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ミリディの回想
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「まだ十九になったばかりの若いあなたが本当にいいの?
手紙を何度も書いてくれる熱意は伝わるけれど、人生これからですからもっと考えてからでも遅くないのですよ」
「ええ、よく考えました。
何度も考えて出した答えです。
どうか私をここで働かせてください」
「ここに入ればもう一生、自分が心変わりしても出ることはできませんよ。
本当にそれでもよいのですか?
お返事には本当に心の準備ができたなら歓迎するとは書きましたが‥‥まだ早いと思いますよ」
「すべて承知の上で覚悟して参りました。
お願いいたします。シスター」
「‥‥」
私は修道院の戸を叩いていた。
いずれはここに入り修道女となることを決めていた。
ただ計画よりも少し早い‥‥結婚生活を送ることなくここへ来ることになってしまっただけのこと。
「ではしばらく、生活態度などを見させていただいてから決めましょう」
シスターは私の真剣さに押されて中へ入れてくれた。
一時の気の迷い‥‥そんな風に思われているかもしれない。
けれど私が決めたのはもう七年も前の事。
十二の時には計画を立てていた。
私の家には幼い頃から母がいなかった。
病気の療養の為、領地の別邸で離れて暮らしていた。
私を生んだことで寝たきりに近い生活になってしまったという。
‥‥私はそれを信じていた。
十二の時、我が家を訪れた靴職人が、私の顔を見てひどく驚いた。
一瞬のことで誰も気付いていなかったかもしれないが、私は人の表情の変化にめざとい。
特技というほどではないが、観察力はある方だ。
わずかな変化に気付くのが得意だった。
何故かとてもその反応が気になって、ある日、仕上がった靴を父に届けて帰ろうとしたその男性を呼び止めた。
「あの、私の顔に驚いていたようですがなぜですか?」
素直に聞いた。
子供だから回りくどい言い方を知らなかった。
「なっ、何のことですか?お嬢様の勘違いでしょう。
か、可愛らしいと思っただけですよ‥‥」
その慌てぶりに何か知っていると確信した。
私は自分の持っている上等のサファイアの髪飾りを彼に渡した。
「正直に話してくださったら、これを差し上げます」
「‥‥」
平民である彼は、大きなサファイアをじっと見てゴクリと唾を飲み込んだ。
「いいお金になりますよ?
これは高い物ですから」
彼はサファイアを握りしめると言った。
「私が知ってることだけです。
‥‥ただの勘違いかもしれません‥‥確証が持てないことです」
「それで構いませんから知ってることを話してください」
彼は握りしめた髪飾りを見ながら、渋々話してくれた。
彼の同業者であった靴職人のトミーという男は、若いのに腕がよく、北の地域から出稼ぎにやって来ていて、こちらでは珍しいピンク色の髪をしていたという。
瞳は青く随分と良い男だったと。
貴族の靴を任されるほど腕も良く気に入られていたが、ある日、どこかの令嬢と駆け落ちしていなくなってしまったそうだ。
風の便りで子供ができて幸せな暮らしをしていると聞いていたそうだが、その数年後‥‥。
馬車の事故に巻き込まれて妻を亡くし、トミーも不自由な体になってしまったそうだ。
子供もその時に一緒に亡くしてしまったと聞いていたが、私があまりにもそのトミーによく似ていることで驚いたという。
もしかしてその子供が生きていたのではないかと錯覚したそうだ。
私はその話を聞いて、子供ながらに妙に納得するところがあった。
私の髪色は北の地域に多いと聞くが、私の親族にそちらと縁のある者がいないことを知っている。
もしかしら‥‥ひょっとして‥‥
でもまさか‥‥。
私は父の娘だと信じたかったし、どこの令嬢の話かもわからない。
ただその日から、もっと注意深く人を見るようになった。
我が家には月の中旬に必ず手紙が届く。
それは父と兄に宛てられたもので、いつも気になっていた。
父の書斎にこっそり忍び込むと、手紙をしまってある箱を見つけた。
私は後ろめたさを感じながらも父の手紙を読んだ。
それは母、エディー・エルグストからの手紙だった。
「なぜ私にはくださらないのだろう‥‥」
やっぱり私を生んだせいで不自由な生活になってしまったから恨んでいるのかもしれない。
誰も私のせいだとは言わずに、父は王都にいるより田舎の方が病気の治りが早いからだと言うだけだった。
けれど、手紙を読んで私は息が止まった。
『あの娘が家にいる限り、私は絶対に王都の家には戻りません。
息子と暮らしたい気持ちは母親として当然ありますが、あの娘の顔を見ながら暮らすことには耐えられません。
あなたはまだ妹を想い続けているからその娘を大切にしているのでしょう?』
母であるはずのエディー・エルグストは便箋四枚に私が家に居ることへの不満を書いていた。
別の手紙にも、
『一日も早くあの娘を孤児院に入れ、私が王都の家に帰れるようにしてください』
『あの娘を早く家から追い出してくれることを切に願います』
『何故あの娘を孤児院に入れることをそんなに拒むのですか?
