【完結】愛する人には裏の顔がありました

風子

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ライドの婚約発表

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伯母の別邸は何度か来ているが、自然があふれ王都の煩わしさや騒がしさがなく住みやすい町にある。
田舎だからといって、不自由なことはひとつもない。
小さな商店街には必要な物は何でもあるし、職人街が近くにあることで質の良い物が多くあり、王都の店に卸している店も多い。
穏やかで時の流れがまったく違う。
三日も住めば居心地の良さに離れがたくなる場所だ。
窓から見える景色は絵本の中のようで気に入っている。

特に丘の上に見える教会は、大好きな小説の挿し絵に似ていて一番のお気に入り。
何度も読んだ小説は、王子様と貧しい田舎町の娘の話だった。
王位継承で命を狙われた王子様が田舎町に一時的に身を潜め、その時に出会った町娘と恋に落ちる。
古い教会で王子様が娘に求婚し、彼女は勇気を出して彼の胸に飛び込むのだ。
ロマンチックで憧れる恋愛小説だけれど、現実的にはあり得ない。
平民が王家に嫁ぐことなど不可能だ。
それでもこの物語を気に入っている。



「ねぇ、ミリディ?ここで生活するならもっと動きやすい服を着た方がいいわ。
一緒に生地を見に行きましょう!
私がミリディに似合う服を作ってあげるわ。
かわいい生地がたくさん売ってるのよ」

サリー伯母様は裁縫が得意で、小さい頃はよく服を作ってもらっていた。
娘のいない伯母様は、私を本当の娘のように可愛がってくれている。

「ねえ、伯母様?
それなら私手紙を出したいのだけどいいかしら?」

「ええ!可愛い便箋がたくさんあるわ。
どれでも使ってちょうだい」

「ありがとう。何人かの友人に手紙を書きたいの。
心配させていると悪いから」

「そうよね、急に連れて来てしまったんだもの。
便箋は山ほどあるから好きなだけ使ってちょうだい」

伯母様の趣味がよくわかる可愛らしい柄の便箋の山。
私は早速手紙を書くと、サリー伯母様と共に商店街を訪れた。

買い物を済ませ、小さなカフェでお茶をしていると、穏やかで静かな町が急に騒がしくなる。

「何かしらね?外が騒がしいわ‥‥」

店の客も何かに気付いて次々と店の表に出て行く。
つられて伯母様と私も店を出た。

そこには馬に乗った十人ほどの騎士の姿。
手に持つ旗には王冠と金の獅子の紋章が付いてるところを見ると王家の使いのようだ。

「皆よく聞くように!
この度オリビア王女様とロベールトン公爵家のご令息ライド・ロベールトン様のご婚約が発表された。
式は半年後、シャルドール大聖堂にて執り行われることが決まった。
詳細は随時大広場に張り出される物を確認するように!」

!!!!
婚約⁈

そう言い残した使いの騎士達はさらに奥の町の方へ去って行った。

「まぁ!!王女様がご婚約ですって⁈
とても急なお話しね!
息子が先日顔を見せに来た時は何も言っていなかったけど‥‥」

サリー伯母様の息子であるケイン様は、ホテル経営の他に王宮内での仕事にも携わっている。
王宮出入りのケイン様も聞いていなかったのか、それとも箝口令が敷かれていたのか‥‥。
でも箝口令を敷く必要などない話‥‥だと思うけど。

ライド様のお相手が王女様‥‥だったらマゼルダ様との噂は間違いだったということになる。
決まっていると言っていた婚約者は王女様‥‥。
国の一大事だもの、だからこそ私に相手の名前を言えなかったんだわ‥‥。
そう‥‥王女様だったのね‥‥。

公爵家と王家なら国中の誰もが祝福するだろう。
ならばあのお茶会は王女様から私への牽制だった。
自分の婚約者と親しくするなと言う為だったのね。

そっか‥‥そうなのね‥‥。

王家の発表なら正式なものだろう。
間違いということはない。
ライド様が王女様と結婚‥‥してしまうのね‥‥。

「でも良かったわね、ミリディ。
これでライド様との悪い噂も無くなるでしょう?
ライド様がミリディと親しくしていたのは妹のように思って可愛がってくださっていただけだもの。
下衆な勘繰りであなたを傷つけた人達も反省するでしょう」

「ええ‥‥。そうですね。
妹のように接していただいただけですから」



町に御触れが伝えられて二週間が過ぎた。

私のもとに手紙が届いた。

「ミリディに手紙よ。前に出したお友達からかしら」

「ええ、そうです」

私は部屋に戻るとすぐに手紙を読んだ。

「モニカ、準備が整ったの」

「‥‥お嬢様‥‥。分かりました」



その時馬車の停まる音がした。

部屋の窓から見下ろすと、鮮やかなグリーンに金の装飾が美しい馬車が止まっている。
見間違うはずもない。
ライド様の馬車だった。

階段の下から伯母様が呼ぶ声がする。
私は伯母様が作ってくれたシンプルなワンピースのまま階段を下りていくと玄関にはライド様と従者のダリル様が立っている。

「やぁ、ミリー!やっと会えたね」

小さい頃からちっとも変わらない優しくて柔らかい笑顔。

「ライド様。こんな所までどうされたのですか?」

「もちろんミリーに会いに来たんだよ」

最後の一段を下りた私に歩み寄ると手を持ち上げ手の甲にキスをする。

「ライド様はお忙しいでしょうにわざわざここまで」

「ミリーに会う為の時間ならいくらでもあるさ。
私の側から勝手にいなくならないでほしいと前にも言ってあったはずだけどね。
まったく君は逃げ足が速いね」

「‥‥」

「コロイディア夫人。ミリーをお借りするよ。
夜までには送り届けますからご心配なさらずに。
二人でゆっくり話したいものだからね」

「え?ええ。‥‥あっ、そうですわ、ライド様!王女様とのご婚約おめでとうございます」

「その言葉は受け取らないよ。
事実ではないからね。王家の暴走だよ」

「ですが御触れが」

「事実ではないと今言ったはずだ、コロイディア夫人」

「あ‥‥でも」

ライド様は伯母様に対してもう口を開くなと言うような威圧的な態度をとった。
ライド様にとっては珍しいことだった。
こんな冷たい口調で睨むライド様など見たことがない。

「ライド様?」

思わず違和感を感じて声を掛けた。

「さぁ、ミリー、一緒に出掛けよう。
この辺りは景色がいいね。
散歩も気持ち良さそうだ」

いつもの優しいライド様に戻っている。

「ミリーに会えなくてとても寂しかったよ。
ミリーの可愛い顔をよく見せて」

頬を大きな手がそっとなで、私のおでこに自分の額をコツンとつけた。

「!!」

突然のその過剰なスキンシップに固まるしかない。
ライド様は私のその様子にフッと声をもらした。

「真っ赤なミリーも可愛い、可愛すぎて食べてしまうかも」

‥‥彼の目的が何なのか分からない。
どういうつもりでこんな態度をとるのか理解できないままだった。
















































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