやりかねません。
恐ろしい男ですよ」

「‥‥」






~~~~~~~~~~

「ミリーが家を出た。行き先を突き止めておけ」

「はい。かしこまりました。
すぐに迎えに行かれますか?」

「いや‥‥今すぐにでも会いたいが、ミリーの心を癒す時間も確かに必要だ。
まずは場所だけわかればいい」

「かしこまりました、ライド様」


まったくどいつもこいつも腹立たしい。
私のミリーを傷つけた女達も、私から離そうとする子爵家も、根も葉もない噂を広めた者達も‥‥


私のミリーに早く会いたい。
私の愛するミリー‥‥ミリーだけが本当の私を解ってくれる。
ミリーだけが私の心を癒してくれる。
ミリーの笑顔だけが私を幸せにしてくれる。

全てを片付けて、ミリーが何の心配もなく私の胸に飛び込めるようにしなければならない。













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