あなたとは何の血の繋がりもないのですよ。
私も妹と仲が良かったわけではありません。
あの娘の母親になることはできません』
何通読んでも似たような内容で、十二の私でもどういうことか理解した。
血の気が引くような気がした‥‥。
実の母親は、今まで母だと思っていたエディー・エルグストの妹でリンディという女性だった。
そしてリンディはもともと父の最初の婚約者であった‥‥。
つまり、靴職人が言っていた駆け落ちした令嬢というのは私の本当の母親で、父親はトミーという靴職人だったということになる。
私はその日からしばらく眠れなくなり、父と兄ともどうしたらいいかわからなくなった。
精神が不安定になり、高熱を出して寝込んでしまった。
当時、子供の間で高熱が出る病が流行っていて、父はそれだと思っていたようだ。
必死に看病してくれ、医者の薬をせっせと飲ませてくれるその姿が、私にはどれだけ辛かったか‥‥。
父に話すこともできず、兄に相談することもできない。
いっそこのまま熱で亡くなることができたならと思ったことを思い出す‥‥。
そんな私の異変に気付き寄り添って話を聞いてくれたのは侍女のモニカだった。
この事を話せるのはモニカしかいなかった。
だから二人で計画を立てた。
私が十八になり、自分の意思で修道院に入れる歳になったら私は修道女に、モニカは
孤児院に戻り世話係として働くと。
それまでは今まで通り、父や兄に気付かれることなくこの家の娘として暮らそうと決めた。
この事実を私が知ったと言えば、父や兄は悲しみショックを受けるだろうとモニカに言われ、すぐに出て行く事を思いとどまった。
あの日から、私の願いは一日も早く家を出ることだった。
そして父と兄がエディー・エルグストと共に暮らせるようにすることだった。
十五になったある日。
父が使用人達と話していることを聞いた。
「お嬢様も年頃ですから旦那様もそろそろ覚悟が必要になりますね」
「ミリディの幸せな花嫁姿を見たいと思ってはいるが、父親としてはやっぱり複雑な気持ちがあるなぁ。だが幸せな結婚をしてほしいと願うのは親として当然あるから、覚悟はしているよ」
「きっとお嬢様の花嫁姿は美しいでしょうね」
「ああそうだな。親バカだがきっと誰よりも綺麗だろう」
はははははは
「うちのお嬢様が一番ですよ」
「まぁ、そうだな」
父や使用人達の楽しそうな笑い声‥‥
修道院に行く前に、父への恩返しとして幸せな花嫁姿を見せてあげたい‥‥
その時そう思った。
けれど私の心は修道女になることをかたく決めている。
そこでモニカに相談すると、孤児院にいた仲間のシモンが新聞社に勤めて情報屋のようなことをやっていると教えてくれた。
私は考えた。
結婚しても子供を作らず、数年後には離婚ができる相手。
女性には興味のない男色家を探すこと。
それは同時に幼い頃からの片想いを守れる手段でもあった。
ライド様のことがずっと好きだった。
子爵家の身分では公爵家に嫁ぐのは現実的でない。
貴族の階級、世間の目は厳しい。
一緒になることなど到底叶わないけれど、密かに想い続けるのは自由だ。
男色家ならば恋愛感情で苦しむこともなく身も清いまま修道院に行くことができる。
だからこそシモンに依頼し探してもらった。
報酬は私の持つアクセサリー、宝石、ドレス‥‥
まず一人目の侯爵家のカール様に手紙を書いた。
『お互いに家族に言えない悩みを抱えている者同士、形だけの結婚をしませんか?』と‥‥。
形だけでも夫婦になれば親は安心するでしょう?と書いて送れば、すぐに侯爵家からの縁談話がきた。
