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愛を誓う
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馬車で少し走ると民家は遠ざかり、小高い丘の上には私のお気に入りのあの古びた教会がポツンと建っていた。
小さな町を見下ろす寂しげな教会。
その近くで馬車を降りると、ライド様のエスコートで二人並んで歩く。
「エルグスト家を訪ねたらミリーが家を出ていて驚いたよ。
ずっと体調が悪いと言って会わせてもらえなかったのに急に君がいなくなっていて、私がどれだけショックを受けたかわかるかい?」
「ごめんなさいライド様。
何もお伝えしなかったせいで、こんな所まで心配して来ていただくことになるなんて本当に‥‥ごめんなさい」
「いいんだ。悪いのはミリーじゃない。
いつだってミリーは何ひとつ悪くないんだ。
ただ驚いただけだよ」
風になびく髪が顔にかかる度、ライド様はせっせと私の髪を梳く。
「綺麗な髪だ。優しく美しいピンク色の髪はミリーにぴったりだ。
ミリーは何でも美しいね」
「‥‥」
私は三度も男性に裏切られ破談になっている。
美しい、可愛い、そんな言葉をそのまま受け止められる心はもうない。
婚約者であった三人の男性も会う度に褒めてくれた。
この辺りでは珍しいピンク色の髪も、この辺りでは珍しい濃いブルーの瞳も、この辺りでは珍しい肌の白さも。
皆が社交辞令で褒めてくれていただけだった。
「ミリー?私は嘘はつかないよ。
本当にミリーを誰よりも美しいと思っているし、この世で一番可愛いとも思ってる」
「ええ、どうもありがとうございます。
ライド様もいつも誰よりも素敵です」
「ありがとう」
丘の上は風が強い。
だからライドがぼそっと呟いた「君を誰にも渡さない」と言った声は風にかき消されミリディには聞こえなかった。
同様に町を見下ろしぼそっと呟いたミリーの言葉もライドには届かなかった。
古びた教会の中に手を引かれ入る。
いつも遠くから眺めるだけだった教会は、古びているが中は随分と綺麗だった。
誰もいない薄暗い教会だが、掃除が行き届いている。
「私は神など信じないし頼らないけれど、誓える場所があることはいいことだ」
「?」
「宝石店では急すぎて最後まで話すことができなかったし、ダリルに迎えに行かせた時は会うことができなかったけれど、伝えたいことはただひとつ」
両手を握られる。
「ミリー、君を愛している。
一生私の側にいてほしい。
私のお嫁さんになってくれる?」
「‥‥」
「小さい頃から私は何度も確認したよね?
ミリーはいつも笑顔ですぐになると言ってくれたはずだけど?」
「‥‥」
これはまるで夢物語。
大好きなライド様のお嫁さんになってお姫様になる。
現実的でない、まるであの小説の中の話のようだ。
今のライド様には王女様との婚約が決まっている。
それなのにどういうつもりでこのような事を言うのかわからない。
「王女様との婚約が決まっているのに何故私にそんな事を言うのですか?」
「あれは王女の暴走だ。
私は王家からの打診をきちんと断っている。
あの御触れは事実ではないよ。
だからミリーが気にすることはない。
すぐに訂正させる。
私が一緒にいたいのはミリーだけだよ。
愛してる、心から大切に想ってるよ」
「身分も釣り合わない、妹のような私を愛するだなんて冗談もほどほどにしてください」
「皆が妹のように言うが、私はミリーを妹のように思ったことはないよ。
いつだって私の一番愛する人だと思って大切にしてきた。
伝わっていなかった?」
ぎゅっと抱き寄せられライド様の鼓動が速くなるのを感じる。
嘘か本当かも分からない。
王家の御触れが暴走だの間違いなどということはないだろう。
私はまた裏切られることになる。
信じる方が悪いと言われるのかもしれない。
でも私がライド様をずっと好きでいたことは紛れもない事実で‥‥だったら‥‥今だけは自分の都合のいいように‥‥騙されて騙して‥‥。
幼い頃、身分もそして自分の素性も何も分からなかったあの頃に‥今だけ戻って‥‥夢を見てもいいのだろうか。
「本当にライド様は私のことが好きですか?」
腕の中で聞けば、
「もちろん、この世の誰よりも大好きで何よりもミリーが大切だ」
すぐに応えてくれる。
涙が今にもこぼれ落ちそうになる。
「ミリー、私のお嫁さんになってくれる?