父は突然の侯爵家からの話に喜び、すんなりと婚約は決まった。
まさか私が裏でそんな事をしているとも知らずに‥‥
降って湧いたような話に驚きながらも、私に縁談を勧めたのだ。
なのに夜会で浮気現場を目撃され破談。
不思議に思った。
男色家である彼が女性と二人きりで会うなど考えられなかった。
二人目のウィル様、三人目のレオン様もまったく同じことが起こり、私の計画を邪魔する者がいるのではないかと焦りを感じた。
一体誰が‥‥何のために。
ライド様が国に戻られたことで、私の心は一層揺れた。
側に居たい気持ちと居られない辛さ。
ライド様が婚約者と共にいる姿は正直言って見たくない。
三度の破談で私の評判は地に落ちているのだから、もう形だけの結婚も望めない。
父に花嫁姿を見せることも無理だろう‥‥
ならば最初の計画通り、結婚は諦めて修道女になることを決めた。
嘘でもライド様の言葉は嬉しかった。
偽物の結婚式。
他に婚約者がいても、その場しのぎの戯言でも、私を愛していると言ってくれたことは心の支えにしていける気がした。
二人だけの結婚式‥‥一生忘れないから。
さようなら‥‥ライド様。
そして、お父様、お兄様‥‥。
妻との時間を、母親との時間を私が奪ってごめんなさい。
どうかこれからは本当の家族で幸せに暮らしてください。
皆の幸せを心から祈っています。
手紙を何度も書いてくれる熱意は伝わるけれど、人生これからですからもっと考えてからでも遅くないのですよ」
「ええ、よく考えました。
何度も考えて出した答えです。
どうか私をここで働かせてください」
「ここに入ればもう一生、自分が心変わりしても出ることはできませんよ。
本当にそれでもよいのですか?
お返事には本当に心の準備ができたなら歓迎するとは書きましたが‥‥まだ早いと思いますよ」
「すべて承知の上で覚悟して参りました。
お願いいたします。シスター」
「‥‥」
私は修道院の戸を叩いていた。
いずれはここに入り修道女となることを決めていた。
ただ計画よりも少し早い‥‥結婚生活を送ることなくここへ来ることになってしまっただけのこと。
「ではしばらく、生活態度などを見させていただいてから決めましょう」
シスターは私の真剣さに押されて中へ入れてくれた。
一時の気の迷い‥‥そんな風に思われているかもしれない。
けれど私が決めたのはもう七年も前の事。
十二の時には計画を立てていた。
私の家には幼い頃から母がいなかった。
病気の療養の為、領地の別邸で離れて暮らしていた。
私を生んだことで寝たきりに近い生活になってしまったという。
‥‥私はそれを信じていた。
十二の時、我が家を訪れた靴職人が、私の顔を見てひどく驚いた。
一瞬のことで誰も気付いていなかったかもしれないが、私は人の表情の変化にめざとい。
特技というほどではないが、観察力はある方だ。
わずかな変化に気付くのが得意だった。
何故かとてもその反応が気になって、ある日、仕上がった靴を父に届けて帰ろうとしたその男性を呼び止めた。
「あの、私の顔に驚いていたようですがなぜですか?」
素直に聞いた。
子供だから回りくどい言い方を知らなかった。
「なっ、何のことですか?お嬢様の勘違いでしょう。
か、可愛らしいと思っただけですよ‥‥」
その慌てぶりに何か知っていると確信した。
私は自分の持っている上等のサファイアの髪飾りを彼に渡した。
「正直に話してくださったら、これを差し上げます」
「‥‥」
平民である彼は、大きなサファイアをじっと見てゴクリと唾を飲み込んだ。
「いいお金になりますよ?
これは高い物ですから」
彼はサファイアを握りしめると言った。
「私が知ってることだけです。
‥‥ただの勘違いかもしれません‥‥確証が持てないことです」
「それで構いませんから知ってることを話してください」
彼は握りしめた髪飾りを見ながら、渋々話してくれた。
彼の同業者であった靴職人のトミーという男は、若いのに腕がよく、北の地域から出稼ぎにやって来ていて、こちらでは珍しいピンク色の髪をしていたという。
瞳は青く随分と良い男だったと。
貴族の靴を任されるほど腕も良く気に入られていたが、ある日、どこかの令嬢と駆け落ちしていなくなってしまったそうだ。
風の便りで子供ができて幸せな暮らしをしていると聞いていたそうだが、その数年後‥‥。
馬車の事故に巻き込まれて妻を亡くし、トミーも不自由な体になってしまったそうだ。
子供もその時に一緒に亡くしてしまったと聞いていたが、私があまりにもそのトミーによく似ていることで驚いたという。
もしかしてその子供が生きていたのではないかと錯覚したそうだ。
私はその話を聞いて、子供ながらに妙に納得するところがあった。
私の髪色は北の地域に多いと聞くが、私の親族にそちらと縁のある者がいないことを知っている。
もしかしら‥‥ひょっとして‥‥
でもまさか‥‥。
私は父の娘だと信じたかったし、どこの令嬢の話かもわからない。
ただその日から、もっと注意深く人を見るようになった。
我が家には月の中旬に必ず手紙が届く。
それは父と兄に宛てられたもので、いつも気になっていた。
父の書斎にこっそり忍び込むと、手紙をしまってある箱を見つけた。
私は後ろめたさを感じながらも父の手紙を読んだ。
それは母、エディー・エルグストからの手紙だった。
「なぜ私にはくださらないのだろう‥‥」
やっぱり私を生んだせいで不自由な生活になってしまったから恨んでいるのかもしれない。
誰も私のせいだとは言わずに、父は王都にいるより田舎の方が病気の治りが早いからだと言うだけだった。
けれど、手紙を読んで私は息が止まった。
『あの娘が家にいる限り、私は絶対に王都の家には戻りません。
息子と暮らしたい気持ちは母親として当然ありますが、あの娘の顔を見ながら暮らすことには耐えられません。
あなたはまだ妹を想い続けているからその娘を大切にしているのでしょう?』
母であるはずのエディー・エルグストは便箋四枚に私が家に居ることへの不満を書いていた。
別の手紙にも、
『一日も早くあの娘を孤児院に入れ、私が王都の家に帰れるようにしてください』
『あの娘を早く家から追い出してくれることを切に願います』
『何故あの娘を孤児院に入れることをそんなに拒むのですか?