一生大切にすると約束する」
「ええ、もちろん。
だってライド様のことが大好きだもの」
昔と同じ返事をすれば、ライド様は何とも美しいキラキラとした満面の笑み。
「とても幸せな気持ちだよ、ミリー」
私のこぼれ落ちた涙をライド様は指で拭い、そして突然跪いた。
私の薬指にライド様の瞳と同じ美しい宝石のついた指輪をはめてくれる。
「愛してる。私と結婚してほしい。必ず幸せにすると約束する。
ミリーに永遠の愛を捧げると誓うよ」
「はい、喜んで」
笑顔で応えるとライド様は立ち上がり私にキスをした。
包み込むような優しくて温かくて柔らかい長いキスだった。
ライド様の幸せそうな笑顔をきっと一生忘れない。
騙し騙される偽物の二人だけの結婚式。
まるで子供がやる真似事のようだ。
私を伯母様の家に送ると、
「全てを片付けてミリーを迎えに来るから少しだけ待っていて」
そう言い残しライド様は馬車で王都へ帰って行った。
その日の夜。
私は伯母様の家を出た。
小さな町を見下ろす寂しげな教会。
その近くで馬車を降りると、ライド様のエスコートで二人並んで歩く。
「エルグスト家を訪ねたらミリーが家を出ていて驚いたよ。
ずっと体調が悪いと言って会わせてもらえなかったのに急に君がいなくなっていて、私がどれだけショックを受けたかわかるかい?」
「ごめんなさいライド様。
何もお伝えしなかったせいで、こんな所まで心配して来ていただくことになるなんて本当に‥‥ごめんなさい」
「いいんだ。悪いのはミリーじゃない。
いつだってミリーは何ひとつ悪くないんだ。
ただ驚いただけだよ」
風になびく髪が顔にかかる度、ライド様はせっせと私の髪を梳く。
「綺麗な髪だ。優しく美しいピンク色の髪はミリーにぴったりだ。
ミリーは何でも美しいね」
「‥‥」
私は三度も男性に裏切られ破談になっている。
美しい、可愛い、そんな言葉をそのまま受け止められる心はもうない。
婚約者であった三人の男性も会う度に褒めてくれた。
この辺りでは珍しいピンク色の髪も、この辺りでは珍しい濃いブルーの瞳も、この辺りでは珍しい肌の白さも。
皆が社交辞令で褒めてくれていただけだった。
「ミリー?私は嘘はつかないよ。
本当にミリーを誰よりも美しいと思っているし、この世で一番可愛いとも思ってる」
「ええ、どうもありがとうございます。
ライド様もいつも誰よりも素敵です」
「ありがとう」
丘の上は風が強い。
だからライドがぼそっと呟いた「君を誰にも渡さない」と言った声は風にかき消されミリディには聞こえなかった。
同様に町を見下ろしぼそっと呟いたミリーの言葉もライドには届かなかった。
古びた教会の中に手を引かれ入る。
いつも遠くから眺めるだけだった教会は、古びているが中は随分と綺麗だった。
誰もいない薄暗い教会だが、掃除が行き届いている。
「私は神など信じないし頼らないけれど、誓える場所があることはいいことだ」
「?」
「宝石店では急すぎて最後まで話すことができなかったし、ダリルに迎えに行かせた時は会うことができなかったけれど、伝えたいことはただひとつ」
両手を握られる。
「ミリー、君を愛している。
一生私の側にいてほしい。
私のお嫁さんになってくれる?」
「‥‥」
「小さい頃から私は何度も確認したよね?
ミリーはいつも笑顔ですぐになると言ってくれたはずだけど?」
「‥‥」
これはまるで夢物語。
大好きなライド様のお嫁さんになってお姫様になる。
現実的でない、まるであの小説の中の話のようだ。
今のライド様には王女様との婚約が決まっている。
それなのにどういうつもりでこのような事を言うのかわからない。
「王女様との婚約が決まっているのに何故私にそんな事を言うのですか?」
「あれは王女の暴走だ。
私は王家からの打診をきちんと断っている。
あの御触れは事実ではないよ。
だからミリーが気にすることはない。
すぐに訂正させる。
私が一緒にいたいのはミリーだけだよ。
愛してる、心から大切に想ってるよ」
「身分も釣り合わない、妹のような私を愛するだなんて冗談もほどほどにしてください」
「皆が妹のように言うが、私はミリーを妹のように思ったことはないよ。
いつだって私の一番愛する人だと思って大切にしてきた。
伝わっていなかった?」
ぎゅっと抱き寄せられライド様の鼓動が速くなるのを感じる。
嘘か本当かも分からない。
王家の御触れが暴走だの間違いなどということはないだろう。
私はまた裏切られることになる。
信じる方が悪いと言われるのかもしれない。
でも私がライド様をずっと好きでいたことは紛れもない事実で‥‥だったら‥‥今だけは自分の都合のいいように‥‥騙されて騙して‥‥。
幼い頃、身分もそして自分の素性も何も分からなかったあの頃に‥今だけ戻って‥‥夢を見てもいいのだろうか。
「本当にライド様は私のことが好きですか?」
腕の中で聞けば、
「もちろん、この世の誰よりも大好きで何よりもミリーが大切だ」
すぐに応えてくれる。
涙が今にもこぼれ落ちそうになる。
「ミリー、私のお嫁さんになってくれる?
一生大切にすると約束する」
「ええ、もちろん。
だってライド様のことが大好きだもの」
昔と同じ返事をすれば、ライド様は何とも美しいキラキラとした満面の笑み。
「とても幸せな気持ちだよ、ミリー」
私のこぼれ落ちた涙をライド様は指で拭い、そして突然跪いた。
私の薬指にライド様の瞳と同じ美しい宝石のついた指輪をはめてくれる。
「愛してる。私と結婚してほしい。必ず幸せにすると約束する。
ミリーに永遠の愛を捧げると誓うよ」
「はい、喜んで」
笑顔で応えるとライド様は立ち上がり私にキスをした。
包み込むような優しくて温かくて柔らかい長いキスだった。
ライド様の幸せそうな笑顔をきっと一生忘れない。
騙し騙される偽物の二人だけの結婚式。
まるで子供がやる真似事のようだ。
私を伯母様の家に送ると、
「全てを片付けてミリーを迎えに来るから少しだけ待っていて」
そう言い残しライド様は馬車で王都へ帰って行った。
その日の夜。
私は伯母様の家を出た。
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