あなたとは何の血の繋がりもないのですよ。
私も妹と仲が良かったわけではありません。
あの娘の母親になることはできません』
何通読んでも似たような内容で、十二の私でもどういうことか理解した。
血の気が引くような気がした‥‥。
実の母親は、今まで母だと思っていたエディー・エルグストの妹でリンディという女性だった。
そしてリンディはもともと父の最初の婚約者であった‥‥。
つまり、靴職人が言っていた駆け落ちした令嬢というのは私の本当の母親で、父親はトミーという靴職人だったということになる。
私はその日からしばらく眠れなくなり、父と兄ともどうしたらいいかわからなくなった。
精神が不安定になり、高熱を出して寝込んでしまった。
当時、子供の間で高熱が出る病が流行っていて、父はそれだと思っていたようだ。
必死に看病してくれ、医者の薬をせっせと飲ませてくれるその姿が、私にはどれだけ辛かったか‥‥。
父に話すこともできず、兄に相談することもできない。
いっそこのまま熱で亡くなることができたならと思ったことを思い出す‥‥。
そんな私の異変に気付き寄り添って話を聞いてくれたのは侍女のモニカだった。
この事を話せるのはモニカしかいなかった。
だから二人で計画を立てた。
私が十八になり、自分の意思で修道院に入れる歳になったら私は修道女に、モニカは
孤児院に戻り世話係として働くと。
それまでは今まで通り、父や兄に気付かれることなくこの家の娘として暮らそうと決めた。
この事実を私が知ったと言えば、父や兄は悲しみショックを受けるだろうとモニカに言われ、すぐに出て行く事を思いとどまった。
あの日から、私の願いは一日も早く家を出ることだった。
そして父と兄がエディー・エルグストと共に暮らせるようにすることだった。
十五になったある日。
父が使用人達と話していることを聞いた。
「お嬢様も年頃ですから旦那様もそろそろ覚悟が必要になりますね」
「ミリディの幸せな花嫁姿を見たいと思ってはいるが、父親としてはやっぱり複雑な気持ちがあるなぁ。だが幸せな結婚をしてほしいと願うのは親として当然あるから、覚悟はしているよ」
「きっとお嬢様の花嫁姿は美しいでしょうね」
「ああそうだな。親バカだがきっと誰よりも綺麗だろう」
はははははは
「うちのお嬢様が一番ですよ」
「まぁ、そうだな」
父や使用人達の楽しそうな笑い声‥‥
修道院に行く前に、父への恩返しとして幸せな花嫁姿を見せてあげたい‥‥
その時そう思った。
けれど私の心は修道女になることをかたく決めている。
そこでモニカに相談すると、孤児院にいた仲間のシモンが新聞社に勤めて情報屋のようなことをやっていると教えてくれた。
私は考えた。
結婚しても子供を作らず、数年後には離婚ができる相手。
女性には興味のない男色家を探すこと。
それは同時に幼い頃からの片想いを守れる手段でもあった。
ライド様のことがずっと好きだった。
子爵家の身分では公爵家に嫁ぐのは現実的でない。
貴族の階級、世間の目は厳しい。
一緒になることなど到底叶わないけれど、密かに想い続けるのは自由だ。
男色家ならば恋愛感情で苦しむこともなく身も清いまま修道院に行くことができる。
だからこそシモンに依頼し探してもらった。
報酬は私の持つアクセサリー、宝石、ドレス‥‥
まず一人目の侯爵家のカール様に手紙を書いた。
『お互いに家族に言えない悩みを抱えている者同士、形だけの結婚をしませんか?』と‥‥。
形だけでも夫婦になれば親は安心するでしょう?と書いて送れば、すぐに侯爵家からの縁談話がきた。
父は突然の侯爵家からの話に喜び、すんなりと婚約は決まった。
まさか私が裏でそんな事をしているとも知らずに‥‥
降って湧いたような話に驚きながらも、私に縁談を勧めたのだ。
なのに夜会で浮気現場を目撃され破談。
不思議に思った。
男色家である彼が女性と二人きりで会うなど考えられなかった。
二人目のウィル様、三人目のレオン様もまったく同じことが起こり、私の計画を邪魔する者がいるのではないかと焦りを感じた。
一体誰が‥‥何のために。
ライド様が国に戻られたことで、私の心は一層揺れた。
側に居たい気持ちと居られない辛さ。
ライド様が婚約者と共にいる姿は正直言って見たくない。
三度の破談で私の評判は地に落ちているのだから、もう形だけの結婚も望めない。
父に花嫁姿を見せることも無理だろう‥‥
ならば最初の計画通り、結婚は諦めて修道女になることを決めた。
嘘でもライド様の言葉は嬉しかった。
偽物の結婚式。
他に婚約者がいても、その場しのぎの戯言でも、私を愛していると言ってくれたことは心の支えにしていける気がした。
二人だけの結婚式‥‥一生忘れないから。
さようなら‥‥ライド様。
そして、お父様、お兄様‥‥。
妻との時間を、母親との時間を私が奪ってごめんなさい。
どうかこれからは本当の家族で幸せに暮らしてください。
皆の幸せを心から祈っています。
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